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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1198566
審判番号 不服2006-20804  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-19 
確定日 2009-06-12 
事件の表示 特願2004- 50584「プロフィシエンシーシステムおよびプロフィシエンシープログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 8日出願公開、特開2005-241889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年2月25日に特許出願したものであって、平成17年11月14日付けで手続補正(以下「本件補正1」という。)がなされた後、平成18年1月23日付けで拒絶理由が通知され、平成18年3月24日付けで手続補正がなされたが、平成18年8月10日付けで平成18年3月24日付け手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月19日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年10月19日付けで手続補正(以下「本件補正2」という。)がなされたものである。

2 本件補正2についての却下の決定
(1)結論
本件補正2を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
本件補正2は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前の
「プログラムデータベースとテストデータベースと生徒データベースとプロフィシエンシーデータベースと接続されるデータベースサーバと、認証サーバと接続されるプロフィシエンシーシステムにおいて、体系化された知識と操作とを測定するために前記テストデータベースに記録されたテスト結果から前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたベンチマークデータに従って正解した正解数を記録することで知識・技術力を評価する知識技術測定手段と、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を測定するために前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたサブスタンダーズデータに従って問題によって予め定められている視点情報と調査力情報と推論力情報と表現力情報の点数を算出することで運用力を評価する運用力測定手段と、前記プロフィシエンシーデータベースに記録された生徒私力基準に従って知的好奇心と知的関心とを測定することで私力を評価する私力測定手段とからなり、学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示するプロフィシエンシーシステム。」(本件補正1による補正後のもの。)

「プログラムデータベースとテストデータベースと生徒データベースとプロフィシエンシーデータベースと接続されるデータベースサーバと、認証サーバと接続されて、体系化された知識と操作とを測定するために前記テストデータベースに記録されたテスト結果から前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたベンチマークデータに従って正解した正解数を記録することで知識・技術力を評価する知識技術測定手段と、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を測定するために前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたサブスタンダーズデータに従って問題によって予め定められている視点情報と調査力情報と推論力情報と表現力情報の点数を算出することで運用力を評価する運用力測定手段と、前記プロフィシエンシーデータベースに記録された生徒私力基準に従って知的好奇心と知的関心とを測定することで私力を評価する私力測定手段とからなるプロフィシエンシーシステムにおいて、
知識技術測定手段では、教育端末と接続されて、学生の知識・技術力、運用力を試すテストのテスト結果が教育端末からデータベースサーバに送信されて、
データベースサーバはテスト結果において問題に正解した項目情報の数を生徒知識・技術力評価データに記録し、
運用力測定手段では、データベースサーバはテスト結果において予め定めておいたベンチマークデータの各視点情報に配分されている調査力情報と、整理力情報と、推論力情報と、表現力情報との点数を有効点数の合計点を生徒運用力評価データとして生徒データベースに記録し、
私力測定手段では、データベースサーバがテスト結果と生徒私力基準から演算する生徒私力評価データを生徒データベースに記録し、学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を教育者端末に表示させるプロフィシエンシーシステム。」
に補正する内容を含むものである。

イ 補正の適否についての判断
本件補正2前の請求項1において、プロフィシエンシーシステムは、「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示する」とされ、知識・技術力と運用力と私力は「3次元軸で」表示するものに特定されるところ、本件補正2後の請求項1においては、プロフィシエンシーシステムは、「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を教育者端末に表示させる」とされており、知識・技術力と運用力と私力は「3次元軸で」表示するものに特定されないものとなっている。
この点において、上記アの補正の内容は、特許請求の範囲を拡張するものであるから、上記アの補正の内容は、特許請求の範囲の減縮に該当するものといえない。
よって、上記アの補正の内容は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。また、同補正の内容が、同条第4項第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。

ウ 小括
したがって、上記アの補正の内容を含む本件補正2は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)付言
なお、以下に検討するとおり、本件補正2による補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、特許を受けることができないものであるから、本件補正2を認める余地はない。

ア 刊行物の記載
原査定の拒絶理由に引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-156996号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【請求項1】 提供された第1の問題に対する学習者の回答情報を出力する端末装置と、
前記端末装置からの回答情報に基づいて学習者の能力を解析する機能を有すると共に、その解析結果に基づいて、学習者の能力に応じた第2の問題または学習者の評価、の少なくとも一方を配信する機能を有する情報サーバとを備えたことを特徴とする学習支援システム。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、学校教育、生涯教育、ならびに資格取得のための教育など、各種の教育に利用可能な学習支援システム、方法およびプログラム、ならびに情報サーバに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、学校教育、ならびに資格取得のための教育などを行う場合、学習の進捗度、習熟度および理解度などを知るため、すなわち教育の成果を確認するために“試験”が行われている。試験は、出題者(教育者)から出された問題に学習者が回答し、その回答を採点する、という手順で行われる。学習者は、その採点結果を見て自分の理解度を知り、今後の勉強方針を立てることができる。また、教育者は、その採点結果を見て学習者の理解度を知り、今後の授業方針などの参考にすることができる。
【0003】従来、試験における問題は紙で提供され、また、その回答は、紙に直接書き込まれるという方式が一般的である。一方、最近では、パーソナルコンピュータの普及により、問題の提供およびその回答をコンピュータ端末上で行うことが可能になってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来では、学習者個人の能力に応じた教育、学習支援が十分になされていないという問題がある。この原因の一つとしては、従来では、試験結果の評価が、大ざっぱなもの(主に総合点と偏差値のみ)にとどまっていることが挙げられる。試験結果の評価が大ざっぱであるということは、学習者個人の能力の解析も不十分であるということになり、それに基づく教育、学習支援も不十分なものとなる。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、学習者個人の能力に応じた教育、学習支援を行うことができる学習支援システム、方法およびプログラム、ならびに情報サーバを提供することにある。」

(ウ)「【0026】[第1の実施の形態]図1は、本発明の第1の実施の形態に係る学習支援システムの全体構成を表している。本実施の形態に係る学習支援システムは、提供された問題D1に対する学習者の回答情報D2を出力するための複数の端末装置1A?1Cと、インターネット3を介して端末装置1A?1Cからのそれぞれの回答情報D2を取得し、それら回答情報D2に基づいて学習者の能力を解析する機能を有する情報サーバ2とを備えている。情報サーバ2は、また、その解析結果に基づいて、各学習者の個々の能力に応じた追加問題D3または学習者の評価D4、の少なくとも一方を配信する機能をも有している。なお、図1では、端末装置1A?1Cを3台図示しているが、端末装置の数は3台とは異なる数であってもよい。
【0027】ここで、情報サーバ2が、本発明における「情報サーバ」および「第1の情報サーバ」の一具体例に対応する。また、問題D1が、本発明における「第1の問題」の一具体例に対応し、追加問題D3が、本発明における「第2の問題」の一具体例に対応する。」

(エ)「【0032】情報サーバ2は、例えば、ASP(Application Service Provider)事業者のインターネット・データ・センタ(internet Data Center;iDC)に設置される。情報サーバ2は、データベース4を有しており、このデータベース4に蓄積された各種データを参照して、複数の学習者の能力に関して統計的な解析処理を行うようになっている。情報サーバ2は、この統計的な解析結果に基づいて、学習者の評価D4を配信する機能を有している。情報サーバ2は、また、この統計的な解析結果に基づいて、各学習者の弱点を強化するための強化問題を追加問題D3として配信する機能を有している。なお、追加問題D3には、あらたな問題のみならず、学習者が不正解だった問題が含まれていてもよい。
【0033】情報サーバ2は、コンピュータにより構成されており、図示しないが、CPU(中央処理装置)、主記憶装置、入力装置、出力装置、および補助記憶装置(ハードディスクドライブなど)を有している。主記憶装置は、例えばRAM(ランダム・アクセス・メモリ)によって構成されている。情報サーバ2における各機能は、補助記憶装置に記憶された本実施の形態における学習支援用のプログラムを、主記憶装置にロードし、そのロードされたプログラムをCPUが実行することによって実現される。
【0034】ここで、情報サーバ2で行う解析処理には、回答を採点することが含まれる。また、「統計的な解析処理」とは、平均点および偏差値などの従来からある試験結果の評価、解析のみならず、従来では行われていなかった分析手法によって、個人の能力傾向の分析を行うことなどを含む。この統計的な解析処理の具体例については、後に詳述する。」

