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【WEB版】冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する 作者:斧名田マニマニ

2章 慈善の街アディントン編

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13話 おっさんと少女、バイトでドラゴン退治~タマゴサンドと肉団子のスープ~

 本日は曇天。

 山の気温は低く寒い。

 鬱蒼と生い茂る木々のおかげで風を感じないのが救いだ。


 俺は自分のコートを着せているラビに視線を向けた。

 自然と初めて会ったときのことを思い出す。

 ワンピースだけでは防寒にならないからやむを得ないが、相変わらずダボダボで、コートに着られているような状態だ。


 雨風をしのげる防寒着も1着必要だな。

 購入するものリストがだんだん増えてきた。


(忘れないよう気をつけなければ)


 今日の成果次第ではそれなりにいいコートを買ってやれるだろう。


 そう俺は今、路銀稼ぎの仕事中なのだ。


 冒険者ギルドを通さず、できるだけ金になる仕事を探しているとセオ爺に相談したら「あんたは訳ありかね」と呟いたあと、街の依頼をこなしている自衛団を紹介してくれた。


 基本的にギルドが紹介しているクエストというのは、個人の依頼主から請け負った案件になる。

 国や街からの依頼はギルドを通さず、立て看板の募集を見て集まった者の中から選び抜かれることが多かった。

 しかし公共の依頼は難易度もかなり高い。


 ちなみに今回の仕事は、ギルドクエストの難易度でいうとBランクぐらい。

 依頼内容は、赤眼ドラゴンを討伐するというものだった。


 赤眼ドラゴンは非常に獰猛で攻撃的な魔獣だ。

 だがそれより問題なのは彼らの嗜好である。

 春になり冬眠から目覚めると、人里近くの山で巣作りをはじめる。

 おぞましいことに赤眼ドラゴンの大好物は人間だった。

 いつでも食料を調達できるようにと思うのだろう。

 やつらは昼夜を問わず人里に舞い降り、その鋭い足で人間を鷲掴んで攫っていく。


 しかも巣作りを放っておくと毎年、同じ場所に姿を現すので、なんとしてでも討伐しなければならない。

 1回巣作りをされてしまった山は、翌年になるとまた別の赤眼ドラゴンが舞い降りる確率が高くなるため厄介だ。

 この街も、数年来、赤眼ドラゴンの駆除を行い続けているらしかった。


「おい! ここらで昼休憩にするぞ!」


 大剣を背負ったリーダー格の男が俺たちを振り返って叫ぶ。

 黒々とした髭を顎に生やした逞しい男だ。

 年の頃は俺より少し下ぐらいか。

 眼光が鋭く威厳があり、俺とは真逆のタイプだと会った瞬間に感じた。


 彼はあまり俺にいい印象を持っていないようだ。

 実は今日、集合場所で会った瞬間「子連れで参加するなんて舐めてるのか。ハイキング気取りなら帰れ」と睨まれたのだ。


(たしかに子連れのクエスト参加者なんて聞いたことないもんな……)


 マットロック孤児院の一件で考えを改めた俺は、ラビがついてきたいと言うのでそれを了承した。

 ラビがどうしたいのか、本人の意思を尊重する。

 安全の度合いで考えれば、宿に置いていくほうが正しく思える。

 以前の俺なら確実にそっちを選んでいた。


 でもラビは俺と一緒にいることを望んだ。

 だったら俺の傍が一番安全だと断言できるよう、完璧に守ってみせたい。

 他の参加者たちには一応「迷惑は一切かけない」と伝えたが、鼻で笑われてしまった。


(俺たちは俺たち。他は他だ。協力はするが過剰に気にするのはやめよう)


 俺が不安になればラビにもそれが伝染する。


 というわけで昼飯の準備をはじめる。


 他の男たちは俺たちと少し離れた場所に円をかいて座っている。

 総勢5人。

 毎年、竜狩りは彼らが駆り出されるらしく冗談を言い合ったりと親しげな様子だ。

 ただ髭の男はリーダーだから、みんなの接し方に遠慮が見られた。


 俺とラビは少し離れた場所に腰を下ろした。

 ケツが土で湿ってしまわないように、リュックから取り出したズタ袋を敷いた。


 さっそく今日の昼飯を取り出していく。

 宿の女将に頼んでキッチンを借りた俺が、朝からせっせと作ったタマゴサンド。

 それから水筒に入れてきた肉団子のスープ。

 これは火にかけた鍋で温め直すつもりで持ってきた。


(思っていた以上に寒かったからスープ物があってよかったな)


「ラビ、温まるまでに時間がかかるから先にサンドイッチを食べていよう」

「うん」


 いつもどおり祈りの言葉を口にしてから、同じタイミングでサンドイッチを頬張る。


「わ……! たまごふわふわ……! おいしい……!」

「そうか、よかった」


 サンドイッチはオムレツタイプのもので、牛の乳を入れて伸ばしてある。

 そうすると咀嚼したとき、ふわっとした柔らかさが口内いっぱいに広がるのだ。

 味付けは砂糖を多めに入れて甘くしてある。

 隠し味に一つまみの塩をパラリと混ぜる。

 これが意外と大事でぼやけた味にならずに済む。


(うむ。我ながら上手くできてるな)


 ラビとふたりでパクパク食べてしまった。


 少しおなかが満たされた頃、鍋のほうも煮えてきた。

 クツクツ揺れる鍋から、いい匂いが漂う。

 女将が昨夜のあまりだと言って譲ってくれたロウロウ牛のスネ肉。

 それで出汁をとったスープは実に美味い。

 口にする瞬間が楽しみだ。


 そんなことを考えながら、鍋をスプーンで混ぜていると――。


「……おい、あんた。それはなんだい? やけにいい匂いがするが……」


 今にも涎を垂らしそうな形相で自衛団の男たちがこちらを覗いている。

 髭のリーダーは背を向けているが、他のメンバーは俺たちの鍋に興味津々らしい。


「肉団子のスープだよ」

「肉団子……この美味そうな匂いはそれか……」

「スープ……凍えた体にしみるだろうな……」


 ゴクリと男たちが喉を鳴らす。

 ひとつひとつは大きくない。

 しかし幸い肉団子は7つある。

 ちょうどここにいる人数分だ。


 ラビのほうをチラッと見ると、うんうんと頷き返してきた。

 分けてやって欲しいという意味だろう。

 そうだな。

 寒いのはあの男たちも同じだろうし。


「あんたたちもよかったらどうだ? そんなに量はないし回し飲みになるが、温かいものを飲めば体もあたたまるだろう」

「……! いいのか!? 俺たち相当態度悪かったのに……」

「いや、まあ、それは気にしないでくれ。顔見知りでもない人間と行動をともにするんだ。警戒もするだろう」

「あんた、いいやつだな……!」


 普通のことを言ったつもりなのにそんなふうに褒められてしまった。

 首の後ろ辺りがムズムズする。


「それじゃあまずは……う、うちの子に食べさせるぞ」


(不自然な言い方にならなかっただろうか?)


 伺うように男たちを見るが、みんな気にした様子もない。


「ああ、もちろん。娘さんにあげてやってくれ!」


 そう言われたのでホッとした。


(さてと……)


 いつものマグカップにスープをよそってラビに。

 それから順に男たちにも渡していった。

 みんな「美味い」「温まる」「最高だ」などと呟いている。


「なあ、あんたもどうだ?」


 相変わらず背中を向けている髭の男にも声をかける。

 髭の男はチラッとこちらに視線を向けて、不機嫌そうに顔をしかめた。


「チッ。食いもんなんかで釣られやがって」


 吐き捨てるように言われた言葉を聞いて、他の男たちがギクッと体を揺らした。

 直前までワイワイと騒がしかった空気が一瞬にして凍りつく。


「いつまでもダラダラしてたら明日になっちまう。さっさと出発するぞ」


 俺たちは慌てて荷物をまとめなければいけなくなった。


 ◇◇◇


 昼食のあとはまた列をなして山を登っていった。

 午前中より急勾配が増えて足場も悪い。

 ラビには何度かおんぶをするかと尋ねたが、がんばって自分の足で歩いている。

 俺はラビを見守りながら、その後ろを守った。


 進むほどに山は険しくなる。

 先頭のリーダーが何度も鉈で草木を刈って、強引に行く手を切り開かなければいけない状態だ。


「この山は街の人々に恐れられていて、赤眼ドラゴンの討伐以外では人が寄りつかないんだ」


 息を切らしながら前の男が教えてくれる。

 人が行き来しない場所に道はできない。


 ところがさらに30分ほど進んだとき――。


「おい、見てくれ! 獣道があるぞ!」


 真ん中を歩いていたのっぽの男が声を上げる。

 彼が指示した場所を見ると、なるほど確かに山上っていく獣道が確認できた。


「今年は運がよかったな!」

「ああ、本当に! ――こうやって獣道を発見できるとだいぶ楽になるんだ」


 みんなが獣道のほうへ進んでいく。

 俺もラビを連れてついていったが……。


(……これは)


 ごく薄くだが道に残った足跡を見つけて眉を潜める。

 しゃがみ込んでよく目を逸らした俺は確信を抱いた。


(やはりそうだ……)


 パッと見は鹿の足跡によく似ている。


(だがこれは一角獣の足跡だ)


 人の踏み込まない未開の山を好んで生息する一角獣は、利口なことでよく知られている。


「待ってくれ。この道はやめておいたほうがいい」


 俺が呼びかけると先を行く面々が不思議そうな顔で振り返った。


「余計な口出しをするとぶっ飛ばすぞ」


 髭の男が忌々しそうに唾を吐いた。

 それでも怯むわけにはいかない。


「この足跡をよく見てくれ」

「鹿の足跡だろ?」


 のっぽの男が、だからどうしたという顔で問いかけてくる。


「いいや。鹿のものなら副蹄の跡は一切つかないはずだろう。だがこれはわずかに跡が残っている」

「副蹄の跡がついてるならイノシシじゃねえか?」

「イノシシならもっとしっかりつく。それから前の部分、主蹄の形がかなり丸みを帯びている。この特徴を持つ生物は一角獣だけだ」

「……! てことはこの近くに幻獣様がいるってことか!」

「いいね! あれにお目にかかれたら運が回ってくるって言うじゃねえか。是非とも会ってみたいものだぜ」


 みんながワッと盛り上がる。

 でも今はそれに便乗しているわけにはいかない。


「一角獣は神経質で警戒心の強い生き物だ。普段は足跡をもみ消すようにして歩む」


 だからその特徴的な足跡は、なかなか見つけることができない。

 そんな動物が足跡を消しそこなうのはある状況下でだけ。


「幻獣をも食らう大型モンスターに追われて逃げている最中以外、一角獣が足跡を消し忘れることはない」

「な……」


 俺の説明を聞いて一同が絶句する。

 髭の男だけは変わらずにイライラとした調子で俺を睨み続けている。


「そんな話、俺は聞いたことねえぞ……」

「おまえは無知だからだろ!」

「だったらおまえは知ってたのかよ!?」

「い、いや。俺も知らなかったが……」


 山に住んでいる動物に詳しいハンターでさえ、幻獣の知識まで持っている者はなかなかいない。

 俺は落ちこぼれ時代、冒険に役立ちそうなことをがむしゃらに調べていたから、たまたま知っていただけだ。


「……悪いがあんたのその話をどこまで信じていいのか俺らにはわかんねえよ」


 4人が顔を見合わせる。


(当然そうなるな……)


「……ああ。だから信じてくれなくていい。ただし今日のところは引き返して欲しい。ドラゴンとはわけが違う。未知の大型モンスター相手では分が悪すぎる。俺はあんたたちに死んで欲しくないんだ。ドラゴンは巣が完成するまでは餌を探さない。それまでまだ十分時間はあるはずだろう?」

「そうだな……」

「だいたい俺たちを引き留めたところで、あんたには何の得もないもんな」

「さっきくれたスープは美味かったし……」

「おまえそれはいま関係ねえだろ」

「あんな美味いスープを俺らにわけてくれたんだぞ。悪い人間のはずがねえよ」

「まあ、そりゃあそうだ」

「ごちゃごちゃとうるせえな! いい加減にしやがれ!」

「ヒッ……!!!」


 髭の男に恫喝され4人が息を呑む。


「おまえら馬鹿か!? そんな余所者の口車にほいほい騙されやがって! そいつはここにきてびびりやがったんだよ! どうせてめえだけで逃げるのがみっともねえから俺らを巻き込もうって魂胆だ。相手にしてられるか!」

