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二周目のサイコパス 作者:ニキ

1章:WAKE UP FAFNIR!

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XK-0:かくして"私"は敗北した

三回行動

 偽物の空が見えなくなってから今日で半年だ。

 私は……私達は紫色が嫌いだ。

 幾何学模様、それは何処までも拡大して行って、蜘蛛の巣のような巨大な魔法陣が太陽を遮っていた。


「……殺せ」

「分かった」


 私の意思で首を刎ねる。

 それは強制されていない、でも最近それしかしていない処刑で。

 或いは生贄で、接収だ。

 嘘のように軽い体が更に軽くなる。

 ステータスが上がった。


「…………悪い、隊長」

「気にすんな、合理的判断だ」

「逃げるみたいに、たった一人に背負わせて、本当に……!」

「知ってるでしょ、私は何も気にしない血も涙もない人でなしだって」


 おどけてみせても仲間の顔は晴れない。

 辛そうで、キツそうで。

 一週間は寝ていない、食事も交代で人体だ。生命維持に必要が無いからと禁止して、死闘に死闘を重ねてきて。

 最後まで残った遠征隊と言えど、極限を地で行っていた。


 幾千幾万の屍を踏んで漸く辿り着いた果ての塔、その最終盤。

 ボス部屋だけで構成されるクソダンジョンの平均レベルは300を超えた。

 フルレイド隊は見る影もなく、実に無惨な壊滅状態。


(……)


 ある日空高くに魔法陣が生まれてから、この世界はおかしくなった。

 進撃を始める"怪物"達は、現実にもこの世界にも破壊をばら蒔いて。

 津波が、地震が、ゾンビによるパンデミックが……デリートがあらゆるところで始まった。

 これは開戦の合図だったんだろう。

 対処に時間を割かれる内にどんどんと広がっていく紫の模様は既にどの町からでも見れる程になり、検証によって判明したそれが発動するまでのタイムリミットは……今日。

 陽光の色は醜く歪み、絶望に覆われた空の色はもう正常なそれを思い出せなくなっていた。


 元凶が潜む場所を特定したのが半月前。

 急遽始まった強行軍の果てに、正常であることが異常な魔境において、今尚最前線で戦っている狂人のみの集団は理解した。


 "届かない"と。


 既にモンスターと渡り合えるのはバフによって強化されている私くらいだった。

 大半の処理を私がして、他のメンバーが出来るのは時間稼ぎくらいで。

 追いつけなくなった味方が死ぬ度に、私だけが強化されていって。


 時間も戦力も全くもって足りなかった。


「…………はぁ」


 溜息を着く。

 きっとこれは私の仕事なんだろう。

 唯一生きている死神として、慈悲深き介錯者として。

 こいつらは十分働いた、頑張った。

 私を受け入れて、こんな世界でも毎日楽しもうと努力して。

 別に私も理解している。元凶に辿り着き、アレの発動前に殺すことが不可能なことくらい。

 今していることが無駄な抵抗、悪足掻き、それがくっだらねぇプライドによることくらい分かっていた。


「おつかれ」


 13人。


 ステータスが上がった。


 別に早いか遅いかの違いだ。


 苦痛を伴うより合理性の狂人に今終わらされる方がいいだろうと。




 不思議と誰も抵抗しなかった。






 久しぶりに、静かだ。





















 デイブレイクファンタジーのボスには適正人数というシステムがある。


 パーティ適正のボスならば1パーティの、1レイド適正のボスならば2パーティによる攻略までが正式な難易度として調整されている。


 もし戦闘人数が適正人数を超過した場合に起こるのは、ボス性能の強化というペナルティ。


 それはステータスから体力、果てはスキルにまで及び、超過数によってその上昇量は指数関数的に増加する。


 彼が構築を始めた"魔法"は、それほど大したことはしていない。


 ゲームシステムに則りながら、ほんの少しだけの反則を加えたそれは、プレイヤーを全滅させるような理不尽を振り撒いたり等しない。



 それは影響下にある全生物とHPを1だけ交換するという、全く意味の無いだろう大規模な魔法陣。




 かくしてタイムリミットを迎えた術理は正確に実行され──






 ──今ここに全生物との命の取引が、






 ──ダメージ判定が発生した。











「あー……そういやこんな色だったなぁ」


 頂上。

 雲の上に聳える半径5kmはありそうな、円状のバトルフィールド。

 全ての障害物をただ一人で駆逐して辿り着いたそこでは丁度、ラスボスの進化が行われていた。


 レイドが再編成された。

 参加者はこの世界にまだ生き残っている全プレイヤー及び全NPC

 質はゴミと言う他無いが、数だけは途方も無い。

 難易度超過回数を数えようとして、やめた。


 馬鹿らしい。


「まるで神様だな」


 空間が軋む。

 法則が歪む。

 これまでで一番の威圧感、喩えるには語ることが長すぎる。

 神性というのだろうか。



 怪物のための箱庭で、神格が産声を上げた。



「ああこりゃ無理だ物理的に」


 空の色が書き変わる。


 天候はレーザー、全世界への降水だろう。


 終焉を告げる喇叭は、細胞が蒸発する音だった。


 死が乱舞して、一瞬で数十回は殺されて。











 ステータスが上がった。

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