赤い公園 シングル「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」インタビュー –
亀田誠治をプロデューサーに迎えた2ヵ月連続シングル第2弾は、ドラマ「ロストデイズ」主題歌「絶対的な関係」をメインに、津野米咲が満を持してバンドに託した「きっかけ」、そして槇原敬之の「遠く遠く」を佐藤千明のギターで弾き語る大胆なカバー。音楽にはこんなにも可能性があるのだと、身を持って聴かせてくれるのが赤い公園だ。
INTERVIEW & TEXT BY 今井智子
あらたな肩書きじゃないですけど、そういうのが欲しかった
──「絶対的な関係」のスピード感と短さとメタル感、いいですねー。
津野米咲 ドラマ「ロストデイズ」のための書き下ろしなんですけど、ドラマの資料を読ませていただいて、こういう感じの(笑)ドラマだったんで。大学生の卒業旅行のお話なので、自分と同じような年の子というのを年頭において、そのなかで譲れないところを残し、ちょうどいいポイントをハナから狙って(笑)書きました。
──偶然ではなく構想ありき?
津野 テンポ170ぐらいで書こうというのは決めていて。なんとなくバンド何個か知ってるけど〜、みたいな人が、バンドと言ったらライブで、”ギャーン!”と鳴ってる、みたいな。そういう人にとって「風が知ってる」みたいな曲って、バンドという言葉から入るのは難しい。それは全然悪いことではないし、そういう人たちに”今やってる若い感じのバンドです”っていうのを、提示しようと思って(笑)。
──具体的に津野さんが思い描く”若い感じのバンド”って?
津野 いっぱいいるんですけど、名前を挙げるのは怖いので言いません(笑)。そういうところで、”みんな早いのばっか好きよね”ってひねくれるんじゃなくて、自分はちゃんと作れるのかどうか、というのと、まず作ってみて、お客さんに聴いてもらって答え合わせしないと。自分はそれも出来るんだっていう、あらたな肩書きじゃないですけど、そういうのが欲しかったのもありますね。
──それにしても1分40秒に納まってるのは驚異的で、ブツッと終わるので曲終わりで毎回驚くし(笑)。
津野 (笑)もともと短い曲なんですけど、出来たら100何秒みたいな感じだったので、どうせなら100秒で切っちゃおうって。偶然の産物なんですけど、あの”バツッ!”って切れちゃう感じもいいですよね。
──佐藤さん、このテンポで歌うのはどうですか?
佐藤千明 息継ぎのところとか、ちょっと工夫しないといけない部分だったりとか。あと、この音域の高さというのが初めてで、そのままの音程でサビとかも歌うっていう。なので今まで使ったことのない喉の使い方をしていて。だからちょっと自分にとってもこれは、私こういう歌い方もできるんだ、って思った曲ですね。
──そんなにチャレンジングな曲のレコーディングはどうだったんですか?
津野 すんなりいきましたね。楽器隊はせーので録って。歌い方もそうですけど、絶対に楽でいちばん良いキーで出すと、この曲ってバンド感を提示したいのにバンド感より叙情感が勝ってしまうんです。そこが難しいバランスで。バンドです、っていう感じを出すっていう(笑)。
──赤い公園をメインストリームに近づける曲?
津野 行けてるのかどうかのチャレンジです。わりと演奏としてもやってることは単純で、そういうことやるのが怖い部分もあったと思うんですけど、やっと出来るという感じですね。メロディがめちゃめちゃキャッチーで、100%新しいものではない感じ? 寄せ集めてグチャグチャに混ぜて作った、みたいなものがようやく作れて。さらにラッキーなのが、この“赤い公園”感が、ドラマもわりとこんな感じで合ってるんだよね。
佐藤 そうだね。すっごいいいところで、シャンシャンシャン! って流れるんですよ。
──歌詞もドラマと重ねて書いてるんですか?
津野 そうですね。そもそも絶対的な関係ってなんなんだってところから。友達だとか恋人だとかも、まず身体がふたつあって離れてるんだから、100%理解することはできないんじゃないかというところなんですが、それはそれとして、知りたいと思うことが希望だったりしますし。どっちつかずな歌詞ですね。答えはないです。
──こういう歌詞って共感したりしますか? 共感とは言えないとしたら、どういうふうに理解しますか?