(オ)「【0036】このデータベース4は、図4に示したように、試験問題・データベース(試験問題DB)41と、能力マップ・データベース(能力マップDB)42と、対照表・データベース(対照表DB)43と、受験者個人情報・データベース(受験者個人情報DB)44と、試験結果導出・試験問題属性データベース(試験問題属性DB)45と、試験結果導出・受験者属性データベース(受験者属性DB)46とを有して構築されている。
【0037】試験問題DB41は、例えば問題の内容、問題の種類、問題の解答(正解)、問題の出題意図などのデータで構築されている。問題の種類とは、例えば穴埋め式(記述式)、選択式など、問題形式(出題形式)の違いのことをいう。これら試験問題DB41における各問題には、各問題を識別するためのシリアルコードが付加されている。試験問題DB41は、できるだけ多くの試験問題についてのデータ(可能であれば世の中に存在するすべての試験問題についてのデータ)で構築されていることが望ましい。
【0038】能力マップDB42は、後述する教育目的能力マップに関するデータで構築されている。対照表DB43は、試験問題DB41における問題と能力マップDB42における教育目的能力マップとの対応関係を示すデータで構築されている。
【0039】受験者個人情報DB44は、試験の受験者(学習者)に関するごく一般的な情報、例えば氏名、年齢、生年月日、職業、ログインパスワードなどのデータで構築されている。
【0040】試験問題属性DB45および受験者属性DB46は、試験を実施した結果導き出されたデータ、すなわち、回答情報D2を解析することにより得られたデータで構築されている。試験問題属性DB45および受験者属性DB46のデータは、各小問題ごと、各個人ごとに導き出される。」

(カ)「【0046】次に、情報サーバ2で行う解析処理について、その解析処理に用いられる各種のデータ内容(データベース4の内容)と共に具体的に説明する。以下では、主に学校教育を例にして説明する。
【0047】<教育目的能力マップの内容>教育の目的は、今までに持ち得なかった何らかの“能力”を獲得することにある(以下、この教育が目的とする能力のことを“教育目的能力”と呼ぶ。)。・・・
【0049】本システムでは、“出題者の意図”を定量的かつ定性的にMAP(以下、教育目的能力マップと呼ぶ)という形態で表現する。そして、教育目的能力マップを使ったコンピュータ処理により、その個人の教育目的能力獲得度合いを、適度に最小な問題ごとに個別詳細明示し、総合点、偏差値より細かい試験評価を下す。これにより、個別指導に近い状況を教育現場にもたらす。
【0050】教育目的能力マップは、教育目的能力をなるべく定量的に表現したものであり、例えば、目的能力を階層的に分類したもので表される。学校教育を例にすると、教育目的能力にはおおまかに数学、英語、国語などの科目がある。教育目的能力は、さらに各科目ごとに細かく分類することができる。例えば、英語については、第1の階層として“読解力”という能力がある。この読解力はさらに“文法力”、“語彙/表現知識”などの第2の階層の能力に分けられ、文法力はさらに、“不定詞”、“分詞”、“動名詞”などの第3の階層の能力に分けられる。不定詞はさらに、“基本3用法の判別”、“副詞的用法の判別”、“不定詞の意味上の主語”などの第4の階層の能力に分けられる。
【0051】ここで、教育目的能力マップを作成する際に注意すべきことは、極端な定量表現に走らないことである。すなわち、あまりにも細分化して深すぎる階層まで分類をしすぎないように注意する必要がある。例えば、英語については、上述の第4の階層程度までの定量表現にとどめておくことが望ましい。そして、細分化を防止するために、最下位の階層の能力の次に、例えば“教育目的能力の種類”という項目を設定し、ここに“コメント”が入れられるように定性表現も加えておく。“コメント”とは、例えば出題者の問題に対する主たる意図を文章で表現したものである。このコメントは、後述する“出題ベクトル”に対応する。
【0052】なお、以上では教育目的能力マップを階層的に表現した例について説明したが、教育目的能力マップは、階層的に表現することを必須としているわけではなく、他の表現方法を用いてもよい。」

(キ)「【0055】<能力マップDB42、対照表DB43の内容>能力マップDB42(図2)には、以上のような教育目的能力マップをデータベース化したものが蓄積されている。ところで、試験問題は、ある教育目的能力の獲得成否を試すものであるから、教育目的能力マップとの対応付けを行うことができる。対照表DB43には、このような試験問題と教育目的能力マップとの対応関係をデータベース化したものが蓄積されている。なお、一般的に試験問題が獲得成否を試している能力は1つではなく、1つの問題で複数の能力を試している場合もある。この場合、試験問題と教育目的能力とに、ある“主従関係”と“重さ”を持たせて対応関係をデータベース化する。例えば、ある英語の問題が、不定詞と分詞の双方を試しているものであれば、その問題は、不定詞を主要素、分詞を従要素とし、その能力を試している比率が主要素は70%、従要素は30%などと重み付けをして対応付ける。」

(ク)「【0058】試験問題属性DB45として導き出されるデータ内容は例えば以下のとおりである。
(i)問題の難易度ランキング
(ii)出題場所(例えば、「1995年3月の東大入試試験で出題」 など…)
(iii)出題頻度、出題回数」

(ケ)「【0060】一方、受験者属性DB46として導き出されるデータ内容は例えば以下のとおりである。
(A)回答した問題のシリアルコードと正誤判定結果
(B)受けた試験の総合点と受験者全体における偏差値
(C)定性的、定量的教育目的能力獲得度数
(D)今後の勉強指針
(E)問題を解いたスピード、問題を解いた順番など
・・・
【0062】(C)の定性的、定量的教育目的能力獲得度数は、試験問題DB41、能力マップDB42、対照表DB43のデータから導き出される。この定性的、定量的教育目的能力獲得度数は、従来の総合点、偏差値という評価概念を超えた評価であり、受験者別に導出される。この「定性的、定量的教育目的能力獲得度数」については、後に詳述する。」

(コ)「【0064】<定性的、定量的教育目的能力獲得度数の内容>既に述べたように、本システムにおいては、授業の結果における生徒への教育目的能力の浸透度合いを“教育目的能力獲得度合い”と呼び、この教育目的能力獲得度合いをなるべく定量的に表現(“なるべく”に注意)することによって、これをコンピュータ処理に結びつけ、より個別指導に近い評価を行う。さて、ここで、従来行われていた試験結果の評価方法である“総合点”および“偏差値”について考察する。ある100点満点のテストで、AさんとBくんは2人とも総合点が60点であったとする。従来の評価方法では、同時にテストを受けた場合、当然、2人とも偏差値が同じとなり、同一評価となる。しかしながら、総合点が同じ人は、授業を通じて獲得した能力の程度は全く同じなのか? という疑問点が残る。
【0065】そこで、本システムでは、従来、“総合点”と“偏差値”とでしか評価していなかった試験結果の評価方法を、試験問題DB41、能力マップDB42、対照表DB43、および受験者個人情報DB44をもとに、試験の正誤個所に応じて、その人が授業を通じて獲得したと考えられる、また獲得できなかったと考えられる教育目的能力を詳細に導出し、「定性的、定量的教育目的能力獲得度数」として、生徒に提示する。
【0066】以下、図3?図5を参照して、定性的、定量的教育目的能力獲得度数(以下、単に「能力獲得度数」ともいう。)について、さらに具体的に説明する。
【0067】一般的に、上述の教育目的能力マップ上の例えば“X”という能力(例えば英語の読解力の不定詞の文法力)をテストするための試験問題は、1個だけではない。能力Xが獲得されたかどうかを判定するための問題が複数ある場合、それらの問題は、図3に示したように、一般的に、能力Xを別々のベクトルから見て出題されているはずである(以下、このベクトルのことを“出題ベクトル”という。)。また、各問題には、出題者の意図が存在し、出題ベクトルはその意図に対応するものといえる。なお、図3では、能力Xを円柱で概念的に示している。また、能力Xをテストするための問題には、難易度という要素がある。例えば、出題ベクトルの方向が同じであっても、出題形式が異なれば、難易度が変わる。例えば、選択式の問題と記述式の問題とがあった場合、記述式の問題の方が難易度が高いといえよう。また、難易度が高い問題が解ければ、その出題ベクトルに係る学習者の能力レベル、能力段階が高く、能力獲得度数も高いといえる。」

