第6章
86.邪神、復讐に魚人の大群を放つが失敗
転生勇者ユリウスが、
海上に、1柱の邪神がいた。
邪神アクアエレメント。
水の古代獣に憑依していた、黒幕だ。
『くそっ! あの忌々しい【暴虐の黒悪魔】め! よくも我ら【六邪神将】の邪魔をしやがって!』
ギリ……! と歯がみする。
アクアを含めた、6柱の邪神たち。
彼等は魔王ヴェノムザードに近しい力を持った存在だった。
勇者神なき世で、彼等は古代獣に憑依し、魔王に変わって世界の破壊を企んでいた。
『忌々しい守護神達に邪魔され2000年。封印が弱まり、ついに我らが打って出ようとした矢先! あの黒い悪魔め!』
ふらっと現れて、ユリウスに古代獣を消された。
バックアップを取っていなかったら、今頃自分も消えていただろう。
念話により、各地にいる六邪神将たちから、今世界に規格外の化け物がいることは承知していた。
だがまさか、古代獣をまるごと消し飛ばす存在がいるとは。
『正攻法ではダメだ。からめ手を使う。出でよ、我が眷属達よ!』
パンッ! と柏手を打つ。
すると海上に、無数の魚卵が出現する。
それは孵化すると、数え切れないほどの魚人へと、急成長した。
よく見ると、それは正確には
『S級モンスター
邪悪に笑う先には、人間達の街があった。
『あの黒悪魔が
その間にも魚人王、そして魚人将軍は生まれ続ける。
アクアが存在する限り、無限に魚人の大群を作り出す。
六邪神将の恐るべき権能【
『では、魚人ども。蹂躙を開始せよ!』
海を埋め尽くすほどの魚人達が、いっせいに陸地めがけて動き出す。
鳥のように見下ろせば、青銀の津波が押し寄せるようだ。
『ははー! 恐れおののけ人間どもぉおおおおおお!』
と、そのときだった。
「おー! がいあす、間に合ったですー!」
6枚の翼を生やした天使が、頭上に突如現れたのだ。
天使の隣には、不機嫌そうな顔の金髪の少年が宙に浮いている。
『天使と人間が、この六邪神将の我にかなうわけがない! 殺せ、魚人どもぉお!』
魚人将軍たちは、持っていた長槍を、いっせいに金髪の少年めがけて放つ。
「ぼくがやるです?」
「いや、ミカは下がってろ」
「かっこつけてあにうえに褒めてもらいたいんでしょー」
「ちがう! 断じて!」
なごやかな会話をしている間にも、槍が豪雨の如く彼等に降り注ぐ。
『愚かな人間め! 下等生物が邪神に楯突くからこうなるのだぁあああ!』
ガイアスは、手に持った双剣を、勢い良く振り下ろす。
パリィイイイイイイイイイイイン!
不思議な音とともに、槍が全て……はじき返されたのだ。
『なっ!? ぱ、
攻撃反射。それは剣術の奥義の一つ。
あらゆる攻撃をはじき返すという妙技。
『そんな! あの数を一度に返すなんて! あり得ない!』
弾かれた槍は正確に、魚人たちの心臓を射貫いていく。
「グギャッ!」「ぎゃぴっ!」「ぎゃぎーーーーーーーー!」
あっという間に、魚人将軍がバタバタ倒れていく。
『し、信じられない……なんだ! やつは暴虐の黒悪魔なのか!?』
「人違いだよ。……まあ、誰のこと言ってるのかはわかるけどね」
呆れたように、ガイアスがため息をつく。
「がいあすばっかり目立ってずるいです! ぼくやるでーす!」
天使ミカエルは、バッ……と手を伸ばす。
収納の魔法陣が展開し、そこから……巨大な【
「あにうえにつくってもらった、ぼくオリジナルの
新しいオモチャを買ってもらった子供のように、ミカエルははしゃぐ。
「ミカ、わかってるな?」
「もっちろん! 跡形も残らず……ぶっ飛ばす!」
「いや違うって! 加減しろって意味なのに! ああもうばかっ!」
ミカエルの構えた巨大な
『ふ、ふんっ! やってみろ! いくら強力な攻撃だろうと、わが魚人軍の圧倒的物量の前では無力だ!』
「負けフラグ乙です。では……ロックオン!」
ミカエルはまず、
すると、海上に超巨大な魔法陣が展開した。
『な、なんだこの海洋をひとつ飲み込むようなでかさの魔法陣は!?』
「1つめのトリガーで照準。で、2つめのトリガーで攻撃。うん、よーし、いくぞー!」
構える
それは天使の放つ、高エネルギーレーザー【天の矛】と同じ。
しかし威力が、何百、何千倍にも増幅されていく。
きぃいいいいいいいいいいん……!
