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続・イタリア紀行 作者:iccchiiiiii/一ノ瀬健太
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Wild Child/Enya

続・イタリア紀行(Wild Child/Enya)

 書籍、写真アルバム、布団、台所トイレ風呂場の水場。冷蔵庫もぼくたちの担当だ。冷蔵庫に関しては一つ記憶に残るものがある。あれは開けた瞬間四方上下がゴミ屋敷なマンションの一室だった。同時に皆のテンションがガタ落ちになったのを覚えている。これは帰れねぇ。残業決定コースと、早々にみなの自我を切るスイッチの音がして、するすると魂が抜けていくのが手に取るように分かった。というのもぼく自身も自我のスイッチを切ってみなとともに空高く昇っていったからなのだ。はじめて強制退去の仕事が回された時には世の中にはこんな仕事があるのかと吃驚仰天世界遺産だった。一番はじめはビギナーズラックで一日二件の強制退去も二件とも蛇の抜け殻空っぽで、拘束時間1時間半、実働ゼロで8000円の日当が支払われた時には笑みがこぼれまくった。それで味をしめたぼくは次の派遣の仕事も退去の仕事を選んだのが運の尽きで株を守るの類いなり、と痛感せられた。この頃からぼくはいつも水回り担当だった。二回目の勤務はゴミ屋敷、同僚は冷蔵庫担当でいつもどおり、賞味期限の切れた醤油やらマヨネーズやら、腐った牛乳の処理をするのだろう。ぼくは業者さんからまずはトイレからとのお達しを盲付けられたので、そこにある小物類を早々に片付けはじめた瞬間、

 うわぁぁあああ!!!

 …と悲鳴とも取れる同僚の大声が隣から聞こえてきた。ぼくは作業を一旦止めて急いで彼の元に向かった。そこには既に人だかりができていた。おえー、うわぁ、グロっ…とほそぼそと声がする。あ、これはおそらく、人とかの手だなと、切断された四肢なんだなと、瞬時に思った。と同時に胸がばくんばくんと高鳴る、というのは表現がおかしいのだが、とにかくアドレナリンが副腎髄質から分泌され頭と心臓が土竜の唄の菊川玲二のようにカッカドクドクし出した。冷静と情熱のあいだ、ぼくは殺人事件の捜査が入ればこの残業決定コースの仕事もお開きになり、給料はそのまま全額振り込まれる、と自らの利益を瞬時に考えた。丁度、大切な用事に間に合いそうにない時に人身事故が理由として使えるように、他人の不幸に自らの幸せを上乗せして利用してやろうと計算した。

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