第7章
97.勇者、肝試しに行く
エリーゼたちが宿題をやりに来た、その日の夜。
俺たち
「あはは! 真っ暗です! なんかでそーです!」
「……【肝試し】なんて。くだらないよ! ほんとくだらない!」
やれやれ、とガイアスが首を振る。
「がいあす顔真っ青です? だいじょーぶ? お熱あるの?」
「別に体調不良ってわけじゃないよ」
わしゃわしゃ、とガイアスが義弟の頭をなでる。
「え、じゃあなんでそんな汗だくなんだ? 顔色も悪いし」
「怖いんやろ、お化けが」
「「「あー……」」」
俺たちが納得したようにうなずく。
「自分が化け物みたいなもんなのに、お化け怖いなんて、なんや可愛いとこもあるやんな」
「ば、ばーか! お化けなんて怖くないよ! サクラ! おまえ変なこと言うなよ!」
「まあまあ。人間だれしも苦手なものの一つくらいある。茶化してやるなって」
「
宿題が終わった後、みんなで遊ぼうと言うことになった。
そこで学園にある【七不思議】とやらを確認しに、肝試しにいこうという流れになった次第。
俺たちは校舎に入る。
「七不思議なんてものあるんだな」
「ここの校舎めっちゃ前からあるみたいやから、怪談話が多いんやで。たとえば【夜中に校舎に入ると、出れなくなる】ってのがあってなぁ」
「は、ははっ! そんなの警備員が鍵を閉めたからに決まってるだろ! どこが怖いんだよアハハ!」
そのときだった。
ばたんっ!
「ひぃえぇえええええええええええ!」
ガイアスは大きく体をびくつかせて叫ぶ。
「大丈夫だって、ドアが閉まっただけだから」
「で、ででででもでも自動で! しまった! ドア!」
エリーゼが慌ててドアノブに手をかける。
そして、ぐっぐっ、と引っ張る。
「大変! ドアが開かないよ!」
「そ、そんなぁ!」
顔を真っ青にして、ガイアスがエリーゼに近づく。
力いっぱいに引くが、やはりドアが開かない。
「うわぁあああ! 呪いだぁあああ! 幽霊がボクらを逃がさないつもりなんだぁあああ!」
俺はドアに近づく。
「てい」
どがぁあああああああああああん!
軽くノックしたつもりが、壁ごと吹っ飛んでいった。
「「………」」
「あせんなって。こんなの壁壊せばいいだけだろ?」
「それに転移すればいつでも家に帰れるやん」
「「あ……」」
ふたりが顔を真っ赤にして、うつむく。
「ほら、いこうぜ。七不思議とやらを拝みにさ」
玄関ホールを離れ、俺たちは廊下にやってくる。
「兄さん! 絶対ボクのそばから離れちゃだめだからね!」
「わかってるって」
弟が俺の腕をつかんで、ぎゅっと抱きしめている。
「ふつう、こういうとき女が抱き着くもんちゃうの?」
「がいあす、あにうえの前ではメスです」
ミカエルはエリーゼの手を引いて歩いている。
「廊下の七不思議というと、【てけてけさん】やね」
「な、なんだよそれ!?」
びくんびくんと震えるガイアスに、サクラが平安な口調で言う。
「昔魔法の訓練中になぁ、鎌で胴体を真っ二つにされた男子学生がおったんよ。死後怨霊となって、鎌を持ってやってくるんや。同じ目にあわせたろうって……」
そのときだった。
「てけ……てけてけてけ……」
廊下の奥に、何かがいた。
ガイコツだ。
ただし、下半身が無かった。
「うぎゃぁあああ! て、てけてけさんだぁあああ!」
ガイコツは宙に浮いて、鎌を持っている。
妙な音を立てながら、俺たちの元へやってきた。
「兄さん! 兄さぁああああああああん! うわぁあああん助けてぇええええ!」
「てけてけー!」
ガイコツが俺めがけて、鎌を振る。
ぱきーん!
