天野くんはヤクザとか、殺人犯とか、殺し屋とか、様々な悪党を相手に戦ってきましたが、不思議とそちらのほうがマシな『敵』に感じます。
だって殴り飛ばして捕まえて警察に突き出せばいいんですもの。
天野くんはどうするつもりなんだろう……。
なんだか、また物騒なことをしそうで心配です(´;ω;`)
大和くんの未来に幸あれ(´;ω;`)ウッ…
ではでは、いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!く(`・ω・´)
大和の住むアパートを見張り。
その合間に大和の面倒をみる。
具体的にいえば、夕暮れ前に桃太郎を散歩させ、河川敷でサッカーボールを蹴り、
そんな日々が1週間ほど続いた。
残念ながらその間、大和の母親がアパートに戻ることはなかった。
しかし、大和を取り巻く『環境』は、静かに変わりつつあった。
天野桃子
……ええ、先生方のお気持ちも理解できます。
学校は家庭の事情に口を出す機関ではありません。
しかし……。
それで、本当によろしいのですか?
その日、天野は母親である
桃子の前には、小学校の校長、教頭、担任の姿。
全員が桃子の
天野桃子
大和くんの家では、電気、ガス、水道の全てが止められていたんです。
これは『
もし大和くんが最悪のケースを迎え、大きな事件になった時……。
マスコミは学校に押し寄せるでしょうね。
『マスコミ』という言葉を聞き、教師たちの背筋に冷たいものが走った。
校長が額の汗を拭きながら言った。
校長
いやぁ……。
さすがにそこまでの騒ぎには、ならないと思いますがねぇ……。
天野桃子
本当にそう思います?
報道陣の前で「虐待のことは知りませんでした」と、釈明することはないと?
本当にそう思ってらっしゃるんですか?
桃子の隣には天野。
偉そうに教師たちの顔を眺めている。
校長が遠慮がちに「しかしそのぉ、天野さんは、長谷部くんと関係ないのでは……?」と質問を飛ばすが、
天野桃子
お黙りなさい。
ピシャリと叩き落とした。
天野桃子
私の息子は大和くんの家の公共料金を立て替え、病院にも連れて行ったんです。
もう私たちは、ただの無関係者ではありません。
「それに……」と言葉を続ける。
天野桃子
私は職業柄、
その中には『
試しに大和くんのことを相談してみたら、
「是非とも取材したい」
と
私は昨今の情勢に疎い人間ですが、どうも子供への『虐待』は良い
教師たちの顔がどんどん青くなる。
桃子はトドメを刺すように言った。
天野桃子
この状況を踏まえた上で、学校は大和くんにどう取り組んでいただけるのか、教えていただけます?
まさか……。
天野勇二
母さん。
ブラボーだ。
小学校を出ると天野は手を叩き、大げさに桃子を褒め称えた。
天野勇二
母さんに頼んで正解だった。
台本通りに演じてくれて感謝する。
桃子は疲れたように息を吐いた。
天野桃子
はぁ……。
なんで私が、知らない子供のために、あんなことを……。
先生方には悪いことを言ったわね……。
天野勇二
気にするなよ。
これで学校も本腰を入れて動くだろう。
多少は大和を守る力になる。
理解者が学校にいるといないじゃ大違いだからな。
肩をすくめながら言葉を続ける。
天野勇二
教育機関は俺のような若造の言葉じゃ動かない。
『社会的地位』とは脅威だな。
少しは母さんが『
桃子は苦笑しながら息子を見つめた。
天野桃子
まぁ、仕方ないわね。
あなたの年齢じゃ、大人が舐めてかかるのも当然でしょう。
釘を刺すように言葉を続ける。
天野桃子
でも、私が協力できるのはここまで。
本当にマスコミを動かすことなんかできませんからね。
天野勇二
十分だよ。
後は俺様の仕事さ。
天野桃子
無茶なことはやめなさい。
あなたの経歴に傷をつけたくはないから。
あと……。
せっかくだから、大和くんに会わせてくれるかしら。
天野勇二
ああ、もちろん紹介する。
今は涼太と
天野はそのまま大和の家へ向かった。
アパートの前には大和と涼太、妹である桃香の姿。
それに加え、近所の住民が何人か集まっていた。
佐伯涼太
あっ!
勇二だ!
小学校はどうだった?
涼太が笑顔で駆け寄る。
天野勇二
バッチリだ。
母を連れ出して正解だった。
ボンクラ教師どものケツに火をつけてやったよ。
佐伯涼太
やるねぇ。
先生たちも困っただろうね。
勇二のお母さんは迫力あるからなぁ。
天野勇二
お前のほうはどうだ?
