第70話 騒動
遅れました!すみません!
何せ年末年始はバイトバイト&バイトで忙しく……今日息切れしながら半分以上書き進めた感じです。
なので乱文かつ若干短めかもしれませんが、よければどうぞ。
樋口 瑛士、転生者。
俺より前に転生して来て、ベルム街で新聞記者をやっている日本人で、"軍事マニア"だ。
少し前から新聞社でガーディアンの特集を始め、頻繁に取材に来ている。
いや……取材に来ているだけならまだ良いのだ。
この取材が、ガーディアンの通常業務に支障が出る程になっている。
俺が訓練をする時とかなら、許可を出していればまだ良い。
この間の様に無許可で平気で訓練について来たり、武器弾薬保管・備蓄区画に無断で入り込んだり、航空機格納庫で整備中の整備士にインタビューして作業を遅滞させたり、挙げ句の果てには俺が基地内に居るとインタビューと称して飯の時でも付いてくる始末だ。
お陰でエリスと飯を食う機会も減ってしまったというのは個人的死活問題である。
とまぁ、それは置いておいて、それを差し引いても奴の行動は目に余る。だからこうして執務室で頭を抱えている訳だが……
「何を頭を抱えているんだ?」
執務室のソファに我が物顔で踏ん反り返る瑛士。
誰のせいだと思ってんだ、お前だよお前。
「何でお前はここに居るんだ……」
頭を抱えながらため息を吐くと、瑛士はソファに踏ん反り返ったまま答える。
「当然だろ?ガーディアンの"軍事オブザーバー"として、これ位の待遇を受けて当然だ。もっと厚遇されても良いと思うが?」
コイツを軍事オブザーバーに任命した覚えは全くこれっぽっちも無いし、それを裏付ける書類も無い。
コイツが勝手に名乗っているだけだ。
コイツは時間を追う毎に馴れ馴れしく、図々しくなっていった。
最初は記事を書く為のワープロや印刷機を手伝いとして譲っていたのだが、次第にそれがエスカレートしていき、録音機やビデオカメラ、今持っている一眼レフカメラも俺が与えたものだ。
そして遂には銃を要求する様になった。
流石に銃は与えられない、と言ったところ「では魔物の生息地の写真を撮りに行くから護衛として隊員を貸せ」と言ってきた。
組合を通して要請してくれと言ったら「金がかかるから嫌だ」と。
新聞社の経費で落とせと言ったら「個人的な撮影だから経費で落ちない」というワガママぶりだ。
その上で断った、金の発生しない仕事なんて命かけられるか。
一応組合を通して別の傭兵に依頼をしたそうだが、翌日発行の新聞に「ガーディアン、依頼を断る!」ってデッカい見出しを付けて載せやがった。
断ってもそれを餌に、何度も何度も取材と称して基地に押し掛け、帰れと言っても聞きはしない。
「じゃあ質問するぞ?何でHK416じゃ無くてM4使ってるんだ?HK416の方がM4より命中精度も信頼性も高い、ガスピストンキットを組み込むなら最初からHK416の方が良いんじゃ無いか?」
俺のそんな考えを無視して瑛士はガツガツ質問してくる、いちいち答えるのが怠くなってきた。
「何回も言ってるだろ……M4の方が射程距離が長いし、HK416より計量だ。それに俺はHK416を弄った事が無いから不安がある」
「射程距離が長いって言ったって40mかそこらの誤差レベルだろ?それにガスピストンキットを組み込めば重量は同じになる筈だし、余計な組み込みで信頼性は低下する筈だ、それをしてもM4を採用した理由を聞かせて貰おうか?」
あぁ……うるせぇ……
「お前さ、本来の仕事ほっぽり出して此処に来てて良いのか?」
「好きこそ物の上手なれってな、俺より情報収集と文を書くのが上手い社員がいるからそちらに任せている。得意な事をやれば良いのは諸兵科連合と同じ考えだぞ?それより、俺の質問に答えて貰おうか?」
この政治家じみたねっとりした喋り方も良い加減ウザくなって来た……
「とにかくさ、困るんだけど、俺達の行動がお前のせいで阻害されてるんだよね」
「阻害?何言ってるんだ?俺が新聞社で広報活動してる事で、街の住人に理解を求め、ガーディアンがより円滑に活動出来る様に支援してるんだぞ?」
……何言ってんだコイツ。
そもそもそんな事は頼んで無いし、それが例え友好的な物であっても、勝手に記事を書かれては困る。
俺達の知らないところであらぬ噂が立ったり、それによって住人に混乱が生じたりしそうだからだ。
実際、既に幾つかそういった報告が挙げられている。
「迷惑なんだよ、お前のそういうの。しつこいし、面倒臭いし、仕事の邪魔だ」
「ほう……お前はそれで良いんだな?俺は新聞社勤務だぞ?ガーディアンの評価は俺に掛かってると言っても過言では無いんだぞ?今の発言を取り消すなら、考えてやってm」
「もう良いから帰れよ!」
俺は机をバンと両手で叩き、怒鳴りながら立ち上がる。
コイツの話し方と物言いに腹が立った、何なんだコイツは、俺のガーディアンを我が物顔で……!
