第十二話:無能な第三王子
皇帝陛下と固い握手を結んだところで、彼はスッと目を細めた。
「ところでアルフィ殿、貴殿にぜひ見てもらいたいものがあるのだが――」
陛下が何やら意味深なことを口にしたそのとき――玉座の間の扉が勢いよく開け放たれ、フルプレートを
「皇帝陛下、失礼いたします!」
「……どうした、何があったのだ?(せっかくこれからというときに、いったいなんのようだというのだ……)」
「ドラグノフ王国より、緊急の連絡がございました! 昨日未明、王国本土が魔王軍の強襲を受け、壊滅的な大被害を負ったとのことです!」
「ほぅ?」
皇帝陛下は鋭く目を尖らせ、報告の続きを促した。
「北部ファルムス郡、南部トリオーダ郡、西部ダリオス郡が完全に陥落。その他の地域にも被害多数。ドラグノフ国王より、人道的支援を求める書簡が届いております」
「ふむ。あのプライドの高い国王が、俺に助けを請うとは……よほど手酷くやられたようだな」
「それからもう一つ。こちらは第三王子ベルナード・フォン・ドラグノフ様と大貴族ダールトン公爵様より、『帝国に滞在しているであろう王国の宮廷魔法士アルフィ・ロッドを捜索してほしい』、という嘆願書でございます」
「ぼ、僕をですか……?」
今更どうして、僕なんかを捜すのだろう……。
すると――皇帝陛下は珍しく悩まし気な表情を浮かべた。
「はて、第三王子……?」
「兄上、お忘れですか? 四年前の式典で醜態を晒していた、あの無能ですよ」
「……おぉっ! 出世欲だけは人一倍強い、あの無能か! そういえば、そんな奴もいたな」
シャルロット様と皇帝陛下は、ベルナード様のことを『あの無能』として認識していらっしゃるようだった。
「ふむ……」
「さて……」
それから少しの間、二人は目を閉じた状態で、思考を巡らせた。
さすがは兄妹というべきか、細かい仕草がそっくりだ。
「――くくっ、これは使えるな」
「はい、私もそう思います」
二人は阿吽の呼吸で頷き、皇帝陛下が命令を下す。
「帝城への空間転移を許可しよう。ベルナードとダールトンをここへ呼ぶがいい」
「はっ、承知いたしました!」
それからほどなくして――第三王子ベルナード・フォン・ドラグノフ、大貴族ダールトン伯爵の両名が、玉座の間に現れた。
「ドラグノフ王国が第三王子ベルナード・フォン・ドラグノフでございます。皇帝陛下、このたびは迅速なご対応ありがとうございます」
「ドラグノフ王国東部ベルジャーミ郡の領主ヘミオス・ダールトンでございます。拝謁の場を設けていただき、ありがとうございます」
ベルナード様とダールトン様は、陛下への感謝を述べた後、
「――アルフィ・ロッド。すぐに王国へ戻り、宮廷魔法士として結界を張り直せ! これは国王陛下の勅命だ!」
「貴様のせいで、ドラグノフ王国は未曾有の被害を負った。この責任、いったいどう取るつもりだね!?」
僕の方をギロリと睨み付けながら、散々好き勝手なことを口にしたのだった。
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