(サ)「【0073】<「今後の勉強指針」の内容>以上のように出題ベクトルなどを使って、コンピュータ処理により、能力マップ上の各能力の獲得度数がその人の評価としてはっきり提示されると、自分の能力のどこが良くて、どこが悪いかがはっきりする。従って、生徒自身が、今後の勉強の指針を立てやすくなる。」

(シ)「【0080】<本実施の形態の効果>以上説明したように本実施の形態によれば、情報サーバ2が、複数の端末装置1A?1Cから出力された、問題D1に対する学習者の回答情報D2を取得すると共に、それらの回答情報D2に基づいて学習者の能力を解析し、さらに、その解析結果に基づいて、各学習者の個々の能力に応じた追加問題D3または学習者の評価D4の少なくとも一方を配信するようにしたので、個々の学習者の能力に応じた教育、学習支援を行うことができる。これにより、教育、学習効果を高め、個人の能力を最大限伸ばすことができる。
【0081】また本システムによれば、例えば、授業を行った後、そのテーマで試験を実施し、生徒各個人とその授業を行った教師に対し、生徒の理解度を、従来の評価数値(総合点および偏差値)以外の数値(能力獲得度数)でリアルタイムまたは、リアルタイムに近い状態で、フィードバックすることができる。これにより、生徒は今後の勉強の方針を、先生は授業の方針を立てやすくなる。」

イ 引用発明
(ア)上記アによれば、引用例には、次の事項が記載されているものと認められる。

a 請求項1として「提供された第1の問題に対する学習者の回答情報を出力する端末装置と、前記端末装置からの回答情報に基づいて学習者の能力を解析する機能を有すると共に、その解析結果に基づいて、学習者の能力に応じた第2の問題または学習者の評価、の少なくとも一方を配信する機能を有する情報サーバとを備えたことを特徴とする学習支援システム。」の発明が記載されている(ア(ア)参照。)。

b 従来、試験における問題は紙で提供され、また、その回答は、紙に直接書き込まれるという方式が一般的であるが、最近では、パーソナルコンピュータの普及により、問題の提供およびその回答をコンピュータ端末上で行うことが可能になってきている。しかしながら、従来では、試験結果の評価が、主に総合点と偏差値のみの大ざっぱなものにとどまり、学習者個人の能力の解析が不十分であることから、学習者個人の能力に応じた教育、学習支援が十分になされていないという問題がある。上記aの発明は、かかる問題に鑑みてなされたものである(ア(イ)参照)。

c 上記aの発明の第1の実施の形態に係る学習支援システムは、提供された問題D1に対する学習者の回答情報D2を出力するための複数の端末装置1A?1Cと、インターネット3を介して端末装置1A?1Cからのそれぞれの回答情報D2を取得し、それら回答情報D2に基づいて学習者の能力を解析する機能を有する情報サーバ2とを備えている。情報サーバ2は、また、その解析結果に基づいて、各学習者の個々の能力に応じた追加問題D3または学習者の評価D4、の少なくとも一方を配信する機能をも有している(ア(ウ)参照)。

d 情報サーバ2は、データベース4を有しており、このデータベース4に蓄積された各種データを参照して、複数の学習者の能力に関して統計的な解析処理を行い、この統計的な解析結果に基づいて、学習者の評価D4を配信する機能を有している。情報サーバ2で行う解析処理には、回答を採点することが含まれ、「統計的な解析処理」とは、平均点および偏差値などの従来からある試験結果の評価、解析のほか、従来では行われていなかった分析手法によって、個人の能力傾向の分析を行うことなどを含む。また、情報サーバ2は、CPU(中央処理装置)、主記憶装置、入力装置、出力装置、および補助記憶装置(ハードディスクドライブなど)を有するコンピュータにより構成されており、情報サーバ2における各機能は、補助記憶装置に記憶された本実施の形態における学習支援用のプログラムを、主記憶装置にロードし、そのロードされたプログラムをCPUが実行することによって実現される(ア(エ)参照)。

e データベース4は、例えば問題の内容、問題の種類、問題の解答(正解)、問題の出題意図などのデータで構築されている試験問題・データベース(試験問題DB)41と、教育目的能力マップに関するデータで構築されている能力マップ・データベース(能力マップDB)42と、試験問題DB41における問題と能力マップDB42における教育目的能力マップとの対応関係を示すデータで構築されている対照表・データベース(対照表DB)43と、試験の受験者(学習者)に関するごく一般的な情報、例えば氏名などのデータで構築されている受験者個人情報・データベース(受験者個人情報DB)44と、試験を実施した結果、各小問題ごと、各個人ごとに導き出された回答情報D2を解析することにより得られたデータで構築されている試験結果導出・試験問題属性データベース(試験問題属性DB)45及び試験結果導出・受験者属性データベース(受験者属性DB)46と、を有して構築されている(ア(オ)参照)。

f 教育目的能力マップは、教育目的能力(教育が目的とする能力)をなるべく定量的に表現したものであり、例えば、目的能力を階層的に分類したもので表され、最下位の階層の能力の次に、例えば“教育目的能力の種類”という項目を設定し、ここに例えば出題者の問題に対する主たる意図を文章で表現した“コメント”が入れられるように定性表現も加えておく。なお、教育目的能力マップは、階層的に表現することを必須としているわけではなく、他の表現方法を用いてもよい(ア(カ)参照)。

g 試験問題は、ある教育目的能力の獲得成否を試すものであるから、教育目的能力マップとの対応付けを行うことができ、対照表DB43には、このような試験問題と教育目的能力マップとの対応関係をデータベース化したものが蓄積されている。なお、一般的に試験問題が獲得成否を試している能力は1つではなく、1つの問題で複数の能力を試している場合もある。この場合、試験問題と教育目的能力とに、ある“主従関係”と“重さ”を持たせて対応関係をデータベース化する。例えば、ある英語の問題が、不定詞と分詞の双方を試しているものであれば、その問題は、不定詞を主要素、分詞を従要素とし、その能力を試している比率が主要素は70%、従要素は30%などと重み付けをして対応付ける(ア(キ)参照)。

h 試験問題属性DB45として導き出されるデータ内容は、例えば、(i)問題の難易度ランキング、(ii)出題場所、(iii)出題頻度、出題回数である(ア(ク)参照)。

i 受験者属性DB46として導き出されるデータ内容は、例えば、(A)回答した問題のシリアルコードと正誤判定結果、(B)受けた試験の総合点と受験者全体における偏差値、(C)定性的、定量的教育目的能力獲得度数、(D)今後の勉強指針、(E)問題を解いたスピード、問題を解いた順番など、である。(C)の定性的、定量的教育目的能力獲得度数は、試験問題DB41、能力マップDB42、対照表DB43のデータから導き出される(ア(ケ)参照)。

j 本システムでは、従来、“総合点”と“偏差値”とでしか評価していなかった試験結果の評価方法を、試験問題DB41、能力マップDB42、対照表DB43、および受験者個人情報DB44をもとに、試験の正誤個所に応じて、その人が授業を通じて獲得したと考えられる、また獲得できなかったと考えられる教育目的能力を詳細に導出し、「定性的、定量的教育目的能力獲得度数」として、生徒に提示する。教育目的能力マップ上の例えば“X”という能力をテストするための問題には、難易度という要素があり、難易度が高い問題が解ければ、学習者の能力レベル、能力段階が高く、能力獲得度数も高い(ア(コ)参照)。

k コンピュータ処理により、能力マップ上の各能力の獲得度数がその人の評価として提示される(ア(サ)参照)。

l 上記aの発明は、個々の学習者の能力に応じた教育、学習支援を行うことにより教育、学習効果を高めることができ、また、生徒各個人とその授業を行った教師に対し、生徒の理解度を、従来の評価数値(総合点および偏差値)以外の数値(能力獲得度数)でリアルタイムまたは、リアルタイムに近い状態で、フィードバックすることにより、生徒は今後の勉強の方針を、先生は授業の方針を立てやすくなるという効果を奏する(ア(シ)参照)。