「軍事オブザーバーに向かって何だその言い方は?本当ならお前より俺の方がリーダーに相応しい器なんだ、このポストに収まってることに感謝してほs」
「うるせえよ!テメェウチで何勝手な事ほざいてやがる!ふざけんなよ!ガーディアンは俺の組織だ!お前の好き勝手させるか!今すぐ!この部屋から!俺の基地から!出て行け!」
机をバンバンと叩き、腹から声を出して執務室のドアを指差す。
それを受けた瑛士は俺を睨みつけ、吐き捨てる様に言う。
「後悔するぞ?」
「良いから出て行け!」
もう一度俺がそう怒鳴りつけると、瑛士は早足で執務室のドアを開けて出て行く。
俺は暫くその状態で固まっていたが、言いたい事を言えてスッキリしたのか、ドサッと椅子に落ちる様に座り、体重を預けるとギシと椅子が鳴った。
こういう言い争いは慣れてない、まだ膝がガクガクしてるし、手も震え気味だ、息も荒くなってる。
入れ違いのタイミングで執務室のドアがノックされる。
許可を出すと、見慣れた髪色の少女がドアを開けた。
「おお、我が愛しのエリス」
「何だそれ……」
「一回やってみたかった、すまん」
「大丈夫だ……それより、ヒロトは大丈夫か?物凄い怒鳴り声が聞こえたが……」
「あぁ、"アイツ"だよ」
「あぁ……"アイツ"か……」
エリスも軽く溜息を吐く。
これまでも度々問題を起こしてはガーディアンを困らせて来た"アイツ"は、ガーディアン内部でも悪い意味で有名になっている。
俺が怒鳴りつけてしまった事で、恐らく明日の新聞には不名誉な見出しが乗る事だろう。
その辺り、隊員には申し訳なく思うし、まだまだ組織のトップとして未熟だなと実感させられる。後悔しても後の祭りだ。
ある意味で、瑛士の言ってる事は正しいのかもしれない。
けど、ガーディアンをあんな奴に渡すつもりは更々ない。
「……次来たらアイツは出禁だ」
「分かった、新聞社の方にも書簡で送っておこう」
「助かる、守衛担当にも周知して置くか」
その日の仕事は邪魔が入らず集中出来たので、いつもよりも早く終わった。
===========================
翌日、執務室で広げた新聞にはこんな見出しの記事が載っていた。
【ガーディアン代表、記者に暴言!】
【組織の長とは到底思えぬその器、ヒロト・タカオカの素顔!】
流し読みすれば、案の定俺に対する人格否定やら無能のレッテルを貼ったりする誹謗中傷の嵐だった。
やっぱりな……とため息を吐いたその時。
慌ただしい足音と共に急かす様に執務室のドアがノックされる。
ドアを蹴破って来ない辺り、ガーディアンには真面目な奴が多いのが嬉しいが……
「どーぞー」
「失礼します!」
先ず踏み込んで来たのはブラックバーン、その後でクレイが付いてくる様に入室して来た。
「失礼します!」
続いて開けられたドアから入って来たのはエーリカ・グース、第3分隊の
「失礼します!」
「失礼します!」
更にその後にアレックス・オーディンとジャック・ロビンソンが入って来た。彼らは第4分隊の
その後ろからはAH-64Dのパイロットであるモーガン・ディーレイとサニード・ディスク……とにかくいろんな隊の隊員達が執務室に押しかけて来た。
「どういう事ですかこれは⁉︎」
「何でこんな事が書かれるんですか⁉︎」
「いや、その……すまん。ついカッとなったんで……」
