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紙川涼は探偵じゃない〈物語の限界・不可能推理〉~罪のアントは罰である、何故なら罪とは罰されない事であるから、ならば俺が罰することは罪なのだろうか?~ 現世ッ、推理無双!! 作者:高黄 森哉
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#16、職員室内部

山崎と職員室で交渉する。


非人道的、ホントかどうか知らんが。

 風が体を突き抜ける冷感は、さながらニュートリノ。涼しい職員室内を見渡すと、いつもの面子が揃っていた。やっぱ、夏休みでも夏休みしてねえな、ここは。

 あぁ? なんで、いつもの面子を知ってるかって?

 よく提出物を滞納するので、毎日のように督促状が届くからだ。お陰で、安田と共に職員室の日常と化している。現状を改善しなければ、内申が、マズイ。フゥ!スリリンッ!


「ぉお、紙川君。これは、押しさしぶりやな。夏休みの宿題、え゛ぇ? どうかね。わっはっはっはっは」


 奥の方から、白髪のでっぷりとした男が、のそのそと杖を突いてやってきた。この人は担任の宮沢先生。現代文を担当してる先生で、生徒からの信頼が厚い。もっとも、生徒から人気があるのは、授業の大半を不良高校武勇伝で埋めるからだろう。————————————腰の調子は大丈夫だろうか。また、ぎっくり腰が再発してないといいが。


「宮沢先生、おはようございます。夏休みの宿題ですか、………………ぼちぼちですかね。それより、家庭科の先生に用事があるのですが、いらっしゃいますか?」

「ほうか、家庭科の、何先生に用があるのかな? わっはっは」


 う゛。意地悪だ、覚えてない俺が確実に悪いわけだが、何先生だっけ。すぐ後から、山崎が助け舟を出す。


「安藤先生だぜ」


 と、ナイス。


「安藤先生、安藤先生はいらっしゃいますか」

「あぁ~あ、安藤先生ねぇ。はいはいはいはい、分かりましたよ。————————————それと、これから少なくとも半年、お世話になるんやから、名前くらい、しゃんと覚えなさいよ」


 後半は小声で言ってくれた。


「ハハハ、いや、スイヤセン」


 笑って誤魔化す。武勇伝通りの地獄耳。でも、いい先生だよな。


「安藤ー先ー生ーーーーーー!」


 先生は息を大きく吸ってからそう叫んだ。その方法なら、自分で探したほうが良かったが。


「はいはい、宮沢先生、なんでしょう」


 安藤先生がぬっ、と机に高く積まれた教科書の摩天楼、その頂上から皺くちゃの怪獣が顔を出す。安藤先生ねぇ、皆が思う叔母さんのイメージが実体化したような、家庭科の先生である。生徒からは親しみを籠めて、そのまま、お祖母ちゃんの、渾名が付けられていた。本人も、そのニックネームに思うところは無いようで、むしろ喜んでさえいるのだが。ちな、俺はこの先生が嫌いである。なんか嫌だ。俺はぶっきらぼうに聞いた。


「家庭科のマネキン、借りてもよろしいですか。文化祭の出し物で必要なんですよ」

「そうですかはぁ~、うーん。どう、使うかにもよりますがねぇ」


 は? このクソばばあ。声には出さないが、破裂しそうな感情がくすぶっている。俺との相性が最悪なのを知ってるからか、『ここは俺が説明しよう』と山崎が一歩前にでる。ボス、任せました。


「えあ~、実は一つ、死体をね、偽装したいんですよ。いやあ、モノ本を使っても勿論いいんですがね。ちよっと、夏場は腐敗が激しいと思いまして、どうか、ここは一つ、マネキンで」


 安藤先生は目じりにしわを寄せる。


「ほほほほほほほ、またまた、山崎君は。いいでしょう、被覆室に使われてないマネキンがありますから、終わったら必ずもとに戻しておくように」


 そういうと、机に置いてあった、湯気が水面に薄く張るコーヒーに口をつけた。暑いのによう飲むよ、そんなの。こっちが見てて苦しくなる。年だから自立神経が退化してるんだ。………………それにしても、意外にあっさりとオーケーが出たな。気難しい先生だ、予定では三十分くらい粘るはずだったが。

 俺たちは、鍵置き場までの道のりを雑談をする。


「この、年上キラーがよ」

「なんだ? 紙川。それ俺のことか。止めてくれよ、趣味じゃないんだが。どこかの誰かさんみたいに、家庭科の宿題をバックレる不良じゃないから、気に入られてるだけだぜ。良かったら手伝うぞ」

「お願いする。たのむ、かがり縫いを教えてくれ」


 あの縫い方どうなってんだ。複雑怪奇すぎるし、使いどころを見出せない。


「おうよ。今回の件が終わったら手伝ってやる」


 そして扉の近くにある、木製の鍵掛が見えてきた。

 どれどれ、被覆室の鍵は? あった、これか。


「どうして鍵、全部、同じ色なんだろうか。前から思ってたんだがよう、分かりずれいよな」


 山崎は後方から疑問を投げかける。さぁな、考えられるのは。


「考えられんのは、防犯上の理由か。計画を立てにくくしてんだろ」

「なるほど。ふむ、興味深い」


 それより俺が気になったのは、”仲間外れ”の方だった。視界から入った情報はハイライトされ、記憶のメモ帳に保管される。『好奇心が袖を引く』と呼んでるが、これも心の声と同じく、そうやら他は持ち合わせてないらしい。それがないって、生きずらくないか? 俺以外は縛りプレイを楽しんでるらしい。それは置いといて、そうそう、鍵。

 ほぼすべての鍵は歴史を感じさせる、傷のついた、青色で、プラスチックの、そして楕円形なストラップが付いている。その中心に貼られた、新しい、長方形で、白色のテープに、それぞれが担当する教室が記入されてるのだが。

 ————————————あるのだが。

 ()()()()()、と言ったのは真っ白の仲間外れがいるからだ。屋上の鍵が白一点、しかも他の奴らよりちょっと新しい。仲間外れ。なぜコイツだけ?

 そんな、割とどうでもいい気がする、疑問を抱きつつ、『失礼しました』の声に意図せずディレイをかけて重ね、ひいては扉を閉めて、俺たちは職員室を後にした。


ううむ、文章が段々と複雑になってる気がする。これは、簡単に書けるところを回りくどくしてる、という意味であるので、迅速に改善したい。もっと単純に、平易に書く練習をせねば。せっかく会話ですっきりした感じになってたのに。苦戦中。

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