(イ)上記(ア)a、c?kによれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「提供された第1の問題に対する受験者の回答情報を出力する端末装置と、前記端末装置からの回答情報に基づいて受験者の能力を解析する機能を有すると共に、その解析結果に基づいて、受験者の能力に応じた第2の問題または受験者の評価、の少なくとも一方を配信する機能を有する情報サーバとを備えたことを特徴とする学習支援システムであって、
前記情報サーバは、
CPU、主記憶装置、入力装置、出力装置、および補助記憶装置を有するコンピュータにより構成され、情報サーバにおける各機能は、補助記憶装置に記憶された学習支援用のプログラムを、主記憶装置にロードし、そのロードされたプログラムをCPUが実行することによって実現されるものであり、
また、前記情報サーバは、
問題の内容、問題の種類、問題の解答、問題の出題意図などのデータで構築されている試験問題・データベースと、
教育が目的とする複数の能力を表現した教育目的能力マップに関するデータで構築されている能力マップ・データベースと、
試験問題・データベースにおける問題と能力マップマップ・データベースにおける教育目的能力マップとの対応関係を示すデータで構築されている対照表・データベースと、
受験者に関するごく一般的な情報、例えば氏名などのデータで構築されている受験者個人情報・データベースと、
試験を実施した結果、各小問題ごと、各個人ごとに導き出された回答情報を解析することにより得られたデータで構築されている、問題の難易度ランキングを含む試験結果導出・試験問題属性データベース、及び、回答した問題のシリアルコードと正誤判定結果、受けた試験の総合点と受験者全体における偏差値及び定性的、定量的教育目的能力獲得度数を含む試験結果導出・受験者属性データベースと、
を有して構築されているデータベースを有し、
前記定性的、定量的教育目的能力獲得度数は、前記試験問題・データベース、前記能力マップ・データベース、及び、前記対照表・データベースのデータから、試験の正誤個所に応じて、受験者が獲得したと考えられる、また獲得できなかったと考えられる教育目的能力マップ上の各教育目的能力を数値で導出したものである、
学習支援システム。」(以下「引用発明」という。)

(ウ)上記(ア)b及びlによれば、引用発明は、従来では、試験結果の評価が、主に総合点と偏差値のみの大ざっぱなものにとどまり、学習者個人の能力の解析が不十分であることから、学習者個人の能力に応じた教育、学習支援が十分になされていないという問題に鑑みてなされたものであり、個々の学習者の能力に応じた教育、学習支援を行うことにより教育、学習効果を高めることができ、また、生徒各個人とその授業を行った教師に対し、生徒の理解度を、従来の評価数値(総合点および偏差値)以外の数値(能力獲得度数)でリアルタイムまたは、リアルタイムに近い状態で、フィードバックすることにより、生徒は今後の勉強の方針を、先生は授業の方針を立てやすくなるという効果を奏するものと認められる。

ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「『学習支援用のプログラム』が記憶された『補助記憶装置』」は、本願補正発明の「プログラムデータベース」に相当する。

(イ)本願補正発明の「生徒データベース」は、「生徒運用力評価データ」、「テスト結果」及び「生徒私力評価データ」を記録するものと認められる。また、本願明細書(本件補正2による補正後のもの。以下、(3)の項において同じ。)には、「生徒データベース34は、生徒知識・技術力評価データ36及び生徒運用力評価データ38の集合体であるデータベースである。生徒知識・技術力評価データ36は、知識・技術力の評価を示す個々のデータである。生徒運用力評価データ38は、運用力を示す個々のデータである。」(【0056】)との記載がある。これらによれば、本願補正発明の「生徒データベース」は、テストの評価結果を記録したデータベースであるものと認められる。
よって、引用発明の「受けた試験の総合点と受験者全体における偏差値及び定性的、定量的教育目的能力獲得度数を含む試験結果導出・受験者属性データベース」は、本願補正発明の「生徒データベース」に相当する。

(ウ)本願補正発明の「プロフィシエンシーデータベース」には、「ベンチマークデータ」、「サブスタンダーズデータ」及び「生徒私力基準」が記録されており、テストの評価は、これらとテスト結果とからなされるものと認められる。そうすると、本願補正発明の「プロフィシエンシーデータベース」は、テスト結果から評価を導き出すためのデータを記録したデータベースであるものと認められる。他方、引用発明の「試験結果導出・受験者属性データベース」に含まれる「回答した問題のシリアルコードと正誤判定結果、受けた試験の総合点と受験者全体における偏差値及び定性的、定量的教育目的能力獲得度数」は、「各個人ごとに導き出された回答情報を解析することにより得られたデータ」であって、「試験問題・データベース、能力マップ・データベース、及び、対照表・データベースのデータ」から導出されるものである。
よって、引用発明の「試験問題・データベース、能力マップ・データベース、及び、対照表・データベースのデータ」は、本願補正発明の「プロフィシエンシーデータベース」に相当する。

(エ)引用発明の「受験者」は、本願補正発明の「学生」、「生徒」ないし「学習者」に相当する。
そして、引用発明の「情報サーバ」は、「受験者の能力を解析する機能を有すると共に、その解析結果に基づいて、受験者の能力に応じた第2の問題または受験者の評価、の少なくとも一方を配信する機能を有する」ものである。また、引用発明の「試験結果導出・受験者属性データベース」に含まれる「定性的、定量的教育目的能力獲得度数」は、「教育目的能力マップ上の各教育目的能力を数値で導出したもの」である。
そうすると、引用発明の「情報サーバ」は、「学習者の複数の能力を解析し、数値で評価する手段」を有し、学習者の評価結果を生徒データベースに記録するものといえ、これらの機能は、学習支援用のプログラムをCPUが実行することによって実現されるものである。
他方、本願補正発明の「知識技術測定手段」、「運用力測定手段」、及び「私力測定手段」も、学習者の複数の能力を数値で評価する手段と認められ、データベースサーバは、学習者の評価結果を生徒データベースに記録するものと認められる。
よって、引用発明の「(学習支援用のプログラムを実行する)CPU」は、本願補正発明の「データベースサーバ」に相当し、両者は、「学習者の複数の能力を数値で評価する手段を有し、データベースサーバは、学習者の評価結果を生徒データベースに記録する」ものである点で一致する。
また、引用発明の「CPU」が、「『学習支援用のプログラム』が記憶された『補助記憶装置』」及び情報サーバが有する各データベースと接続されていることは明らかであるから、上記(ア)ないし(ウ)に照らせば、引用発明は、本願補正発明の「プログラムデータベースと・・・生徒データベースとプロフィシエンシーデータベースと接続されるデータベースサーバ」との事項を備えるものといえる。

(オ)引用発明が備える「情報サーバ」は、「提供された第1の問題に対する受験者の回答情報を出力する端末装置と、前記端末装置からの回答情報に基づいて受験者の能力を解析する機能を有すると共に、その解析結果に基づいて、受験者の能力に応じた第2の問題または受験者の評価、の少なくとも一方を配信する機能」を有するものであるから、上記(エ)に照らせば、引用発明は、「テスト結果が端末からデータベースサーバに送信され」る点、及び、「学習者の複数の能力を数値で評価した結果を端末に表示させる」点において、本願補正発明の「学生の知識・技術力、運用力を試すテストのテスト結果が教育端末からデータベースサーバに送信され」との事項、及び、「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を教育者端末に表示させる」との事項と一致する。

(カ)引用発明は、「教育、学習効果を高めることができ」る効果を奏するものであるから、引用発明の「学習支援システム」は、本願補正発明の「プロフィシエンシーシステム」に相当する。