「じゃ景気よく~……どーん!」
可愛らしいかけ声とは裏腹に、放たれるのは、超高エネルギーの破壊の光だ。
海上に、同じ魔法陣が浮かび上がる。
遥か上空から、超強力なレーザーが照射されたのだ。
ズッドオオオオオオオオオオンン!
範囲内にあったもの全てを消し飛ばす。
魚人はもちろん、大海を、一瞬で蒸発させた。
『…………』
大海原が、一瞬で砂漠に変わる。
その変貌っぷりに、邪神アクアエレメントは驚愕の表情を浮かべる。
『あ、悪魔だ……悪魔だぁあああ!』
怯えた目が捕らえるのは、たった今圧倒的な力を見せつけた2人だ。
『【金色の悪魔】に【天使の悪魔】だ! いかん! 暴虐の黒悪魔とあわせ、この世には3大悪魔がいる! 同胞よ! 注意せよ!』
他の六邪神将たちに、念話を送る。
こうすればいずれ誰かが、あの化け物どもを倒してくれるだろう。
「あはは! がいあす【金色の悪魔】だって~。変なあだ名です~」
「いや【天使の悪魔】のほうがおかしいだろ……てゆーか! 威力を加減しろって兄さんに怒られただろ! このアホっ!」
ガイアスはミカエルの背後に回ると、ほっぺをぐにーっと引っ張る。
「痛い~! あにうえ~! がいあすがいじめるです~!」
と、そのときだった。
ポンッ、と。
邪神は、誰かに背後から肩を、叩かれた。
「よっ」
『ひぎゃぁあああああああああああ! く、黒悪魔ぁああああああああああ!』
泣きべそをかき、恐怖するその姿は、とても邪神とは思えなかった。
それもそのはずだ。
この黒悪魔の強さは、誰よりも自分が知っている。
卑怯な作戦をとったのは、この絶対的強者に勝てぬとわかっていたからだ。
「あにうえおっそーい!」
「すまんすまん、エリーゼ達を街に送り届けていたら遅れたわ。さて……と」
ぎゅっ、とユリウスが邪神の肩を掴む。
『やだやだやだやだ助けてお願い死にたくない助けて助け……』
「そい」
ユリウスは、軽く邪神の頭を殴る。
その瞬間……。
ズッドォオオオオオオオオオオオオオン!
ミカエルの放った砲撃よりも強力な一撃。
それは海を、ぐるりと一周、縦に割ったのだ。
それだけに留まらない。
衝撃波は拡散し、この星の海水全てを、消し飛ばしたのだ。
「あ、やべ」
当然の如く、邪神は消滅。
海はなくなり、砂漠の星となったのも刹那。
ポンッ……!
ユリウスの【創生魔法】により、海水が創生され、先ほどまでと何ら変わらない水の星へと戻ったのだ。
「あははっ! あにうえマジすげー! 邪神みたーい!」
「おい! ミカ! 兄さんに酷いこと言うな! 怒るぞ!」
「あははっ! ごめんなさーい!」
かくして、六邪神将の一角は、規格外の化け物【たち】によって討伐されたのだった。
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え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので