「感染拡大地域では自粛検討を」専門家会議が提言【全文】

2020年3月19日

新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が3月19日夜開かれ、感染が拡大している地域は自粛要請の必要性を検討し、収束に向かっている地域ではリスクの低い活動から解除を検討するなどとした提言を取りまとめました。その提言の【ポイント】と【全文】です。

国の専門家会議が示した「提言」のポイントは

●爆発的な感染拡大「オーバーシュート」を回避するために
  • あるとき突然爆発的に患者が急増する「オーバーシュート」が起きると、医療の体制に過剰な負担がかかり、適切な医療が提供できなくなることが懸念される。
  • 日本としてこのような事態を回避し、できるだけ被害を小さくするための提案として、今回の提言をとりまとめた。
●日本としての基本戦略
  • 基本戦略の柱は3つ。
    (1)クラスター(集団感染)の早期発見。
    (2)重症者への集中治療の充実。
    (3)市民の行動を変える。
  • いかにして小規模な感染の連鎖にとどめ、それぞれの地域で適切に収束を図っていけるか。
  • 日本が「クラスターの早期発見」という戦略をとっていることをWHOは評価している。
●北海道の現状は?対策の効果は?
  • 北海道では一定程度、新たな感染者の増加を抑えられているが、依然として流行は終息に向かっておらず、憂慮すべき状態が続いていると考えている。
  • 北海道知事が出した「緊急事態宣言」をきっかけに道民の皆さんの行動が変わったことについては、急速な感染拡大の防止という観点からみて一定の効果があったと判断している。
●国内の現状は?
  • 北海道以外の地域では、都市部を中心に少しずつ増えている。
  • 高齢者施設で集団感染が発生する事例も。
  • 一定の地域では感染は広がりつつあり、高齢者など弱い立場の人たちが発症している。
  • また、感染源が分からない感染者が増えている地域が散発的に発生している。
  • クラスターの感染源が分からないまま感染者数が増加していくと、どこかで爆発的な感染拡大、「オーバーシュート」が起きかねない。
  • 日本国内の感染状況としては引き続き持ちこたえているが、一部の地域で感染拡大がみられる。
  • 諸外国の例をみていても、今後、地域の中で感染源が分からない患者数が増え、こうした地域が全国に拡大すれば、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねない。
●「大規模イベント自粛」など国内の諸対策の効果は?
  • 政府の要請によって「大規模イベントの自粛」や「全国一斉休校」が行われ、「時差出勤」への協力も進んでいる。
  • それらがなかった場合との比較はできないが、現時点では「メガクラスター(巨大な集団感染)」は起きていないとみられる。
  • 国民の行動が変わったことで、国内での新たな感染者数が若干減少し、効果があったことを意味している。
  • しかし、海外からの流入は続いている。
  • 引き続き、「3つの条件が同時に重なる場所や場面」を避けることが重要。3つの条件とは、(1)換気が悪い密閉空間、(2)人が密集している、(3)近距離での会話や発声。
●地域ごとにどう対応するか?
  • 社会や経済への影響を最小限としながら感染拡大防止対策の効果を最大限にしていくために、地域の感染状況別にバランスをとって必要な対応を行っていく必要がある。
  • <感染状況が拡大傾向にある地域>では、「独自のメッセージやアラートの発出」や「一律自粛」の必要性について、適切に検討する必要がある。
  • <感染状況が収束に向かい始めている地域、一定程度に収まってきている地域>では、「3つの条件が同時に重なる場所や場面」を徹底的に回避する対策を行ったうえで、感染拡大のリスクが低い活動から、徐々に解除することを検討する。
  • <感染状況が確認されていない地域>では、学校活動やスポーツなどについては、感染拡大のリスクが低い活動から実施する。
●学校について
  • <感染状況が拡大傾向にある地域>では、一定期間、学校を休校にすることもひとつの選択肢。
  • 春休み明け以降の学校にあたっては、「3つの条件が同時に重なる場所や場面」を避ける取り組みが重要。
  • あわせて、せきエチケットや手洗いなど基本的な感染症対策の徹底も。
  • バランスのとれた食事、適度な運動、休養・睡眠などで抵抗力を高めていくことも心がけて。
●大規模なイベントは?
  • 専門家会議としては、引き続き、全国的な大規模イベントについては、慎重な対応が求められると思う。
  • 感染リスクへの対応が整わない場合は、「中止」や「延期」を。
●企業など事業者は?
  • 従業員の感染予防に努めて。
  • 症状がみられる際に休みやすい環境の整備。
  • 「テレワーク」や「時差出勤」の推進。
  • 子どもの学級が閉鎖された場合に保護者が休みやすいよう配慮を。

