36 沈黙が金じゃない時ってあるよね
スタスタスタ。
スタスタスタ。
スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタ。
……沈黙が場を支配している。
黒燕さんは友人とのツテを探っているのだろう。俺の武器を造る為に。
そして俺は俺でこれから待ち受けるだろうダンジョン引きこもり生活に憂鬱だかナーバスだかな気持ちに侵されているので陽気な会話など出来ない。
白米すら、無いのか。
加えて、あの後携帯食料はちょっとだけ獲得経験値を増やせるけどくっそ不味いと知らされたので、更に気分は悪くなった。
しかし諦めるのもなんだし、黒燕さんのように一ヶ月の食事の配分を組み立ててみてはどうだろうか。
ええと、と俺は食料がまとめて入っているという一辺40センチの5段重ね弁当箱を開いた。
……一ヶ月分の食料品を一気に買った事など無いからどれほどの量なのかわからないな。
しかし、問題はどれくらい携帯食料が含まれているからだ。
黒燕さんは携帯食料は同じ量の食パンの3倍腹に貯まると言っていた。
その言葉から推測するに、まあ8割ぐらい鯖缶とかの携帯食料でないものだったら切り詰めればなんとかなるだろう。
たっぷりと間を置いて、上げていた顔を弁当箱の一番上の段に向ける。
一面を黒くカビたスティックパンのような物体が支配していた。
……ああ、先が読めてしまった。
「どうせ二段目も携帯食料だけなんですよねきっと……」
小さく独り言を呟きながら二段目も確認。
一面携帯食料だった。
次、携帯食料。
次、また黒カビだよ。
んで、最後は……ようやく普通の食料が。
五段目を開き、目に入ったのは弁当箱たっぷりの鯖の缶詰だった。
どっちにしろ弁当箱を開けて広がっていい光景じゃないなこれ。
@@@@
8割の携帯食料を見た俺がこれは食べないのは無理だと諦め、一分も経っていないか。
気まずいというか居心地が悪いというか、あまり良いとは言えなかった空気から解放される瞬間がやって来た。
「鳥締さん、草原エリア入りました……手に持っているのは?」
「新鮮なゴブリンの死体です」
「え? いつ取ったんですか?」
「今です。こう、ちょちょいっと」
はあ、そうですか。
やっぱり高レベル探索者って分からんわ。
「よっと……ん、運が良いですね」
黒燕さんは躊躇なく解体ナイフをゴブリンに突き刺し、魔石がドロップしたのを確認した。
そしてそれに【鑑定】を使う。
「……んん?」
「どうしたんです?」
「品質が中の下に上がっています」
……喜ばしくないな。
ゴブリンの魔石の品質で一喜一憂しているわけではない。
「これ、新ダンジョンの侵食が始まっているかも知れませんよ」
黒燕さんは、そう言いながらいつの間にかゴブリンを2桁単位で抱えていた。
「というわけで早めに新ダンジョンに突入しましょう」
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