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内閣、国会、裁判所の三権がバランスを取り、牽制し合うのが「三権分立」だが、今の日本はすでに内閣の独走状態?
検察官の定年を65歳に引き上げる検察庁法改正案に抗議する声が、今ツイッター上で爆発的に広まっています。
しかし一方では「今回の改正は公務員全体の話なのだから、黒川検事長を検察トップにするためという指摘は勉強不足」といった反論も。
以下の記事は、2月17日発売の『週刊プレイボーイ9号』のものですが、この人事の何が異常かわかりやすく解説したものなので緊急公開します。ぜひ参考にしてください。
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検察庁は行政の一部とはいえ、政権にコントロールされないための「高い独立性」が基本のはず
日本の「三権分立」が今、深刻な危機に瀕(ひん)している。
三権分立とは、統治機構を支える3つの権力、すなわち「行政」「立法」「司法」の三権を、それぞれ内閣、国会、裁判所という独立した機関が担うことで、権力の乱用を防ぐ仕組みのこと。
だが、安倍晋三政権の下で2014年に設置された内閣人事局による「人事権を介した官僚支配」が着々と進み、政府・与党の意をくんだ官僚が大量発生。その"忖度官僚"たちは公文書の改竄(かいざん)や破棄にまで手を伸ばし、森友・加計問題から「桜を見る会」まで安倍政権をめぐる数々の疑惑はうやむやなままになっている。
それに、本来は政権のチェック機能を担うはずの国会でも噛み合った議論はまったく行なわれることなく「三権のバランス」は大きく崩れているのが現状だ。
そんななか、2月8日に63歳で定年退官を迎える予定だった東京高検検事長の黒川弘務氏について、政府は1月31日、前例のない「定年の半年延長」を閣議決定した。
黒川検事長は安倍首相や菅 義偉・官房長官に近く、法務省官房長在任時には、甘利明・元経済再生担当大臣の口利きワイロ事件や、小渕優子・元経産相の公選法違反などが不起訴になるよう、捜査現場に圧力をかけてきた人物とされる。
「その忠勤ぶりが認められたのか、甘利事件が不起訴になった2ヵ月後、黒川さんは昇進がほぼ確実視されていた林 眞琴・法務省刑事局長(当時)を差し置き、法務省事務次官に就任しています。それで司法記者の間でついたあだ名が『安倍官邸の番犬』(笑)。
そして、現在の彼の東京高検検事長というポストは、検察のナンバー2。ここで彼の定年を半年延長すれば、この夏にも勇退予定の稲田伸夫・検事総長の後を継ぎ、黒川さんが検察トップの座に就く可能性が大です」(全国紙政治部デスク)
東京地検特捜部副部長や東京高検検事を歴任した経験を持つ弁護士の若狭 勝氏もこう憤る。
「これは検察の独立性を踏みにじり、政治が検察の人事に露骨に介入した、あってはならない話です。しかも政府は、検察官も一般の国家公務員と同じであるかのように定年延長を決めてしまった。これは違法の可能性もあるのです」
2月8日の誕生日で退官するはずだった黒川検事長。記者クラブでは送別会まで予定されていたという。しかし定年が延長されたことで次の検事総長になるのは確定!?