佐藤 共感は、赤い公園の歌詞において、あまりしませんね。しないというか、寄り添うことはしないんですけど。歌詞で歌ってる人にならずに、傍観して歌うことが多いんですけど、この曲の歌詞はわりと悪女感が出てるから、悪女になったつもりで歌いました。やっぱり女の歌ですよね。なので、声もかわいらしく工夫して、歌いました。
津野 ナレーターみたいだね、ちーちゃん。歌詞の傍観者。朝ドラとかで、「そのときチアキは思った」みたいな(笑)。
佐藤 今回の楽曲はホントにドラマと合ってるし、いいところで曲が入ってくる。MVみたいだったよね。
津野 MVみたいだし、ドラマを観ていてこの曲が流れたときに、自然と高まれたことが、よかったってことだろうなって思う。実際まわりの人とか、音楽やってない同級生とかも、この曲良いねって言ってくれるので。
誰のために書きたいとか、この曲を書いてどうこうなりたいというのじゃなくて、津野個人として書きたい曲
──カップリングの「きっかけ」はまた対照的な曲で。
津野 これは2012年末に作った曲で。デモ段階であたためてたんですけど。芯の部分で、狩りに出掛ける自分の部分が「絶対的な関係」だとしたら、「きっかけ」は、穴蔵の中で生活する自分の身体ひとつだったり心ひとつだったり、そういうところでの成長というか、そういう曲かなと思います。
──孤独な感じ?
津野 ……超書きたい曲ですね。誰のために書きたいとか、この曲を書いてどうこうなりたいというのじゃなくて、津野個人として書きたい曲を書いていて。もともとシンセとかが入ってたんで、バンドでやるの難しいかなと思っていたんですけど。「風が知ってる」も同期を使ってできたんで。そろそろできるかなと思って。どういう心変わりか、赤い公園でやってみようと。
──確かに歌詞も日記と言っていいぐらいプライベート感ありますね。
津野 ホントに申し訳ない、発売してしまって(笑)。これも亀田さんのプロデュースで、末広がりだった私のデモを、さらに末広がりにする。抑えるところはめちゃめちゃ抑えて、最後出すところは出す! っていう。それでちーちゃんの歌が入って、自分ひとりが読むためだった日記を、世の中の人に向けて手直しして、出版してくれてる感じというか(笑)。あとはこれをメンバーと一緒に演奏してもらえるというのを、この歌詞を書いたときの自分に教えてあげたいですね。この曲をひとりでやってないんだよって。
──書いた当時と今とでは、自分の中で曲の位置が変わってきた?
津野 書いた当時も、この曲がどうこうなってほしいとは思ってなくて。でも、こういう曲もあるよっていうよりは、カップリングが本気なバンドっていいなと思いました。曲自体は、ただ1まわしだけ歌詞が増えて。それで自分の絶望感に寄り添ってくれる曲だったのが、暗いながらも希望を見出してくれる曲になったかな。
──個人的な曲とバンドの曲の違いはどこにあるんでしょう?
津野 こんなこと言えないんですよね、バンドとしてやっていくなかで。こんなこと言ったら、“甘いよ”で終わっちゃうから。絶対言えないし、ちょっとでも考えたらこんな歌詞書けない。書けないとわかってるから、自分の中でもその問題はおさまっちゃうんですけど、でも、最初にポッと思ったこと、舐めくさってること、言い過ぎですけど(笑)、一緒にやってくれるメンバーがいて、いいねって言ってやってくれる亀田さんがいてくださることで、ようやく気付かせてもらえたし、勝手にこの曲は私の曲だからと閉じ込めてしまうのは良くないなと思いました。すごい恥ずかしいですけどね(笑)。でもめちゃっくちゃカッコいい曲になったので、聴いてほしいです。
みんなそっぽを向いて演奏してるみたい。それがすごく素敵
──サンプリング音の入れ方も絶妙で位相もすごくいい感じですよね。
津野 めちゃくちゃこだわりました。ボイシングとか。あと打込みと生ドラムが一緒になっていて、最後の2まわしは1まわし目でシンセベースが出てきて、いちばん最後の1まわししか生ベース出てこないんです。いろんなこだわりがあります。全部この曲を良くするためにくみ上げていって、それで出来た。わがままの極みみたいな曲ですね。
──ライブを考えずにやってる?
津野 ただ、この曲最後めっちゃカッコいいんで、どうしてもやりたいよねって、考えてはいます。できることには、なってます、物理的には。技術的にはまだちょっと問題あるんですけど(笑)。ドラムもベースもギターも一発だったんですよ。みんなが無心で演奏して無心で歌ってる感じがいいなと思います。
──それこそ客観的に関わってる感じ?