国の専門家会議が示した「提言」全文

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
「新型コロナウイルス感染症対策の見解」

2020年3月19日

本専門家会議は、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の下、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うために設置されました(令和2年2月14日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)。この見解は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容等に基づき、専門家会議において検討した結果をまとめています。
現在までに明らかになってきた情報をもとに、現状の状況分析を行い、その正確な情報提供に努めるとともに、政府及び自治体に対し提言を、国民の皆様及び事業者の方々に対しお願いをすることとしています。
分析結果等はあくまでも現時点のものであり、随時、変更される可能性があります。

I.はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、わずか数か月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となりました。この感染症については、まだ不明の点も多い一方、多くのことが明らかになってきました。例えば、この感染症に罹患しても約80%の人は軽症で済むこと、5%程の方は重篤化し、亡くなる方もいること、高齢者や基礎疾患を持つ方は特に重症化しやすいことなどです。これまで世界で19万人以上の感染者と、8,000人近い死亡者が報告されています。本専門家会議は、新型コロナウイルス感染症について十分な注意と対策が必要な感染症であると考えています。特に、気付かないうちに感染が市中に拡がり、あるときに突然爆発的に患者が急増(オーバーシュート(爆発的患者急増)すると、医療提供体制に過剰な負荷がかかり、それまで行われていた適切な医療が提供できなくなることが懸念されます。こうした事態が発生すると、既にいくつもの先進国・地域で見られているように、一定期間の不要不急の外出自粛や移動の制限(いわゆるロックダウンに類する措置)に追い込まれることになります。
私達は、我が国がこのような事態を回避し、できるだけ被害を小さくするための提案として、本提言を取りまとめました。政府や国民の皆様などには内容をご理解いただき、我が国の被害を少しでも減らすための政策や行動につなげていただきたいと考えています。

II.状況分析等

1.WHOによるパンデミックとの認識(3月11日)と日本の対策について

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、2020年3月11日の会見において、世界で感染が拡がりつつある新型コロナウイルスについて、「パンデミック(世界的な大流行)とみなせる」と表明しました。中国、韓国以外での感染状況が加速する現状に強い懸念が示されましたが、「事態をパンデミックと描写することそれ自体が、ウイルスの脅威に対するWHOの評価や、WHOの対応、各国の対応を変えることにはならない」とも述ベています。以上のことから、専門家会議としては、現時点では、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にするという、これまでの方針を続けていく必要があると考えています。
そのため、「(1)クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応」、「(2)患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「(3)市民の行動変容」という3本柱の基本戦略は、さらに維持、必要に応じて強化し、速やかに行わなければならないと考えています。さらに、これまで報告の少なかった欧州や米国などの諸外国で新規感染者数が急増しており、中東、東南アジア、アフリカなどでも大規模感染が拡がっていることが推定されることなどから、感染者ゼロを目指す国内での封じ込めは困難な状況です。このため、こうした国々から、我が国に持ち込まれる新型コロナウイルスヘの対応や、国内においても、後述する、クラスター(患者集団)の感染源(リンク)が追えない事例が散発的に発生していることなどへの対策は依然として必須であり、クラスターの早期把握とともに、地域ごとの状況に応じた「市民の行動変容」や「強い行動自粛の呼びかけ」をお願いすることなどにより、いかにして小規模な感染の連鎖に留め、それぞれの地域において適切な制御を行った上で収束を図つていけるかが重要になってきています。

