どうも、つばこです。
今週もお読みいただきありがとうございます。
今回は天野パパの運転手である伊藤さん。そして伊藤さんが飼っている犬こと『桃太郎』を軸に物語が進んでいきます。
久々に天野くんの妹さんたちも出てくるかもしれません。
可愛い桃太郎がいっぱい登場するので、犬好きの皆さまにご期待いただければ幸いでございます(´∀`*)ウフフ
ではでは、いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!ヽ(*´∀`*)ノ.+゚
その日、
小さな
ささやかだが日当たりの良い庭もある。
住んでいるのは、天野の『古い友人』でもあり『
天野の父親の運転手を務めている
伊藤文也
坊っちゃま。
お茶が入りましたよ。
天野勇二
ああ、すまないな。
天野は
伊藤が飼っている犬だ。
名前は『
淡いブロンドカラーの雑種犬。
先ほどから天野の
天野勇二
桃太郎も年をとったな。
だが、元気そうで安心したよ。
伊藤は懐かしげに微笑んだ。
伊藤文也
坊ちゃまたちが桃太郎を拾ったのが、もう10年以上前になりますからねぇ。
私と同じ老いぼれでございますよ。
天野勇二
しみったれことを言うな。
本当に老いぼれちまうぞ?
桃太郎の頬を撫でながら、
天野勇二
まだまだ伊藤には生きてもらわなきゃ困る。
伊藤がいなくなったら、誰があの『クソ親父』を運べばいいんだ?
伊藤文也
私のような運転手など、他にたくさんいらっしゃいますよ。
天野勇二
そんなことはない。
お前の代わりなど誰にも務まらないさ。
せめてうちのクソ親父よりは長く生きてくれ。
伊藤は苦笑しながら頷いた。
伊藤文也
確かに長生きはしたいものです。
坊ちゃまの『子供』を抱いてみたいですからね。
天野勇二
おいおい……。
気色悪い話をするな。
俺は結婚も子作りも御免だ。
伊藤文也
残念です。
坊ちゃまは良い
天野勇二
想像したくもないな。
その願望は捨てたほうが
嫌そうに首を振る天野を見て、伊藤は優しげに微笑んだ。
伊藤は30年ほど前から、天野の父親の『専属運転手』として働いている。
もう70歳を過ぎた初老の男だ。
伊藤の主な業務は、運転手と車や駐車場の清掃とメンテナンス。
そして過去にはもうひとつ、重要な役割を担っていた。
『子供たちの遊び相手』という役割だ。
伊藤文也
坊ちゃまが言っていただければいつでも運転手を務めますが、最近は声をかけてくれませんね。
また『デート』などで使っていただけるのを待っているのですよ。
天野勇二
デートだと?
そんなものに伊藤を使ったことがあったか?
伊藤文也
ございましたよ。
高校生の頃でしたねぇ。
坊ちゃまの『Wデート』のためにロールスロイスを磨きあげたものです。
天野は呆れたように苦笑した。
確かにそんなことがあった。
友人である
(詳しくは『彼を上手にチャラ男にする方法』を参照)
天野勇二
よくそんな昔の話を覚えているな。
あれは『Wデート』じゃない。
くだらない遊びのひとつさ。
だが……。
子供の頃はよく伊藤の世話になったな。
天野の両親は『仕事人間』という言葉がピッタリの人種だった。
父親は病院の経営。
母親は製薬会社の所長。
それぞれの仕事は忙しく、子供とコミュニケーションをはかるような時間が作れなかった。
そのため祝日になると、天野や妹たちは「どこか連れて行け」と伊藤にねだり、海や山まで車を走らせてもらったのだ。
つまり伊藤が担っていたのは『運転手』と『
そんな便利な人物が月30万程度で雇えるなら安い、と考えてしまうのが金持ちというものだ。
天野勇二
まぁ、昔話はいいか。
お互いに老け込むような年でもないしな。
天野は小さく笑いながら尋ねた。
天野勇二
いったいどうしたんだ?
何か用件があって、俺を呼び出したのだろう?
伊藤はまず深々と頭を下げた。
伊藤文也
ええ、ご足労いただき申し訳ございません。
坊ちゃまは医学生としてお忙しいでしょうに……。
天野勇二
よせよ。
そんなことで頭を下げないでくれ。
天野は苦笑しながらも、慎重に伊藤の様子を観察していた。
伊藤から電話があったのは昨日のこと。
「できるだけ早く家を訪ねてほしい」と頼まれたのだ。
天野は「何か伊藤にあったのかもしれない」と、嫌な予感を覚えていた。
伊藤文也
実はですね……。
近々、
『
天野は嫌な予感が的中したと感じた。
天野勇二
ほう……。
いつからだ?
伊藤文也
来週には。
最低でも2週間ほどの検査入院になりそうです。
天野勇二
手術でもするのか?
伊藤文也
場合によっては……。
するかもしれません。
天野勇二
どこが悪いんだ?
伊藤は自らの左胸に手を置いた。
伊藤文也
心臓です。
どうやら不整脈が出ているようなんです。
時折、
天野勇二
それは難儀だな。
確かに入院したほうがいい。
伊藤は70歳過ぎ。
まだ寿命を迎えるような年齢ではないが、高齢者であることは間違いない。
必要であればすぐにでも入院すべきだろう。
伊藤文也
私も長生きしたいとは思っておりますが、心臓となればいつ急変してもおかしくありません。
老い先は長くないでしょう。
そこで坊ちゃまにお願いがあるのです。
伊藤は「桃太郎や」と声を出した。
庭先で寝そべっていた桃太郎が起き上がり、尻尾を振りながら主人の顔を見上げる。
伊藤文也
私が入院している間……。
そして、もう面倒をみることができなくなった時……。
桃太郎のことを、引き取ってはいただけませんでしょうか?
