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婚約破棄から玉の輿 作者:菊水
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当て馬

 「伯爵令嬢サブリナ、すまないが婚約を破棄したい。」


 ローランド=バルマン、バルマン公爵家の長男である。


 「分かりましたわ。我が家との縁談は終わってないのでしょう? 姉をよろしくお願いしますわ。 では」


 この後に美しい姉との縁談が控えているのだ。

 そう、サブリナは姉のための当て馬。

 姉のために生まれてきたような妹。両親はいつも美しい姉のことしか見ていない。


 家に帰ると父が此度の縁談も残念だったな、また探してくるから休んでいなさいと言われた。


 「疲れたわ、メリッサ出来るだけ濃いお茶を入れてくれない?」


 部屋に入り私が言ってすぐに準備するメリッサ。

 彼女はずっと側付きのメイドである。


 「本日もお疲れさまでした。」


 トントンと軽いノックの音が聞こえる。


 「ねぇ! サブリナ聞いて! 私、今度は公爵様の御令息と縁談だそうよ!ローランドってお方、少し見たけどとても格好いい方よね。」


 「ええ、そうですわね。お姉様とお似合いだわ。それでお姉様はどうしたいんですか?」


 「まだ、決めてないけどこれから楽しみだわ! じゃあ、お休みなさいサブリナ」


 両親は、姉に私との縁談のことは最初から黙っている。

 姉は、私が当て馬になっているとも知らずに暢気なものだ。


 「言い忘れたけど、濃くしているのに美味しいわ。普通に飲めるなんて、やっぱりメリッサは紅茶を入れるのが上手いのね」


 因みに使用人達が私の味方なのは、姉の我が儘に付き合いたくないからが大半で、特に私に対して良い感情があるわけではない。


 瞬く間に時が過ぎました。


 先日、ローランド=バルマン公爵令息との婚約を姉から破棄したのだ。

 理由もなく、この人は運命の人じゃないとかなんとかで。

 我が家は名門とはいえ伯爵家、婚約を此方側から破棄など出来るわけがないのだ。


 そして一昨日、姉が書き置きを残して居なくなった。

 「真実の愛を見つけたから、さようなら」と書いていたらしい。

 姉と共に側付きの護衛が居なくなっており、その者と駆け落ちしたのだろう。

 父と母は捜査線を張ったが、見つかりませんでした。


 それから一週間ほど経ち


 姉は、未だに行方知れず。

 両親ももう姉を諦めたみたいだった。

 ドアをノックする音が聞こえてすぐ父が入ってきた。

 父が埋め合わせに、また私との縁談をさせようとして公爵家に取り次ごうとしたのを阻止しましたわ。


 「なんのつもりだ! また、お前に公爵様との縁談を進めてやろうとしているのに!」


 「前に終わってしまった縁談を掘り起こすことが私のため? そんなことありえませんわ。縁談の掘り起こしがどう言うことかお父様もわからない訳じゃないですわよね?」


 縁談の掘り起こしとは、婚約破棄の後どちらも好い人と巡り会わず、また意中の方がいない状態で、緊急を要したときに行われていることが多数である。

 「通称:キズモノ同盟」なんて不名誉極まりない呼ばれ方。


 「そんなこと、気にしなくて良い! だから、この愛しい両親のために了承してくれないか?」


 「私のことを馬鹿にしないでくださいませ!」


 「へっ?」


 私の言葉に間の抜けた返事をする父に本心をぶつける。


 「私の事など一回も見たこともないくせに!いつもいつもお姉さま優先で、お姉さまにはどんどん新しいドレスを作って、私はお姉さまのお古ばかりよ。お姉さまには、宝石を買うくせに、私には、誕生日でもただの一つも買ってくれたことがないじゃない!学園で私がどう呼ばれているか知っていますか?『一人時代遅れ』よ! 何で伯爵令嬢である私が男爵や子爵クラスの令嬢にまで、貶されないとならないの? それはどれもこれも私を蔑ろにしてお姉様にかまけていた両親のせいよ! 婚約者だって何度取られたら良いのよ!お姉様が居なくなって家が危機的状況になったら貴女のため? ふざけないでください!」


 「なっ……なに……をっ?」


 私は、今までの恨み辛みを吐き出してスッキリした。


 そして、父から出た言葉はこれだけ。

 もう、完璧に未練はない。


 「私、修道院に入ります。 セント=マリア女性修道院ですわ。今までの縁談が成立しなかったのも、敬虔な信者じゃなかったからでしょう。なので、家から出ます。今まで住む処と食事をありがとうございました。後、私に付いていた侍女達は、皆違うところへ斡旋しておいたので、大丈夫ですわ。馬車の手配も終わっていますし幸い、貴金属や宝石類は私だけ持っていなかったのでドレスだけ返しておきますわ。では。」


 「待てっ! 何を勝手に! そんなものは認めん!認めんぞぉっ!」


 「あら? 知りませんの? 教会や修道院への入信は、自由で親の許可など必要では有りませんが?それに宗教に口出しなんて出来もしないのですから。あら、もう迎えのシスターが来ましたので出立させて頂きますわ」


 「お待ちしておりました。すぐに向かいます」


 そう言うと恭しく礼をしたシスターと共に馬車へ乗る。

 さらば、王都そしてロッゼタール家。

 そう思いながら馬車に揺られて行くのだった。


 修道院で修行した私は回復魔法の才がとてもあり、人一倍回復魔法が上手い。

 正直死んでいなければ治せる。その力を使って世のために現在働いている。

 そのお陰かトントン拍子に出世し現在大司祭級の権威を持つ聖女という役目を果たしている。

 メリッサたち私と仲の良かったメイド達は聖女の世話係になった。


 そんな時、この国の王太子様との縁談が上がり、姉の当て馬でない縁談に動揺した。

 きっと王太子は、聖女の肩書が欲しいだけなのだ。そうはわかっていても、なぜか心が揺らいだ。


 悩んでいる間に、王太子と婚約し、結婚することになった。とさ。






















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