ACAT
消費者の購買行動に、”差が出る”セグメンテーション手法
自社商品に対する反応が明らかに高いターゲットを見つけ、「市場をどういう軸で分けていけばそのターゲットに辿り着くのか」というルールを学ぶ、タンジブルセグメンテーション。
【アウトプットの解釈】
企業がセグメンテーションで知りたい事は、「どのセグメントを狙うのが良いか?」つまりターゲティングの根拠です。例えば、「このセグメントは自社製品の購買意欲が他に比べて顕著に高いから、このセグメントをターゲットにするべきだ」の様な情報です。そして「では、どうやったらそのターゲットに効率的にリーチできるだろうか?」というターゲットへのアプローチを示す情報も必要です。
【セグメンテーションに使う変数】
従って「差が出てほしい消費者の行動や態度を測定する変数」と、「それを説明する要因、特に企業がターゲットへのアプローチに利用できる変数」を調査項目として含んだ市場環境調査を行います。
「差が出てほしい消費者の行動や態度」は、商品への消費者の反応でどんな差があるセグメントが見つかると嬉しいか、という事です。基本的には、マーケターやブランドマネジャーがターゲティング戦略上、どういう消費者への訴求を重視するかによってケースバイケースで決めます。例えば新製品ならトライアル意向に差がつくようなセグメントを探したいでしょうし、既存ブランドならリピート意向やロイヤルティなどが高いセグメントを特定したい、といった具合に決めていきます。
この例では、今後本格的に市場浸透をしていく為にメインターゲットを特定する事がスコープなので、とりあえずターゲット条件を「製品を1回以上購買した事があるユーザーの内、2回目の購買意向の高いユーザー」として話を進めます。
説明側の変数設定の際に気を付けたい事は、その変数が購買やロイヤルティに差を生むと分かったとして、その情報を企業が戦略的に利用できるか、どうかです。特に価値観やライフスタイルなどのサイコグラフィック変数は安易に使わずに、「それが重要だと分かったとして、製品開発やプロモーションにどう使えるのか?」「どの具体レベルにまで落とせば、施策に繋げられるか」というロジックチェックを通してから調査項目として採用する事が効果的です。

【決定木の読み方と、戦略への示唆】
さて、データを決定木分析にかけます。決定木には、AID、THAID、C&RT、CHAID、ランダムフォレストなど色々ありますので、データ形式や目的に応じて使い分けます。アルゴリズムの選択を誤るとセグメンテーションが上手くいかなかったり、解釈がしにくい結果になるので注意が必要です。 ACATでは、調査に応じて最適なアルゴリズムが選択されるように設計されています。
本例でのアウトプットは以下のようになりました。

