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第88話・実は殆ど勝ったことが無い

 

 再び始まった猛烈な弾幕に、死んだフリをしていた第1特務小隊はサッと引っ込む。

 この際、透の指示で坂本がある銃を鹵獲していた。


「『VSSヴィントレス』……、連中こんな良い物まで持って来てたんですね」


 それはロシア製の一風変わった銃。

 弾丸の通り道であるバレルを全て消音器(サプレッサー)にして、挙句は使用弾薬まで徹底して消音特化仕様。


 9ミリ亜音速ライフル弾を使う、いわば“消音狙撃銃”とも言うべき武器。

 透の狙いは、まさにこれだった。


「思った通りだ、PKP機関銃が俺たちを派手に制圧して、ヴィントレスを持って近づく部隊が横から暗殺。いかにもロシアっぽい手口だ」


「とりあえずマガジンも4つ奪いました、20発入り弾倉です。スコープはPSO1-1ですかね……? 良い銃ですよこれ」


「その良い銃をお前に託す、坂本。そろそろうるさい機関銃を黙らせるぞ」


「了解」


 仲間の仇と言わんばかりに撃ちまくってくる機関銃に、透がゲリラ撃ちで制圧射撃を行った。


 銃口だけを出しての射撃が可能なのは、既に透の脳内3Dマップで敵の位置をおおむね把握できているからだ。


 ここまで戦場分析が進めば、もう彼は照準しなくても弾を当てられる。

 壁越しでも敵が見えるレベルだ。


 しかも察知範囲は、戦闘中“無制限”にドンドン広がっていく。


 消耗する精神力は興奮によるアドレナリンで紛らわされ、こちらも戦闘が終わるまで無制限使用が可能。


 彼はこの圧倒的とも言える索敵、回避性能で富士教導団とも渡り合ったのだ。


 ––––ババババババババッ––––!!!!


 凄まじい連射速度で放たれた弾丸は、あのPKPをも一瞬怯ませた。

 そのたった2秒という猶予は、レストランからVSSを構えた坂本にとって十分。


 ––––パシュッ––––


 音速より遅い速度で放たれた弾丸は、超高精度でPKP射手の脳天を貫いた。

 銃としてはあまりに規格外の消音性能なので、残りの機銃手は位置を特定できない。


「こんなヤツらに使われる銃が可哀想だよ、お前ら––––使い方をちゃんと地獄で学んでから来い」


 普段64式という骨董品を使う坂本は、同じく骨董品のヴィントレスを完璧に使いこなしていた。


 銃への愛、敬意を彼は常に重んじる。

 たとえ武器が古くても、性能が低いわけではない。


 生産国のロシア人よりも、坂本は遥かにヴィントレスを使いこなしてしまっていた。


「こいつら何者だ! 日本人がここまで強いとは聞いていないぞ、極東一の陸軍は中国なんじゃ––––」


 透、坂本、久里浜による攻撃はここまで来ると一方的なものだった。

 リーダーの透が、ダンジョンで進化した『無限探知能力(ウォールハック)』により敵の位置を常時共有。


 機関銃を失ったロシア人部隊を、次々に葬って行った。

 半数以上が撃ち減らされた段階で、ようやく認識させられる。


「こいつら……、まるで1世紀前の帝国軍以上だ! あっ、あの時もロシアは日本に負けて––––」


「くだらん歴史の話はよせ! 戦闘中だぞ、俺たちは第二次世界大戦でちゃんとリベンジしたじゃないか」


 そう言い切った先輩が、坂本のヴィントレスによる狙撃で即死した。


 彼らは知らない。

 ソ連時代の勝利は降伏後の侵攻であり、しかも戦術的には失敗していたことも。


 オホーツク海をソ連の内海にしようとした当時、彼らは北海道にまで侵攻しようとした。

 だが、まだ武装解除していなかった日本陸軍防衛隊によって撃退されている。


 言ってしまえば、降伏した後の侵攻でも負けていた。


 日露戦争からここまで、ロシアは日本との戦闘で勝ったことなど殆ど無いのだ。

 そんな慢心し切った状態で、ダンジョンの攻略組である、現代の自衛隊精鋭部隊に喧嘩を売ったらどうなるか。


 答えは、最初から決まっていた。


「退却だ!! 一時撤退! もう異世界人なんてどうでも良い! “アレ”を取りに戻るぞ!!」


 見下していた極東の黄色人種に、容赦ない殺戮を展開されたロシア人部隊は敗走した。

 撃った弾丸は数千発に上るが、ただの1発も自衛隊には当てられていない。


 追い詰められた彼らは、モスクワの指示を思い出して“最後の手段”に出る。


88話を読んでくださりありがとうございます!

次回はちょっとダンジョン内部の状況を書きます。


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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