俺の体にぶつかった瞬間、鎌の刃が折れたのだ。
それだけじゃない。
衝撃は体全体にひろがり、ガイコツは白い砂になって消えた。
「弟よ。安心しな。危機は去ったぜ」
「うう……ぐすん……ほんとぉ……?」
「おうよ。だからもう泣くな」
俺は弟の頭をなでる。
するとガイアスの震えはとまり、ほっと吐息をつく。
「なんや女の子みたいやなガイアスぅ」
「う、ううるさぁあああい!」
「ほら、次行こうぜ」
やってきたのは、保健室の前だ。
「【口裂け女医】。昔うまれつき口が耳のあたりまで裂けている女医さんがおってなぁ。そのせいでいじめられて、自殺したらしいねん」
ガラッと扉を開ける。
中にはマスクをした、女医が椅子に座っていた。
立ち上がって、マスクを取る。
「ひぎぃいいいいい! く、口が裂けてるぅううう!」
女医は俺たちに近づく。
ガイアスはその場で腰を抜かして、動けないでいた。
仲間たちもびびって、俺の後ろに回る。
「発動! あにうえガード! 相手は死ぬ!」
「そんなぶっそうなことしないって」
俺の前に、女医が立つ。
「ねえ……わたし……きれい?」
「ゆ、ユリウスはん気ぃつけや! 間違った答えを言うと殺されるで!」
再び、女医が聞いてくる。
「わたし……きれい?」
「え、めちゃくちゃ綺麗じゃん。チョー美人だよ」
「え……///」
女医が顔を赤らめてたじろぐ。
「う、うそよ。こんな口のわたし、気持ち悪いでしょ?」
「なんだ、そんなことで悩んでたのか。治してやるよ」
治癒魔法を施す。
すると、裂傷はふさがり、普通の顔になった。
「ほら治ったぞ。うん、やっぱ美人さんじゃん」
手鏡を創生し、女医に手渡す。
「うそ……これが……わたし……?」
じわり、と女医が涙を浮かべる。
うっ、うっ、と体を震わせる。
「ありがとう……」
花が咲いたように、女医が笑う。
すぅ……と彼女の体が透明になる。
「やっぱあんた笑ってる方が似合ってるぜ?」
満足そうな顔で、女医は成仏していった。
「す、すごいよユリウス君。幽霊さえも治癒で治せるなんて!」
「てかほんま人たらしやなぁ。呼吸するようにくどきよるわ。さすがやで」
女子チームがうんうんとうなずいている。
「ほら、ガイアス。怖いお化けは成仏したぞ」
「…………」
げしっ!
「え、なに怒ってるんだよ? なー」
「うるさいばか兄さん!」
弟がそっぽ向いて、保健室を出て行く。
「俺何かしたかな?」
「いつものやつです?」「いつものやつなぁ」「いつものやつだよ」
なんなの、いつものって?
その後も俺たちは、学校の中を回って、七不思議を体験した。
・トイレのマートルさん
【怪談】
一番奥のトイレの一番奥の個室にマートルさんと呼びかけると出てくる。
→俺が呼びかけたら「いません! いません! いませんってばぁああああ!」と拒否されてしまった。
・赤い紙、青い紙
【怪談】
トイレから「赤い紙が欲しいか、青い紙が欲しいか」と聞かれる。赤と答えると全身を炎で焼かれ、青と答えると氷漬けにされて死ぬ。
→俺が答える前に「すみまっせんでしたぁああああああああ! 殺さないでくださぃいいいい」とトイレの中からなんか謝罪された。
・死神のノート
【怪談】
図書館にあるタイトルのない黒いノートに、名前を書かれた人間は死ぬ。任意の人間を殺した後はお供え物にリンゴを置かないと死神に魂を抜かれて死ぬ。
→俺の名前を書いても死ななかった。しばらくして死神が来て俺を見て「もしかして同業者ですか?」と聞かれた。そのまま普通に帰って行った。
「なんや学園の七不思議も大して怖くないわな」
「ユリウス君がいればだいたい何とかなるもんね」
「さっすがあにうえ! ちょーすげーです!」
俺たちは学園の屋上付近までやってきた。
「ここが最後の怪談?」
「せや。屋上へ続くこの階段、全部で12段なんやけど、深夜に来ると13段になっとるんや。しかも最後の階段を踏んだら、異界へ連れて行かれ二度と戻ってこれないんやと」
「ふーん。じゃ登ってみるか」
「ちょ、ちょっと兄さん! 危ないよ!」
ガイアスが俺の腕を引いて止める。
「もし本当に兄さんが帰ってこなかったら……やだよ」
俺は弟の頭を撫でて言う。
「心配すんなって。ここで待ってな」
弟が俺から離れる。
「ちゃんと帰ってきてね」
「おうよ」
俺は階段を昇っていく。
最上段まで、あと1段となった。
「確かにあったな。さてと」
俺は13段目に足をかける。
すると、足元に突如穴が広がった。
そのまま俺の体は落ちて行き、穴は閉まった。
「に、兄さん! にいさーーん!」
「え、なに?」
よいしょ、と俺は地面からはい出る。
「ど、どないなっとるん?」
「え、普通に虚空剣で次元を切り割いて、異界から脱出してきたんだけど?」
呆然とするメンバーたち。
「あにうえすげー!」
「……ほんと、兄さんの存在の方が怪談だよ」
そんなふうに、夏の肝試しは、大して怖い目に合わずに終了した。
ま、うわさなんてこんなもんだよね。
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え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので