芸能事務所を銃撃じゅうげきした後。



 天野と涼太は軽井沢かるいざわでしばしの時を過ごした。



 川釣りを楽しんだり、旧道沿いのオシャレなカフェでお茶したり、アウトレットモールで買い物したりと、これでもかと軽井沢を満喫。



 おびえていた涼太も、2日目には可愛い女の子をナンパして連絡先をゲット。



 それで平常運転に戻った。



佐伯涼太

やっぱり軽井沢はいいねぇ。
さすがジョンレノンも愛した避暑地ひしょちだよ。
地元の女の子もイケてる娘ばかりだし。
早く股間のマグナムを撃ちまくりたいねぇ。



 そんなことを言い出すほど元気になった。


 マスコミは『電脳学博士』による銃撃事件を大きく取り扱っているが、「襲撃者の正体は不明」ほうじている。


 『爆発』『脅迫』『銃撃』と、恐ろしいほどの襲撃を繰り返しているのに、警察は『電脳学博士』の尻尾さえ掴めていない。


 涼太は別荘にあるPCを眺めながら、ソファでくつろいでいる天野に尋ねた。


佐伯涼太

姫ちゃんはまだ『電脳学博士』として暴れ回ってるねぇ。
これは大丈夫なのかな?
姫ちゃんが逮捕されたりしない?
僕はそれが心配なんだけど。

天野勇二

この状況でも捕まらない、というのが『電脳姫』の強みだよ。
まぁ、正確に言えばそれだけ『匿名化ソフト』というものが優れているのさ。
『匿名化ソフト』が完全に規制されるまで、姫子はネットを荒らし続けるだろうな。

佐伯涼太

ふぅん。
僕にはよくわからないけど、姫ちゃんは凄いんだね。

天野勇二

一言で済ませれば、そういうことだ。

佐伯涼太

いつになったらトロイの『真犯人』は動くのかな?
今や全ての情報番組ワイドショーが『電脳学博士』の話題で持ち切り。
みんな『遠隔操作トロイウイルス事件』のことなんか忘れてるよ。
自己顕示欲じこけんじよくの強い『真犯人』には耐えられない展開のはずだよね。


 天野はタバコをくわえながら頷いた。


天野勇二

そうだな……。
自らの『手柄』が電脳学博士に上書きされ、完全に奪われようとしている。
静観せいかんを貫けるはずがない。
そろそろ尻尾を出しても良い頃だ。

佐伯涼太

僕たちはいつまで軽井沢にいればいいの?
そろそろスマホちゃんが恋しいんだけど。

天野勇二

まだ我慢しろ。
今の俺たちは警察に追われている『お尋ね者』だ。
逮捕されることはないと思うが、椎名たちが強硬手段きょうこうしゅだんに出る可能性も否定できない。
事態が進展するまでは軽井沢で待機だな。

佐伯涼太

そっかぁ……。
僕たちはともかく、姫ちゃんが勾留こうりゅうされることは避けたいね。
姫ちゃんは作戦のキモだし、警察に尋問じんもんされたら泣いちゃいそうだし……。

……あっ!


 涼太が口笛を吹きながらPCを指さす。


佐伯涼太

噂をすれば!
姫ちゃんからのメールだよ!


 姫子からのメールが天野と涼太に送信されている。


 それは実に色気いろけのないものだった。


 姫子は大人しくてシャイで寡黙かもくな女の子。


 メールも寡黙かもくだ。




板垣姫子(メール)

接触あり。
可能性特大。




 これだけ書かれている。


 涼太は苦笑しながら言った。


佐伯涼太

シンプルイズベストなメールだねぇ。
ついに真犯人の尻尾を掴んだのかな?

天野勇二

ありえるな。
電話してみよう。


 別荘にある固定電話で姫子を呼び出す。


 姫子はすぐに出た。


板垣姫子

もしもし……?

天野勇二

天野だ。
進展があったようだな。
真犯人が接触してきたのか?