津野 だから「絶対的な関係」と真逆で、私たち友達だよねっていう関係性がある前提の関係ではなく。きっかけは、それぞれひとりなんだから、みんな孤独なんだからという前提の曲です。みんなそっぽを向いて演奏してるみたい。それがすごく素敵だなと思う。
──これも客観的に歌ってる感じがすごいリアルで、それがこの曲の面白みを引き出しているのでは。
佐藤 よかった。この曲の歌詞というか気持ちには絶対寄り添うことができないなと思ったので。やっぱり、私がどんなに理解しようとしても、嘘っぽくなってしまうだろうし。それほど歌詞も真っ直ぐで、曲のパワーも重いので。この歌詞を理解するとか、気持ちを込めて歌うということではないなと思ったので、達観して。ふふ。客観的にやらせていただきました。
──その立ち位置がすごく良いと思います。
佐藤 そう言ってもらえるとうれしい。歌詞理解しろよとかよく言われるんですよ。でも絶対無理だから。書いてる人違うんだから。それが別に気持ちを込めていることにはならないし。
津野 私が理解してほしいと思ってないんだから、いいんだよ。
佐藤 歌詞の意味、理解できるの? みたいに言われるんですよ。してないですって言うと、してないんかい? って。みんな歌詞を理解して歌うことが正しくて、気持ちがこもってるって思うんだろうけど、別にそういう訳ではないなと思う。歌っていて、正確に声を遠くまで飛ばそうだとか、そういうふうに思っていれば、気持ちが乗るものだと思うので、自然に。なので、そういうポリシーでやってます。
津野 伝説のロッカー名言みたいだね。
佐藤 ポリシーって初めて言ったもん(笑)。
ちーちゃんが一生懸命ギターを練習してやることに、希望がある
──最後の「遠く遠く」は、前の2曲の延長というか間をつなぐというか?
津野 アレンジで言ったら、いっちばんアングラですけどね。ちーちゃんがアコギ弾いてるんです。
佐藤 そうなんです、津野米咲じゃないんです。津野さんがあんなに下手だと思われたら困る。
津野 あれいいよ、魂のギター。初めてクレジットに“アコースティック・ギター”って出ます。
──独特なアコギの音にしてるなと思ったんですけど(笑)。
津野 音はすごいこだわりましたね。大きい部屋にいっぱい打楽器を敷き詰めて、弾き語りしてるちーちゃんの回りを歩くっていう。そういう、何気なさ、を演出してる。何気なくなさとかリアルとリアリティの差だったりとか、そういうのって、人々にとってそれは日常ではないのかもしれないけど、私たちはそういうところで生きてるから、そういう環境でやりたいというのと、「遠く遠く」はバンドのアレンジをいくつか思いついたんですけど、これからやってくぞって覚悟の歌だから、バンドの中でいちばんこれからのことってなんだろうって思ったら、ちーちゃんのギターだった。ちーちゃんが一生懸命ギターを練習してやることに、希望があるよなって思って。
佐藤 誕生日にウチに引きこもって練習したの、ハッピーバースデー自分(笑)。
津野 みんなもちーちゃんがめちゃくちゃ頑張ったの知ってるから、「よく頑張ったねー!」(泣)って。ピアノでもギターでも弾く人の性格がすごい出るから、もうちーちゃんの不器用さとかがめちゃくちゃ出てて、でもちゃんと弾けてて、というのがすごいいいなと思って。で、みんなで作った感じがして。それはきっと伝わると思うなって。
──その引き算の潔さがすごいですね。実験性の高い打楽器の入れ方がジョン・ケージみたいだし。
津野 うれしい。誰かにも言われた。すごい実験音楽ですよ。だから「絶対的な関係」を私たちなりにポップに、ポップって言ってもバンド界におけるポップと言うか私たちの思うポップにチャレンジしたおかげで、闇の部分が爆発してますね、あとの2曲で(笑)。すごく清々しい一枚です。スッキリしたー! って感じだよね。
佐藤 「絶対的な関係」と「きっかけ」が一緒に入ってる時点ですごいもんね。
津野 それで「遠く遠く」も。やりたいこと出来すぎ(笑)。
DISC INFORMATION
SINGLE 2014.3.12 On Sale
「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」
EMI R
初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>
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赤い公園
あかいこうえん/佐藤千明(vo)、津野米咲(g)、藤本ひかり(b)、歌川菜穂(ds)。高校の軽音部の先輩後輩により’10年に結成されたバンド。2012年2月と5月のミニ盤『透明なのか黒なのか』『ランドリーで漂白を』でメジャー・デビューを果たす。約半年の活動休止期間を経て2013年7月3日に復帰第一弾作となるシングル「今更/交信/さよならは言わない」をリリースし、同年8月に1stフル・アルバム『公園デビュー』を発表している。発売されたばかりの「風が知ってる/ひつじ屋さん」に続き、3月12日にはこちらも亀田誠治がプロデュースを手がけた「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」をリリースすることも決定している。
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毎週金曜日24:00〜28:00
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亀田誠治
かめだせいじ/‘64年、アメリカ、ニューヨーク生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。‘89年、音楽プロデューサー、ベースプレイヤーとして活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツをはじめ、スガ シカオ、アンジェラ・アキ、JUJU、秦 基博、いきものがかり、チャットモンチー、MIYAVIなど数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手がける。椎名林檎らと東京事変を結成し‘12年閏日に解散。‘07年、第49回日本レコード大賞、編曲賞を受賞。昨年には4年ぶり2度目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を武道館にて開催。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の音楽監督を務めるなど、様々なかたちで作品を届けている。また、オフィシャルサイトなどで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。
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