(キ)よって、両者は、

「プログラムデータベースと生徒データベースとプロフィシエンシーデータベースと接続されるデータベースサーバと、学習者の複数の能力を数値で評価する手段とからなるプロフィシエンシーシステムにおいて、テスト結果が端末からデータベースサーバに送信されて、データベースサーバは、学習者の評価結果を生徒データベースに記録し、学習者の複数の能力を数値で評価した結果を端末に表示させるプロフィシエンシーシステム。」

である点で一致し、下記aないしcの点で相違するものと認められる。

a テスト結果をデータベースサーバに送信し、評価した結果を表示させる端末が、本願補正発明は、教育端末ないし教育者端末であるのに対して、引用発明は、そうでない点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明は、テストデータベースとデータベースサーバとが接続され、データベースサーバと認証サーバとが接続されるのに対して、引用発明は、テストデータベース及び認証サーバを有するものではない点(以下「相違点2」という。)。

c テストが、本願補正発明では、「学生の知識・技術力、運用力を試すテスト」であるのに対して、引用発明では、そのようなものか不明であり、学習者の複数の能力を数値で評価する手段、及び、データベースサーバが学習者の評価結果を生徒データベースに記録する内容につき、本願補正発明は、「体系化された知識と操作とを測定するために前記テストデータベースに記録されたテスト結果から前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたベンチマークデータに従って正解した正解数を記録することで知識・技術力を評価する知識技術測定手段と、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を測定するために前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたサブスタンダーズデータに従って問題によって予め定められている視点情報と調査力情報と推論力情報と表現力情報の点数を算出することで運用力を評価する運用力測定手段と、前記プロフィシエンシーデータベースに記録された生徒私力基準に従って知的好奇心と知的関心とを測定することで私力を評価する私力測定手段」、及び、「知識技術測定手段では、テスト結果において問題に正解した項目情報の数を生徒知識・技術力評価データに記録し、運用力測定手段では、データベースサーバはテスト結果において予め定めておいたベンチマークデータの各視点情報に配分されている調査力情報と、整理力情報と、推論力情報と、表現力情報との点数を有効点数の合計点を生徒運用力評価データとして生徒データベースに記録し、私力測定手段では、データベースサーバがテスト結果と生徒私力基準から演算する生徒私力評価データを生徒データベースに記録」するものであるのに対して、引用発明は、そのようなものでなく、端末に表示させる評価した結果が、本願補正発明では、「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化した知識・技術力と運用力と私力」であるのに対して、引用発明は、そのようなものでない点(以下「相違点3」という。)。

エ 判断
(ア)相違点1について
前記イ(ウ)によれば、引用発明は、教師に対して評価数値をリアルタイムまたはリアルタイムに近い状態でフィードバックするものであることが認められる。そうすると、引用発明において、教育者端末をデータベースサーバに接続し、評価した結果を教育者端末に表示することが示唆されているものといえる。
また、本願明細書の「教育者は本発明の第1の実施の形態における実施に先立ち、学生に対し学生の知識・技術力、運用力を試すテストを行う。その結果、図4のようなテスト結果22が得られる。図4の場合、正解には○、不正解には×が付いている。」(【0057】)との記載によれば、本願補正発明の「テスト結果」とは、教育者が回答の正誤を判定した結果をいうものと解されるところ、教育者がテストを採点することが通常であることに照らせば、引用発明において、教育者が解答の正誤を判定した結果を教育者端末からデータベースサーバに送信するようにすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

(イ)相違点2について
本願明細書の「テストデータベース20は、教育者端末10から入力されたテスト結果22の集合体であるデータベースである。」(【0044】)との記載によれば、本願補正発明の「テストデータベース」とは、教育者端末から入力されたテスト結果の集合体であるデータベースをいうものと解されるところ、上記(ア)のごとく、引用発明において、教育者がテスト結果を教育者端末からデータベースサーバに送信する際に、送信されたテスト結果を集合体として記録するデータベース、すなわち、テストデータベースを設け、これをデータベースサーバに接続することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
また、端末をサーバに接続する際に、認証サーバを介して接続することは、必要に応じて適宜なされる慣用手段にすぎない。
よって、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

