孤児院の地下の魔物については、
まぁ、そもそもが俺に依頼された仕事ではないし、別に何もしなくても大した問題はなかったのかもしれないが。
ちなみにあの
ただ、こちらは本当に大した存在ではなく、アリゼに試しに戦わせてみたら、倒せてしまったくらいのものだ。
もちろん、全部でなく一匹だけだが、それでもいずれ冒険者に、という夢を持っている彼女からすると初めて魔物を倒せたということは嬉しいらしかった。
ついでに魔石もとれるし、ちょっとした小遣いにもなる。
さらに、俺が眷属とした
ちょろちょろと地下室を逃げ回る他の
それから近づこうが触ろうが直立不動である。
まるで上司に怒られる部下のようで、もしかして、と思い、
「……したがえてる、のか?」
と尋ねれば、肯定の意思を伝えてきた。
どうやら、眷属の
魔物と言うのは多かれ少なかれ、上位個体が下位個体を統率する能力を持っているものだ。
ゴブリンの上位個体、ゴブリン
まぁ、自らの血を注がなければならない、というデメリットもあるが、
そう言う意味では、この
もともと地下室に住んでいたわけだから、こいつが親分的存在だった可能性もあるし、単純に下位個体はすべて統率できるのかもしれないし。
その辺りはあとで要研究ということになるだろうか。
家主がひどく喜ぶだろうな、という気がした。
そのためには、この
しかし、今、この
そう思って、俺は尋ねる。
「……おまえに、このちかしつをまもってもらうつもりだったが、こっちのやつらにそれをまかせることは、できるか?」
すると、眷属の
喋れなくとも、なんとなく言いたいことが分かるのは、眷属化の力だろう。
魔物ってかなり便利に出来てるんだな、と思いつつ、たった今、
彼女は、
「私としては全然かまわないけど……ここを魔物から守ってくれるってことは、他の子供が降りてきても大丈夫ってこと? たまに小さい子がここに潜り込もうとして心配なのよね……」
と尋ねてきたので、その旨についても俺が
そして眷属の
「……もんだいないってさ」
「そうみたいね……」
それにしても、どうも、この
やっぱり、もともと親分子分の関係だったんじゃないかな……。
そんなことを想いつつ、まぁ、こういうことなら問題ないだろうということで、俺はとりあえず今日のところは孤児院を後にすることにしたのだった。
◇◆◇◆◇
「……おかえ、っ……!?」
帰宅して扉を開き、そして中に入ると、ソファに寝転がって本を読んでいるロレーヌの姿が目に入った。
彼女も扉の開く音で俺が戻って来たことに気づいたようで、ゆっくりとこちらに目を向け、出迎えの挨拶をしようとしたようだが、その前に何かが目に入ってしまったらしく、息を呑む。
それから、少し深呼吸をして、改めて彼女は俺に尋ねてきた。
「……その肩に乗ってる小太りの黒い鼠はなんだ、と聞いてもいいか? 幻覚ではなさそうなんでな」
どうやら幻覚を見るようなことを先ほどまでしていたらしい。
改めて少し匂いを嗅いでみると、何か部屋にヤバそうな薬品の香りが満ちていた。
換気くらいしろ、と思って窓を黙って開け、それからロレーヌの正面の位置に戻って、言った。
「こじいんのちかで、なかまになった。きょうからせわになる……」
「……端折りすぎだ、と言っても許されると思うんだが、どう思う?」
「そうだな……」
確かにその通りだ。
俺は仕方なく、孤児院であったことを色々と説明した。
すべてを聞いたロレーヌは、
「……まぁ、そんな依頼を受けたのはお前らしいが、しかし《タラスクの沼》か。私でも厳しいぞ、あそこは。大丈夫なのか?」
「いろいろと、たいさくはかんがえてある。もんだいない」
「お前がそう言うなら、問題ないんだろうが……心配だな。ま、今更言うことでもないか。しかし、それにしても……眷属化か。そんなことも出来たんだな。色々と実験はしたが、確かにお前の血を他の生き物に呑ませるようなことはまだ、していなかったし」
まだ、というのに若干引っかからなくもないが、いくら俺が
いきなり眷属化が出来るかどうか実験してみよう、とはならなかったのだろう。
ロレーヌもまず、基本的には俺の健康と言うか、存在をちゃんと維持し続けられるのかどうかを主眼に置いて色々と試していたようだし、枝葉末節の能力については後回しにしていたらしい。
「……かってもいいか?」
「好きにしろ。それこそ今更な話だ。この家は不死者が住んでいるのだぞ。鼠の一匹や二匹増えたところで問題あるまい。家賃はもらうがな」
「やちん?」
「その鼠の血と毛をサンプルにくれ。いろいろと試したいことがある。もちろん、十分に健康を保てる量で構わない……それと、ふと思ったのだが餌は何になるんだ?」
そう言いながら、ロレーヌの手が俺の肩に乗っかっている
すると、
「あだっ」
軽く噛み付いた。
そして、血がにじんだロレーヌの指をぺろぺろと舐める。
「……なるほど、親と同じか? 全く……」
呆れたような顔をしたロレーヌだが、
「まぁ、分かりやすくていいかもな。それにしても私の血は大人気だ……」
冗談なのか本気なのかそんなことを言う。
ただ、機嫌は良さそうなので、まぁ、いいだろう。
それが、これから行うことの出来る実験に対する高揚なのかもしれないとしても、それを味わうのは俺ではなく
そう考えると、
以前、俺も同じようなことをされているんだから耐えろ、と意思を返すと、
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