板垣姫子

うん……。
ついに……きた……。


 か細く小さい声だが、どこか興奮している様子だ。


天野勇二

『真犯人』が『電脳学博士』にコンタクトしてきた、ということか?

板垣姫子

そう……。
メール……してきた……。
可能性、特大……。

天野勇二

間違いないだろうな?
自慢の『プロファイリングソフト』で解析かいせきしたのか?

板垣姫子

もち……。
A5ランク……。
特上の……お肉……。
おなか……いっぱい、なる……。


 受話器の向こうで、小さな「いしし…」という笑い声が響く。


 天野は満足気に言った。


天野勇二

それは実に楽しみだ。
今から東京に戻る。
一旦『電脳学博士』は休息に入れ。
作戦を次のステップに進めるぞ。





 天野と涼太は急いで軽井沢を飛び出し、都内にある大学へ向かった。


 天野は「椎名が大学を張り込んでいるかもしれない」と警戒していたが、そんな様子は見受けられない。


 キャンパスは平穏へいおんな空気に満ちている。


佐伯涼太

お巡りさんの姿は見えないね。
任意同行にんいどうこうっていう楽しいデートに誘われるかなって、ちょっと不安だったんだけど。

天野勇二

マークされている気配も感じないな。
恐らくお前が落とした『拳銃』から、俺たちの痕跡こんせきを発見することはできなかったのだろう。
少しだけ物足りんな。

佐伯涼太

全然物足りなくないよ。
マジで良かった。
拳銃を撃つなんて、あれが最後になればいいんだけど。


 ため息を吐きながら電脳部の部室へ向かう。


 部屋に入ると、姫子がぴょんぴょん飛び跳ねながら、天野の腕を掴んだ。


 無表情な女の子だが、どこか嬉しそうに見える。


板垣姫子

こっち……。


 天野の腕をしっかりと掴み、ディスプレイの前まで誘導している。


佐伯涼太

(……おや? 随分と姫ちゃん、積極的じゃないの)


 涼太は姫子の変化を素早くぎとった。


 いつもの姫子であれば、半纏はんてんくるまりながら椅子に座っているだけ。


 それがわざわざ立ち上がり、天野の腕をためらいもなく掴んでいるのだ。


佐伯涼太

(シャイなお姫様にしては珍しいね。勇二が肩に手を置いたら、真っ赤になってフリーズしちゃう乙女おとめなのに。何かあったのかな?)


 ニヤニヤしながら姫子の様子を見守る。


 姫子はディスプレイの前に天野を連れて行くと、


板垣姫子

これ……。

天野勇二

どれどれ。
A5ランクを堪能たんのうするか。


 1人の人物から送信されたメールを指さした。





拝啓 電脳学博士さま

あなたのご活躍を見せてもらった。
あなたは出しゃばりすぎだ。

この私を愚弄ぐろうする発言の数々。
この私より自分が上だという誤った認識。
何もかも許すことはできない。

私が『遠隔操作トロイウイルス事件』を起こしたんだ。
これ以上邪魔な存在になるなら、抹殺する。





 姫子はいくつかの掲示板に『捨てアド』を残している。


 そのひとつを辿たどって送信されたメールだ。


天野勇二

これだけでは確証に至らないな。
A5ランクだと判断した理由を教えてくれ。

板垣姫子

お返事……してみた……。


 画面を切り替えて、自らが送信したメールを表示させる。





電脳学博士

我輩は電脳学博士。

あなたは偽物でしょう?
自宅警備のお仕事に励むのもいいけど、 ハローワークにでも通ったら?
こちらは真犯人にしか興味ない。
本物だという証拠もないのに、笑わせてくれる。

我が死んでも自由は死せず。
You Can't See Me.
If you want some, come get some.





 これまで姫子の元には、『真犯人』を名乗る人物からのメールが何通も届いている。


 姫子はその度にこの返事を送っている。


 大抵たいていはこの後の返信がない。


 あってもくだらない内容ばかりだ。


 ところが「A5ランク」は、ご丁寧にもプレゼントを送信してきた。





クソが。
マジでむかつくぜ。
俺は偽物じゃない。
本物のトロイを送信してやる。





 この短いメールにファイルが添付てんぷされていた。


 姫子が慎重に中身を確かめたところ、脅迫状を送信してしまう『トロイプログラム』であることが判明したのだ。


板垣姫子

トロイ……送ってきた……。
ビックリ……。

天野勇二

そのトロイは本物なのか?
真犯人が仕組んだもので間違いないのか?

板垣姫子

確率、高い……。
ソースコード……似てる……。


 あまりに口数が少ないので、何を伝えたいのかわかりにくいが、


「相手が送ってきた『トロイプログラム』は、今回の事件で使用された可能性が高いの。警察はソースコードの一部を公開しているけど、それとも完璧に一致する。この状態で送ることができるのは真犯人だけ。9割の確率で本物だと思う」 


 と告げているのだ。


天野勇二

なるほど……。
それは確かにA5ランクだ。
やっと『真犯人』の尻尾が見えたワケか。


 天野は腕組みして思案し始めた。


 ようやく姿を見せた『真犯人』と思われる人物。


 これをずっと待っていたのだ。



天野勇二

(やはり姫子に接触してきたか。しかも想定通り『電脳学博士』への怒りを抱いている。さて、どのように料理してやるかな……)



 独り言をブツブツ呟きながら、部室をぐるぐると歩き回る。


 天野が『作戦』を練る時のくせだ。


 涼太はとりあえず姫子を賞賛しょうさんすることにした。


佐伯涼太

やっぱり姫ちゃんはゴイスーだねぇ。
ついに獲物を釣り上げたんだ。
いよっ、この天才スーパーハッカー!

板垣姫子

うん……。
釣った……。

佐伯涼太

これで僕を無視シカトしなければ最高……。

……あれ?
おやっ!?
い、今、僕のことを無視シカトしなかったよね!?

板垣姫子

…………

佐伯涼太

僕は聞き逃さなかったよ!
さっきは無視シカトしなかった!
やっと僕にも心を開いたんだ!

板垣姫子

…………

佐伯涼太

まったく姫ちゃんはツンデレなんだからぁ。
そうだ!
次はコンパに行こう!
姫ちゃんに素敵なメンズを紹介しちゃうよ!

板垣姫子

…………

佐伯涼太

誰がいいかなぁ?
浮気をしない一途いちずなヤツがいいよね。
それでいて顔が良くて、頭も良くて、性格も良くて、車なんかも持ってて……。

板垣姫子

…………

佐伯涼太

……ああっ!
なんてことだ!
そんな好条件の男、僕しかいないじゃん!
姫ちゃんのベストパートナーは僕だったんだ!
今度一緒に秋葉原アキバへパーツでも観に行こうよぉ。

板垣姫子

……うるさい……。


 小躍こおどりしている涼太と、言葉をかけたことを後悔している姫子を無視して、天野は思案を続けている。


 どのように『真犯人』と対峙たいじするべきか。


 下手したてに出れば相手はつけ上がる。


 かといって高圧的こうあつてきな態度に出れば、こちらとの接触をってしまうだろう。


 天野は慎重に言葉を選びながら言った。


天野勇二

姫子よ。
一度、下手したてに出て相手の自己顕示欲じこけんじよくをくすぐろう。
次のように返信しろ。

本物の『真犯人』とは思わなかった。
できればそちらと手を組みたい。
こちらには果たしたい復讐がある。
どうか協力してくれないか、と送るんだ。

板垣姫子

おけ……。


 姫子が頷き、真犯人にメールを送信。


 数分後、PCから「ピコンピコン」と可愛らしい音が上がった。


 1通のメールを受信している。


板垣姫子

もう、きた……。

天野勇二

返信が早いな。
PCの前に張りついてやがる。
今は平日の夕方。
この時間は暇らしいな。





その態度なら話を聞いてやる。
お前の狙いはなんだ?
なぜ前島悠子だけを狙う?
俺には警察のメンツを潰したいという願いがある。
この俺の人生を変えた無能共への復讐だ。
お前の復讐はなんだ?





 天野は文面を眺めると、どこか納得したように呟いた。


天野勇二

……コイツ、前科ぜんかがあるな。


 涼太が「ビクン」とその言葉に反応する。


佐伯涼太

……マジで?
真犯人は前科マエ持ち』ってこと?

天野勇二

ああ、警察のことを『人生を変えた無能』と表現している。
コイツは警察に『強すぎる自己顕示欲を潰された恨み』を抱いているのさ。
何らかの罪を犯したのだろう。
警察に恨みを抱くなんて、その可能性が圧倒的に高いからな。

佐伯涼太

うげぇ……。
ただの愉快犯イタズラだと思ったのに。
前科マエ持ちなんてクソ怖い。
何をしたのかな?

天野勇二

確率論でいえば『再犯』の可能性が高い。
犯罪者とは自分が気に入った手段に固執こしつする傾向がある。
俺様が乱暴な罠を張り、最後は暴力で処刑するのと同じだよ。

佐伯涼太

説得力のある言葉だねぇ。
勇二は立派な犯罪者だもの。
まぁ、発砲はっぽうした僕も同類なんだけどさ……。

天野勇二

もし『真犯人』が復讐を願っているのであれば、過去に自分を逮捕した連中を狙うだろう。
この事件で狙われているのは『サイバー犯罪対策課』であるCSPだ。
何らかの『サイバー犯罪』で逮捕されて有罪判決を食らい、CSPを逆恨みしているのかもしれんな。

佐伯涼太

それってつまり……。
過去に『トロイプログラム』をばら撒いて検挙けんきょされた、ってこと?

天野勇二

そうとは言い切れない。
ネット経由で脅迫状を送りつけたのか。
個人情報を盗んだのか。
猥褻わいせつ画像を違法ダウンロードしたのか。
数が多すぎて絞りきれんな。


 軽く息を吐き、姫子に指示を飛ばす。


天野勇二

姫子よ。
すぐに返信してくれ。

こちらは前島悠子に対する個人的な恨みがある。
そして、ついでに1人の男を破滅に追い込む予定だ。
もし協力してくれるなら、そちらの復讐を手助けしても構わない、と送ってくれ。

板垣姫子

おけ……。


 華奢きゃしゃな指先がキーボードの上を走り、天野の言葉を文章に変える。


板垣姫子

おくった……。

天野勇二

さぁ、これにどう返信する?


 しばらくの間、真犯人からの返事はなかった。


 電脳部にはPCのファンがうなる音だけが響いている。


 3人は黙ってディスプレイを睨みつけた。


天野勇二

(この『釣り針』に食いつきやがれ。お前の敵は警察だけのはずだ。電脳学博士という第三者を使わない手はないぜ)


 天野の願いに応えるように、PCが「ピコンピコン」と可愛らしい音をあげた。


板垣姫子

きた……。


 真犯人からのメールを素早く表示する。





怪しいな。
復讐の動機を語らないヤツは信用できない。
お前と手を組む必要はない。
この俺だけで復讐は実現できるんだ。
この事件から消えなければ、お前も抹殺するぞ。




