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暗殺貴族の失敗作~追放された最強の暗殺者は、第二の人生を無双する~ 作者:月島 秀一
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エピローグ


 ステラと一緒に昼食をとり、午後の身体測定を終えたルインは――生徒会室へ足を運び、そこで目を丸くした。


「あの……どうしてここにステラが?」


「あの……どうしてここにルインが?」


 二人は口を揃えて、お互いに指をさし合う。


「それはもちろん、ルインくんもステラさんも今年度の生徒会メンバーだからよ」


 アイリスはそんな二人を見て、「仲がよさそうで何よりだわ」と微笑んだ。


(はぁ……。まさか入学早々、七大貴族ノーブルバースとこれほど接近してしまうとは……。最近、少し流れが悪いな……)


(同じ生徒会の一員ということは……。これから一年間、ルインをずっと監視できるってことよね? ふふっ。ちょっとびっくりしちゃったけど、これはとてもラッキーだわ!)


 両者は完全に真逆のことを考えながら、一方はため息をこぼし、もう一方は笑みを浮かべる。


「――さて。それじゃ、まずは簡単に自己紹介をしましょうか」


 アイリスは軽くパチンと手を打ち、コホンと咳払いをした。


「二年A組、生徒会長のアイリス=ロンドです。みんな、今年一年よろしくね」


 彼女は柔らかく微笑んだ後、ルインへ視線を向ける。


 その意味を解した彼は、コクリと頷いた。


「一年A組ルイン=オルフォードです。よろしくお願いします」


「同じく、一年A組ステラ=ノーブルバースです。みなさん、どうか仲良くしてください」


 そうして最後の一人、少し背の低い快活な美少女がぺこりと頭を下げた。


「二年A組、ミィ=フロースです。よろしくお願いします!」


 ミィ=フロース、十六歳。

 サイドで結ばれた、肩口ほどの長さの明るい茶髪。

 頭に載せられた可愛らしい花冠(はなかんむり)が、チャームポイントの快活な美少女だ。

 身長は百五十五センチ。

 透明感のある亜麻色の瞳、よく育った形のいい胸、どこか幼さの残る顔立ち――そこに生来の明るい性格が加わることで、一部の男子生徒から熱狂的な人気を誇っている。


 ロンドマルスの制服を纏った彼女は、丁寧にペコリとお辞儀をする。


「さて、と……。それじゃ早速、それぞれの役職を発表しましょうか」


 アイリスは「コホン」可愛らしく咳払いをした後、ルインたち全員に目を向けた。


「まず書記は――ステラさん」


「はい、(うけたまわ)りました」


「それから会計は――ミィ」


「はぃ! 学院の『副代表』として頑張りま――え?」


「最後に副会長は、ルインくんにお願いするわ」


「あの、会長……? どうして一年の俺が、副会長になるんで――」


 ルインが一言もの申そうとしたそのとき、


「――い、異議ありぃ!」


 ミィがとても大きな声を張り上げた。


「アイリスさん、どうしてですか!? なんで私が副会長じゃないんですか!?」


 ミィはそう言って、鞄の中から『私が副会長!』と書かれたタスキを取り出した。

 これは昨晩彼女が「えっへへー! 明日からはー、副会長ーっ!」と鼻歌交じりで作ったものである。


「うーん……。それはまぁ……能力的に、かしら?」


 アイリスの回答は中々にひどいものだったが、ミィはそれでもなお詰め寄った。


「このままじゃ私、舐められちゃいますよ!? いきなり後輩に顎で使われちゃいますよ!? よく見てください、ルインくんのこの悪人顔を! きっとこの人、副会長という強大な権力を使って、いろいろ悪いことをするつもりですよ!」


「もう。彼は別にそんな悪いこと……するかもしれないわね……」


 アイリスは神妙な面持ちで「むぅ」と唸り声をあげ、ミィは「でしょでしょ!?」と同意を迫った。


「とにかく――ルインくん、私はあなたを認めません! ここは魔法士らしく、魔法力で雌雄を決しようじゃありませんか!」


「いえ、俺は別に副会長という役職に拘りはないですし……。ここはやはりミィ先輩が適任かと思います」


「くっ……。なんなんですか、あなた実はちょっといい人なんですか!? 心がグラつくので、優しくするのはやめてください!」


 彼女はちょっと嬉しそうに微笑みながら、それでも先輩としての矜持を保つために気持ちを引き締めた。


「このミィ=フロース! 後輩からの施しは受けません! 栄誉ある『七皇(ななこう)』の魔法士として、いざ尋常に勝負です!」


 本日二度目となる魔法勝負を申し込まれたルインは、


(はぁ……今日は厄日というやつだな)


 そんなことをぼんやりと思いながら、小さなため息をこぼした。


「ち、ちなみにルインくん……ちょっといいですか?」


「はい、なんでしょうか」


「なんというかその……『レベル』のほどは、おいくつぐらいでしょうか……?」


「俺はレベル2の特質系魔法士ですよ」


 特段隠す必要もなかったので、ルインは『正直に』そう語った。


「うわぁ……」


「嘘つき……」


 アイリスとステラはペテン師を見るような目で、ルインのことをジッと見つめたのだが……彼はそれを完全にスルーする。


 その一方、


「れ、『レベル2』!」


 ミィは水を得た魚のように目をキラキラと輝かせる。


「ふ、ふっふっふー! 勝負ありましたね、ルインくんとやら……! 何を隠そうこの私は、『レベル3』の操作系魔法士! ご存知ですよね? 現代の魔法社会において、レベルの差は絶対! 万に一つも、あなたに勝ち目はありません!」