俺も自分の非である事は分かっていたので、素直に隊員達に謝罪するが、どうやらそうでは無いらしい。
「ヒロトさんがこんな事言う訳無いじゃないですか!ここ記事はでっち上げだ!」
「言ったとしても何が悪い?奴はそれ以上にガーディアンに迷惑を掛けていたじゃないか!」
「俺は奴の行動を見ていて思ったが、奴はこのくらい言われて当然だろ!」
隊員達が口にするのは、どれも俺を責める言葉では無く、俺を擁護、もしくは記事に対して反論する言葉だった。
俺はそれを聞いて胸が熱くなったが……
「ヒロトさん!この新聞社を襲撃しましょう!」
「何ならこのエイジとか言う記者を拘束しましょう!」
その言葉を聞いてハッとする。
「いやいや、待て待て!」
自分達の組織に有る事無い事書かれた新聞に余程腹が立ったのか、隊員達の過激な言葉が飛ぶ。
あろう事か後ろの方の隊員は自ら作戦を立て始めた。
それを苦い顔で見ていたのは俺だけでは無い。
俺が召喚したモーガンとサニードも同じ様に苦い表情を浮かべていた。
「……落ち着けお前らッ!」
昨日に引き続き、腹から声を出す。
こんなに連続で声を張り上げたのも訓練の時以来かもしれない。
「いいか⁉︎確かにこの新聞ではガーディアンの事をボロクソにこき下ろされた!だがそれは俺が組織の上に立つトップとして未熟だからでもある!そして、その事に関しては俺も物凄く腹が立った!だがな!お前達は新聞社を襲撃して満足か⁉︎拷問して殺してスッキリか⁉︎それじゃギャングやテロリストと同じだろうが!」
水を打ったように静まり返る執務室。
全員が俺の言葉に聞き入っていた。
「確かに初めに言った。"全て正しくとはいかない、俺達は俺達の正義に則って行動する"と。だが、今回の件を受けて新聞社を襲撃するのは果たして俺達にとって"正義"か?記者を拘束するのはお前達にとって"正義"か?そこをよく考えれば分かるはずだ」
執務室はしばらく沈黙に包まれたが、ブラックバーンがまず口を開いた。
「……スミマセン、考えが足りませんでした……」
それを皮切りに、隊員達が自分達の言動を恥じるように声を漏らす。
「分かればいい、俺もお前達に無用な殺しはして欲しく無い」
だが、このままではやられっぱなしだ、やられっぱなしは流石に後味が悪い。
だから、ちょっとやってやる事にした。
===========================
更に1週間後。
「今頃驚いてるぞ、アイツ」
心なしか、エリスが嬉しそうに報告して来た。
アイツ、と言うのは、件の瑛士の事だ。
何をしたかと言うと、所謂"差し押さえ"である。
奴はギルド組合に少額だが借金をしていた。
伯爵に少し話をして、奴の借金をチャラにする代わりに物品を差し押さえて貰った。
物品は、俺が奴に与えたコンピュータやプリンター関係である。
借金が消える形になってしまったが、俺が奴に与えた物を差し押さえられたのだ。
そして無駄に頭の切れる奴の事だ、差し押さえが俺たちの差し金だと言うのもすぐに悟るだろう。
だが、プリンターが無ければパソコンで打った文章を印刷する事も出来ない。
取り敢えず、第1段階は終了だ。
===========================
樋口への制裁第2段階へ移行……と思ったがその手間が省けたと知るのは更に2日後だった。
目標は奴に与えたカメラとノートパソコンだったが、聞いた話によれば、奴が差し押さえの現場を見た途端、ヒステリックを起こしてカメラを投げつけたらしい。