 天野は舌打ちしながら画面を睨みつけた。


天野勇二

チッ……。
動機が知りたいならお前から語れよ。
姫子、もう一度メールを送れ。

こちらには共闘きょうとうする意思がある。
それにおうじないのであれば敵として認識する、と送るんだ。


 こくこくと頷き、姫子が素早くメールを送信。


 今度の返信はあっという間に返ってきた。




うざい。
もうお前と話すことはない。




 交渉決裂こうしょうけつれつだ。


 涼太が呆れたように声をあげる。


佐伯涼太

この人、なんで共闘の誘いを蹴ったのかな?
結構メリットがあると思うのに。

天野勇二

それだけ警戒心が強いのさ。
姫子という存在が事件を起こしている。
そのこと自体も半信半疑はんしんはんぎなのだろう。

佐伯涼太

こっちも手の内を明かせば良かったかな?
トロイプログラムや拳銃なんかを見せるとか。

天野勇二

それはそれでリスクが大きい。
そんな物的証拠をくれてやるワケにはいかん。

姫子よ。
もう下手したてに出るのは終わりだ。
共闘の誘いを断ったことを後悔させてやろう。
罵詈雑言ばりぞうごんのメールを送れ。


 悪い笑みを浮かべながら言葉を続ける。


天野勇二

お前は何もできないボンクラだ。
雑魚ザコの中の雑魚ザコだ。
人生において何ひとつげることのできない無能だ。
事実として、警察はもうお前のような小物を相手にしていない。
ネットに引きこもって実現できない復讐計画を練り続けろ。
その間に、こちらはもっと大きな事件を起こしてやる、とな。

板垣姫子

おけ……。
いしし……。


 姫子が唇を歪めながら罵倒ばとうの言葉を書き連ねる。


 『電脳姫』はすっかり『天才クソ野郎』とシンクロしている。


天野勇二

メールを送信したら、全てのメアドを消してしまえ。
相手にコンタクトする手段を与えず孤立こりつさせたい。

板垣姫子

わかった……。


 メールを送信すると同時に、全てのアドレスを削除。


 これで『電脳学博士』に接触できる人間はいなくなった。


 涼太が呆れたように呟く。


佐伯涼太

ようやく『真犯人』の尻尾が見えたけど、また見えなくなっちゃったね。
これで大丈夫なの?

天野勇二

ああ、問題ない。
また別の機会に接触すればいいだけさ。
俺たちは作戦を次のステップに進めるぞ。

佐伯涼太

次のステップ?
何をするつもりなの?

天野勇二

決まっているじゃないか。
お前の出番がやってきたんだよ。


 天野はどこか楽しそうに涼太を睨みつけた。


 底意地そこいじの悪い視線だ。


 そこに慈悲じひの欠片は存在しない。


 涼太は「ああ、ついにきちゃったのね」と感じた。


天野勇二

電脳学博士による『4件目の事件』を発生させる。
次の被害者はお前だ。
知っていると思うが、姫子のトロイにはお前を殺害するような『脅迫状』を仕込ませているんだ。
それを実行する。

佐伯涼太

はぁ……。
やっぱりそうなるんだ。


 涼太は肩を落としながら呟いた。


佐伯涼太

『実弾』まで送りつけちゃったから、芸能事務所のマークは厳しくなる。
次の襲撃はめっちゃ難しい。
だから標的を僕に変えるんだね。
そうなるんじゃないかと思ってたんだよ。
爆破、脅迫、銃撃、次は被害者の発生。
真犯人が泣いて震えるコンボを完成させるんだね。

天野勇二

その通りだ。
いくつか手段を考えている。
腕の骨を折るか。
足の骨を折るか。
鎖骨さこつ肋骨ろっこつを折るのか。
好きなものを選べ。

佐伯涼太

どれもイヤだよ!
他にないの!?
もっと平和的にお願いします!

天野勇二

腕を折るのがベストだろうな。
ついでに頭部を数針縫ってもらおうか。

佐伯涼太

聞いてないね!
僕の意思は!?
僕の意思はどこにあるの!?


 涼太の悲鳴を無視しながら、天野が姫子に指示を飛ばす。


天野勇二

姫子には『暗号パズル』の作成を頼みたい。
それを警察に『挑戦状』として送りつけるんだ。

板垣姫子

おけ……。
真犯人の……模倣マネを、するの……?

天野勇二

そうだ。
警察に『トロイの真犯人を模倣もほうしている』と思わせたい。
挑戦状の文面も可能な限り似せてくれ。

板垣姫子

どんな、パズルを……作れば……?

天野勇二

適当なもので構わない。
パズルを解き明かすと、『マイクロSDカード』の居場所がわかるようにしてくれ。


 涼太が驚いて尋ねる。


佐伯涼太

それって……。
僕が『涼子ちゃん』になってばら撒いた『トロイカード』のことだよね?
ここで使うんだ。

天野勇二

そうだ。
今は『10枚』のカードをばら撒いている。
1日ごとに1枚ずつ居場所を特定できる『暗号パズル』を送るのさ。
この作戦の目的は警察に、

「真犯人と電脳学博士はつながっているのか?」

という疑念を抱かせることだ。

板垣姫子

ふむ……。
まかせて……。


 姫子は素早くパズルの作成に入った。


 横浜よこはま代官山だいかんやまなど、涼太がばら撒いたカードを示す情報を仕込ませる。


 天野はそれを眺めながら、新たなマイクロSDカードを取り出した。


天野勇二

それに合わせて追加の『トロイカード』を作成してくれ。
カードの中に『真犯人』が送ってきたトロイプログラムと、姫子が作った『クソ脳』のトロイプログラムを保存するんだ。

これを俺がばら撒き、警察に『11枚目のトロイカード』として発見させる。
そうなれば警察は「本当に真犯人と電脳学博士はつながっていた」と思い込んでしまうだろう。
真犯人にとっては最悪の展開さ。


 天野はニタニタと唇を歪めている。


 涼太はそれを見つめながら「はぁ…」と感嘆かんたんの声を漏らした。


佐伯涼太

勇二は本当にえげつないことを考えるね……。
警察に

「真犯人と電脳学博士は共犯関係にある」

錯覚さっかくさせるつもりなんだ。
いや、むしろ『同一人物』だと思わせたいのかな?
そんでもって最終的には、『電脳学博士の罪』を真犯人に着せるつもりなの?

天野勇二

そういうことだ。
俺たちが仕出しでかした『爆発』『脅迫』『銃撃』の罪を、真犯人にそっくりプレゼントしてやる。
『トロイプログラム』を操る愉快犯だったはずなのに、いつの間にか世間を賑わす凶悪犯電脳学博士変貌へんぼうしてしまう……というワケさ。


 天野は極悪の笑みを浮かべながら言葉を続けた。


天野勇二

もう真犯人が逃げる場所は存在しない。
警察に泣きつくことも不可能。
解決不可能なサイバー犯罪であっても、天才クソ野郎にかかれば全てうまくいくんだ。
そのことを真犯人に教えてやろうじゃないか。






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つばこ

【つばこ好みの時事ネタだけど、さすがにこんなことは言わないだろうなぁと思ってボツにした姫ちゃんの台詞コーナー】
 
涼太くん「姫ちゃんのベストパートナーは僕だったんだ! 今度一緒にアキバへパーツでも観に行こうよぉ」
姫ちゃん「……うっせぇ……うっせぇ……うっせぇわ……。くせぇ口……塞げや……現代の……代弁者はわたし……やろがい(`ω´*)」
 
 
ようやく真犯人っぽいヤツが現れました。
念のため補足しますが、この人はちゃんと通信を秘匿化したうえでメールを送信しています。
メアドもたぶん捨てアドです。
なので、まだ真犯人が見つかっていない状況は変わらない、というワケですね。
 
次回は皆さまお楽しみにしていた涼太くんへの暴行!
正しさとは愚かさとは何か見せつけてやれ!
サディスティックに変貌する天野くんをお楽しみに!
いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(๑•̀ㅂ•́)

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コメント 16件

  • ちょぱ

    骨、ヤバい笑
    病院で偽診断書で匿うと信じたい笑

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  • さつき

    こわいお…。

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  • わみ

    涼太来週も生きて会おうね!!w

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  • カボルイス世ハピ天クソ契約

    涼太襲撃未遂じゃなくて怪我させられんのかw
    一応有段者なんだから、なんとか追い払えたってことにしちゃえば良いのにな 笑

    うーむ、なすりつけ作戦は分かるけど、ダンマリ決め込まれたらどうしようもなくなる上に逆になすりつけられる可能性もあるじゃん……?
    諸刃の作戦だけど大丈夫か?
    天野くんのプロファイルだと、これ以上さらに動くと読んでるのか……

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  • はと

    涼太、いい奴だったなぁ…。
    向こうの世界でも元気でな…。。

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