「お、おい、待ってくれ……!」


 俺は必死に髭の男を引き留めようとしたが、彼は聞く耳を持ってくれなかった。

 ずんずんと獣道を進みだした髭の男の背中を見て、みんなが深いため息をつく。


「……あんたの忠告を無視するわけじゃねえか、あの人には恩があるんだ。ひとりでおいてくわけにはいかねえよ」

「ああやって口は悪いし怒りっぽいが、責任感の強いいい人なんだ」

「俺ら、何度も命を救われてるしな……」

「あんたら親子だけでもここで引き返せよ」


 俺はラビを見た。

 ラビは俺の手をキュッと握ってから、こくりと頷いた。

 これは俺を信じてくれているときのラビの眼差しだ。


「いや。それなら俺たちもこのままついていこう」


 まさか見捨てられるわけはない。

 俺はさっき以上に注意を払って彼らのしんがりを守った。


 ◇◇◇


「これはいったい……どういうことだ……」


 髭の男が呆然と呟く。

 俺はとっさにラビを抱き上げて彼女の視界を遮った。


 獣道を通って辿り着いた先。

 半分ほどの状態まで作り上げられた巨大な巣穴の中はもぬけの空だった。


 巣作りのための木々を集めにいっているわけではないだろう。

 巣穴には赤黒い水たまりができている。

 その周りに肉の断片のようなものも飛び散っている。


「うっ……オエッ……」


 のっぽの男が口を手で覆いながら嘔吐いた。

 それも当然の反応だ。

 胃にくる強烈な血の匂いが辺りに立ち込めているのだ。


「赤眼ドラゴンはいないのに、この血の量って……。食われちまったってことか……?」


 真っ青な顔をしてのっぽが呟いたその時。

 バサッと上空で羽音がして、突然辺りが真っ暗になった。

 急いで顔を上げる。

 上空を浮遊しているのは――。


(魔黒竜……!!!)


 黒々と光る巨大な羽、鱗に覆われた肉体、青く光る獰猛な瞳。

 ドラゴンたちの王者。

 小さな村にこいつが現れたら、わずか1時間で壊滅させられる。

 それが魔黒竜だ。


「……か、勝てるわけねえ……。ドラゴンの10倍はあるじゃねえか……」

「あ、あああ……。……うわあああ!!!!」


 真っ青な顔をしてのっぽの男が踵を返す。


「いかん……! 逃げるな!」


 魔黒竜は逃げる者から襲い掛かるという習性を持っている。

 必死に止めたが聞こえていない。

 天を浮遊していた魔黒竜が羽を動かし、いっきに急降下してくる。


「伏せろ!!!」


 俺が叫ぶのと同時に、髭の男がノッポごと地面に倒れ込んだ。

 だがすぐ2度目の攻撃がくる。


「俺が囮になる! その間に逃げろ……!!!」


 グッと体を起こして立ち上がった髭の男が怒鳴る。

 止める間もなく髭の男が真逆の方向へ走り出す。


「リーダー……!!!」


 すぐに魔黒竜が羽を翻し、その姿を追いはじめる。


「だめだ! 無茶だ……!!!!」


 そうだ。

 人間の足で竜から逃げ切れるわけがない。

 グングンと距離が近づいていく。


「くそ……!!! リーダーの作ってくれた隙をついて逃げるしか方法はないのか……!?」


 涙でぐちゃぐちゃになった顔でのっぽの男が叫ぶ。


(――いや。殺させるものか……!!)


 タンッと地面を蹴って飛び上がり、詠唱。


 《漲る力湧き上がれ――飛翔(ライジング)!!!》


 自分の足にバフをかけ、ラビを抱いたまま上空へ飛ぶ。

 髭の男が魔黒竜を引きつけてくれたおかげで後ろが取れた。


 だがすぐにでも鋭利な爪が髭の男を貫こうとしている。


 《火炎の聖霊、怒りの炎を我に貸し与えたまえ――火魔法サラマンダー!!!》


 激しく渦巻く炎が魔黒竜の背中に降りそそぐ。

 地上に落下するまでにもっとダメージを与えたい。

 背中の鱗の下には痛覚がある。


(とにかくそこへ辿り着くほどの傷を……!)


