※車両は現行モデルとは一部仕様が異なります。

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THE LAB

TUNNEL

VISION

燃費、運動性能、静粛性の開発・向上に

不可欠なエアロダイナミクスの研究で、

業界をリードするレクサス。そのカギを握る

最新鋭の風洞実験棟をレポートする。

レクサスの風洞実験棟に足を踏み入れた瞬間、まずその圧倒的なサイズに驚くに違いない。天井高22メートル、周回するトンネルの全長は何と260メートル。仮にトンネルを地面から直立させれば、東京都心の超高層ビルにも引けを取らない高さになる。完全オリジナルのカスタムメイドを誇るこのR&D施設がオープンしたのは2013年3月。走行時にクルマを取り巻く気流が運動性能や静粛性に及ぼす影響を研究するエアロダイナミクスは、現代の自動車開発に絶対不可欠だが、その分野における屈指の施設を手に入れたのだ。「新車を開発する際に突き詰めるべき重要なパラメータとして、長年、エアロダイナミクスに取り組んできました」。こう語るのは風洞実験棟でマネージャーを務める村山俊之だ。
風洞内部にある車両計測室では、レクサスのエンジニアたちが、ホイール周り、テールエンド、バンパーなどあらゆるエリアの気流を分析している。「風洞実験で一番大切なのは、実験車両に対して乱れのない安定した気流を流し続けること。それにより、エクステリアデザインと空気の流れがお互いどのように作用しているのか正確に理解できるのです」。

ファンモーターの外観

直径9メートルの大型送風機を用い、陸上競技用トラックのようにループする風洞のトンネル内に安定した気流をつくり出すため、さまざまな工夫が施されている。
「たとえば壁のレイアウトやそこに使用する素材、またクルマに気流を吹き付けるノズルと呼ばれる吹出口の大きさなど、あらゆるディテールを専門家とともに突き詰めました。その結果この実験棟は世界でも屈指の施設を備える研究所になったのです」と村山。レクサスが風洞実験棟にこれほどの投資をするのは、近年の自動車開発においてエアロダイナミクスの重要性が増しているからだ。クルマのボディ周りをどう空気が流れるのか、これを緻密に検証することで、空気抵抗やダウンフォースを向上させることができる。もちろん空気抵抗が少なければ少ないほど、燃費も性能も向上するので、開発段階での風洞実験は極めて重要だ。
「時速100キロメートルで巡航するクルマの運動性能に影響するさまざまな要素の中で、実に70%を空気抵抗が占めます。もちろんこれよりスピードの低い、市街地走行でも優れた空力システムを備えていれば燃料も走行安定性も高くなります」と村山は説明する。
これがF1をはじめとするモーターレースの世界であれば、空力性能が勝敗を分ける試金石となることも理解できるだろう。

車両計測室にあるターンテーブルの下には車輌重量計が設置されている

車両上部に配置された高感度マイクで、風切音を計測する

 

 

筋上のスチームを噴射して空気の流れを検証する

風洞を、レクサスのデザイン・設計・実験部署と同じ敷地内に建設したのは、戦略的な判断からだった。専門性の高い各リソースを1つの敷地に集約することで、たとえばデザイナーは風洞のスペシャリストと密接に働き、開発途中の試作モデルをすぐさまテストすることが可能になったのだ。
「空力テストする施設はほかにもありますが、デザインと空力評価が表裏一体であるこの実験棟は群を抜いています。ほんの小さな外装パーツをつけただけでも、ボディ周囲の気流は変化します。それゆえ先進的な空力の研究施設がデザイン部門の目と鼻の先にあることは、とても重要です」。では、実験棟内部ではどうやって性能評価が行われているのだろうか。テストを行うにあたっては、まずテスト車両が車両計測室にあるターンテーブルに載せられる。

車両計測室への搬入口にあるターンテーブル

重量計の役割も果たすこのターンテーブルは、5つの可動式ベルト(各タイヤ下部とアンダーボディに1つあり、スポーツジムにあるジョギングマシーンと同じ働きをする)により、クルマ自体は1ミリメートルたりとも前に進むことなく、設定された速度で巡航した状態をシミュレーションできるのだ。そのクルマに大型送風機がつくり出した気流を当て、少量のオイルを混ぜて気化させたスチームを放つと、たちまち車体の周囲を流れる空気の様子が目に見えるようになる。
ちなみのこの大型送風機は、ハリケーン並みの気流を送り出すことも可能で、風速は最高で時速250キロメートルにも達する。
また最近では、風切音などのノイズを低減する技術も重要性を増しているが、ここでも風洞実験棟が大きな役割を果たす。内壁や床には吸音効果のある素材を採用しているため建物内部は静寂そのもの。つまりテスト車両の風切音のみが測定できる環境が整えられている。
レクサスのノイズテストは音漏れを許さない徹底さで実施されている。通常、ヒトの耳は20ヘルツを超える音でなければ感知できないとされているが、この実験棟では、気流の乱れが起こすノイズを1ヘルツ以下に抑えこむ作業が行われている。

車両計測室に置かれたRC F

各タイヤをムービングベルト上に設置。車両を動かすことなく走行状態を再現できる

「風洞内はとても静かなので、空力テスト中のクルマがそこにないと、稼働しているのが分からないほどです」と村山は笑いながら語る。
「送風しながら、クルマ上部とサイドにそれぞれ配置した極小サイズのマイクで風切音をモニターします。計測データは、リアルタイムでコンピュータースクリーンに可視化され、低騒音化の作業を効率良くしているのです」。
この実験棟の性能をフル活用して開発されたのが、ハイパフォーマンスクーペのLEXUS RC Fだ。チーフエンジニアを務めた矢口幸彦は「RC Fのエアロダイナミクスは、この風洞で磨き上げられた」と誇らしげに語る。
実際、リアルな走行状態をシミュレーションできるので、公道を走らずともフィードバックを瞬時に得られるメリットは何ものにも代え難い。「あらゆるパーツは1ミリメートル単位の精密さで設計され、ダクトのレイアウトや空力パーツのサイズについては考えられる限りの可能性を精査します。すべての条件を余すことなく検証するのが前提。やさしい仕事ではありませんが、だからこそレクサスのクルマはすべて、あらゆる道路・気象条件に対応できるのです」。

スタッフが手押しで実験車両を搬入する

この世界屈指の風洞実験設備をもつことで、空力性能で他を圧倒するクルマをデザインすることができる。そしてその試みは、未来の自動車産業そのものを形づくることにもつながっていくのである。

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