(ウ)相違点3について
a 本願明細書には、以下の記載がある。

「【背景技術】
【0002】
従来、日本において戦後、子供に対しては知識偏重型の教育を行っていた。そのため、教育後の子供の成長度を測るには教育によって子供が身につけた知識・技術力を評価するシステムが用いられていた。
・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがこのような知識偏重型教育を受けただけの学生は、実社会において、即戦力として業務を遂行することは困難であるため、就職後に職場で再教育を受けてその他の能力を身に付けてきた。
【0007】
しかし、昨今、日本のようなデフレーションに陥った不況下では新卒社会人に職場での再教育を施すゆとりがなく、若年層の失業率の上昇へとつながり、職場と新卒学生とのギャップは深刻化している。
【0008】
従来の教育手法に対して、学生に新たな能力を身に着けさせるための新教育手法について出願人が鋭意研究したところ、知識を生かす運用力、目的に興味関心を持って積極的に取り組む私力を評価し、その能力を高める新教育手法を開発するに至った。
【0009】
そこで、本発明の目的は学習者の教育において知識・技術力と、それらを生かす運用力と、目的に興味関心を持って積極的に取り組む私力について評価する評価システムの構築と、評価システムによる評価結果をフィードバックするカリキュラムとシラバスの編成システムを提供することにある。」、
「【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプロフィシエンシーシステムを実施することにより、学習者の教育において知識・技術力と、それらを生かす運用力と、目的に興味関心を持って積極的に取り組む私力について評価する評価システムの構築と、評価システムによる評価結果をフィードバックするカリキュラムとシラバスの編成システムを提供することができる。
【0019】
また、本発明に係る評価基準を利用することで評価者に左右されることなく複数の能力を評価することができる。
【0020】
さらに、テスト結果に対して評価基準を利用して評価結果を出力するため、常に客観的に学習者を評価することが可能となる。」、
「【発明の実施の形態】
【0023】
出願人が鋭意研究した本発明の根幹をなす学習力の評価手法は図1のように知識・技術力、運用力(運用力は情報を明らかにする力(調査力)、情報を操作する力(整理力)、情報を導く力(推論力)、及び情報に形を与える力(表現力)からなる)、私力の3次元の軸で表示することができ、その学生の3つの力を総合した全体的な力は3次元空間2に表示することができる。4で示す軸は学生が身につけている知識・技術力の大きさを意味する知識力軸4であり、6で示す軸は学生が身につけている運用力の大きさを示す運用力軸6であり、8で示す軸は学生が身につけている私力の大きさを示す私力軸8である。」、
「 【0048】
プロフィシエンシーデータベース28はベンチマークデータ30、サブスタンダーズデータ32、及びベンチマークデータ30とサブスタンダーズデータ32共通のデータという要素から構成される。
【0049】
ベンチマークデータ30はコンテンツ情報46とベンチマークス情報48の要素から構成される。ベンチマークデータ48は学年・学期・回数情報50、単元情報52、及び項目情報54の要素から構成される。
【0050】
サブスタンダーズデータ32はスタンダーズ情報56とサブスタンダーズ情報58の要素から構成される。サブスタンダーズ情報58はねらい情報60、視点情報62、調査力情報64、整理力情報66、推論力情報68、及び表現力情報70の要素から構成される。
【0051】
ベンチマークデータ30とサブスタンダーズデータ32共通のデータは、ゴール情報40、サブゴール情報42、及び科目情報44の要素から構成される。
【0052】
プロフィシエンシーデータベース28内においては、各情報が適合するように記録されている。
【0053】
ベンチマークデータ30は、データベースサーバ18が生徒知識・技術力評価データ36の演算をするのに使われる評価基準のデータである。コンテンツ情報46は各科目が行う学習項目の情報である。ベンチマークス情報48は各授業回の学習項目である。学年・学期・回数情報50は生徒の学年、受ける時期、及び単元情報52の順番の情報である。単元情報52は各科目の学習内容の一文節の名称の情報である。項目情報54は学習内容の1文節のテーマを表す情報である。なお図6の項目情報56の欄には、生徒が正解したテストの問題に該当する項目情報54には○が、不正解であった問題に該当する項目情報54には×が記録されている。
【0054】
サブスタンダーズデータ32はデータベースサーバ18が生徒運用力評価データ38の演算をするのに使われる評価基準のデータである。スタンダーズ情報56はゴールを目指す上で各教科が担う熟達レベルの情報である。サブスタンダーズ情報58は単元(授業)ごとの学習のねらいの情報である。ねらい情報60は単元において共通する学習の目標の情報である。視点情報62は単元において生徒が身につけるべき学習内容の情報である。調査力情報64は各視点情報62に0から2の点数で配分されている、調査力の評価基準となる点数情報である。整理力情報68は各視点情報62に0から2の点数で配分されている、整理力の評価基準となる点数情報である。推論力情報68は各視点情報64に0から2の点数で配分されている、推論力の評価基準となる点数情報である。表現力情報70は各視点情報62に0から2の点数で配分されている表現力の評価基準となる点数情報である。
【0055】
ゴールデータ40は進学準備教育として4科目が共通で目指すものの情報である。サブゴール情報42はゴール40の中身を細分化して説明したものの情報である。科目情報44は生徒が学習しテストする科目の情報である。
【0056】
生徒データベース34は、生徒知識・技術力評価データ36及び生徒運用力評価データ38の集合体であるデータベースである。生徒知識・技術力評価データ36は、知識・技術力の評価を示す個々のデータである。生徒運用力評価データ38は、運用力を示す個々のデータである。
【0057】
教育者は本発明の第1の実施の形態における実施に先立ち、学生に対し学生の知識・技術力、運用力を試すテストを行う。その結果、図4のようなテスト結果22が得られる。図4の場合、正解には○、不正解には×が付いている。テストは各問題がそれぞれ、ベンチマークデータ30の項目情報54、スタンダーズデータベース32の視点情報62に該当している。」、
「 【0062】
データベースサーバ18はデータベース20への記録と同時にプログラムデータベース24のプログラム26、ベンチマークデータ30、及びサブスタンダーズデータ32を利用して、データベースサーバ18にあるテスト結果22から、生徒の知識・技術力、運用力を演算し、生徒知識・技術力評価データ36、生徒運用力評価データ38を作成する。
【0063】
データベースサーバ18は生徒の知識・技術力を次のように演算する。テスト結果22において各問題に正解したとの情報の場合、ベンチマークデータ30において項目情報54に○と記録される。また不正解であったとの情報の場合、ベンチマークデータ30において項目情報54に×と記録する。そして○と記録された項目情報54の数を生徒知識・技術力評価データ36に記録する。
【0064】
データベースサーバ18は生徒の運用力を次のように演算する。テスト結果22において各問題に正解したとの情報の場合、ベンチマークデータ30の各視点情報62に配分されている調査力情報64、整理力情報66、推論力情報68、表現力情報70の点数を有効点数と記録する。また不正解であったとの情報の場合、ベンチマークデータ30の各視点情報54に配分されている調査力情報64、整理力情報66、推論力情報68、表現力情報70の点数を無効点数と記録する。そしてこの有効点数と記録された全ての点数を生徒の運用力の評価と記録し、これを生徒運用力評価データ38に記録する。
【0065】
実施の形態により、運用力の内の調査力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている調査力情報64の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。
【0066】
実施の形態により、運用力の内の整理力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている整理力情報66の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。
【0067】
実施の形態により、運用力の内の推論力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている推論力情報68の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。
【0068】
実施の形態により、運用力の内の表現力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている表現力情報70の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。(ステップA20)。
【0069】
データベースサーバ18は、作成した生徒知識・技術力評価データ36、及び生徒運用力評価データ38に図5の評価表のような形式を持たせる。
【0070】
図5の評価表においては、ベンチマークの縦の行に生徒の知識・技術力が、サブスタンダードの行に生徒の運用力が調査力、整理力、推論力、表現力に分かれて示されている。
データベースサーバ18は、このようにして形式を持った各データを生徒データベース34に記録すると共に、教育者端末10に表示する(ステップA30)。
【0071】
第1の実施の形態を実施することにより、生徒の学習能力について生徒知識・技術力について評価するだけでなく、調査力、整理力、推論力、表現力を含む運用力についても客観的に評価可能となる。」、
「 【0074】
生徒私力基準80は、図9に示すようにベンチマークデータと同一の項目に分割されて対応し、各項目の私力の有無が予め登録される。すなわち、各項目に該当する問題を解決することが私力の評価点となる問題であるか否かを示すものであり、「○」を付した問題が解決できた場合は、私力の評価がなされることを意味し、「×」が付された問題を解決しても私力の評価に関係しないことを意味するものである。
【0075】
従って、このプログラム26が生徒私力基準80に従ってテスト結果を評価したデータが生徒データベース74内に記録される生徒私力データ76である。
【0076】
以下、図10のフローチャートに基づき知識・技術力、運用力の評価システムを説明していく。認証された教育端末10からテスト結果をデータベースサーバ82に入力する(b10)点は第1の実施例と同様である。
【0077】
次に、図7と比較して異なる点は、データベースサーバ82は生徒私力基準80を利用して、テスト結果22と生徒私力基準から、生徒の私力を演算し、生徒私力評価データ76を作成する(b20)。
【0078】
すなわち、各設問または項目ごとに私力を試す設問であるかが予め定められて、生徒私力基準に記憶されている。そこで、データベースサーバ82は、入力されたテスト結果において、正解であった解答であって、かつ私力を試す設問と設定された解答数を私力と評価する。その解答数がテスト結果の私力となる。
【0079】
算出された私力は、教育者端末10へ対して生徒知識・技術力評価データと、生徒運用力評価データと同様に生徒私力データとして送信されて表示部に結果表示される(b30)。
【0080】
第2の実施の形態に示されるプロフィシエンシー評価システムを実施することにより、生徒の学習能力について生徒知識・技術力と、調査力、整理力、推論力、表現力を含む運用力についても客観的に評価可能となるだけでなく生徒の私力の評価が可能となる。」

b 上記aによれば、本願補正発明は、従来の知識偏重型の教育手法の課題を踏まえて開発された、知識・技術力のほか、知識を生かす運用力、目的に興味関心を持って積極的に取り組む私力を評価し、その能力を高めるという新教育手法において、これら能力を、評価者に左右されることなく評価することができるシステムを提供するものということができる。

c そして、相違点3に係る本願補正発明の構成は、テストが、上記aの「知識・技術力」、「運用力」を試すものであることを特定し、また、「知識・技術力」、「運用力」、「私力」の算出及び記録手法、さらには、表示手法をある程度具体的に特定したものと認められる。

d しかるに、前記ウ(キ)のとおり、引用発明は、テスト結果をデータベースに送信して学習者の複数の能力を数値で評価、記録、表示する点において、本願補正発明と一致するところ、学習者の能力をどのような観点で評価し、どのように点数化するか、また、かかる評価に適したテストとする点は、教育手法としては重要な問題であるとしても、これらの点において自然法則は何ら関与するものではなく、技術思想である発明について論じる上では、教育者の所望に応じて適宜なされる設計的事項以上のものということはできない。
そして、学習者の能力をどのような観点で評価し、どのように点数化するかが定まれば、これらの能力を点数化し、記録し、表示する機能をデータベースサーバにもたせることに何ら技術上の困難はない(なお、この点は、平成20年6月23日付け回答書において請求人が示した補正案によるとしても、同様である。)。

e したがって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。

オ 小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 本件補正1について
(1)本件補正1の内容
ア 本件補正1は、特許請求の範囲につき、補正前の
「【請求項1】
体系化された知識と操作とを測定する知識技術測定手段と、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を測定する運用力測定手段と、知的好奇心と知的関心とを測定する私力測定手段とからなり、学習者の能力を評価してさらに高めるプロフィシエンシーシステム。
【請求項2】ないし【請求項5】(省略)
【請求項6】
体系化された知識と操作とを測定する知識技術を測定し、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を示す運用力を測定し、知的好奇心と知的関心とを測定する私力を測定して、学習者の能力を評価してさらに高めるプロフィシエンシープログラム。
【請求項7】及び【請求項8】(省略)」(出願当初のもの。)

