第11話:最強賢者は実力の一端を見せる
一次試験は各ブロックごとに行われる。
魔法学院の定員200名に対して受験者が多すぎるからだ。数えてないからよくわからないが千人以上はいると思う。
A~Zまでの26ブロックに分かれてから上位10名が二次試験に進むことができる。
「Lブロック魔力検査を始めます」
魔力検査は受験者が持つ魔力の量を見ている。
魔力量というのはレベルや職業、他にも色々な要素が絡むのだが、全ての魔法の基礎になるため極めて重要なものだ。
その検査には、魔力結晶を使う。
試験官の隣に設置されている大きな結晶。
これは魔力が中に閉じ込められており、触れた者の魔力と反応して強弱を示す。
「では、順番にお願いしますね」
担当の試験官が指示を出すと、一人目が魔力結晶に触れる。
「えーと、この色だと……魔力は5です。ああ、ゴミですね」
試験官口悪っ!
……試験の体をしているが、実際は足切りだな。
試験を終えた受験者は悲壮な顔で列の最後尾に並んだ。
「魔力120……まあまあですね」
「魔力50……うーん」
「魔力2……ぷぷっ」
「魔力506……普通ですね」
「魔力1203……やっとまともなのが来ましたね!」
次々と試験が終わっていく。俺とリーナは最後に並んだので、試験も最後なのである。
てか魔力1203でやっとまともって、いったいどうなってるんだ? ようするにLLOで言う
MPってのは戦闘回数も加算される。1200ってのは普通に魔物を倒して訓練していたらありえない数字のはずだ。
「次の方」
リーナの順番が回ってきた。
「じゃあ行ってくるから」
「頑張れよ……と言っても頑張ってどうこうできるもんでもないか」
リーナは淡く煌めく魔力結晶に手を触れた。
瞬く間に魔力結晶はサファイアのような青に染まっていく。
「おお……これは!」
試験官の反応も良さそうだ。
「魔力……10300! 素晴らしい!」
まんざらでもなさそうな顔で俺の方を見るリーナ。
ドヤ顔で俺の隣まで来て、「わたしの後でごめんなさいね」とか言ってくる。
殴ってやろうかと思った。
「では次……最後ですね。どうぞ」
試験官に呼ばれたので、俺は魔力結晶まで歩いていく。
さっき魔力1203で『まとも』と言われていた受験生がいたっけな。
そしてリーナの10300ではとてつもなく褒められていた。
この数字は、普通に幼少から訓練して魔物を倒していたらありえないのだ。
俺は耳を疑ったぞ。
少なすぎる。
ここまでこの世界の
魔力10300で素晴らしい? 冗談じゃない。
LLOではMPなど100万を超えて一人前。上級者はみんな1000万を超えていた。
適正レベルのモンスターを倒すことでMPが1ずつ増えるのだから、このくらい当たり前だ。
俺は魔力結晶に触れる。
魔力量が少ないと白に近く、多いと青や黒に近づいていく。
俺が触れるや否や、禍々しい漆黒に変化し始める。
一面が黒に染まった時点で、俺の魔力量に耐えかねた魔力結晶は内側から粉砕した。
パアンッッッッ
試験場いっぱいに響く粉砕音。
「そ、そんな……ありえない……こ、こんなの何かの間違いだ!」
試験官は顎が外れたのかと見まがうほどぽかーんと口を開けている。
「それで、数値は?」
「あ、えーとですね、……試験はやり直しです」
「は?」
「魔力結晶が割れてしまったので……すみませんがやり直しです。調子が悪かったみたいですね。新品を持ってきます」
魔力結晶の調子が悪いなんてことあるのか?
LLOで設置されていたものはオブジェクト指定されていたのでどう調子が良い悪いということは一度もなかった。まったく同じ世界ではないみたいだし、そんなこともあるのだろうか。
……てっきり俺の魔力量が多すぎて、耐えかねた魔力結晶が割れたのかと
「これで計測できます! 今度は絶対に大丈夫です」
「そうか、じゃあ触るぞ」
俺は新品ピカピカの魔力結晶に触る。
すると、さっきと同じように禍々しい漆黒に変化する。
そして、内部から粉砕した。
「また割れちゃったけど、こういう場合どうなるんだ?」
「あ、ありえない……この魔力結晶は魔力10万まで計測できるはず……そんなの……人間じゃない……!」
一人でブツブツ言っている。
「それで、どうなんだ?」
「ひっ! と、とりあえず暫定10万としておきます。……この試験は合格です!」
合格できたようで一安心だ。
最後尾に並び、リーナに手を振る。
「アナタ詠唱だけじゃなくて……色々おかしいのね」
「俺がおかしいって……それは違うぞ」
「いえ、違わないわよ。魔力10万以上ってなに? 魔力結晶が割れるところ初めて見たんだけど」
「誰でもそのくらいできるようになる。魔物もまともに倒してないんじゃそりゃああなる」
「魔物を倒すって……そんな簡単に……」
リーナの表情が険しくなっていく。
あれ? 俺なんか変なこと言ったかな?
「ハァ、もう驚かないわ。次の剣術試験も魔法職のくせに満点とかとっちゃうんでしょうね……」
「まあ、剣術は習ってたしな。得意だぞ」
「習ってたって誰に?」
「誰って……俺の父さんだけどな。名前はレイジス・ドレイク。まあ知らないだろうけど」
父さんの名前を出した時、俺はまだ自己紹介してなかったことを思い出した。
「レイジス・ドレイク……ですって? ……あなたは一体?」
「ん? 俺はユーヤ・ドレイク。ドレイク家の長男だ。家は弟に任せたけど」
俺がそう答えると、リーナからため息とも驚愕ともつかぬ声が漏れたのが聞こえた。