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プロット10行未満で描き始めたこの作品。

真面目に『今後のあらすじと設定』を考えてみたら、最低でも5章くらいになりそうです。先は長いですねー。

第零章【11冊目の黒歴史】
013『芽生え』

「異能を……この場所で?」

「と、というか、どこなのよここ!」


 阿久津さんと、六紗は困惑を見せていた。

 そりゃそうだ。

 ここは深淵、万物の最奥に在る場所。

 ここより深きものはなく。

 ここより暗きものはない。


 ……加えて、想力を感じ取れるようになって、理解した。


 ここは異常だ。

 尋常ではない想力に溢れ返っている。

 おそらくは、彼女たちをして【底がしれない】と言わしめた僕が、一年の歳月をかけて、緻密に綿密に、熱量の限りをかけて作り上げた深淵だからだろう。

 1年分の僕の想力が、全て注ぎ込まれている。

 その量は……きっと、僕の想像を優に超えるだろう。


「……ここは、深淵と呼ばれる場所。極力、2人を連れてきたくはなかったけれど……今回は非常事態ということで、一時避難場所に選んだ」

「し、深淵だと……!? 解然の闇の膝元ではないか!」


 さっすが阿久津さん、熟読してるー!

 やめてよねー、そんなにディュゥェアルノォーゥト熟読するの。

 彼女は周囲へと視線を巡らせると、どこか恐れるように口を開く。


「や、やはり……見られているのだろうか、今、この瞬間も」

「さぁ、どうだかな。……ポンタは分かるか?」

「ボクに聞かないで欲しいぽよ。もうイスカンダルモードは終了ぽよ。今はただの、ぷりちーなペットぽよ」


 こ、コイツ……!

 この謎生物にはプライドというものは無いのだろうか。

 イスカンダルなのかペットなのか、ハッキリしたらどうだ。

 僕は大きく息を吐くと、壁へと触れた。


「まぁ、それは……大丈夫だと思う」


 だって、解然の闇は僕だから。

 僕が何かしない限りは、大丈夫のはず。

 或いは…………いや、この考えはやめておこう。

 フラグを建てるのは好きじゃないしな。


「そんなことより、問題はあの化け物だ」


 とりあえず、深淵(こっち)に来る前、あの化け物を鑑定しておいた。

 その結果が、こちら。



 ナムダ・コルタナ[Sランク]

 異能[竜血暴走(クレイズ・ドラゴ)



 ちなみに、こちら側四人の鑑定結果はこちら。



 阿久津真央[Sランク]

 異能[臨界天魔眼]


 六紗優[Aランク]

 異能[時の潜水者(ノン・オクロック)


 ポンタ[Sランク]

 異能[我、征服の獣なり(ロード・イスカンダル)


 灰村 解

 Lv.12[Dランク]

 異能[なし]

 技能[上級鑑定][影狼][帰還]



 こうしてみると……僕、弱いなぁ。

 一応、鑑定の力を『生まれつきこういう力がある』と説明し、松明の棒で地面へとステータスを書き記す。

 それを見た六紗は、何だか一気に不機嫌になったが、まぁ、多分あれだろ。1人だけAランクだから、ってことだろうな。


「ふんっ。どーせ私はAランクですよー」

「安心するぽよ。優の能力でSランクだったら、もう誰も手に負えないぽよ。Aランクでよかったぁ、と、ボクも悪魔王もホッとしてるぽよ」

「どこをどう安心しろって言うのよ!」


 六紗は叫んだ。

 ポンタは黙った。

 黙って僕の方を見やがった。

 六紗はジロリと僕を睨んだ。このくそペットが……!


「……まぁ、なんだ。時間停止、の能力、であってるかな?」

「……そうよ。私の能力は【時の潜水者(ノン・オクロック)】。呼吸を止めている間だけ、世界中の時を停めていられる能力よ。……まぁ、戦闘しながらじゃ、息を止めていられる時間なんて限られるわけだし? そんなに大した能力でもないわよ」


 オイこの女、時間停止を大したことないって言ったぞ。正気か?

