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第36話 本気度

「……まずは、もしよろしければ、今回売買される品物を見せていただくことはできますでしょうか?」


 席について直後、剛太がそう言ってきた。

 その視線は俺の後ろに立てかけてあるケースに向いている。

 もちろんそこに入っているのは今回売る予定の釘バットに他ならない。

 俺としてはカズ兄には可能な限り見せたくない、という気持ちがあるが、今までのギルドにはとりあえず現物を見せてきたのだ。

 《アウターズ》にだけ見せない、なんて言うわけには行かない。

 博の視線が俺に向いたので、俺は後ろのケースを手に取り、ジップを下ろして釘バットを取り出し、テーブルの上に置く。

 剛太とカズ兄の視線がそれに釘付けになった。


「……おぉ、これが。確かに相当な魔力を感じますね……!」


 カズ兄が興味深そうな声でそう言った。

 続けて剛太も、


「やっぱり僕の魔剣よりも強いね、これ。こんなものが突然出てくるなんて、正直半信半疑だったけど、本当に出てきちゃうんだもんなぁ……驚きだよ」


 そう言って目を見開く。

 その発言には気になるところがあったので、俺は尋ねる。


「清野サンモ魔剣ヲオ持チナンデスカ?」


 これに答えてくれるとは限らないとは思った。

 有名ギルドのギルドリーダーの武装なんて、基本的に公開されている情報ではないからだ。

 一応、大雑把な情報については広まっていることも多いが、細かな仕様とかは秘匿されている。

 大抵の探索者ギルドにおいて、ギルドリーダーというのは最大戦力であるのが普通だからだ。

 この清野剛太も、パッと見だと筋肉質な壮年、くらいにしか見えないが、実際に戦えば相当なものだと俺の戦闘勘が告げている。

 カズ兄よりは明らかに強いだろうな。

 だからこそ、この人がギルドリーダーなんだろうが。

 

 しかし、俺の質問に剛太は意外にもすんなりと、


「あぁ、そうなんですよ。これでも国内最強の魔剣を持ってます。今日は持ってきてないんですけどね」


 そう答えた。

 これに博が付け加えるように、


「清野さんの魔剣は非常に有名なんですよ。特段、情報を秘匿されておられないので。まぁ、それでも一般には出回ってはいない情報ではありますけど……」


「でも、五大ギルドの連中はみんな、僕の魔剣のことは知っていますね。中小ギルドにも知られているし……特に隠していないので」


「ソレハマタ、豪気デスネ」


「ははっ。そう言うわけでもないんですけど、あんまり隠す情報がないんですよね。僕の魔剣は、ただ、強いだけだから。もしも何か特殊な能力とかあったら流石に僕も隠しますけど」


 それにはなるほど、と思った。

 魔剣というものには色々な特徴があるが、特殊な能力がついていることが少なくない。

 わかりやすいところで言うなら、人型の魔物には攻撃力五割増しとか、そういうのだ。

 しかし、清野のそれはそういった効果がついているわけではなく、ただ単純に頑丈で攻撃力が高い、というだけなのだろう。

 それであれば、隠すよりも公表していった方がむしろ効果的と言う判断になるのは分かる。

 国内最強の武器を持っている、というギルドには加入申請がたくさんくることになるだろうからな。

 そういう宣伝のうまさも今の《アウターズ》を作った所以なのかもしれない。

 まぁ、《アウターズ》に限らず、規模の大きなギルドというのはみんな宣伝上手だけどな。

 今の時代、どれだけ広告をうまく打てるかが、組織の規模を決めてくると言うわけだ。

 

「ソウダッタンデスネ。デモ、ソウイウ事ナラ、態々(ワザワザ)コレヲ手ニ入レナクテモイインジャ?」


「ええ、まぁ。正直、現物を直接見るまではどうしようか悩んでいたんですけど……これだけの魔剣となれば、今の日本では最強の品と言っていい。切断系と言うよりは打撃系なので、私のスタイルとは少し異なるのがちょっと悩ましいですが」


 と言うことは、今の清野の持っている魔剣は切断系なのだろう。

 魔剣と一口にいうが、これは本来の意味での剣だけを指す場合と、魔力の籠もった武器全体を指す場合がある。

 つまりメイスやハンマーとかも入ってくることがあるわけだ。

 これは当初の迷宮産出の魔武器が剣が多く、そう言ったものを日本で魔剣、と言っていたらいつの間にか外国でも《MAKEN》で定着してしまったことに由来がある。

 向こうにも魔剣の訳語くらい当然あるはずなのだが、《迷宮産出の特殊な効果を持った武器》が最も多く、しかも早く日本だったことが原因したわけだ。

 だから《MAKEN》は外国でも普通に通じる。

 そうじゃない呼び方も一応あるのだが、一回定着してしまうともう公権力とかが頑張っても他の言葉に代替できない感じだな。

 

「でしたら、もしも手に入らなくても、それほど痛手ではない?」


 博が尋ねると、清野は少し考えてから頷いて、


「まぁ、そうですね。今はまだ、我々も、他の五大ギルドも、十層までしか到達できていませんが、近々うちのギルドでは大規模な探索の予定もあります。十一層に踏み込めば……この釘バットくらいのものは出ると思っていますので」

もし少しでも面白い、面白くなりそうと思われましたら、下の方にスクロールをして、

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