2.クラスター対策の現状について

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、2020年3月13日の事務局長のステートメントにおいて、日本が「クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応」という戦略をとって様々な取組を進めてきたことを高く評価しています。諸外国では数百~数千人規模の感染者数になるまで介入されなかったことが死亡者数の急増を引き起こしたものと考えられますが、日本では少人数のクラスター(患者集団)から把握し、この感染症を一定の制御下に置くことができていることが、諸外国との患者発生状況と死亡者数の差につながっていると判断しています。
これまで、厚生労働省のクラスター対策班では、感染者、濃厚接触者、保健所、地方公共団体のご協力を得て、クラスター(患者集団)を早期に発見し、その方々に対して人と人との接触をできるだけ絶つよう要請しながら、継続的に健康状態を確認する、という活動をしてきました。その結果、急速な感染拡大を抑制することに成功している地域も出てきています。しかしながら、現在の国及び地方公共団体におけるクラスター対策の実施体制には、そもそもクラスター(患者集団)対策を指揮できる専門家が少ないことや、帰国者接触者相談センターヘの対応を含めて保健所における労務負担が過重になっており、クラスター対策に人員を害Jけないことなど様々な課題が存在しています。

3.北海道の感染状況と対策の効果について

【注意】※:新型コロナウイルス感染症の感染から発病に要する潜伏期間の平均値は約5日間であり、発病から診断され報告までに要している平均日数は約8日間となっています。そのため、我々が今日見ているデータは、その約2週間前の新規感染の状況を捉えたものである、すなわち3月上旬頃の状況であるというタイムラグがあることをご理解下さい。

急激な感染拡大の兆候があった北海道においては、2020年2月28日に知事より緊急事態宣言が発出され、週末の外出自粛要請のほか、大規模イベントの開催自粛、学校の体校などが行われました。その他にも、道民や事業者、若者が主体となった啓発の取組みが、いち早く進展しています。
北海道の感染状況をみると、緊急事態宣言が出される前の2月27日、28日には10名を超える新規感染者の報告が続きましたが、その後急激な感染拡大を示す状況は認められておらず、直近の数日では0~5名以内の報告に留まっています(図1左)。流行規模の拡大には至っていませんが、他方、感染源(リンク)が追えない新規感染者数は横ばいに留まつており、コミュニティにおける伝播は確実には止まっていません。また、図1に示すように、実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のある時刻における、1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)は、日によって変動はあるものの概ね1程度で推移していましたが、緊急事態宣言の発出後は1を下回る日も増えています。(図1の青い線を参照)。緊急事態の発生前と発生後の同一期間(2月16日~28日と29日~3月12日)で実効再生産数を推定すると0.9(95%信頼区間:0.7、1.1)から0.7(95%信頼区間:0.4、0.9)へと減少をしました。
さらに、北海道においては、感染者、濃厚接触者、地方公共団体、保健所の皆様のご協力とご努力により、クラスター(患者集団)を十分に把握できたことで、この感染症の爆発的な増加を避けることができたと考えています。以上の状況から、専門家会議としては、北海道では一定程度、新規感染者の増加を抑えられていることを示していると判断していますが、依然として流行は明確に収東に向かっておらず憂慮すべき状態が続いていると考えています。また、北海道知事による緊急事態宣言を契機として、道民の皆様が日常生活の行動を変容させ、事業者の方々が迅速に対策を講じられたことについては、急速な感染拡大の防止という観点からみて一定の効果があつたものと判断しています。
ただし、緊急事態宣言、大規模イベントの自粛要請等のうち、どのような対策やどのような行動変容が最も効果を上げたかについては定かではありません。また、決してこの先について楽観視できる状況になったわけではなく、最近、患者数が増加傾向にある札幌などを含め、引き続き、これまで集団感染が確認された場に共通する3つの条件を避けるための取組を行っていく必要があります。

