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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

コロナの急激な収束をもたらした要因とは ワクチン、行動自粛、そして……

ワクチン接種のスピード 諸外国がダウンする一方で日本は

(Our World in Dataより)

 では、どういう対策によって、こういう現象が起きたのでしょうか。

 それは、「こういう現象」の逆の現象について考えてみれば、分かります。つまり、「急峻な感染者数の増加」です。第5波の増加のフェーズですね。

 東京オリンピックが開かれていた頃までは、日本は緊急事態宣言中にもかかわらず、ある種の「ノリ」が形成されていました。感染力の強いデルタ株の輸入もあいまって、患者数は激増していきました。感染経路を増やすような社会活動が増加を後押ししたためです。

 そして、過去最大の感染者数が更新を繰り返すようになり、今度は逆の現象が起きました。すなわち、「コロナが増えすぎてやばいぞ」という別の「ノリ」です。これが市民の行動制限を促し、人々は活動を自粛しました。これがコンスタントに感染者を減らし続ける持続的な力になったのではないか。

 さらに、日本ではワクチン接種がかなりスピードアップし、高齢者のみならず、感染を広げていた年齢層にもワクチンが普及していきました。

 ワクチン接種がうまくいっている多くの国では、ある程度ワクチンが普及すると接種のスピードはダウンします。アメリカしかり、イギリスしかり、フランスやドイツもそうでした。が、日本では予防接種がある程度普及した現在でも、ワクチン接種のスピードは安定しています。

 日本では宗教や政治的な主義主張でワクチンに反対する勢力が、外国に比べて少ないです。僕は、かつてアメリカの病院に勤務していたので、とてもそう思います。アメリカだと、例えば医療従事者のインフルエンザワクチン接種率って、結構低いんですよ。「打ちたくない」という医療従事者が多いから。

 2004年に帰国して亀田総合病院(千葉県)に異動したとき、職員のワクチン接種率が9割以上もあって、アメリカのたいていの病院よりもずっと高くてびっくりしたことがあります。日本人のワクチンの受け入れって欧米のそれよりも良いのではないか、とそのとき思いました。

 それでも日本が「予防接種後進国」なのは、国民の側の問題ではなく、政治や官僚機構の失敗なのだと思います。

 以前も述べたように、コロナにおいて、日本はワクチン接種のしくみが非常にうまくいっています。

 このスピーディーでパワフルな予防接種が、「感染できる人々」の数を激減させ、さらに人々の行動抑制が加味されて、第5波が一気に減少に転じた。今年初めのイギリスがそうだったように。僕はそのような仮説を持っています。

 あと、前回ご紹介した、抗体カクテル療法も多少は寄与したかもしれません。これが第5波という特殊な波の形の持つインプリケーション(意味合い)だとぼくは思います。

https://ourworldindata.org/covid-vaccinations
(閲覧日 2021年9月28日)

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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