 しかしレベルマックスの火魔法ですら、魔黒竜の鱗には傷を与えられない。

 もちろんそれも想定済みだ。

 欲しいのはたった一瞬。

 奴の隙を待っている。


(それにはもっと火力がいる……!)


 俺は火魔法を放ったまま、二重スキルで風魔法を重ねた。

 風に煽られ炎の威力が何十倍にも増す。

 まるで怒りを具現化した化け物のようにメラメラと炎が魔黒竜の背を焼く。


(いいぞ……)


 肉の燃える嫌な臭いがしはじめる。

 手ごたえが出てきた。

 そのとき――。


『グギャアアアアッッッ!!!』


 雄叫びをあげて魔黒竜がこちらを振り返った。


 大地に震動が起こるほどの轟き。


(痛覚に届いた!)


 魔黒竜が首を揺らしながら、痛みのあまり天を仰いだ。

 その喉元にきらりと光るダイヤ型の逆鱗――竜の急所。


 ごくりと息を呑んだそのとき――。


「お父さん、がんばって……!」

「……!!」


 ラビの小さな応援の声が俺の心を燃え上がらせる。


(まかせとけ!!)


 《絶対零度の聖域を守りし女神、我に凍てつく口づけを――氷魔法ヘル!》


 俺の手から飛び出た氷の矢が、魔黒竜の逆鱗を射抜く。


『ピギアアアアアアアア…………ッッ…………』


 魔黒竜が断末魔の叫びを上げながら転倒する。

 それと同時に俺もストンと大地に着地した。


 みんなを見回すと呆然としたまま魔黒竜を見つめている。

 地面の上に転がって腰を抜かしている者がほとんどだ。

 抱いていたラビを下ろしてから近くにいた男に声をかける。


「大丈夫か?」


「ああ……。す、すまない……」


 ひとりひとりに声をかけながら、手を貸して起こしていく。

 最後に残ったのは髭の男だ。

 彼は一人で立ち上がろうとしていたが、魔黒竜から逃げる際、足を痛めたらしくて苦労していた。


(俺が手を貸すのは嫌がるかな……)


 それでも一応、手を差し出すと……。


「すまなかった……!」


 突然、男が額を地面に擦りつけて謝罪してきた。


「あんたの言うことをあの時俺が信じていれば、みんなを危険に巻き込むこともなかった……。謝って済むことではないが申し訳なく思っている……」

「い、いや、あんた、ほら! 顔を上げてくれ……! 足だって怪我してるのに」

「本当にすまなかった……」

「わかったから、もう頭を上げてくれ」

「……」


 結局、髭の男は山を下る最中、何度となく謝罪の言葉を口にし続けた。

 俺と同様、仲間たちもオロオロとして、気にしなくていいなどと繰り返しているが本人はそうもいかないらしい。


(自分のせいで仲間の命が危険に晒されるのは、たしかに堪えるよな……)


 この一件は今後の彼の人生や考え方に、大きな影響を及ぼすかもしれない。

 それがいい方向への変化であることを、俺はただ祈るのみだ。

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『幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった』
https://ncode.syosetu.com/n0844gb/

【あらすじ】
一個下の幼馴染で彼女の花火は、とにかくモラハラがひどい。

毎日えげつない言葉で俺を貶し、尊厳を奪い、精神的に追い詰めてきた花火。
身も心もボロボロにされた俺は、ついに彼女との絶縁を決意した。

「颯馬先輩、ほーんと使えないですよねえ。それで私の彼氏とかありえないんですけどぉ」
「わかった。じゃあもう別れよう」
「ひあっ……?」

俺の人生を我が物顔で支配していた花火もいなくなったし、これからは自由気ままに生きよう。

そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の生徒から賞賛を浴びて、学園一の人気者になっていた。
しかも、花火とは真逆で、めちゃくちゃ性格のいい美少女から、「ずっと好きだった」と告白されてしまった。

って花火さん、なんかボロボロみたいだけど、どうした?

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