元共同通信社記者でジャーナリストの青木 理氏もあきれた表情でこう語る。
「ここまでやるのか......というのが率直な印象ですね。確かに、以前から『安倍政権が黒川氏を検事総長に据えようと動いている』という情報は耳にしていました。
しかし、現職の稲田検事総長にはまだ任期が半年近く残っており、稲田氏が自ら退任しない限り、2月8日で定年を迎える黒川氏には検事総長の目はないとみられていた。実際、法務省記者クラブは黒川氏の送別会まで予定していたといいます。
それを、政府がこれほど強引な手段を使ってまで、黒川氏を検事総長に据えようとしていることには驚きました。検察は容疑者を刑事裁判にかける権限をほぼ独占していて、必要なら身柄拘束もできるし、強制捜査もできる。特捜部に至っては政治家の捜査も行なうという強大な力を持つ組織です。
その検察に、政治が人事権を介して手を突っ込み、自分たちの息のかかった人物を検事総長に据えて操ろうというのなら、それが社会に与える害悪はあまりにも深刻です」(青木氏)
ちなみに、森雅子法務大臣は今回の定年延長について、国家公務員法81条に基づく合法的な人事だと主張し、「東京高検検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため、黒川検事長の指揮監督が不可欠であると判断したため」と説明している。
しかし、前出の若狭氏は「森法相は上の指示で仕方なく言わされているのかもしれないが、ハッキリ言ってばかげている」と一蹴する。
「もちろん検察は行政の一部で公務員ですが、その職務上、裁判官に準ずる『準司法官』的な立場にある。検察官が政治家の顔色を気にして職務にあたる必要がないよう、特別法である『検察庁法』によって身分、それに政治権力からの独立も保障されています。
その検察庁法では検事の定年を63歳、検察トップの検事総長の定年を65歳と厳格に定めている。当然、東京高検の黒川検事長は、2月8日の誕生日に定年退官しなければならなかった。
ところが政府は、国家公務員法の『定年延長規定』を適用して定年を半年延長することで、強引に黒川氏の検事総長就任の道を開いた。検察庁法で定められた検事の定年を国家公務員法で延長するというのは、明らかな違法行為だと私は思います」
元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士も次のように断言する。
「当然、検事の定年は国家公務員法でなく検察庁法を適用すべきで、黒川さんの定年年齢63歳を延長した閣議決定は検察庁法違反です。この決定により2月8日以降、違法に高検検事長がその職に居座るという事態になってしまった。法を厳正執行する立場の検察として、それはありえません。検察は一刻も早く、この違法状態を解消すべきでしょう」
前出の若狭氏の怒りはこれだけでは収まらない。
「そもそも違法性以前の問題として検察人事に政府が介入すれば、ほかの省庁で起きている問題と同様、検察官が政治に忖度し、政権政党の顔色をうかがって事件処理をすることにもつながりかねない。
ここ数年、特捜部が扱った事件を見ても、森友・加計学園、近頃の桜を見る会やIR疑惑など、検察は『政権を揺るがすまで徹底的にはやらない』という印象です。この先も、その傾向が強まればとんでもない話で、この国の統治機構の根幹を危うくする事態です」
これまでも安倍官邸は、黒川検事長を法務省事務次官、東京高検検事長に栄進させるために、彼の同期で次期検事総長ナンバーワン候補だった前述の林氏(現在は名古屋高検検事長)の法務省事務次官就任を2度も拒んでいる。その意味することは検事総長への出世ルートの遮断だ。
一方、稲田検事総長は三度目の正直とばかり、自分の後任に林検事長を据える腹積もりだったとされる。林検事長が63歳となるのは今年7月30日で、稲田検事総長が今夏に勇退しても十分、後任になることが可能なのだ。
こうした検察内の事情を受け、元経産官僚の古賀茂明氏が言う。
「検事総長の任期は2年前後。林さんが検事総長になれば、22年7月の定年まで務められます。一方、安倍首相は4選せずに、21年秋で首相を辞める確率が徐々に高まっている。その時点で任期を1年残す林検事総長がどう動くか?
