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【WEB版】冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する 作者:斧名田マニマニ

11章 蘇れ! 『豚の夜鳴き亭』編

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82話 おっさんと少女、お見舞いに行く

 呪詛を解き、安宿から連れ帰ったアランは、そのままバルザックの病院に預けた。

 あれから3日。

 アランが目を覚ますことはまだ一度もないが、顔色は少しずつ良くなってきている。

 医者によると、初日より衰弱度合いもかなりマシになったらしい。

 とにかく、この調子で経過を見守るしかないだろう。


 一方、エドモンドの魔法によって負傷したエイハブも、同じ病院に入院している。


 俺はラビと共に、どちらの病室にも毎日顔を出している。

 今日もアランの様子を見たあと、ラビを連れてエイハブの病室へ向かっていると――。


「あのっ、もしやあなたがダグラスさんでは……?」


 渡り廊下で医者に呼び止められた。


「? ああ、そうだが……?」


 医者が慌てて俺の手を取る。


「はじめまして! 私はエイハブさんの治療を担当している医師です」

「そうだったのか。友人が世話になっている」

「いやあ、驚きましたよ! エイハブさんは大怪我だったでしょうに。運ばれてきた時点で、スキルで完全に治療されていたのですから。聞くところによると、あなたが回復なさったのだとか」