天野は「なるほど」と呟いた。
天野勇二
それで俺を呼んだのか。
確かにコイツは俺たちが『拾った犬』だ。
チラリと桃太郎を見つめる。
天野勇二
本来であれば、俺たちがしっかり面倒をみるべき犬だった。
それを無理やりお前に押しつけたようなもの。
余生の世話をするのは俺たちが適任かつ当然だろうな……。
伊藤は慌てて言った。
伊藤文也
押しつけられたとは思っておりません。
桃太郎のおかげで、ここ10年は楽しい時間を過ごすことができました。
坊ちゃまには感謝しております。
桃太郎とめぐり逢わせていただいたのですから。
伊藤が桃太郎の鼻先に手を伸ばす。
桃太郎は2人がどんな話をしているのか、きっと理解していないのだろう。
無邪気に尻尾を振り、伊藤の指先の匂いを嗅ぎ、ぺろりと舐めている。
伊藤文也
恐らく10年前とは状況が変わっていることでしょう。
どうか、お願いできませんでしょうか……?
天野は腕組みをして思案した。
犬を引き取るのは問題ない。
他ならぬ伊藤の頼みであれば
天野勇二
(だが、今のアパートで飼うのは難しいな……)
桃太郎は中型の雑種犬だ。
体格は立派なため、どららかといえば『大型』の部類に入るだろう。
天野が一人暮らししているのは狭いアパート。
ストレスが溜まるだろうし、そもそもペットの飼育が許可されていない。
かといって、天野の実家に連れて行くことはできない。
天野勇二
……そうなれば、残る選択肢はひとつしかないか……。
天野はにやりと笑みを浮かべた。
天野勇二
わかったよ。
桃太郎を引き取ろう。
『天野の家』に連れて行くよ。
あそこは広い一軒家で庭もある。
しかもここから近い。
歩いても40分ほどの距離だ。
伊藤は
伊藤文也
確かに環境はここより素晴らしいくらいです。
ですが……。
桃子様が了承されるでしょうか……?
天野勇二
そこが問題だ。
だが、母も昔より丸くなった。
きっと妹たちを喜ばせるために了承してくれるさ。
伊藤文也
そうなると、桃子様にも私からお願いを……。
天野勇二
ああ、それはいいよ。
母には俺から言っておく。
もし母がゴネれば俺が引っ越せばいいだけの話だ。
まずは検査入院の期間、桃太郎を預かる。
それで構わないか?
伊藤が嬉しそうに頷くのを見て、天野は桃太郎に声をかけた。
天野勇二
桃太郎よ。
これからしばしの間、俺たちと一緒に暮らさないか?
桃太郎
…………
桃太郎は澄んだ瞳で天野を見上げている。
天野勇二
まぁ、そう言っても、お前には伝わらないか。
天野は苦笑しながら伊藤に告げた。
天野勇二
伊藤よ。
こんなことはあまり考えたくないが、お前に何があっても、俺たちがしっかり桃太郎の面倒をみる。
その点は安心してほしい。
真正面から伊藤の目を見つめ、偉そうに言葉を続ける。
天野勇二
だがな、桃太郎はお前にとって大事な家族のはずだ。
桃太郎の最期を看取るのはお前であってほしい。
俺はそう考えている。
どうかそのために全力を尽くしてくれ。
意味はわかるな?
伊藤は柔らかい笑みを浮かべ、「もちろんです」と頷いた。
随分と偉そうな物言いだが、天野はとどのつまり「健やかに長生きしてほしい」と告げているのだ。
伊藤文也
入院の結果、身体に問題なければ桃太郎を迎えに行きます。
私もできれば、ずっと桃太郎の側にいたいと考えておりますから。
天野勇二
その言葉を聞いて安心したよ。
桃太郎もそのほうが幸せだろう。
それから、念のため尋ねるが……。
天野はそこで初めて、鋭い目つきで伊藤を睨んだ。
天野勇二
伊藤よ。
何か俺に『隠し事』をしてないか?
伊藤の肩が「ビクッ」と震えた。
怯えたように目を逸らす。
伊藤文也
か、隠し事なんて……。
坊ちゃまにするはずございません……。
天野は静かに伊藤を見つめた。
だがすぐに「ふぅ…」と息を吐き、改めて言った。
天野勇二
悪かった。
どうも最近、物騒な事件に巻き込まれることが多くてな。
気分を害したなら謝ろう。
伊藤文也
い、いえ……。
謝るのは、私のほうですから……。
天野勇二
そうか……。
天野は立ち上がり、桃太郎を眺めた。
天野が鋭い声を発したからだろう。
桃太郎は尻尾を止め、ぐっと口を閉じ、何かを問いかけるかのように天野を見上げている。
天野はその頭を撫でた。
天野勇二
驚かせてしまったか?
悪かったな。
お前の主人を責めているワケじゃないんだ。
優しく言葉を続ける。
天野勇二
桃太郎よ。
俺たちと一緒に暮らそう。
慣れない家での生活になるが、きっと楽しいことも待ってるさ。
美味いものもたっぷり食わせてやるぞ。
桃太郎
……ワフッ!
天野勇二
おっ!?
鳴いたぞ!
なんだお前言葉が通じるのか!
あっはっは!
現金なヤツめ!
天野が大声で笑い、桃太郎の背をわしゃわしゃと撫でる。
桃太郎も尻尾を振りながら天野にじゃれついている。
伊藤はどこか神妙な顔つきで天野たちを見つめていた。
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どうも、つばこです。
今週もお読みいただきありがとうございます。
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可愛い桃太郎がいっぱい登場するので、犬好きの皆さまにご期待いただければ幸いでございます(´∀`*)ウフフ
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