 一気に調子付く彼女に対し、


「ミィ、今回はさすがに相手が悪過ぎよ。やめておいた方がいいわ」


「ミィ先輩、会長の言う通りです。ルインはなんというか、その……『異質』なんですよ」


 アイリスとステラは、割と真剣な表情で首を横へ振った。


「ど、どうしてレベル5のお二人が、ルインくんをそこまで評価して……はっ!? わ、わかりました……。お金、お金ですね! お金の力で二人を籠絡したんですね! ルインくん、そこのところどうなんですか!?」


 全く見当違いの理解を示したミィに対し、ルインはひどく困惑する。


(……信じられないな)


 それというのも――彼は生まれてこの方、これほどのポンコツを見たことがなかった。

 幼少期から現在に至るまで、彼の周りには優秀な者しかいなかったのだ。

 親族・教育係は当然として、身の回りの世話をする者でさえ、超エリートの戦闘メイド。


 こんな生き物(ポンコツ)を見るのは、生涯初の出来事だった。


「沈黙は肯定と受け取りますよ? やっぱりお金の力で、アイリスさんとステラさんを買ったんですね!」


 ミィは名探偵顔負けのしたり顔で、ビシィッと人差し指を突き付けた。

 こうしている間にも、彼女の誤解は深まっていく。


(はぁ……)


 いろいろと面倒になったルインは、


「……ほぅ、よくわかったな」


 全てをぶん投げて、流れのままに身を任せることにした。


「くっ、やはりそうでしたか……っ。これは危機です、この学校が始まって以来の大ピンチです! この生徒会は、私が守ります! ルインくん、覚悟ーッ!」


 ミィはレベル3の操作系魔法を用いて、ルインに襲い掛かった。


 それから三秒後、


「ま、参りました……。私の負けですから、解放してくだしゃい……っ。この生徒会も学校も、全部ルインくんに差し上げます……。ですから、どうか命だけはぁ……」


 レベル1の<重力操作グラビティ・コントロール>を全身百か所に打ち込まれ、生徒会の床に釘付けとなったミィは、情けない声をあげながら、まるで三下のように命乞いをするのだった。


「はぁ……こら、ルインくん。あんまりミィをいじめないの」


「すみません、少し面白くなってしまいました」


 アイリスから窘められたルインは、苦笑を浮かべながら、魔法を解除してあげた。


「は、はふぅ……っ」


 体の自由を取り戻したミィは、床にペタンと座り込んだまま、ホッと安堵の息をこぼす。


「ミィ、大丈夫?」


「は、はい……。しかし、困りました。まさか私のファーストキスが、生徒会室の床になるだなんて……。これが『事実は小説よりも奇なり』というやつですね……」


 彼女はゆっくりと立ち上がり、制服をパンパンと手で払いながら、どこかシミジミとそう呟いた。


「もう、わけのわからないこと言わないの。――とにかく、これでよくわかったでしょ? 彼はレベル以上に有能な魔法士なのよ」


「ふぁい……。仕方ないので、副会長の座はまた来年目指すことにします……」


 ミィはしょんぼりと項垂れながら、ルインの方へ向き直る。


「……ルインくん、さっきは失礼なことを言ってすみませんでした……」


 彼女は素直に謝罪の弁を述べ、ペコリと頭を下げた。


 ミィは確かにポンコツではあるが、決して悪人ではない。

 むしろその根は、純然ともいえるほどの善性さがある。


「いえ、お気になさらないでください」


「後、これ……。お詫びといってはなんですが、私が昨晩徹夜で作ったタスキです。どうぞ受け取ってください……」


 ミィはそう言って、『私が副会長!』と記された自信作を差し出した。

 これは彼女なりのケジメの取り方だったのだが……。


「…………すみません。ここまで頭の悪いタスキは、さすがにちょっと受け取れません」


「あ、頭の悪い!? ルインくん、あなたけっこうお口の鋭い人ですね!?」


 ミィが「やいのやいの!」と抗議の声をあげる中、ステラはジト目でルインを見つめた。


「ねぇ、ルイン……。レベル1とはいえ、同時に『百』の魔法を展開するなんて、『演算が得意』なんて次元を超えていると思うんだけれど……?」


「なんてことはない。俺の数少ない特技の一つだ」


「ふーん、『数少ない』ねぇ……」


 ステラは疑いの視線を向けつつも、それ以上追及するようなことはしなかった。

 これ以上、追いかけたところで、ルインが口を割るとは思えなかったのだ。


「――さて、それじゃ新生生徒会の最初の仕事! 懇親会を開きましょうか!」


 それからルインは、アイリスたちと一緒に近くの売店で菓子類を買い込み――みんなで楽しい時間を過ごしたのだった。

※とても大切なお知らせ


この物語は、ここで完結となります。今までお読みいただき、ありがとうございました。

作者の力不足により、この作品を伸ばし切れなかったことを本当に申し訳なく思っております。

更新停止中の間はひたすら反省を繰り返し、改善点を洗い出しました。

そしてこの作品で得られた経験を活かした『新作』を、なんと本日より連載開始致します!

今度こそめちゃくちゃ面白いので、きっと楽しんでいただけると思います!

どうかぜひ読んでみてください!


タイトル:フェイト・ブレイク・オンライン~不遇な一生を終えた村人は、廃人仕様の異世界でクソったれな運命をぶち壊すようです~

URL:https://ncode.syosetu.com/n4264gm/


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