アウトプットは上から下に見ていきます。分岐は上にあればあるほど、消費者の行動を分ける重要な要因となっています。実際の分析ではもっと複雑なツリーが得られるのですが、ここでは説明の為かなり簡略化した状態のツリーを出しています。
まず、一番上のボックス1(ノード、と呼びます)はデータ全体での傾向を表しています。本例ですと、商品を1回以上購入した事のある人達です。全体では、自社製品の購買意欲が高い人と低い人は約3対7で、意欲が低い人の方が多いですね。
最初の分岐は「生活品の購買チャネル」という変数がきっかけで起こっています。「2: 近所の商店やコンビニ」で生活品を買っているセグメントと、「3: GMSやモール」で生活品を買っているセグメントです。購買意欲は「2: 近所の商店やコンビニ」セグメントの方が高い事が読み取れます。
次に、「2: 近所の商店やコンビニ」で買うセグメントは、「買い物の習慣」として「4: 必要な時に都度」セグメントと「5: 買い貯めする」セグメントに分かれており、購買意欲は「4: 必要な時に都度買う」セグメントの方が高い事が分かります。
そして、「4: 必要な時に都度買う」セグメントは、「Facebook利用頻度」について「6: 週5日以上」と「7: 週5日未満」のセグメントに分かれており、購買意欲は「6: 週5日以上」のセグメントが高い事が分かります。
これ以上ツリーの分岐が無いので、このセグメント6が自社製品の購買意欲が最大となるセグメントです。ここからターゲットは、近所の商店やコンビニで生活品を必要な時に都度買い、Facebook利用頻度が高い人達、という事がわかります。
このグループにアプローチする為の戦略としては、例えば、
・流通戦略的には大型スーパーやショッピングモールとの提携より、地元に根付いた商店やコンビニ、ミニマートへの商品浸透が大事な事、
・製品開発上は商品は大容量ではなく少量ずつ小分けで購買できるようにしてその分単価を落とす事、
・プロモーション的にはFacebookのキャンペーンや広告が有効そうなこと等が読み取れます。
【セグメンテーションの良さと、ターゲティング戦略の効率性の検証】
さて、果たしてこのセグメント6がベストのターゲットなのでしょうか?
・市場の何割狙えるのか?
・コミュニケーションのしやすさや、対コスト効果はどうなのか?
という2つの視点から検証してみましょう。
【市場の何割狙えるのか】
決定木で得られた各セグメントには、「インデックス」という指標が出力されます。市場全体にプロモーションするより、あるセグメントに絞り込んだ方が当然コミュニケーションコストが低くなり、企業は得なわけです。市場全体を100とした時、あるセグメントに絞り込んだ時の相対的な利得(ゲイン)がインデックスです。
平たく言えば、セグメンテーションせず市場全体にアプローチした場合に比べ、あるセグメントに絞り込んでアプローチする戦略が「何倍効率よく、購買意向が高い層にアプローチできるか?」を示しています。ACATを用いると、以下の様なゲインチャートを作成する事ができます。

ゲインチャートを読むと、セグメント6に絞ってターゲティングすれば、市場全体にアプローチする場合に比べ、約3倍(286.7%)効率良く自社製品への購買意欲が高い層にアプローチできる事が読み取れます。
ここで「購買意向が高い人の比率が大きいと言っても、所詮セグメント6はN=50しかいないから、規模的にこんな小さなセグメントを狙ってもしょうがないよ。」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その解釈には少し齟齬があります。
コミュニケーションターゲット(※1)としてセグメント6を狙った場合、ビジネスターゲット(※2)として、セグメント2と4も狙えます。何故ならセグメント2がセグメント4に細分化され、更にセグメント4がセグメント6に細分化されているからです。セグメント6に向けた訴求は、同時にセグメント2や4に向けた訴求にもなるのですから、セグメント6に細分化される前の、セグメント2や4にいる購買意欲が高い消費者も同時にビジネスターゲットとして期待できるわけです。
ゲインチャートの中の「ビジネスターゲットのシェア期待値」を見てください。これは、インデックス最大値を持つセグメント(6)をコミュニケーションターゲットとして訴求した場合に、ビジネスターゲットとして間接的に狙えるシェアの期待値を示しています。例ではシェア期待値が63.3%なので、セグメント6をコミュニケーションターゲットとして訴求すれば、購買意向が高い消費者の6割強をビジネスターゲットとして狙える、という事です。
【コミュニケーションのしやすさや、対コスト効果はどうなのか】
確かにコミュニケーションターゲット自体の規模は小さいのですが、ビジネスターゲットとしては十分収益性が見込める数値です。また、コミュニケーションターゲットは「ペルソナ」のようなもので、具体的であればあるほど、つまり訴求対象のユーザー像が絞り込まれて特徴化されていればいるほど、そのコンテクストがイメージしやすくなりインサイトが掴みやすくなります。つまり、広告を作る側からすると、訴求しやすくなるわけです。

市場全体をターゲットしようとすれば、プロモーションコストは莫大なものになります。これは数値例ですので、必ずこの様な結果になるわけではありませんが、決定木を上手に使い最適なターゲットを設定する事で、コスト削減に繋げる事も可能なわけです。
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※1 コミュニケーションターゲット: 広告やキャンペーンで訴求対象となるターゲット(ie. 食器用洗剤のTVCMは、主婦がコミュニケーションターゲット)
※2 ビジネスターゲット:コミュニケーションターゲットではないが、製品を買ってくれる人。(ie. 食器用洗剤は主婦だけはなく、夫や未婚者、子供も買う)