うまくやっているようだが。
涼太は誇らしげに親指を立てた。
佐伯涼太
もうバッチリ。
あれ見てよ。
大和たちを指さす。
大和は近所の主婦たちに囲まれ、少し怯えた表情を浮かべている。
大和を守るかのように寄り添っている。
佐伯涼太
ご近所さんに『
協力者が増えてきたよ。
毛布や衣服、食料のカンパもガンガン集まってる。
ストーブを譲ってくれる、っていう人もいるんだ。
天野はニヤリと口唇を歪めた。
天野勇二
上出来だ。
さすが変態パコ野郎。
お前の『コミュ力』には感心するよ。
佐伯涼太
僕だけの力じゃないよ。
桃香ちゃんや胡桃ちゃんも手伝ってくれたし。
それに大和くんはカワイイからねぇ。
「こんなにインスタ
って、泣いてもらったよ。
涼太が「うぷぷ…」と悪い笑みを浮かべる。
佐伯涼太
僕には『親切の輪』が
天野勇二
もちろん、全員に
佐伯涼太
当然じゃん。
SNSでも拡散するよ。
絶対にバズらせる。
僕たちは無力だけど、集まることで『
天野勇二
クックックッ……。
天野と涼太がニタニタ笑いあっていると、大和がやって来た。
天野のパンツの
沢山の大人たちから隠れるように、天野の背後へ回り込んだ。
天野勇二
どうした大和よ。
大人が怖いのか?
大和が青い顔で呟いた。
長谷部大和
こ、怖くないもん……。
でも、あの人たち……。
『悪い人』なんだよ……。
天野勇二
悪い人?
なぜ、そう思うんだ?
長谷部大和
だって、みんな、ママの悪口を言うんだよ……。
やめてってお願いしたのに……。
ずっと、ママの悪口を言うんだもん……。
悲しげに顔を歪めている。
傍らの桃太郎が「クゥン」と鳴き、大和の頬を励ますように舐める。
佐伯涼太
ごめん。
そこまで
ちょっと言ってくる。
涼太が慌てて大人たちのもとへ走る。
天野は大和の頭を撫でながら小さなため息を吐いた。
天野勇二
(環境は変わり始めている。世論も味方に回りつつある。だが、一番の問題は、大和の『感情』だ……)
震える大和の肩を見つめる。
天野勇二
(どうやって「ママのことを嫌え」と告げればいいのか……。どうすれば毒親の『洗脳』が解けるのか……。この答えが見つからない)
まだ大和は9歳の少年。
自立という概念を持たせるには早すぎる。
このまま児童養護施設に預けても、大和の心は
いつか歪んで形を変えてしまうかもしれない。
天野勇二
(それでも母親から引き離すしかない。このままでは大和が死んでしまう)
大和が目元を拭いながら顔を上げた。
つぶらな瞳で問いかける。
長谷部大和
ねぇ……。
勇二さん……。
ママは、僕のことが、嫌いなのかな……?
涙で瞳が
長谷部大和
ほんとうは、ずっと、嫌いだったの?
だから、僕を捨てるの?
そんなことないよね?
ママは、僕を捨てないよね?
桃太郎みたいに……。
箱に入れて、川に流して、捨てたりしないよね……?
涙がポロポロとこぼれ落ちる。
長谷部大和
そんなのいやだよ……。
僕は『犬』じゃない……。
僕には、ママしかいないのに……。
ねぇ、返して……。
ママを返してよ……。
僕のことを好きだった、ママを返してよ……!
路地に大和の泣き声が響いた。
近所の住民たちは、哀れみに満ちた顔で大和を見つめている。
天野はなぜかそれが
きっと今の自分も、似たような顔をしているのだろう。
佐伯涼太
…‥げげっ!?
勇二!
やばい!
涼太が声をあげた。
天野の後方を指さしている。
天野が
???
あんた……。
うちの子に、なにしてんの……?
1人の女性が立っていた。
外見は30歳前後。
肌は青白く、手足は鳥ガラのように細い。
派手に染めた金髪はボサボサに傷んでおり、キューティクルの欠片も存在しない。
衣服も地味だ。
薄汚れたダウンジャケットにジーンズ。
スニーカーは原色がわからないほど汚れている。
長谷部大和の『母親』だった。
長谷部大和
……ママ!
大和が嬉しそうに駆け寄る。
母親は責めるように言った。
大和の母親
泣くんじゃないの。
泣き虫なんて嫌いだよ。
あと、知らない大人と話しちゃダメだって、言ったでしょ?
長谷部大和
ご、ごめんなさい……。
でも、勇二さんは、知らない大人じゃないから……。
大和の母親
勇二さん?
誰それ?
大和が震える指を伸ばす。
母親はどんよりとした瞳で天野を見上げた。
大和の母親
……ああ、そういうこと?
もしかして、あなたが天野勇二さん?
天野勇二
そうだ。
大和を病院に運んだ男だ。
電話してくれと、メモを残したはずだが。
母親は
真っ黄色の歯が覗く。
大和の母親
学校からも電話がありました。
あなたが電気代を払ってくれたんだって?
天野勇二
電気だけじゃない。
水道と、ガス代も払ったな。
大和の母親
ありがとね。
うっかりしてて。
本当に助かります。
天野勇二
せっかく会えたんだ。
立て替えた金を払ってくれよ。
大和の母親
それが、今は持ち合わせがなくてさぁ……。
今度でもいい?