何しろ、この政権には過去に2度も昇進を邪魔されているんです。正義を執行する本来の検察の復活も果たしたいという強い思いもある。今がチャンスとばかりに『桜を見る会』疑惑やIR汚職事件の捜査をせよと、検察に大号令をかけるかもしれない。そうなれば、安倍首相の身辺に捜査が及ぶのは必至です。歴代の韓国大統領の多くが退任後、逮捕・訴追されたのと同様、安倍さんも牢屋送りにされることを恐れているのでは?」
前出の若狭氏が語る。
「実は、僕は黒川さんも林さんも同期で、検察官になる前、司法修習生の頃からの付き合いなのでふたりともよく知っているのですが、黒川さんは優秀な上に人当たりが良い性格で、ひょうひょうとしているところがあるから政治家とすれば使い勝手がいい。逆に、黒川さんの側も政治家をうまく使っているという感じでしょうか。ただし、それほど出世に執着するタイプではないというのが僕の印象です。
一方の林さんはもともと裁判官を目指していたのに、検察官になった優秀な検事で、典型的な法務官僚タイプ。同期の中でも常に一目置かれる存在でした。共謀罪法案などでも刑事局長として頑張っていたので、検察内でも林さんが先に法務次官になり、ゆくゆくは検事総長になるんだろうと、多くの人が思っていたはずです」
だが、前述のように、官邸は黒川氏を法務省事務次官に指名。その後も東京高検の検事長として重用している。その過程で、検察内部に「結局、自分たちの人事と将来は官邸が握っているのだ」という印象が強まっていったことは想像に難くない。
また、黒川氏を検事総長に据えたい安倍政権は、稲田氏に任期中の退任を迫ったといわれるが、4月に京都で行なわれる刑事司法の国際会議までは現職にとどまりたい意向を示して退任を固辞したため、最後は黒川氏の定年延長という禁じ手を使った。
まさになりふり構わず検察への影響力を強めようとしているわけで、そこに込められた官邸のメッセージは強烈だ。黒川氏の定年延長が決まった直後の2月3日に、IR疑惑で逮捕された秋元司議員以外の国会議員の立件見送りが報じられたのは、偶然だろうか。
「司法に関わり、時には強い権限を持つ検事の仕事には単に『公正さ』が求められるだけでなく、多くの国民から『公正で信頼できる』存在だと思ってもらえる『公正らしさ』が求められるのです。
その検察官のトップとして、検察全体を指揮する立場にある検事総長に、『安倍政権の意向で強引に指名された人』というイメージがあったのでは、誰が検察に『公正らしさ』を感じるでしょう。僕は古くからの友人である黒川さんが、検事総長になる前に自ら退任する可能性があるのではないかと思っています」(若狭氏)
「安倍政権には国家安全保障局長の北村滋局長をはじめとして、官房副長官の杉田和博、宮内庁長官の西村泰彦と、警察官僚出身者が数多く食い込んでいる。
これに加えて、政権が検察への影響力を強めれば、圧倒的な情報収集力を持つ警察と、強制捜査や身柄拘束が可能で、刑事裁判で99%以上の有罪率を誇る検察の権力が、政権に都合のいい形で使われる恐れがある。
もっと恐ろしいのは、こうして政権内部に食い込んだ警察や検察が政治に利用されるのではなく、その情報力で逆に弱みを握り『政治家を操る』という可能性も否定できないということ。その先にあるのは、権力が暴走する暗黒の未来です」(青木氏)
もちろん検察は「行政」の一部だが、日本の「司法」は事実上、検察が有罪か無罪かの判断をし、裁判所は量刑を決める場所になっている。検察が司法に対して、強大な力を持っていることは否定できない。その検察が政権と結びつくような動きを見せれば、それは国家の根幹を支えている三権分立が崩壊したと言われても仕方ないだろう。
国家安全保障局長の北村氏のほか、安倍政権には警察官僚出身者が数多く食い込んでいる。そこに検察の権力も加わったらやりたい放題!?
2月12日の衆院予算委。黒川検事長の定年延長は「政権の守護神として残しておきたかったのでは?」と迫る野党議員に、安倍首相は薄笑いを浮かべながら、「なんとかの勘繰りではないのかと言わざるをえない」と反論している。
だが、果たして首相の計算どおりに進むものなのか? 前出の郷原弁護士はこう首をかしげる。
「黒川検事長の定年延長問題はメディアに報じられ、その異様さを多くの国民が知るところとなっている。これだけ世間で騒がれて、黒川さんはこれから半年間も検事長の職を続けられるのでしょうか? また、半年間を違法な状態のまま乗り切ったとしても、その後に稲田検事総長の後任として就任するのか?
