どんな策も、この距離の射撃の前では無意味……そう思っていた。
「は…………?」
北朝鮮部隊の放った弾丸は、テオドールが周囲に纏った透明な”次元断裂面“によって逸らされた。
軌道を変えられた5.45ミリ弾が、周囲に四散する。
ガラスが割れ、逸れた弾が地面に跳弾する。
見れば––––膨大な魔力を放出し、銀髪を輝かせたテオドールが怒気を露わにしていた。
「わたしを政争の道具にしないでください、こっちは––––」
右手に剣を具現化し、眼前の敵へ向ける。
「もう、この国で透と一緒に生きると決めたんですッ」
「ッ……!! 殺せッ!!」
マガジン内に残った弾丸を、30名の部隊で一斉に浴びせる。
しかし、テオドールは人間離れした速度で上空へ逃れていた。
あまりに速すぎた動き。
とてもではないが、照準などできなかった。
着地した彼女を狙おうとするが、そもそも弾丸がテオドールに届くことは無い。
これはラビリンス・タワーで見せた、対高初速弾防御魔法だが、明らかに進化している。
それには、もちろんだが理由があった。
「この国には良い人がたくさんいるんです! わたしを殺すため、連れ去るため––––そんな人達の犠牲を鑑みない奴らは!」
至近距離で乱射していた兵士数名を、残像の残るほどの速度で斬り伏せたテオドールが叫ぶ。
「わたしのマスター、透のためにも絶対に許しません!!」
彼女はこれまで、非常に劣悪な生活環境で過ごして来た。
ゆえに、健康状態はハッキリ言ってかなり悪かった。
特に栄養失調から来る魔力の劣化は、本人でも自覚できないほどに深刻。
それが、日本の美味しい食事をたっぷり食べたことで一気に改善した。
魔力の質も量も以前より段違いに進化し、ようやく彼女は執行者本来の姿を取り戻したと言える。
「このガキ!!」
「待て! ちゃんと照準しろ!! 味方に当たるぞ!!」
銃弾を全く受け付けない上、信じられない動きで攻撃してくるテオドールに、北朝鮮部隊はパニックとなった。
ようやくサイトに納め、当てたと思えば銃弾は空間の捩れによって逸れる。
その後は絶望する暇も与えられず、まるでアニメのような動きで倒されてしまう。
たかがガキ1人と思ったのが大間違いだった。
日本のおもてなしにより、テオドールはまさしくファンタジーに相応しい一騎当千の力を得ていた。
「今のわたしを倒せるのは、世界で唯一……透たちだけです!」
激しい銃撃の雨を駆け抜けたテオドールが、着実に敵を殺していく。
李中尉はマガジンを投げ捨て、大急ぎで距離を取った。
「ちゅ、中尉……! 待って!!」
残党を一挙に殲滅。
たった1分で29人を倒したテオドールだが、ここに来て敵も反撃を行う。
バックアップとして待機していた北朝鮮兵士たちが、逃げて来た李中尉と合流したのだ。
「中尉、相手は子供ですよ……!? この武器はさすがにオーバーキルじゃ……」
「構わん! ぶっ放せ!!」
都庁の中からゾロゾロと出てきたのは、対戦車ロケット––––『RPG-7V2』を持った兵士8名。
本来戦車に用いるこれを、一斉にテオドール1人へ向けた。
「やれッ!!」
––––ボボボンッ––––!!!
発射されたRPGは、ロケット部分に点火してすぐにテオドールへ着弾した。
だが––––
「ッ………………!」
死んだ兵士たちの中央に立つテオドールに、当たる寸前で弾頭は停止した。
膨大なエネルギーを生むロケット噴射がやがて終わり、音を立てて彼女の足元に落ちる。
「無駄です、わたしに高初速兵器は通じません。透たちならとっくに近接戦で対応していましたよ……」
剣を消去したテオドールが、キッと凛々しい顔で睨みつけた。
「我が新しいマスターの命令に従い、わたしは––––あなた達を全力で消し去ります」
呆然と立ち尽くす北朝鮮部隊の前で、テオドールは右手に極大の魔力を収束させていく。
しなやかな髪がより銀色に光り、全身を美しい輝きが覆った。
「初めて撃つこの技は、透の好きな架空? 兵器の名前にしましょう」
空間を突き破るように、全力で右手を前へ押し出しながら––––テオドールは日本食で進化した己の究極奥義を叩きつける。
「『
撃ち出された極太の青いビームは、李中尉たちを瞬時にこの世から消し去った。
それだけに留まらず、発射された技は巨大な東京都庁の根本を完全に蒸発させた。
新宿のビル群をいくつも貫通し、最後は結界の端にぶち当たることでようやく止まる。
執行者テオドールの前には、溶解した巨大な道が出来上がった。
光っていた銀髪が元に戻り、魔力切れで倒れかけた彼女を––––透がソッと優しく支える。
抱かれた状態で、テオドールはとびっきりのしたり顔を見せた。
「やって……ッ、やりましたっ」
マスターに頭を撫でられながら、満足そうに彼女は意識を失った。
結界の効力が解かれ、透たちを含めたまだ生きている者達だけが元の世界へ戻る。
現実世界では、壊れた物など1つも無い。
この際、分離した結界は並行世界として残された無機物や非生物と共に完全消滅。
一般人が誰も知らない内に、新宿での決戦が終わった。
透が見ているのはセル画時代のではなく、リメイクヤ●トシリーズです。
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