「あ、ああ……」


 医者は尊敬のまなざしで俺を見つめてきた。


「我々も医者ですから、回復スキルを習得しています。それでも完全回復の技は初めて見ましたよ! 神のような腕前でしたね!」

「はは……。それは言い過ぎだろう。俺に治せるのは怪我だけ。病気の前では何の役にも立たん。アランの治療にだって限界があったしな」

「あの方もあなたが……!?」

「えへへ、私のお父さんはすごいんだよー!」


 驚いて身を乗り出してきた医者に向かい、ラビが誇らしげな笑顔を向ける。

 かわいい。

 うちの子天使。

 ……おっといけない。


「エイハブだって、怪我が治ったとはいえ、まだ動けないんだろう?」

「……それは残念ながら」


 回復魔法で即座に怪我を治しても、それで済むわけではないのだ。

 エイハブの怪我はひどすぎた。

 複雑骨折していた右腕と左脚を元通り使えるようになるには、一月ほどのリハビリを必要とするようだ。


「あの、ダグラスさん! 今度是非、回復スキルの実演をお願いしたいのですが!!」

「はは、そ、そのうちな……行こうラビ」

「うん」

「あああ、去り行く後ろ姿もかっこいい……!!」


 医師から逃げるようにして、ラビとふたり、そそくさと病室へ向かった。

 扉を開けて中を覗き込むと、ちょうどこんなやりとりが繰り広げられていた。


「入院なんて大げさだよ。この通り、俺はピンピンしてるってのに……って、うわっ」

「ほら、もう! まだ動きがぎこちないんだから、無理しないでちょうだい」


 無理矢理起き上がろうとしたエイハブを、彼の妻が慌ててベッドに引き戻す。

 俺たちにはまだ気づいていないらしい。


「お父さん。エイハブおじさん、昨日来たときも同じことしてたね……。安静にしてないと、お医者さんに怒られちゃうのに……」


 ラビが口元に手を当てて、ひそひそ声で言う。

 俺もラビの傍らに屈み込み、ひそひそ声で返す。


「やっぱり入院させておいて正解だったな。あの調子で動き回ろうとしたら、転んで怪我でもしかねないぞ」


 俺の言葉にコクコクと首を振ったラビの手を引いて、病室の中に入る。


「お! ダグラス、ラビちゃん。今日も来てくれたのか」

「元気そうで良かったよ。でも動き回るのは、まだ早いぞ」

「ラビちゃん、こんにちは!」

「ダイアナちゃん、こんにちは……!」

「あれ? 何持ってるの?」

「あのね。えっと……」


 ラビが問いかけるように俺のほうを見る。

 頷き返してやると、ちょっと照れくさそうにもじもじしたあと、手にしていた白い箱をエイハブに向かって差し出した。


「エイハブおじさん、えっと、これ、どうぞ……!」


 来る途中、ふたりで寄ったケーキ屋。

 そこで買ったお見舞いの焼き菓子が、箱の中には入っている。


「おおっ。ラビちゃん、ありがとう。何が入っているんだろうな。開けても良いか?」

「うん……お父さんと選んだの……」

「わあっ、あのケーキ屋さんだあ!」


 エイハブの娘ダイアナが、箱の中身を覗いて歓声をあげる。


「ダイアナちゃん、おいしいって教えてくれたから」


 喜んでもらえたのがうれしいのだろう。

 ラビが頬を染めながら、にこにこしている。


「すみません、ダグラスさん。毎日、気を遣っていただいて……」


 エイハブの奥さんが、申し訳なさそうにお礼を言ってきたので、俺は笑って首を振った。


「いや、気にしないでくれ」

「ねえねえお母さん、食べてもいいー?」

「そうね、じゃあ皆でいただきましょうか」 

「わあい……!」

「お茶も入れましょう。ちょっと待っていてください」

「あ、すまない。どうぞお気遣いなく……」


 エイハブの妻が出て行ったところで、俺はエイハブに向き合った。


「――エイハブ、昨日話したことについて考えてくれたか?」


 俺がその話題を出した途端、エイハブは呆れた表情を浮かべた。


「考えるも何もない。昨日ちゃんと断ったじゃないか。おまえに宿の修繕費を出してもらうなんて、絶対にだめだ」

「でもお父さん、これからどうするの?」

「ダイアナ。お前はあっちでラビちゃんと遊んでいなさい」

「だって……」


 エドモンドの魔法で、大破してしまった『豚の夜鳴き亭』。

 その修繕費を出させてくれと持ちかけたのに、エイハブはこの調子でまったく聞き入れてくれない。

 だからと言って、俺だってここで引くわけにはいかなかった。


「おまえを巻き込んでしまったのは俺だ。その責任を取らせてくれ」

「何言ってるんだ、ダグラス。悪いのは、あのクソ賢者だぞ。おまえが責任を感じることなんてない。――退院できたら、銀行に行ってくる。宿を抵当に入れれば借りれないこともないだろう」

「おい、それならせめて俺から借りてくれ」

「ダグラス、俺は友人から金を借りたくないんだ。わかってくれ。さあ、この話は終わりだ!」

「エイハブ……」


 彼はもう頑なな態度で、窓の外に視線を逸らしてしまった。


 昨日、彼の妻から聞いた話によると、エイハブが修繕にかけられる費用は金貨5枚分だという。

 家を1軒建てるのにかかる費用の相場は、金貨10枚。

 エイハブの現在の所持金では到底足りない。


 宿屋はそう儲かる商売ではないから、借金などしたら、生活が相当しんどくなる。

 エイハブの言っていることも理解できる。

 もし逆の立場だったら……。

 やはり俺も、同じように申し出を断っていただろう。


 そうは言っても、エイハブには家族がある。

 幼い娘と彼の奥さんが、苦しい生活を強いられることがわかっていて、引くわけにはいかない。


「ラビ。ダイアナちゃんと、待合室で少し遊んでいてくれないか? 本があっただろう?」

「うん……行こう、ダイアナちゃん」

「ダグラス……」


 エイハブの娘の前でこれ以上金の話はできない。

 俺のほうにも引く気がないのを察したのだろう。

 それと入れ違いに、エイハブの妻がお茶を準備して戻ってきた。


「あら? どうかしたの?」

「奥さん。少し聞いていただきたいことがある」

「話は終わりにしてくれと言ったのに……」


 不思議そうに首を傾げたエイハブの奥さんに事情を説明すると――。


「あなたらしいというか、なんというか」

「心配するな。お前たちに苦労はかけない。俺が朝晩働いて、食わせてやる」

「そんなことより怪我を治すのが先でしょう」


 彼女は頬に手を当てて、苦笑を浮かべた。

 旦那の性分は俺よりずっと理解しているのだろう。


「ダグラスさん、申し出はとてもありがたいです。でもこの人は、絶対に意見を曲げませんよ」

「だろうな……」

「私も夫を支えて行きます。どうか心配なさらないで」

「そうだぞダグラス。俺にだって多少の蓄えはあるんだからな」


 その言葉を聞いて、俺はふと思いついた。


「金を受け取ってもらえないなら、エイハブの出せる金額で、『豚の夜鳴き亭』を再建する方法を探すのはどうだろうか」

「いや、でも俺が出せる額は微々たるもんだぞ……。それだけで宿を一軒建てれるわけがない」

「通常の方法で建築を依頼したらそうだろうな」

「ダグラスさん、何か別の方法があるんですか……?」

「必ずできるかはわからない。それでも試してみたいんだ」


 もしうまくいけば、エイハブの問題を解決できる。


「ダグラス……俺が出せる金は相場の半額だぞ」

「分かっている」


「約束しきれなくてすまない。どうだ、エイハブ。その額で再建できるかどうか、俺に試させてくれないか」

「……しかし……」


 俯いたエイハブに、俺は声を掛けた。


「エイハブ。俺は悪くないと言ってくれるお前の気持ちは本当にありがたい。いい友人を持って幸せだ。だがな――」


 俺は奥さんの方を見る。


「やはり、何より大切にすべきは家族だ。俺に、お前の家族を護る手助けをさせてくれ」

「ダグラス……」


 エイハブはぐっと涙声になったあと、それを堪えるように咳払いをした。


「わかった。ダグラス、頼む」


 ベッドの上でエイハブが深々と頭を下げる。

 その姿を見た俺は、何が何でも金貨5枚で『豚の夜鳴き亭』を再建してみせると、心に強く誓ったのだった。

コミカライズ版『冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する①』が発売1週間で、なんと大重版していただけることになりました!!


ここまでこれたのも、応援して下さった皆様のおかげです。

本当にありがとうございます!

更新速度がマイペースで申し訳ないのですが、これからも楽しく書ける範囲でがんばっていきますので、

応援よろしくお願い致します(*´`*)

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『幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった』
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【あらすじ】
一個下の幼馴染で彼女の花火は、とにかくモラハラがひどい。

毎日えげつない言葉で俺を貶し、尊厳を奪い、精神的に追い詰めてきた花火。
身も心もボロボロにされた俺は、ついに彼女との絶縁を決意した。

「颯馬先輩、ほーんと使えないですよねえ。それで私の彼氏とかありえないんですけどぉ」
「わかった。じゃあもう別れよう」
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俺の人生を我が物顔で支配していた花火もいなくなったし、これからは自由気ままに生きよう。

そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の生徒から賞賛を浴びて、学園一の人気者になっていた。
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