もし就任すれば、その瞬間に検察の威信は失墜し、誰も検察を信用しなくなるでしょう。本当にそこに黒川検事長が踏み込めるのか? ちょっと疑問です。場合によっては安倍政権の思惑どおりに事が運ばない可能性もあると感じています」
前出の政治部デスクもこうささやく。
「稲田検事総長の去就も注目されます。このまま官邸人事に従うのか? 検事総長の任期は約2年というだけで、その勇退時期や後任は総長自らの判断で決めるというのが検察の慣習です。
もし、稲田検事総長が黒川検事長の定年延長期間が終了する8月7日以降に退任をずらせば、再び閣議決定をして定年を再延長しないかぎり、黒川氏は東京高検検事長のまま退職するしかない。これだけ批判が出ている。さすがに再延長はいくら安倍政権でも難しいでしょう。そうなれば、官邸人事は不発となります」
8月7日以降、検事総長の椅子に座っているのは果たして誰なのか? そして検察による政権スキャンダル捜査はどうなるのか? 官邸vs検察のバトルから目が離せない。
そもそも検察とは、社会の悪と闘うこの国の「免疫系」のはず。それが政府と一体化し、この国の三権分立を死に至らしめないよう、われわれはしっかりと監視してゆく必要がある。
市長自ら"数字のトリック"を使って市民を印象操作する、横浜市カジノ誘致の悪質すぎる手口
横浜市がIR建設予定地としているのが、みなとみらいと横浜ベイブリッジの間に位置し、山下公園に隣接する山下ふ頭
大本命の横浜市がなりふり構わず強引な手口でカジノ誘致を進めようとしている。
現職の国会議員による汚職事件という逆風もどこ吹く風、市民向けの説明会では、どう考えても恣意的で印象操作としか言えないデータのオンパレードでIRの必要性を訴えているが、さすがに無理ありすぎだよ!
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昨年12月25日、自民党所属でIR(カジノを含む統合型リゾート)担当の内閣府副大臣を務めていた秋元 司(あきもと・つかさ)衆議院議員が、カジノ事業参入を目指す中国企業からの収賄容疑で逮捕されて以来、暗雲が立ち込めているIR導入。
この疑惑をめぐっては、贈賄側の中国企業が、秋元氏以外にも自民と日本維新の会に所属する5人の国会議員に現金を渡していたと証言。すでに維新の下地幹郎(しもじ・みきお)議員(1月8日除名)が100万円の現金授領を認めている。
安倍政権が「成長戦略のひとつ」として強力に推進するIR導入だが、その裏側に渦巻く「カジノ利権」の実態が早くも露呈した格好だ。
そして、この事件も影響したのか、昨年11月末にIR誘致レースからの撤退を決めた北海道に続いて、1月7日には千葉市の熊谷俊人(くまがい・としひと)市長も誘致の見送りを表明。
1月20日に召集された通常国会では、野党4党が共同で「カジノ廃止法案」を提出し、秋元氏らの疑惑に関しても、国会で追及する構えを見せるなど、IR推進派に対する逆風は一気に強まっているように見える。
しかし、そんな逆風などどこ吹く風で、IR誘致に向けて一直線に突き進むのが、現在、大阪府・大阪市と共に「大本命」と目されている神奈川県横浜市だ。
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白紙から一転、IR誘致を発表した林 文子横浜市長(左)。昨年末から、市民説明会を開催中。「説明は尽くした」というアリバイづくりか!?
昨年8月、横浜市の林 文子(はやし・ふみこ)市長は、それまで「白紙」としていた姿勢から一転、IRの誘致を積極的に進める方針を発表。しかし、それは市民の声を半ば無視する形で行なわれたものだった。
なぜなら一昨年の春、市が実施した「横浜市中期4か年計画2018~2020」(素案)へのパブリックコメント(意見募集)では、最も多かったIRに関する意見のうち、94%がIRに否定的だったからだ。
当然、林市長の発表に対して、市民からは「IR誘致は白紙。その是非は市民の皆さまの声を聞いて決める」と語っていた言葉はウソだったのか?との批判が噴出。
その横浜では今、市長のリコール(解職請求)やIR誘致の是非を問う住民投票条例の制定を提案する署名運動の動きが本格化するなど、市民によるカジノ反対運動が起きている。また朝日新聞の横浜市民を対象にした世論調査(昨年9月実施)でも、IR誘致の反対は64%で賛成の26%を大きく上回っている。