「【請求項1】
プログラムデータベースとテストデータベースと生徒データベースとプロフィシエンシーデータベースと接続されるデータベースサーバと、認証サーバと接続されるプロフィシエンシーシステムにおいて、体系化された知識と操作とを測定するために前記テストデータベースに記録されたテスト結果から前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたベンチマークデータに従って正解した正解数を記録することで知識・技術力を評価する知識技術測定手段と、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を測定するために前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたサブスタンダーズデータに従って問題によって予め定められている視点情報と調査力情報と推論力情報と表現力情報の点数を算出することで運用力を評価する運用力測定手段と、前記プロフィシエンシーデータベースに記録された生徒私力基準に従って知的好奇心と知的関心とを測定することで私力を評価する私力測定手段とからなり、学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示するプロフィシエンシーシステム。
【請求項2】ないし【請求項5】(省略)
【請求項6】
プログラムデータベースとテストデータベースと生徒データベースとプロフィシエンシーデータベースと接続されるデータベースサーバと、認証サーバと、教育者端末に接続されて、体系化された知識と操作とを測定するために前記テストデータベースに記録されたテスト結果から前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたベンチマークデータに従って正解した正解数を記録することで知識・技術力を評価する知識技術測定手段と、情報を整理して推論して構想し事実を調査してまとめて表現する能力を測定するために前記プロフィシエンシーデータベースに記録されたサブスタンダーズデータに従って問題によって予め定められている視点情報と調査力情報と推論力情報と表現力情報の点数を算出することで運用力を評価する運用力測定手段と、前記プロフィシエンシーデータベースに記録された生徒私力基準に従って知的好奇心と知的関心とを測定することで私力を評価する私力測定手段をそなえるプロフィシエンシーシステムによって、学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して表示手段で表示するプロフィシエンシープログラムにおいて、前記データベースサーバが前記テスト結果を前記教育者端末から受信するステップと、前記データベースサーバが送信された前記テスト結果から有効点数を算出して生徒データベースに格納するステップと、さらに教育者端末に知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示させるステップとからなるプロフィシエンシープログラム。
【請求項7】及び【請求項8】(省略)」(下線は、当審において付した。)
に補正する内容を含むものである。

イ 上記アによれば、本件補正1による補正後の請求項1に係る発明は、「プロフィシエンシーシステム」が「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示する」ものであり、同じく請求項6に係る発明は、「プロフィシエンシープログラム」が「教育者端末に知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示させるステップ」を備えるものであることが認められる。

(2)原査定の拒絶理由について
ア 原査定の拒絶理由の内容
原査定の拒絶理由である、平成18年1月23日付けで通知された拒絶理由の「理由A」は、概略、「平成17年11月14日付けでした手続補正(当審注 本件補正1を指す。)は、請求項1に「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示する」との記載を追加した点、及び、請求項6に「さらに教育者端末に知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示させるステップ」との記載を追加した点で、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」というものである。

イ 判断
(ア)本願の願書に最初に添付した明細書(以下「本願当初明細書」という。)には、知識・技術力と運用力と私力を表示する事項に関して、以下の記載が認められる。

a 「【発明の実施の形態】
【0023】
出願人が鋭意研究した本発明の根幹をなす学習力の評価手法は図1のように知識・技術力、運用力(運用力は情報を明らかにする力(調査力)、情報を操作する力(整理力)、情報を導く力(推論力)、及び情報に形を与える力(表現力)からなる)、私力の3次元の軸で表示することができ、その学生の3つの力を総合した全体的な力は3次元空間2に表示することができる。4で示す軸は学生が身につけている知識・技術力の大きさを意味する知識力軸4であり、6で示す軸は学生が身につけている運用力の大きさを示す運用力軸6であり、8で示す軸は学生が身につけている私力の大きさを示す私力軸8である。
【0024】
本発明の評価システムによる評価によると、学生を知識・技術力、運用力、私力の各力の相対量によってI型からVII型までの6つの類型に分けることができる。
【0025】
I型の学生の知識・技術力、運用力、私力は、図2の(a)に示すように、知力と私力に比較して運用力が相対的に高い。この学生の場合、運用力が高いものの、知識・技術力、私力が低い。そのためサーバが示す全体的な力の評価データは図2(a)に示すような運用力軸6の方に長く伸びた直方体となっている。
【0026】
この型の評価データを見ると、知識・技術力が低く運用力が高いことから、日常生活においても、普段の会話で相手の話の些末な部分に難癖を付けるにとどまり、自主性が乏しいことが分かる。またこの型の学生は、何か仕事をするにしても、仕事に対する積極性もなく、仕事に対する知識不足により完成度の高い業務の遂行に難があることから、仕事の進み具合が雑になって、良い仕事ができない。
【0027】
II型の学生の知識・技術力、運用力、私力は、図2の(b)に示すとおりである。この学生の場合、運用力、私力が高いものの、知識・技術力が低い。そのためサーバが示す全体的な力の評価データは図2(b)に示すような運用力と私力軸8の方に長く伸びた直方体となっている。
【0028】
この型の学生は、運用力、私力が高いことから、他を顧慮することなく自分勝手に振る舞う性格を持つが、大成すれば偉大な研究者になる可能性を有する。この型の学生は仕事をする際には、仕事の進行の速度に着目し、目の前の作業を行いながら次に行うべき作業を行う傾向がある。自分が考える方法によって進めようと試みるが、その仕事の進行の段取りがとれないため、目先のことに心を奪われ、せわしく仕事を行うことになる。
【0029】
IV型の学生の知識・技術力、運用力、私力は、図2の(c)に示すとおりである。この学生の場合、私力が高いものの、知識・技術力、運用力が低い。そのためサーバが示す全体的な力の評価データは図2(c)に示すような私力軸8の方に長く伸びた直方体となっている。
【0030】
この型の学生は、私力が高いことから、自分の身の回りにある仕事を好き嫌いせずに積極的に行おうと試みるものの、仕事の段取りを知らず、また不測の事態の際の臨機応変も利かないことから、仕事が完成する可能性は低く、その積極性は価値のないものになることが多い。たとえこの型の学生の行う仕事が取るに足らないものであったとしても、この型の学生は自己満足して、それを価値のあるものと誤認する傾向がある。この型の学生に自分の身の回りにおきる事象について意見を求めても、常に自分を比較の中心に据えてしまい、より良い意見が帰ってくる可能性は低い。
【0031】
V型の学生の知識・技術力、運用力、私力は、図2の(d)に示すとおりである。この学生の場合、知識・技術力が高いものの、運用力、私力が低い。そのためサーバが示す全体的な力の評価データは図2(d)に示すような知識力軸4の方に長く伸びた直方体となっている。
【0032】
この型の学生は、自分が持つ知識に自信を持ち過ぎており、知識を当てはめれば解答がすぐに出る問題は答えられるものの、自分の知識では答えられない問題や知識を加工してはじめて答えられる問題が与えられると、解答を出すのに時間が掛かって焦ったり、答えられずに混乱したりする。また他人とは違う考えを持とうとする積極性がなく、他人が決めた規則に従ったり、自分と同じような仕事を以前した他人と同じ判断に従ったりして仕事を行う傾向がある。
【0033】
VI型の学生の知識・技術力、運用力、私力は、図2の(e)に示すとおりである。この学生の場合、知識・技術力、私力が高いものの、運用力が低い。そのためサーバが示す全体的な力の評価データは図2(e)に示すような知識力軸4と私力軸8の方に長く伸びた直方体となっている。
【0034】
この型の学生は、知識・技術力が高いため、仕事を完成する確率はIV型の学生よりは高い。しかし運用力が低いため、臨機応変の対応ができずに仕事が失敗する事も多い。他人の話を理解する能力に優れてはいるが、自分の思想と反するところがあると、頑なに拒絶する傾向を有する。他人を利用すれば早く解決する問題があっても、自分の力を信じ解答を自分で見つけだして満足しようとする。日常の会話でも自分が興味を持つ話題の場合には積極的に参加しようと試みるが、その会話の内容を熟知した後はその会話をしている集団から離れようとする性格の持ち主である。
【0035】
VII型の学生の知識・技術力、運用力、私力は、図2の(f)に示すとおりである。
この学生の場合、知識・技術力、運用力が高いものの、私力が低い。そのためサーバが示す全体的な力の評価データは図2(f)に示すような知識力軸4と運用力軸6の方に長く伸びた直方体となっている。
【0036】
この型の学生は、普通の学生より多くの価値のある知識を有しており、人に自分の知識を教えようとする傾向がある。また普段の会話でも会話の内容を簡単な言葉で表現して会話の参加者を納得させることに関心があり、自分がその会話の内容を吟味したりすることには執着を見せない。自分の知識に自信を持ち過ぎているので、他人が理解するのに必要な途中の説明を省略することがあり、必要な説明が省略されたことを指摘された後でその必要な説明をするという失敗をすることが多い。」

