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妹ちゃん、俺リストラされちゃった・・・スキル「倍返し」が理解されなくて…え、ブラック離脱おめでとう?…って、転職したらS級!? 元上司が土下座してる!? もう遅いよ。かわいい部下に囲まれてるので。 作者:アマカワ・リーチ

第三章 ジョージ王子 編

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43.「君たちはゆっくりでいいよ……って、え、もう攻略したの!?」

すみません、一度別の作品の続きとしてあげてしまいました。ご指摘くださった方、ありがとうございました。



 宮廷騎士団とアトラスパーティは、ジョージ王子を先頭にSSランクダンジョンを進んでいく。


「王子様! 敵です!!」


 前の方にいた騎士の一人が王子の身をかばうように身を乗り出そうとした。

 しかし王子はそれを手で静止する。


「まぁ見てろ。私が片付けるから」


 現れたモンスターはミノタウロスだった。さすがはSSランクダンジョン、初っ端から他のダンジョンならボスレベルの強敵である。


 王子は剣を引き抜くと、単騎で敵に突っ込んで行く。


「はぁぁ!!」


 王子の剣が鋭く光り、ミノタウロスの巨体を斬りつけた。

 ミノタウロスの強靭な防御力に負けず、そのHPを確実に減らしてみせる。


「おお、さすが王子様だ!!」


 それから王子は畳み掛けるような剣戟を見せ、10分ほどかけてミノタウロスを撃破した。


「Aランクモンスターのミノタウロスを単独で撃破してしまうなんて!!」


「まさしく神業でございます、王子様!」


 と、部下の宮廷騎士たちが持ち上げる。


「いやー手柄を横取りして悪いね。軽い運動がてら動きたくてね」


 そう言って王子は白い歯を光らせながら前髪をかきあげた。


 その様子を見てアニスとイリアは思わず苦笑いした。

 確かに王子様は弱くはない。

 だが自分たちの隊長であるアトラスに比べれば実力は数段落ちる。


 実際、アトラスならミノタウロスは30秒で倒せるだろう。


 もちろん、相手は王子様だ。そんなことは口が裂けても言えないわけだが。


「さぁ、諸君! どんどん進んでいこう!」


 やけに上機嫌な王子は、そのまま通路を突き進んで行くのだった。


 †


 一行はジョージ王子を先頭に進んでいき、現れるモンスターはことごとく王子と近衛騎士たちが倒していった。そんなわけでアトラスパーティは剣を抜くことさえなく30分ほどが経過する。


 しかし、ようやくアトラスたちの出番がやってくる。


 一行は、二つの扉が並んでいるところに行き着いたのだ。


「ふむ、噂のパラレル構造か」


 王子が呟く。


 パラレル構造のダンジョンでは、同じような道が複数現れる。

 大抵は両方の道にいるモンスターを全て倒していかなければ、ボスの間の扉が開かないような仕組みになっている。


 それぞれの通路はさほど広くないので、戦えるのは多くても1パーティ。

 効率の面から言っても、手分けするのがセオリーだ。


「それでは右は宮廷騎士団が攻略する。左はアトラスパーティにお願いしようか」


 この攻略の「リーダー」である王子がそう宣言する。


「わかりました」


「なに焦ることはない。君たちはゆっくりで来てもらって大丈夫だから安心してくれ。待つのは慣れっこなんだ」


 王子は白い歯を見せてそう言った。


 要約すると。

 僕たちは優秀だから短い時間で攻略して先に行ってしまう。

 君たちは僕たちより弱いから攻略に時間がかかるだろうが、僕たちは寛大だから待っているよと。

 こういうことだ。


 王子はそんな含意を含んだ言葉をアトラスたちに残して、通路に入っていった。


「まるで自分たちが絶対に先に着くと言わんばかりですね」


 イリアが小声でアトラスに耳打ちした。

 アトラスは困った笑みを浮かべた。


「とりあえず気にせず、全力で戦うことにしよう」


「はい、隊長!」


 アトラスたちは自分たちに割り当てられた通路を進んで行く。


 †


 通路を進んで行く宮廷騎士の面々。


「あいつら、王子様の人気ぶりと強さに終始ポカんとしていましたね!」


 腰巾着の騎士が王子にそう言う。


「ははは。僕と仕事をした人間はみんな引け目を感じてしまうんだ。申し訳ないよ」


「しかしパラレルダンジョンと言うのは最高ですな。同じ敵と戦えば、自ずから強者がハッキリしますから」


 腰巾着がそう言うと、王子は「僕はどっちが強いかなんて気にしてないさ」と白い歯を見せて言う。


「彼らと競うためにモンスターと戦うんじゃないよ。あくまで国民のために戦うのさ」


「さすが王子様でございます。お人柄も優れていらっしゃる……」


 王子たちは何やら気分良くダンジョンを進んで行く。


 SSランクダンジョンというだけあり、普通にエンカウントする敵も強敵ばかりだったが、そこはさすがに宮廷騎士団。ピンチに陥ることもなく、比較的順調に攻略していく。


「もう出口が見えてきたね」


 王子の行く先に扉が見えてきた。


「さすが王子様。驚異的なスピードで攻略してしまいました。これは、しばらくノロマどもを待ってやる必要がありますな」


 騎士たちが高笑いする。

 その心地よい声を聴きながら王子は扉を開ける――


 だが。


 ――――王子は想定していなかった光景を目の当たりにする。


 ――――――――

 ――――

 ――通路の先には、既にアトラスたちの姿があったのだ。


「お疲れ様です」


 アトラスは遅れてやってきた王子たちにそう声をかけた。


「な、なんだ、ショートカットでもあったのか?」


 王子は、自分たちより早くアトラスたちが通路を攻略してしまったという事実を飲み込めず、反射的にそう聞いた。

 しかし、もちろんそんなわけがなかった。


「いえ、特にショートカットはありませんでした。この先のパラレル通路を2本攻略しましたが、長さは同じでした。おそらく全て同じ長さになっているかと」


「に、2本攻略した!?」


 王子は思わず腰を抜かしそうになる。


 ――つまりアトラスたちは、王子が一本の通路を攻略している間に、合計3本の通路を攻略してしまったのだ。


 アトラスは驚いて言葉を失っている王子に指示を仰ぐ。


「この後どうされますか?」


 アトラスたちは既に回復まで済ませており、いつでも戦える状態だった。

 しかし王子のパーティは休憩もなく進んできたので体力が少なくなり、バフも切れている状態だった。


 なのでアトラスの言葉には、「休憩されていきますか?」という含意があった。

 もちろん、失礼になるのでそうは言わなかった。


 王子は顔を引きつらせる。


「ご、ご苦労だった。君たちが全力で攻略に当たってくれて感謝するよ!」


 王子が自分のプライドを保つために思いついた言葉がそれだった。

 アトラスたちは全力で、自分たちは力を抜いていたと。

 そしてそうなると当然「休憩が必要」などとは口が裂けても言えなくなる。


「我々は本気は出していないから余裕だ! このまま進んでいこう!」


 王子は引きつった顔に、無理やり笑みを貼り付けてそう宣言するのだった。



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