それの着弾点が運悪く自分のノートパソコンの上、奴は一気に自分の得物2つを失ってしまったのだ。
そして奴がゴミとしてノートパソコンとカメラを麻袋に乱雑に突っ込み廃棄処分したのも確認した。
その残骸が今手元に有る。
第2段階として奴のカメラとノートパソコンを狙撃で破壊するつもりだったが、その手間が省けて良かった。
久しぶりにエリスと食べる昼飯。
今日の昼はスパイスチキンだ。
「お疲れ、ヒロト」
向かいに座るエリスがにこやかに俺に微笑みかける。
「あぁ、ありがとう。エリスもごめんな、俺が厄介を引き込んで……」
「ふふ、良いんだよ。ヒロトの事もわかってる」
そう言って俺とエリスは昼飯を食べ始めた。
スパイスの聞いたチキンの旨味が口一杯に広がる、今日の給食当番はトミーだったか、あいつもなかなか料理が上手い。
「ふふ、はいヒロト、あーん♪」
エリスが一切れチキンを突き刺したフォークをこちらに差し出す。
人が居る所で若干気恥ずかしいが、エリスにあーんされたい欲が勝った。
「あ、あーん」
エリスに差し出されたチキンを食べる。
少しスパイスの効きが和らいでいる気がした。
===========================
ナツ視点
「ふぁぁ……」
おっと、いかんいかん。
今日の門の守衛担当は俺だ、俺は情報部所属、そして指揮を担当するので、こうして直接銃を手に取る事は少ない。
だが、戦闘訓練を受けていない訳でも、怠っている訳でも無い。
LBT-6094Aプレートキャリアに弾薬と防弾プレートを詰め、正式採用のM4A1カービンを持っている。
俺はカスタムとか詳しい事は分からないので、勧められた中で気に入った装備を取り付けている。
EXPS-3ホロサイトとブースター、それとグリップポッド……だったか?グリップの中にバイポッドが入ってて、スイッチ1つで展開する奴。
そのカスタムがされたM4と、ホルスターに入っているP226という拳銃。
そして弾倉に詰まっている弾薬は実弾である。
これが前世なら軍人か、そうで無ければ完全に犯罪者なのだが、此処は異世界、武器無しでは容易に魔物に喰われてしまう様な危険な場所でもあるのだ。
そして、大翔から指先だけで人を殺せる銃の扱いをみっちり仕込まれた。
プレッシャーが銃の重みを増すかの様に両手にずっしりとかかる。
「ナツさん、この後飯行きませんか?」
一緒に守衛担当で守衛所に居るリハルトにそう誘われる。
腕時計を見ると、そろそろ14:00、交代の時間だ。
このまま何も無ければ次の担当と交代、この後は確か孝道と健吾の指揮官コンビだったか……
孝道は全体の戦闘指揮、健吾は小隊長、共に指揮能力と個人の戦闘能力は高い。
「……そうだな、終わったら飯行こう。……うん?」
俺は何かを見つけた、こちらに向かって走ってくる人影だ。
「……誰か来る」
「……⁉︎」
そう言って俺達は銃を向ける。
ブースターを起こして倍率を上げると、人影がはっきりと見える。
青い髪を肩くらいまで伸ばした少女だ、こちらに向かって走って来る。
「奴じゃない、銃を下せ」
俺は銃を下ろしながらリハルトにもそう言うと、彼も銃を下す。
どうやら最近警戒していた"奴"とは違う様だ。
「あ、あの!匿ってください!」
成人したかしてないか位の少女は、息を切らせながら俺達に助けを求めて来た。