b 「 【0037】
以下、本発明の第1の実施の形態を図3から図7に基づいて説明する。図3は本発明の第1の実施の形態である知識・技術力、運用力の評価システムの構成図、図4は教育者端末から入力される知識・技術力、運用力のテストの解答の一例、図5は発明の実施の結果、作成される生徒の知識・技術力、運用力の評価を示す一例としての評価表、図6は評価の基準となるプロフィエンシーシートの一例、図7は図3の構成図に基づく知識・技術力、運用力の評価システムのフローチャートである。
【0038】
図3において、9は本実施の形態1のプロフィシエンシーシステム、10は教育者端末、17は認証サーバ、18はデータベースサーバ、20はテストデータベース、22はテスト結果データ、24はプログラムデータベース、26はプログラム、28はプロフィシエンシーデータベース、30はベンチマークデータ、32はサブスタンダーズデータ、34は生徒データベース、36は生徒知識・技術力評価データ、38は生徒運用力評価データを示している。
・・・
【0058】
以下、図7のフローチャートに基づき知識・技術力、運用力の評価システムを説明していく。
・・・
【0063】
データベースサーバ18は生徒の知識・技術力を次のように演算する。テスト結果22において各問題に正解したとの情報の場合、ベンチマークデータ30において項目情報54に○と記録される。また不正解であったとの情報の場合、ベンチマークデータ30において項目情報54に×と記録する。そして○と記録された項目情報54の数を生徒知識・技術力評価データ36に記録する。
【0064】
データベースサーバ18は生徒の運用力を次のように演算する。テスト結果22において各問題に正解したとの情報の場合、ベンチマークデータ30の各視点情報62に配分されている調査力情報64、整理力情報66、推論力情報68、表現力情報70の点数を有効点数と記録する。また不正解であったとの情報の場合、ベンチマークデータ30の各視点情報54に配分されている調査力情報64、整理力情報66、推論力情報68、表現力情報70の点数を無効点数と記録する。そしてこの有効点数と記録された全ての点数を生徒の運用力の評価と記録し、これを生徒運用力評価データ38に記録する。
【0065】
実施の形態により、運用力の内の調査力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている調査力情報64の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。
【0066】
実施の形態により、運用力の内の整理力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている整理力情報66の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。
【0067】
実施の形態により、運用力の内の推論力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている推論力情報68の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。
【0068】
実施の形態により、運用力の内の表現力も記録する必要がある場合には、各視点情報62に配分されている表現力情報70の点数であって、有効点数と記録されたものの全ての合計点を生徒運用力評価データ38に記録する。(ステップA20)。
【0069】
データベースサーバ18は、作成した生徒知識・技術力評価データ36、及び生徒運用力評価データ38に図5の評価表のような形式を持たせる。
【0070】
図5の評価表においては、ベンチマークの縦の行に生徒の知識・技術力が、サブスタンダードの行に生徒の運用力が調査力、整理力、推論力、表現力に分かれて示されている。データベースサーバ18は、このようにして形式を持った各データを生徒データベース34に記録すると共に、教育者端末10に表示する(ステップA30)。
・・・
【0072】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態を図4、図5、図6、及び図8から図10に基づいて説明する。図8は本発明の実施の一部である知識・技術力、運用力、私力の評価システムの構成図、図9は評価の基準となる生徒私力基準のプロフィエンシーシートの一例、図10は図8の構成図に基づく知識・技術力、運用力の評価システムのフローチャートである。
・・・
【0077】
次に、図7と比較して異なる点は、データベースサーバ82は生徒私力基準80を利用して、テスト結果22と生徒私力基準から、生徒の私力を演算し、生徒私力評価データ76を作成する(b20)。
【0078】
すなわち、各設問または項目ごとに私力を試す設問であるかが予め定められて、生徒私力基準に記憶されている。そこで、データベースサーバ82は、入力されたテスト結果において、正解であった解答であって、かつ私力を試す設問と設定された解答数を私力と評価する。その解答数がテスト結果の私力となる。
【0079】
算出された私力は、教育者端末10へ対して生徒知識・技術力評価データと、生徒運用力評価データと同様に生徒私力データとして送信されて表示部に結果表示される(b30)。」

c 「【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の根幹をなす学習力の評価手法の概念図を示す。
【図2】本発明に係る学生の知識・技術力、運用力、私力の評価例のグラフであり、(a)?(f)にI型からVII型を示す。
・・・
【図5】本発明の第1の実施の形態における知識・技術力、運用力のテストの解答評価データの構成図である。
・・・」

(イ)本願の願書に最初に添付した図面(以下、同図面と「本願当初明細書」とをあわせて「本願当初明細書等」という。)には、知識・技術力と運用力と私力を表示する事項に関して、以下の図1、図2及び図5の記載が認められる。

a 図1


b 図2


c 図5


(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、本願当初明細書等には、概略、次の事項が記載されているものと認められる。

a 本発明の根幹をなす学習力の評価手法は図1のように知識・技術力、運用力(運用力は情報を明らかにする力(調査力)、情報を操作する力(整理力)、情報を導く力(推論力)、及び情報に形を与える力(表現力)からなる)、私力の3次元の軸で表示することができ、本発明の評価システムによる評価によると、学生を知識・技術力、運用力、私力の各力の相対量によって、図2の(a)ないし(f)に示されるI型からVII型までの6つの類型に分けることができる((ア)a及びc並びに(イ)a及びb参照。)。

b データベースサーバ18は、ベンチマークデータ30において項目情報54に○と記録された項目情報54の数を生徒知識・技術力評価データ36に記録し、また、テスト結果22において各問題に正解したとの情報の場合、ベンチマークデータ30の各視点情報62に配分されている調査力情報64、整理力情報66、推論力情報68、表現力情報70の点数を有効点数と記録し、これらを生徒運用力評価データ38に記録する。さらに、データベースサーバ82は、入力されたテスト結果において、正解であった解答であって、かつ私力を試す設問と設定された解答数を生徒私力データに記録する。そして、これらのデータを数値として教育者端末10に表示する((ア)b及びc並びに(イ)c参照。)。

(エ)上記(ウ)aのとおり、本願当初明細書等には、知識・技術力、運用力及び私力の3次元の軸で表示する事項が記載されているものの、当該事項は、学習力の評価手法を説明するものとして記載されるにとどまり、また、上記(ウ)bのとおり、教育者端末に表示される内容も数値として表示されることが記載されるにとどまるのであって、「プロフィシエンシーシステム」が「学習者の知識と技術力と調査能力と整理力と推論力と表現力とをそれぞれ評価するためのテスト結果を予め定めた評価基準から点数化して知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示する」ものであること、あるいは、「プロフィシエンシープログラム」が「教育者端末に知識・技術力と運用力と私力を3次元軸で表示させるステップ」を備えるものであることは、本願当初明細書等に記載されておらず、本願当初明細書等に記載した事項から当業者が自明にできる事項ともいえない。

(オ)そうすると、前記(1)アの補正の内容を含む本件補正1が、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできないから、本件補正1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-14 
結審通知日 2009-04-15 
審決日 2009-04-28 
出願番号 特願2004-50584(P2004-50584)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G09B)
P 1 8・ 55- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安久 司郎  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 稲積 義登
三橋 健二
発明の名称 プロフィシエンシーシステムおよびプロフィシエンシープログラム  
代理人 浜田 治雄  
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