図1.北海道における流行曲線、推定感染時刻と実効生産数

4.現在の国内の感染状況と対策の効果について【注意】※

(1)国内の感染状況について
北海道以外の新規感染者数は、日ごとの差はあるものの、都市部を中心に漸増しており、3月10日以降、新規感染者数の報告が50例を超える日も続いています。また、高齢者福祉施設で集団感染が発生する事例があります。このことは、既に一定の地域では感染が広がりつつあり、高齢者など感染に弱い立場の方々に症状が現れてしまったことを意味しています。
図2に示したように、日本全国の実効再生産数は、日によって変動はあるものの、1をはさんで変動している状況が続いたものの、3月上旬以降をみると、連続して1を下回り続けています。今後とも、この動向がどのように変化するのか、注意深く観察を続けながら、状況に応じた必要な対応をその都度、機敏に講じることが求められます。
また、図3に示したように、感染源(リンク)が分からない感染者の増加が生じている地域が散発的に発生しています。今後、クラスター(患者集団)の感染源(リンク)が分からない感染者が増えていく場合は、その背景に、どのような規模の感染者が存在しているかがわからなくなることを意味しています。現時点では、こうした感染経路が明らかではない患者が増加している地域は局地的かつ小規模に留まっているものの、今後、こうした地域が全国に拡大し、さらに、クラスター(患者集団)の感染源(リンク)が分からない感染者が増加していくと、いつか、どこかで爆発的な感染拡大(オーバーシュート(爆発的患者急増))が生じ、ひいては重症者の増加を起こしかねません。
以上の状況から、日本国内の感染の状況については、3月9日付の専門家会議の見解でも示したように、引き続き、持ちこたえていますが、一部の地域で感染拡大がみられます。諸外国の例をみていても、今後、地域において、感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないと考えています。

図2.感染時刻による実効再生産数の推定(日本全体)

図3.都道府県別にみた感染源(リンク)が未知の感染者数の推移

(2)国内での様々な対策の効果について
北海道以外の地域においても、政府によって要請された大規模イベント開催自粛や、全国一斉休校が実施されたほか、急速な感染拡大が危惧される地域における的確な積極的疫学調査の実施などが行われました。この結果、たとえば、時差出勤への協力により、首都圏ではピーク時の乗車率が減少するなど、事業の特徴に応じた事業継続方法の変更や働きやすい環境整備に工夫が凝らされています。それらがなかったこととの比較はできないものの、現時点では、「メガクラスター(巨大な患者集団)」の形成はなされていないと推測されます。また、図3で示したように、都市部を有する地域を中心に発症者の漸増が認められています。一方、日本全国で見れば、大規模イベント等の自粛や学校の休校等の直接の影響なのか、それに付随して国民の行動変容が生じたのか、その内訳までは分からないものの、一連の国民の適切な行動変容により、国内での新規感染者数が若干減少するとともに、効果があったことを意味しています。しかしながら、海外からの流入は続いており、また、一般に感染症の増減には一定の小幅なサイクルが存在していることなどから、引き続き、その動向を注視していくとともに、市民や事業者の皆様に、最も感染拡大のリスクを高める環境(1換気の悪い密閉空間、2人が密集している、3近距離での会話や発声が行われる、という3つの条件が同時に重なった場)での行動を十分抑制していただくことが重要です。

(3)重症化する患者さんについて
日本国内では、2020年3月18日までに、感染が確認された症状のある人758例のうち、入院治療中の人は579例おり、そのうち、軽症から中等度の人が337名(58.2%)、人工呼吸器を使用または集中治療を受けている人が46名(7.9%)となっています。また、150例(25.9%)は既に軽快し退院しています。
図4に示すように、日本国内では、2020年3月18日までに確認された死亡者数は29名であり、イタリアなどの国と比べて、入院者に占める死亡者数の割合も低く抑えられています。
このことは、限られた医療資源のなかであっても、日本の医師が重症化しそうな患者さんの大半を検出し、適切な治療ができているという、我が国の医療の質の高さを示唆していると考えられます。
しかしながら、既に地域によっては軽症者や回復後の観察期間にある患者等によって指定感染症病床が圧迫されてきていること、死亡者数が増加傾向にある状況も鑑みると、専門家会議としては、欧州で起きているような爆発的な感染拡大の可能性や、それに伴う地域の医療提供体制が受けるであろう影響の深刻さについても、十分考慮しておかなければならないと考えています。

