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紙川涼は探偵じゃない〈物語の限界・不可能推理〉~罪のアントは罰である、何故なら罪とは罰されない事であるから、ならば俺が罰することは罪なのだろうか?~ 現世ッ、推理無双!! 作者:高黄 森哉
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#13、作中作、登場人物紹介

紙川は台本を配る。そこには登場人物の名前が書き込まれていた。


「お、正解。良かった。良かった」

「………………紙川さん、眩しくない所に移動したらどうでしょうか」

「ありがたき、お言葉。では、そうさせていただきましょう」

「………………そう」


 ウケが悪いから、このノリは封印することに決めた。そう心に、なっ。


「ぬぉっ!おはようっス!」


 安田が俺の次に入ってきた。流石にオーバーリアクションだろ。後で謝っとけよ。自分のことを棚に上げて、そう思う。

「お、おはよー、高峰ちゃん、じゃん。もしかしてー、開いてた?職員室に行ったとき、鍵なかったからさ。入れ違いになっちゃったのかな?ほんとっ、ごめん」

「死刑だ、死刑。七咲、死刑。土下座も生ぬるい」

「オッケ!」

「ぐはぁ!」


 太腿の裏側が七咲によって処刑された。

 七咲に悪気には無かったのは幼馴染として、俺が保証しよう。そんな陰湿な人間ではない。心がちょっと足りないだけだ。学級長はおもむろに、鍵を懐から取り出し、見せた。ちゅうぶらりん、真っ白な鍵。もしかして、学級長、それで処刑を?


「スペアキー、借りてたので、その時かもしれませんね」


 怖いよ、なんか。恫喝されてる見たい。ちょっと怒ってる? 鍵の見せ方がホンモノのそれだった。何かは説明出来んが。


「ほんとにっ。ごめん。埋め合わせはするから」

「あ、いや、そんなつもりじゃなかったんです。頭上げてください、七咲さん」


 七咲は頭を垂れた。謝罪の仕方が、本物だった。お前の方が怖いから、さっきの学級長のチャラ!


「っつお、高峰学級長、おはようございます!」

「山崎君、おはよ」


 高峰学級長か、山崎は同じ学校だったからか、多少、距離が近いかな。

 そうだ、学級長の容姿。——————容姿はだな、カマキリに似てるらしい。それを聞いた時、『どこがか言ってみろ』と安田を詰問したものだが、安田にしては珍しく教えてくれなかった。その勿体ぶりに意味あんのか?

 まぁアイツは、ホームセンターで買ってきた食虫植物にビーナス、とか名付けて、耐震ダンパーをつけるための窓のでっぱりで栽培しちゃうような、奇人だからな。そういう感想も仕方ないかもしれない。

 カマキリ、蟷螂ねぇ。理知的な鼻筋とかが? 細身の体が? なんとなく分かる気がするのは、長く安田に曝されたせいで、安田熱に罹患したからだろう。WHOに連絡を入れなければ。


「カマキリねぇ」


 何故か学級長がビクッと反応した。灰色の目がかち合う、ん? 声に出てたか?


「………………いや、その」


 考えるように右斜めに顔をそらした。遅れて青毛のポニーテールがやって来る。


「カマキリカァ!」


 安田が気まずい沈黙に水を差した。


「紙川ぁ、知ってるか?実はカマキリって、ゴキブリに近いんだぜ」


 また始まったよ。結局お前はそれか。


「嘘をつけ」

「いや!本当だっつうの。ほら、言われてみれば羽の形とか、足のギザギザとか。んなに近くもないけどなぁ」


 どっちだよ。今の無駄な時間だろ、利子付きで返済しろ。


「あっそ」

「………………」


 高峰さんと、また目が合う。んん? ナンデショウカ?


「なんでしょう?」

「台本、貸してもらえるかな?」


 おっと、そうだったな、学級長は、感情を感じさせるが飽くまで事務的な声で、そう言った。誤解があるかもしれないので、フォローを入れておくが、高峰さんは別に冷たいキャラじゃない。ただ安田と、そして多分俺も、が苦手なのだ。悲しいけど、人には好き嫌いがあるのだ。


「はいよっと」


 俺は台本を配給することに決めた。台本の表紙には、個々の名前とその配役が載っている。

・高峰美麗→鈴谷先生


「どうぞ」

「………………ありがとうございます」


 俺から顔を隠すように台本を広げて、中身を確認し始めた。読み方がもう真面目だ。ただ、そう感じた。

 次!

・安田孝→吉田


「よしだー」

「うっす」


 お前、よしだじゃないだろ。それでいいのか? 吉田こと、安田は台本を持つなり、扇子みたいにパタパタし始めた。熱いもんな、って、じゃない。学級長を見習え。

 次だ、次。

・七咲美咲→綾瀬


「七咲ぃ」

「はぁーい」


 そんなキャラじゃないだろ。普段は濁点付きの『あ』だろ。まあいいか。指摘するなんて、自殺行為。


「山崎ー」

「………………たしかに、受け取った」


 そう言って一枚ずつ、ビシッビシッと台本を捲っていく。


「普通に取れ」

「っし、奴らにバレちまうだろ」

「ダンディーな奴め」


 山崎に手渡した台本は、俺たちのよりも数倍厚かった。いわゆるプロットとか、演出の指示とか、設定が書き込まれてるに違いない。その厚さたるや、『監督は楽そうでいいよな』とか、迂闊に言わせない風格があった。


「一つは予備か?」

「紙川爺さんやー、それはあんたのじゃろー」

「おー、そおじゃった、そおじゃった。七咲婆さんや」

「んだとぉー」


 ビュンと、足が剛正大きく、しなりながら飛んでくる。それはもう、脛が死んだのだった。

 痛い、タスケテ。


 前回の粗筋を追加しました。時間があれば、全ての話に追加するつもりです。話のつながりが、いまいち分かり辛かったので。これから自作映画の準備フェーズへ!乞う、ご期待!

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