ところが、肝心の林市長は、こうした声にも動じることはない。昨年末から開始した横浜市の全18区を市長自ら回る市民説明会の場では、「私が市民の皆さまに丁寧にご説明することで、必ずやご理解をいただけると信じています」と繰り返す。
「問題なのは、市長が説明するIR誘致に関する資料の中身です」と指摘するのは、経済学的な立場からカジノ問題に取り組み『カジノ幻想』(ベスト新書)の著書がある静岡大学の鳥畑与一(とりはた・よいち)教授だ。
「特に説明会で使っている統計などデータの見せ方はあまりに恣意的でひどすぎる。これでは市民をだましているに等しい」
具体的に「林市長の説明」のどこが問題なのか? 鳥畑教授と検証してみよう。
市民説明会で配布された「IR(統合型リゾート)の実現に向けて」と題された資料には、ざっくりと次のようなことが書かれている。
(1)横浜市では将来、少子高齢化による生産年齢人口の減少が予想される。市内に本社を置く上場企業数も東京などと比べると少ないため、法人市民税が少なく、今後の財政に大きな課題を抱えている。
(2)横浜市の観光は日帰り客の比率が多く、観光消費額の伸びや、訪日外国人観光客の取り込みも不十分で、横浜の観光ブランド力は低下している。
(3)こうしたなか、横浜市の観光都市としての魅力を高め、地域経済を活性化し、市の財政を改善するためには大規模な国際会議場・国際展示場などのMICE(マイス)施設や高級ホテル、劇場などの娯楽施設などを含むIRの誘致が必要で、大規模な投資を可能にするカジノの収益力が欠かせない。
(4)依存症や治安悪化の対策については、当然、国と市でしっかりやるので心配ない。
これらを裏づけるものとして、資料には統計やグラフが示されている。しかし、それらを検証していくと、横浜市の現状をネガティブに見せるための"数字のトリック"が隠されていることがわかるのだ。
まずは、林市長が横浜市の課題として示した「日帰り観光客の割合が約8割以上」というデータ(図表2)に注目してみよう。
【図表2】市民説明会の資料で、横浜市の日帰り観光客の割合が全国や東京都と比べて多いことをアピール。しかし、調査方法が異なり比較するには不適切なデータだ
【図表1】
この資料の前ページ(図表1)には、全国と東京都の日帰り観光客の割合が、それぞれ50.1%、53%とあり、これらと比較すれば80%を超える横浜の日帰り率が突出して高いように思えるが......。鳥畑教授が解説する。
「全国と東京都のデータが観光庁の『観光消費動向調査』に基づくのに対して、横浜市の『日帰り率8割以上』は市の独自調査に基づく『観光集客実人員』が出典となっています。ふたつの図は元データも調査手法も異なります。
そこで同じ観光庁のデータで、神奈川県の日帰り率を見てみると、東京都と同じ5割程度ですし、逆に横浜市と同じ手法で計算すると東京都の宿泊率はわずか8.4%にすぎず、日帰り率は90%超と、横浜よりも多くなるのです。
市長自ら、出典の異なる数字を並べ『横浜市は日帰り客が際立って多い』とネガティブな方向に市民をミスリードするのは、非常に悪質な印象操作だと言わざるをえません」
また、横浜市の「観光消費額」(図表3)と大阪府の「訪日外国人の観光消費額のみで1兆円超え」(図表4)というグラフを比較するのも、問題だと鳥畑教授は指摘する。
【図表3】過小な横浜市の数字と過大な大阪府の数字を持ち出して、「海外からのインバウンドを取り込めていない」「観光客が十分にお金を落としていない」と説明
【図表4】
「まず、横浜『市』と大阪『府』を並べ、一般的な観光消費額と訪日外国人の観光消費額という、それぞれ出典が異なる、別の項目を比べるだけで論外ですが、問題はそれだけではありません。
横浜市の観光消費額3633億円という数字ですが、これは市独自の調査に基づくもので、観光客の多いハイシーズンが調査に含まれないほか、横浜を訪れるまでの交通費が除外されるなど、観光庁が行なう同様の調査と比較しても、消費額を過少に評価している傾向があります」
さらに、一方の大阪府観光局の資料に基づく訪日外国人の観光消費額1兆2984億円という数字も疑わしい。
「2018年の訪日外国人の旅行消費額が約4兆5000億円ですから、仮にこれが本当なら大阪府だけで全体の3割近くを占めることになります。なぜそんな大きな数字になるのか?
