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第2章 《煉獄の森》の魔物たち
第31話 提案

 ただ、慌ててもどうしようもないことは間違いない。

 今の状況はもうこれ以上悪くなりようがないし、今更無駄に慌てる必要もないと言える。

 だから俺はその後もアトに色々聞いた。

 その結果、分かったことはたくさんあったが、特に《カード》の機能についての話は意外だった。

 アトはなぜか、俺がこの辺りにいることを把握していたようだが、それはまさに《カード》があることによる。

 より厳密にいうなら、《カード》の所持者の現在位置を、《情報閲覧》技能で見ることが出来るらしかった。

 そうだとするのなら、今後のことを考えると《カード》を捨てる必要が出て来る。

 そうしなければ俺の位置は永遠に把握され続けてしまい、教会から追手が際限なく来てしまうだろうから。

 しかし、《カード》があるからこそ、俺はキャスやコボルトたちの能力を把握したり、彼らの技能を借りれるのだ。

 一応、概ねの技能が分かっていれば、《カード》をいちいちいじらなくてもそれらの技能を借りたりすることは出来ることは把握している。

 でも、あくまでもそれは彼らの技能をしっかり把握していればだ。

 頭の中に《カード》に記載された内容が浮かんできたりはしない。

 だからこれはないと困るアイテムなのだ……どうしたものか、と悩んでいると、アトが尋ねる。


「あの……何かお悩みのようですが?」


 それになんと答えたものか迷ったが、別に《カード》を捨てるべきかどうするか悩んでいる、くらいなら言ってもいいだろう。

 言ってまずいのは、能力を借りられるとかそちらの方なのだ。

 だから俺は言った。


「あぁ、《カード》を持っていると俺の場所が把握されてしまうんだろ? だから捨てた方がいいのかと悩んでて……」


 しかし、アトはこれに意外なことを言う。


「それでしたら、お気になされずとも大丈夫ですよ。それが出来るのは、教会において私だけです。いえ、他の聖女たちも一応出来はするのですが、私ほど正確にはわかりません。さらに言うなら、私の技能《情報閲覧》を使用すれば、その妨害も可能です」


「えっ、本当か?」


「ええ。やってみますか?」


「頼んでもいいか? でもどうやって」


「では、お手を……」


 そう言って手のひらを向けられたので、俺はその上に自分の手を置く。

 お手をするような格好で、俺が飼われているみたいだが、実際にはアトこそが俺に従属しているのだ。

 それからアトは目をつぶり、念じるように集中した。

 すると俺の体を何かが通り抜けたような感覚がし、そして、


「……これで大丈夫です。他の二人の聖女たちは、ノア様の位置をもはや把握することはできません」


「たったこれだけで?」


「ええ」


「それはありがたい……でも、俺を捕まえたり殺したりするのを、教会がこれで諦めてくれるかな?」


「それは……多分、無理かと」


「だよなぁ……? あっ、そうだ」


 そこで俺は思いつく。

 

「どうされましたか?」


「アトに、頼みたいことがあるんだ」


「なんなりと」


「教会に戻って、俺の死亡を伝えてくれないかな? そうすれば流石に諦めるはずだ」


 そう、アトは俺に仕えると言っているが、教会からすれば別に今もまだ、彼女は聖女だ。

 そんな彼女が、ノアは死んだ、自分が殺したと報告してくれば、そのまま受け入れるに違いない。

 加えて、俺は彼女が今もまだ、若干怖かった。

 彼女の俺に対する敬意というか、従うという心、態度についてはおそらく本当のように感じられるが、しかし彼女の実力を見るに、今の俺に御すことが出来るとはとてもではないが思えなかった。

 そんな人物を近くに置いておくのは、常にギロチンの近くで生活するに等しい。

 できればこの場を去ってもらいたい、と思っていた。

 でも、何かしっかりとした理由がなければ居付きそうな気配も感じていた。

 そこにいいことを思いついたわけだ。

 これは結構良い思いつきだったんじゃないか?

 自画自賛したいくらいだ。

 俺の提案にアトはなるほど、と頷きながら、


「……確かにそのように報告すれば、ノア様に対してはもはや追手が派遣されることはないでしょう。しかし、ノア様の側を離れるのは……」


 やはり嫌がった。

 けれどここは攻め時だと俺は強く言う。


「いや、これは俺の生存にとってすごく大事な任務だ。俺に仕えると言うのなら、まずその任務を達成してほしい。追手がもう来ない、と確信できたその時には、俺もアトのことを信じられると思うし。頼むよ」


 信じられる、と言う部分が聞いたのか、若干嬉しそうな表情を浮かべて、奮起したようにアトは言う。


「……そう言うことであれば、仕方ありません。行ってまいります。ですが……」


「なんだ? 他の人間に任せるとかはなしだぞ」


「そうではなく、この《煉獄の森》でのノア様の生活が心配ですので……少しだけ、その状況を確認させてはいただけませんか?」


 これは尤もな話ではある。

 《煉獄の森》は魔境であり、恐ろしい危険地帯だ。

 そんなところで、自分が戻って来るまで生きていられるのか。

 そう言う話だろう。

 今日までなんとか暮らして来れたのだから、俺としては生きていける、と思ってはいる。

 キャスたちもいるし……。

 彼らに会わせれば、アトも納得してここを去るかな……。

 そう思った俺は、彼女に言う。


「分かった。仲間たちに会わせるよ。ただ、約束してくれ、絶対に危害は加えないと」


 アトが危険なのは今も変わらない。

 だからこその言葉だ。

 本当はキャスたちにも会わせたくないのだが……後々戻ってきたらどちらにしても会うことになる。

 その時に、俺の知らない間に戦闘になってしまっても困る。

 だから、ここで会わせておくのが安全のはずだ……。

 俺の言葉にアトは頷いて、


「ノア様のお仲間に危害を加えるなど、滅相もないことですわ。どうぞ、よろしくお願いします」


 そう言ったのだった。

読んでいただきありがとうございます!

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