 あ、いや、別に六紗の正気を疑ってるわけじゃないんだよ?

 最初から正気だとは思ってないから。

 だから、額面通りに受け取らないでね?

 ただの罵倒だから。


「とにかく。僕個人……では、どう足掻いても勝てないと思うから。とりあえず、即興でもなんでも、ここにいる全員の力で、あの化け物を撤退させる! 今はそれが一番大事な事だ!」

「……そのための、逸常の異能、ぽよか」


 ここに来て、ポンタが会話に本格的に混ざり始めた。

 前までは、「ポンタぁ? あぁ、あの様々な私的都合から出来上がった合理主義の塊みたいな謎生物ね? アイツはいいよ別に」となっていたが、ここに来てポンタは実は強かったという事実が明らかになった。

 さすがにもう、彼を軽視することも出来まいさ。

 なんてったって、ウチの唯一のパワーアタッカーだからな。


 無条件反射の最強盾、悪魔王。

 最強の代名詞・時間停止の6代目勇者。

 そして、中二病の謎生物、ポンタ。

 こうしてみると、ものすごく豪華なメンバーを集めてるんだなぁ、って思うけど、それを真正面から粉砕できそうなあの化け物、本当にヤバいと思う。


 閑話休題。


「と言っても、能力はもう決めたんだ。あとは、阿久津さん、六紗、ポンタ。異能をどうやって扱うのか。それについて教えて欲しい」

「それは構わんが……どうするつもりだ、御仁。あの……ナムダ・コルタナという男、尋常ではないぞ」

「……このボクが撤退を選んだ相手ぽよ。ちゃんとした作戦、あるんだぽよな?」


 困ったように問うて来る阿久津さんと、疑い100%で聞いてくるポンタ。

 2人を前に頷くと、『出来るかどうかは分からないけど』と前置きし、その能力を口にした。


「理を奪う力――【禁書劫略(エクリプス)】」


 僕の言葉に、阿久津さんは大きく目を見開いた。

 六紗とポンタはよく分かっていないようだったので、僕はもっと分かりやすく、端的に言った。



「僕は今から、解然の闇の力を習得する」




 ☆☆☆




 禁書劫略。

 またの名を【エクリプス】。

 理を喰らい、奪う能力。

 解然の闇が保有する、最強の力。


「ご、御仁……ッ、正気か!?」


 アンタに正気を疑われたくないよ。

 僕はそう思ったが、口には出さない。


「ああ。奪う力。それは肉体強化でも、魔法でも、守る力でも治す力でも、破壊する力でも、ましてや時をどうこうする力でもない。……つまり、いずれにも該当しない。完全なるイレギュラー」


 ……どっかで、聞いた説明だろう?

 僕はそう笑うと、喉を鳴らした阿久津さんを一瞥し、ポンタへと視線を向ける。


「おい、自称征服王。前世も含めて、今までに【強奪系能力者】なんてもの、見た記憶あるか?」

「もしそんなのがいたら、確実に覚えているぽよ。異能界において、最強は、時間停止の【界刻】と、即死の【杯壊】と相場は決まっている。その意味、わかるぽよな?」

「……強奪系能力者なんて、そんな反則認められない、ってか」


 なるほどな。

 だから、なんじゃないか?

 最強の異能種別【逸常】が、歴史上から抹殺された理由。

 僕は再び阿久津さんへと視線を向けると、彼女は冷や汗を流しながら僕を見た。


「本気、なのだな?」

「ああ、でなきゃ、あの化け物はどうしようもないだろ」


 同じSランクでも、あの化け物はそのトップクラスの実力者、なのだろう。

 あるいは、S以上の区別がないから、Sランクの中でも差が開いている、とか。

 そう考えると納得だけど、今問題なのはそこじゃない。

 あの化け物は、正攻法じゃどうしようもない、ってこと。



「――例えば、活性? とやらの概念を奪ってしまえば――」



 僕の言葉に、六紗が目を剥く。

 ポンタがあきれ返ったように息を吐き。

 阿久津さんは、静かに、頷き返す。


「……わかった。ならば、その力を習得する手助けを、しよう」

「ちょ……!? あ、あんた正気なの!?」

「……あぁ。私は御仁に救われた。……それが例え、一宿一飯の恩だったとしても、この世界で、こんな私と初めて話してくれた人だ。私は彼を手伝う。彼の力になる。この先、どんなことになろうとも、彼の味方だ」