大阪府の推計方法は不明ですが、試しに観光庁がまとめた訪日外国人の『都道府県別の消費額』(ひとり当たり)に、大阪府の『訪問外国人観光客数』をかけてみると、ほぼ同じような額になります。
ただし、都道府県別の『訪問外国人客数』は延べ人数のため、東京、千葉、大阪など、大きな国際空港のある場所は突出して高くなる。これを基にした『1兆円超え』という推計ならば、過大な数字になるのも当然です。
それを過小な『横浜市独自調査』と比較して、『インバウンドを取り込めていない』『観光客が十分にお金を落としていない』と訴え、『横浜の観光ブランド力が低下している』とIRの必要性につなげる論理は、前提の部分で完全に破綻しています」
ちなみに、林市長が訴えるIRの「経済波及効果・最大1兆2000億円」や「税収増最大1200億円」という皮算用(図表5)についても、鳥畑教授は疑問を呈する。
【図表5】資料ではIRによる経済波及効果を最大1兆2000億円と見積もり、税収増を最大1200億円と示すが、数字の根拠となるIR事業者の元データは守秘義務を理由に明らかにしない
「これらの数字はIR事業者側の情報に基づく推計にすぎません。横浜市はその根拠となる元データの詳細を『事業者の守秘義務』を理由に明らかにしません。そして市長が、『IR施設敷地面積の3%以下にすぎない』と強調するカジノが、実際にはIRの収益の大半を稼ぎ出すという実態を説明しないのも問題だと思います」
市長をはじめ資料を作成した市の職員は、日頃から統計データの扱いを熟知しているはず。その彼らが、不適切で恣意的なデータの比較を論拠に「IRの必要性」を訴えるのは、もはや卑怯(ひきょう)としか言いようがない。
そこで、これらの指摘について横浜市都市整備局IR推進課の担当者に直接、疑問をぶつけてみた。
――市長が説明会で市民に示した統計データの扱いが不適切との指摘があります。例えば、観光客の「日帰り率」を示す数字の出典や調査方法が、全国や東京都と横浜市で異なるのは問題では?
「横浜市は独自調査に基づいて『日帰り率が高い』と認識しており、全国と比較してどうなのかということで、信頼性の高いデータとして、東京都と全国については、観光庁の調査を引用しました。ただし、これは実数を比較するためではなく、傾向の分析のためという意図です」
――でも、市長は「全国、東京都は約5割が日帰りで横浜の日帰り率は8割以上」と説明し、根拠の異なる数字を比較していますよね?
また、横浜市の観光消費額も、市の独自調査とは手法が異なる大阪府の「訪日外国人の観光消費額のみで1兆円超え」という数字を引き合いに「横浜はインバウンド需要を十分取り込めていない」と主張するのも問題では?
「こちらも『大阪は外国人の観光消費額のみで1兆円を超えていると、かなりの規模感があるものを公式に発表していますよ』と、参考としてお伝えしているだけです」
――出典の異なるデータの不適切な比較や、観光に関する横浜市の独自調査に「ハイシーズン」が含まれていないなどの問題点は、すでに昨年9月の市会でも指摘されていますが、なぜ市民説明会の資料でも改めないのですか?
「昨年の市会でも同様のご指摘を受け、市民説明会の資料では、出典の異なるデータは横並びではなく別表とし、注釈をつけるなどの改善を行なっており、誤解なくご理解いただけると考えております」
――横並びを「別表の上下縦並び」に変えても、市長がそれを比較して説明しているなら同じでは?
「市長も、市民説明会では数字の出典の違いなどについてはご説明しているはずです」
ちなみに林市長は、昨年12月に行なわれた金沢区での説明会で、市がIR誘致を決めた昨年8月の時点で「市民の多くの方が反対だという認識はありませんでした」などと発言。会場が「それはないだろう!」と怒号に包まれるシーンもあったという。
このように、市民の声に真摯(しんし)に向き合わず、市長自ら恣意的なデータで市の現状をミスリードする説明を繰り返すのでは、この先、どんなに説明を重ねても「市民皆さまのご理解をいただく」ことは不可能ではないだろうか。
一方で、説明会がこの先、「説明は尽くした」という市長のアリバイとして利用され、自民・公明が過半数を占める横浜市会の議決を勝ち取って、「民意の支持を得た」と市がIR誘致を強引に進めるのなら、いったい誰のための地方自治なのか?
鳥畑教授によれば、IRで1000億円近い税収増を実現するには、カジノの収益が5000億から7000億円は必要だという。これは、日本型IRのモデルとされるシンガポールのマリーナベイ・サンズの収益の実に約3倍にあたる。
横浜へのIR導入が、それほど巨額の収益と増収が見込まれる以上、「IRを何がなんでも誘致したい人たち」がいるのは、間違いなさそうである。
市民向け説明会の資料で示された山下ふ頭でのIRのコンセプトイメージ図