「また知らないガキが来たな……、しかも初対面でいきなりブチ切れてるし」
64式を構えた坂本が、気怠そうに呟く。
一方でいきなり現れた少女は、本当に憤慨しているようだった。
話を聞く限り、どうも自衛隊が素直に下層を彷徨うと思っていたらしい。
そんな彼女に、透は躊躇なくライフルを向けた。
「初めましてだなテオドール、お前は姉よりかは少しマトモだろうけど。“航空輸送”って概念は知らなかったらしい」
彼女とリアルに会うのは初めてだが、透はテオドールのことを知っていた。
ベルセリオンによる駐屯地襲撃があった夜、事の詳細を錠前1佐から聞いていたのだ。
そして––––“無茶振りな頼み事”も。
「こっちも予想外でした……、まさか人を運べる空飛ぶ馬がいたなんて……。おかげでこのエリアの財宝は完全に放たれてしまった」
「1つ聞きたいんだけどさ、俺らの航空戦力見ただろ? なんで空から来るって予想できなかったの?」
「聞きたいのはこっちです。ここに至る階段が無いのは“秘密”のはず、だからわたしは下層へトラップを設置したのに……一体どんな盗聴魔法を!?」
「あー……」
ドットサイトを向けながら、透は数日前のことを丁寧に教えてあげた。
「下層の死神を倒した時、現れたお前の姉ちゃんが全力で口滑らしてたぞ……。“ここに来る階段は無い”って、だからヘリで来たんだよ」
数秒の沈黙の後、テオドールは足元の床を怒りのまま踏みつけた。
硬い石が砕け、大きくヒビ割れる。
「あのバカ姉……!! 攻略不可能とだけ言えば良いのに、なんで階段が無いのまでバラしちゃうんですか!!」
「今からでも遅くないぞー、もう降伏して良いから。クリアされたエリアを守る理由だってもう無いはずだろ? 今投降したらお菓子あげるぜ」
透の誘いに、テオドールは笑みを見せるでもなく目を細めた。
「だからこそですよ、こうなった以上––––貴方達をここから生かして帰せません。せめてその命を、ダンジョンの財宝として新たに補充します!」
「そうか」
叫んだテオドールへ、自衛隊はライフルを一斉に発射した。
高性能な光学機器と、練度の高い隊員。
何よりこの距離だ……、決して外すわけもないのだが。
––––ガキキキィンッ––––!!!
テオドールの周囲に浮かんでいた魔法陣が、彼女を銃弾から守った。
驚くことに、5.56ミリ弾を完全に弾いている。
「わたしは、わたしの持てる全ての神秘をぶつけます! ここで
さらに彼女は、足元から数十体の武装したゴブリンを召喚した。
いずれもエメラルドグリーンの防具を着ており、銃弾数発では致命打にならない。
効きはするが、テオドールの召喚スピードがこちらの倒す速度を上回っている。
「参ったな……。あの子捨て身だぞ」
「しかも遠距離攻撃は不可、隊長……結構ヤバめですよこれ。追い詰められたガキほど怖いものはありません」
銃声が響く中で、透は思考を巡らす。
湧き続けるモンスターに、銃弾を無効化するテオドールの魔法防御。
消耗戦を強要されれば、困るのはこっちだ。
なにせ逃げ場が無いのだ、銃弾が尽きたら一気に不利となる。
「……坂本。お前は断固としてカメラマンの四条を守れ、この場で一番火力があるのはお前の64式だからな」
「良いですけど、何か妙案でも思いつきました?」
「まぁな、––––久里浜!」
マガジンを抜いていた彼女が、「えっ」と新海の方を向く。
「お前の近接戦能力を借りたい、やれるな? “特戦の狂犬”」
新海の問いに、プラスチックマガジンを銃に叩き込んだ久里浜が答える。
「当然じゃない! こんなイレギュラーもう慣れたわ。命令をちょうだい––––新海隊長!」
作戦は決まった。
遠距離がダメなら、取れる手段は一択––––
「四条! 坂本!! 俺と久里浜に寄るゴブリン共を全て撃てッ! 命令だ––––1発も外すな」
2人は、銃に弾を込めることで答えた。
「もちろんです、こんな距離で外せば四条家の名折れ。必ず全弾当てて見せます」
「隊長の命令なら何でも聞きますよ。おい久里浜、隊長の足引っ張んじゃねぇぞ」
「アンタの誤射の方が怖いから! その高そうなスコープでしっかり敵に当ててよね!」
ゴブリン群と交戦する他の自衛隊員たちが、合図で一斉に腰の手榴弾を投げた。
爆発の壁が出来上がったと同時、透と久里浜が思い切り床を蹴る。
作戦は単純明快––––攻撃が届く距離まで、全速で突っ切るのみ。
神秘も魔法も知ったことではない、国を守るために鍛え上げた技術で……理不尽を圧倒する!!
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