「遠方で暮らす高齢の親が心配だけれど、今のところは自立して暮らしているし、なかなかすぐには同居に踏み切れない」という中高年の方や、「年齢を重ねて暮らしに不自由も出てきたけれど、何から何まで子供の世話になるのは気が引ける」というシニア世代の方はたくさんおられると思います。
そんな方々に知ってほしいのが、サービス付き高齢者向け住宅での近居という暮らし方です。
今回は私の経験談をもとに記事を進めたいと思います。
喜寿を前にして母親が一人暮らしに
私の両親は足腰の衰えはあったもの、認知症の症状もなく、お互いに助け合いながら自立して生活していました。
ところが、父が7年前に他界。母は75歳にしていわゆる「高齢独居」になってしまいました。バリアフリーや温熱環境の整っていない兵庫県北部の田舎の一軒家での一人暮らしに、さすがに不安を感じました。
私は同じ兵庫県内南部、妹は大阪市内に住んでいるので、訪問介護サービスを頼み始めたのと同時に、私たちは毎週末に母の様子を見に行くようになりました。
風呂場での転倒を機に母親を呼び寄せ
そんな生活が1年ほど続いたある日のこと、なんと母が風呂場で転倒してしまったのです。
幸いにも骨折はせずに済みました。ただ、病院の先生から『一人暮らしを続けるのはリスクが大きい』と忠告を受けたこともあり、母と話し合った結果、妹の家に近い高齢者住宅に引っ越して『近居』してもらうことに決めました。
身の回りのことを一通り自分でこなしていた母には、有料老人ホームほどの介護サービスは必要ありませんでした。そこで自立型のサービス付き高齢者向け住宅を探すことにしました。
一戸建てからワンルームの部屋へ移るのは変化が急すぎると思い、少し広い部屋を探したところ、浴室や洗面台を備えた居住性の良い部屋を見つけました。
安否確認や食事提供のサービスが備わっているのも、足腰の力に不安もある母にはちょうど良い施設でした。
条件に合った住宅を探すにあたってはインターネットが役立ちました。
私が利用したのは、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムで、エリアや専有面積などの条件を指定して検索し、条件に合った2箇所を見学したうえで今の住宅に決めました。このホームページには、全国のすべてのサービス付き高齢者向け住宅が登録することになっているそうです。希望に合うところを見逃す心配が無くて良いと思いました。
近居で安心感が増し、移動の負担も減った

母が近居することになり、安心感がずいぶん増しました。
入居先は妹の家からは車で5分くらいで、私の家からも40分ほど。ちょっと様子を見に行ったり、何かあったときにすぐに会いに行けるのは安心です。兵庫県の実家まで片道2時間かけて通っていたころに比べると、負担もずっと小さくなりました。
実は母は入居して少し経った頃、部屋で転倒して大腿骨を骨折してしまいました。
母自身では助けを呼べず、安否確認のスタッフが気付いて救急車を呼んでくださいました。実家で一人暮らしのままだったら誰にも気付かれず何日も経っていたかもと思うと、ぞっとしましたね。
数ヶ月は入院したものの、毎日の熱心なリハビリの甲斐もあり歩行器を使えば歩けるようになって無事に退院。サービス付き高齢者向け住宅での暮らしが再開しました。
入院をきっかけに高齢者住宅を探し始めるケースも耳にしますが、限られた期間での慣れない物件探しは大変です。すでに入居していた母は退院後の住まいに悩む必要が無くて幸いでした。
退院から一年、要介護度が下がった!

入院中に要介護3の認定を受けたこともあり、退院時に母のケアマネジャーを選んで介護方針を相談しました。
介護保険の適用を受けながら、平日は週に数回の訪問介護やリハビリのデイサービスを利用することになりました。週末は兄弟が交代で訪れ、泊まりがけで世話をしています。
私たちが訪ねるときはなるべく一緒に外出するようにしています。買い物は頭も体も使うから認知症予防やリハビリに良いですね。
また、この施設は、玄関を出てすぐ前の廊下も室内で、いつも冷暖房が効いています。『部屋の外に出るのもおっくうにならない』と、母は言います。
退院してから約1年が過ぎ、その後は幸い事故も無く母の状態は順調に良くなっています。
歩き方も前に比べて力強くなってきたし、頭の働きは変わらずしっかりしています。先日の介護認定の更新検査では要介護度が3から2に下がりました。80代での回復にはさすがに驚きました。(笑)
バリアフリーが整い、歩行器でも一人暮らしができる

とはいえ、歩行器を使う暮らしはどんな家でも自由にできるわけではありません。
兵庫の家は室内に段差が多く、一人暮らしは難しく、トイレのドアも手前に引くタイプだったので開けるのが大変で、排泄介助が必要だったと思います。
その点、今の部屋は段差が無く、室内の扉もスライド式の引き戸になっています。
部屋の中を歩きやすいし、ドアも開けやすく、バリアフリーのサービス付き高齢者向け住宅でよかったと思います。
実際に今も朝昼の食事は自分で用意し、住宅が提供する食事は夕食だけ食べています。洗濯は私たちが週末に訪れたときにまとめてこなしています。浴室乾燥機もあり、おかげで天気に左右されないのが助かっています。
全体的な家事負担が適度で、今の母にはちょうど良いみたいです。
サービス付き高齢者向け住宅は程よい距離感の近居にうってつけ
母が入居する住宅は自立型ということもあり80代前半の人が多いです。
母の部屋のお向かいの84歳のとても元気な女性は、家事も自分でこなしていらっしゃいます。それにとどまらず、電車を乗り継いで一人で買い物に行ったり、近所のお子さんの家にもときどき訪れているとか。もともと九州にお住みで、お子さんの住む関西に越して来られたそうです。
サービス付き高齢者向け住宅での近居という暮らし方については、
離れて暮らす高齢の親御さんを心配する人はきっと多いでしょう。かといって、いきなり同居というのもなかなかお互いに踏み切りにくい。そんな場合に、サービス付き高齢者向け住宅は良い選択肢だと思います。
日頃から入居者同士の自然な交流もあり、食堂ではグループで談笑している様子も見られます。
似た境遇の人が集まっているから話も合いやすいし、食堂が出す食事は私も行くと母と一緒に食べますが、本当においしい(笑)。
私も将来、少し体が思うようにならなくなったりしたら母の住んでいるような住宅に住みたいと考えています。
