北条が飛んでいったカイの方に向かう。
「け、けれど……」
カレンはまだ動けないし地面に叩きつけられた圭は気を失っている。
和輝だって森の方に殴り飛ばされてからどうなったのかも分からない。
みんなを置いていけない。
夜滝も波瑠も逃げ出すことをためらう。
「大丈夫」
圭とカレンの体を水が包み込んでふわりと持ち上げる。
かなみの魔法で2人が優しく運ばれていく。
「あなたたちも早く」
「あの!」
「何かしら?」
「もう1人奥にいるんです!」
「そちらも任せて。
さあ、早く」
「ありがとうございます」
波瑠が出て、夜滝もゲートから出ていく。
かなみは圭とカレンをできるだけ動かさないように慎重に水で運ぶ。
「あら?」
軽く無事の確認をするために圭の顔を覗き込んだ。
どこかで見たことがあるような、そんな感じがした。
思い出そうとしても思い出せない。
しかその時森の奥で大きな爆発音がしてかなみは疑問を押しやって圭たちをゲートの外に運び出した。
「うーん、私いるのかしら?」
連続して爆発が起きている。
国内でも最強の呼び声が高い北条勝利が戦っている。
一応要請を受けはしたけれどまさか北条が負けることはないだろうとかなみは思う。
「チィ!
この化け物め!」
「化け物は貴様の方だろう!」
一方で北条とカイの戦いも激しさを増していた。
今でこそ落ち着きもあり大人な人物であると思われている北条であるが戦いの時は苛烈で燃え上がるような男であった。
普段は魔力を抑えているので髪色は黒であるが魔力を解放して感情が昂ると髪の色が赤く染まるという少し特異な体質を持っている。
そうした見た目の色と戦いの激しさから赤虎と呼ばれていた。
本来なら両手で持つ幅広の剣を片手で振り回してカイに襲いかかる様はまるで大きな虎のようであった。
「しつこいんだよ!」
剣をかわしてカイが北条の胸の前に手を伸ばす。
魔力が爆ぜるが北条は少し後退させられただけでまたすぐにカイに向かっていく。
先ほどから似たような攻防が続いている。
北条の攻撃をカイは回避して殴ったり爆破したりするが北条に対しては大きな決定打となっていない。
虎の目は何かを狙っている。
大きな一撃を放って隙が生まれることをカイは恐れていた。
今のところカイの方が早く北条はカイを捉えきれていない。
しかし少しずつではあるが北条の剣はカイの体の近いところを通り過ぎるようになっていっている。
「く……離れろ!」
とうとう剣がカイの頬をかすめた。
これ以上は接近され続けることが危険だと判断したカイは北条を殴りながらこれまでよりも大きな爆発を起こした。
爆発の衝撃で飛ばされた北条は空中で一回転すると華麗に着地した。
口元に血がにじんでいる。
びくともしていないように見えていた北条であったが全くのノーダメージとはさすがにいかなかった。
「この野郎……」
対してカイも腹を押さえてフラつく。
より強い攻撃なるほどに魔力が必要になる。
北条は攻撃を食らいながらも若干魔力の薄くなったカイの腹に拳を叩き込んでいた。
「貴様に殺されたものの痛みはこんなものじゃないはずだ。
思い知るといい」
「はっ……死んだやつなんかそこらの虫と同じだ。
踏み潰された虫が痛かったかどうかわざわざ考えるか?
虫の痛みなんざ俺には分からねえよ」
「嫌でも思い知ることになる」
「へっ、やってみろ!」
爆発。
急に北条の前の地面が爆発して土埃が舞った。
カイはその場を動いていなかった。
手を伸ばしたりするような予備動作もなく魔力を動かしたような形跡もない。
なのに突然地面が爆発して北条は困惑した。
もし仮になんの動作も魔力の変化もなく爆発が使えるなら非常に厄介なことになる。
揺れる土埃。
影が見えた北条は攻撃をガードしようとした。
「こっちだよ!」
うっすらと見える影から顔への攻撃だと予想を立てて防御した。
しかしそれはフェイントだった。
ガードのために上げられた剣に軽く拳を当てただけでカイはすぐさま次のパンチを繰り出していた。
腹にめり込んだ拳から魔力が漏れ出し、そして大きな爆発が起こった。
「どうだ?
虫の気持ちが分かったか?」
土埃が落ち着いて視界が開ける。
カイは顔をひくつかせた。
通常の人どころかそれなりに強い覚醒者だってあれだけの爆発を受ければ内臓をぶちまけた。
それなのにぶっ飛んだ北条は無事だった。
服は消し飛んで腹部は赤くなっているが大きな出血などはない。
「そうだな」
北条は立ち上がった。
余裕があるように振る舞っているが腹部はひどく痛んでいる。
「被害に遭った人たちがどんな苦痛を受けていったかはよく分かった」
凶悪な破壊力がある。
北条は覚醒者の中でもかなり頑丈な方であり、その上身につけている装備も安いものではない。
なのに装備は破壊され、大きなダメージがある。
危険すぎるこの男を逃してはならないと思った。
「ふぅー……」
北条の剣に炎がまとわれる。
走り出した北条は真っ直ぐにカイと距離を詰める。
「バーカ」
バカにしたようにカイは中指を立てた。
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