 阿久津さんは、覚悟の決まった目で僕を見た。

 その姿に僕は微笑む。

 ありがとう阿久津さん。

 これで中二病じゃなかったら、多少なりとも心が揺れ動いていたかもしれない。惚れてたかもしれない。実に惜しかった。

 そんなことを考えていると、僕らを見ていた六紗も声を上げる。


「あぁ! もう、分かったわよ! ポンタ! こうなったらあんたの知ってること全部教えなさい! 勝つわよ! あの化け物に!」

「ぽよ? まさか……本気で勝つつもりぽよ? 言っちゃ悪いけど、あの化け物、ほんとに化け物ぽよよ?」


 直に戦ったポンタが言うなら間違いないのだろう。

 だけどさ、可能性が無いわけじゃ、ないんだろ?

 そして何より、この力は、1を100へと変える力だ。


「……本気、みたいぽよな」


 ポンタはそう息を吐くと、僕を見上げた。


「分かったぽよ。お前は嫌いだけど、イスカンダルの攻撃受けてピンピンしてるアイツはもっと嫌いぽよ。……今回だけは、お前に力を貸してやるぽよ」

「ポンタ……」


 彼はそう言うと、僕の手の中の【零巻】を見た。

 僕もつられて零巻へと視線を向ける。

 そこには、黒く輝く零巻の存在があった。


「……? なんで、光って――」

「異能には、それを発動する【鍵】が必要になるぽよ」


 重ねるように、ポンタは言った。

 阿久津さんは、最初見た時に身につけていた、悪魔王とやらの仮面を取りだし、六紗は胸元のネックレスを見せてきた。

 それが、彼女らの鍵。トリガーってやつか。


「鍵は本来、その人物が【常軌を逸した執着】を持つ道具、概念、その他諸々が選ばれることになるぽよ。異能習得において、その鍵を探す、あるいは作ること。それが一番の問題になるぽよが……」


 ポンタは、前足で零巻を指し示す。

 彼の言いたいことは……さすがにもう、理解出来ていた。

 僕が、常軌を逸して執着していたもの。

 つまりは、黒歴史。

 暗黒に染まった1年間。

 ならば、その期間に書き記したこの本もまた、僕の執着が詰まっている。


 零巻は、僕の想力を受けて黒く輝く。

 その表紙を見て喉を鳴らす僕へ、ポンタは言った。



「その本こそが、お前の鍵ぽよ」



 10冊の本を燃やすために、11冊目の黒歴史の力を借りる。

 加えて、覚えようとしている力は解然の闇の力ときたもんだ。

 僕は大きく息を吐く。


「そりゃ、嫌味が効いていて最高だな」


 僕は呟き、零巻を持つ手に力を込めた。

 黒歴史を消し去るには、黒歴史を直視しなければならない。

 そう言われているようなもんだ。

 僕は胸に手を当て、握り締める。

 痛みに苦笑し、されど。前を向いた。


「……それじゃあ、早速始めてくれるか」


 もう二度と、後ろを振り向かないために。

 今は、目を背けたくなる現実を直視する。

 全ては、10冊の黒歴史を抹消するため。


 ――中二病なんて過去を、なかったことにするため。



「……分かった。では、貴殿に異能を教えよう」



 僕は今日、異能を習う。


 黒歴史の体言とも呼べる、最悪の異能を。

【禁書劫略】

強奪系の能力。

即死や時間停止のような目に見える強さはない。

ただ、相手の力を一時的に奪って行動不能にしたり、相手を弱体化させることに特化している。


※単体で強い能力ではありません。


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