必ず払いますから。
ごめんなさいね。
母親は天野の返事を待たず、大和に声をかけた。
大和の母親
大和。
うちに帰るよ。
長谷部大和
ま、待って。
まだ、桃太郎の散歩が……。
母親は嫌そうに桃太郎を見た。
大和の手からリードを奪い、地面に投げ捨てる。
大和の母親
私は犬が嫌いなの。
犬と遊ぶのはやめなさい。
長谷部大和
で、でも……。
大和の母親
口ごたえしない。
大和は良い子だよね?
私の嫌がることはしないよね?
長谷部大和
う、うん……。
大和は悲しげに肩を落とした。
桃太郎はお座りしたまま、大和の顔だけを見つめている。
天野は黙ってその光景を睨みつけた。
天野勇二
(……なるほどね。伊藤から聞いた通りの女だ)
舌打ちしながら母親を呼び止める。
天野勇二
あんた、なぜ家に帰らない?
このままじゃ大和は死ぬぞ。
母親は無視している。
大和の手を引き、アパートに連れ帰ろうとしている。
天野勇二
待てよ。
育てる気がないなら、すぐに大和を
鳥ガラのような腕を掴む。
母親は天野の手を振り払うと、
大和の母親
やめてよ。
あんたには関係ない。
大和の小さな身体を抱きしめ、芝居がかった口調で叫んだ。
大和の母親
私は母親なんだ!
あんたにどうこう言われる
私からこの子を取り上げないで!
長谷部大和
ママ……!
大和に向き直り、呆れたように言い放つ。
大和の母親
ねぇ大和。
酷い大人だろ。
私と大和のことをイジメるんだ。
長谷部大和
う、うん……。
大和の母親
私はあんたが大好き。
あんたを愛してるんだ。
もうあんな大人と話すんじゃないよ。
それが最後とばかりに、母親は天野たちに背を向けた。
アパートへ帰って行く。
桃太郎
クゥン……
桃太郎が小さく鳴いた。
どこか淋しげに大和の背中を見つめている。
涼太が天野に尋ねた。
佐伯涼太
行かせていいの?
どうせ数時間もすれば大和くんを置いて家を出るよ。
悲惨な『
天野は冷静に言った。
天野勇二
仕方ないさ。
『親権』を持っているのはあの女だ。
ここで騒ぎを起こす意味はない。
佐伯涼太
まぁ、そうなんだけどさ……。
しかし母親は何を考えてるんだろ?
大和くんを育てたいのか。
捨てたいのか。
まるで理解できないよ。
天野勇二
同感だな。
俺様も理解できない。
吐き捨てるように言葉を続ける。
天野勇二
推測だが、あの女は物事を深く考えちゃいないのさ。
大和の将来も。
自分自身の人生も。
自らの『虐待』の未来に何が待っているのかも。
だから平然と『愛してる』なんて言葉を吐きやがる。
普段は大和のことなんか忘れ、平然と暮らしているのだろう。
子供を『
佐伯涼太
もう諦めたほうがいいのかな。
天野勇二
バカなことを言うな。
この程度で引けるかよ。
天野は不敵な笑みを浮かべた。
天野勇二
あんなクズ親を見逃すほど、俺様の悪は落ちぶれちゃいない。
天才クソ野郎にかかれば全てうまくいくんだ。
この程度の不可能、軽く捻じ曲げてやるさ。
18,921
天野くんはヤクザとか、殺人犯とか、殺し屋とか、様々な悪党を相手に戦ってきましたが、不思議とそちらのほうがマシな『敵』に感じます。
だって殴り飛ばして捕まえて警察に突き出せばいいんですもの。
天野くんはどうするつもりなんだろう……。
なんだか、また物騒なことをしそうで心配です(´;ω;`)
大和くんの未来に幸あれ(´;ω;`)ウッ…
ではでは、いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!く(`・ω・´)
葵
毒親って本当に厄介。
わたしの親もそうだったので。
私事ですが、小さな頃からひどい環境をずっと耐えてきて、高校も働きながら行き、大人になって働けるようになったらATM扱いでした。
結婚すると言ったら、結婚式挙げる金があるなら、産まれてからかかったあんたの生活費400万返せ!と言われました。。おめでとうも言われませんでした。
わたしも洗脳されていて、そんなに言うなら死んで生命保険を母に、とも考えた時期もありました。
切り離せない家族がどうしようもない奴って一番きついです。
今は結婚して遠距離だった旦那の元に行き、家族と縁を切り幸せです。
ずっと切り離せなかった一番の恐怖がなくなって、嘘みたいに平穏です。
わたしは結婚する前まで大和くんみたいに家族を信じていました。
家族でも、一緒にいて幸せじゃない場合もある。
一緒にいない方がお互いのためになることもある。
大和くんが幸せになれますように。
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