「おいマリア、靴は脱げよな」
「そんなことわかっていますわよ。ではお邪魔いたしますわ」
「お邪魔しまーす」
「し、失礼します」
マリアと長澤と水川は靴を脱ぐと俺の用意したスリッパに履き替え家に上がってきた。
「早速真琴様のお父様とお母様に挨拶させてくださいませ」
マリアが言うが、
「二人は旅行中だからいないぞ」
俺はそう返事をする。
「そうなのですか。残念ですわ」
「俺の部屋は階段上がって右だから。先行っててくれ」
俺は一応の礼儀として飲み物でも出してやることにした。
それにしても両親が旅行中でよかった。
朝七時に女子が三人も家に押しかけてきたら父さんたちがどう思うか。
考えただけで胃が痛い。
三人の背中を見送ると俺はキッチンへと向かう。
そこで温かい紅茶を淹れると自室に持っていった。
「お待たせ……って何やってんだ長澤っ」
「え、宝探しだけど」
とこもった声がベッドの下から返ってくる。
長澤はあろうことか俺のベッドの下に潜り込んでいた。
「こら、出てこい」
「きゃっ、ちょっと足触んないでよっ。くすぐったいでしょっ」
「知るか」
俺はベッドの下から長澤をむりやり引っ張り出す。
十六歳男子のベッドの下をあさるような奴に容赦なんて必要ない。
「まったくもう、髪が乱れちゃったじゃない」
長澤はスマホを鏡代わりにして髪型を整えながら言った。
「長澤様、それでお宝はみつかりましたの?」
「ううん、何も。期待させてごめんねマリアちゃん。佐倉はお宝持ってないみたい」
「そうですか。真琴様のお宝是非拝見したかったですのに」
心底残念そうに言うマリア。
お宝の意味も多分わかってはいまい。
「す、すみません佐倉さん。わたしはやめるように言ったんですけど紅ちゃんが聞かなくて……」
「あっ、なあ~に一人だけいい子ぶって。蓮華だって楽しそうにしてたじゃない」
「わ、わたしはそんなことっ……」
「もういいから、紅茶でも飲んでくれ」
俺は三人にそれぞれ紅茶の入ったティーカップを差し出した。
これで少しはおとなしくなってくれるといいが。
☆ ☆ ☆
すっかり眠気が覚めてしまった俺は紅茶を飲む三人をなんとはなしに眺めていた。
長澤はスカジャンとスキニージーンズというスポーティーな恰好であぐらをかきながら紅茶をぐびぐび飲んでいる。
隣にちょこんと座るマリアは黒いドレスに身を包み、猫舌なのだろうか必要以上に紅茶に息を吹きかけている。
水川はというと暖かそうなニットのセーターにロングスカートというどこぞの司書さんのような装いでティーカップに口をつけながら目線だけはきょろきょろと動かし興味深げに俺の部屋を観察していた。
するといち早く紅茶を飲み終えた長澤が、
「ごちそうさまっ。じゃあそろそろ行きましょうか」
すくっと立ち上がる。
「行くってどこへ?」
まあこの際俺の部屋から出ていってくれるならどこでもいいかと思いつつ俺は訊ねた。
すると長澤は俺に向かってウインクをするとこう言ってのけた。
「デートよっ」
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