図4.国別報告日毎の新規死亡者数

5.今後の見通しについて

今日我々が見ているこの感染症の感染者数のデータは、感染から発病に要する潜伏期間と発病から診断され報告までに要する期間も含めて、その約2週間前の新規感染の状況を捉えたものにすぎません。すなわち、どこかで感染に気付かない人たちによるクラスター(患者集団)が断続的に発生し、その大規模化や連鎖が生じ、オーバーシュート(爆発的患者急増)が始まっていたとしても、事前にはその兆候を察知できず、気付いたときには制御できなくなってしまうというのが、この感染症対策の難しさです。
もしオーバーシュートが起きると、欧州でも見られるように、その地域では医療提供体制が崩壊状態に陥り、この感染症のみならず、通常であれば救済できる生命を救済できなくなるという事態に至りかねません。このため、爆発的患者急増が起きたイタリアやスペイン、フランスといった国々(図5)では、数週間の間、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止の措置や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行う、いわゆる「ロックダウン」と呼ばれる強硬な措置を採らざるを得なくなる事態となっています。

図5.国別の累積感染者数の推移

日本のある特定地域(人口 10 万人)に、現在、欧州で起こっているような大規模流行が 生じ、さらにロックダウンに類する措置などが講じられなかったと仮定した場合にどのよう な事態が生じるのでしょうか。北海道大学西浦教授の推計によれば、図 6 のとおり、
基本再生産数(R0:すべての者が感受性を有する集団において1人の感染者が生み出し た二次感染者数の平均値)が欧州(ドイツ並み)のR0=2.5 程度であるとすると、症状の出ない人や軽症の人を含めて、流行 50 日目には 1 日の新規感染者数が 5,414 人にのぼり、最終的に人口の 79.9%が感染すると考えられます。また、呼吸管理・全身管理を要する重篤患 者数が流行 62 日目には 1,096 人に上り、この結果、地域における現有の人工呼吸器の数を 超えてしまうことが想定されるため、広域な連携や受入体制の充実を図るべきです。
ただし、もちろん今回の推計に基づき各地域ごとに人工呼吸器等を整備するべきという趣 旨ではなく、今回示した基本再生算数がもたらす大幅な感染の拡大が生じないよう、クラス ター対策等強力な公衆衛生学的対策を講じることで、これから各都道府県が整備しようとし ている医療提供体制を上回らないようにするべきです。(各地域で整備すべき医療提供体制 についての考え方は6で示すとおり)
なお、オーバーシュートが生じる可能性は、人が密集し、都市としての人の出入りが多い 大都市圏の方がより高いと考えられます。

図6.大規模流行時に想定される10万人当たりの新規感染者数(左)と重篤患者数(右)

このため、有事に備え、十分な医療提供体制が必要になることは当然のこととして、こうした状況を可能な限り回避するための取組がより重要になります。それには、多くの人々の十分な行動変容を通じた協力が不可欠であり、地域クラスター対策の抜本的拡充だけでは全く不十分です。すなわち、もし大多数の国民や事業者の皆様が、人と人との接触をできる限り絶つ努力、「3つの条件が同時に重なる場」を避けていただく努力を続けていただけない場合には、既に複数の国で報告されているように、感染に気づかない人たちによるクラスター(患者集団)が断続的に発生し、その大規模化や連鎖が生じえます。そして、ある日、オーバーシュート(爆発的患者急増)が起こりかねないと考えます。そして、そうした事態が生じた場合には、その時点で取り得る政策的な選択肢は、我が国でも、幾つかの国で実施されているロックダウンに類する措置を講じる以外にほとんどない、ということも、国民の皆様にあらかじめ、ご理解いただいておく必要があります。
したがって、我々としては、「3つの条件が同時に重なる場」を避けるための取組を、地域特性なども踏まえながら、これまで以上に、より国民の皆様に徹底していただくことにより、多くの犠牲の上に成り立つロックダウンのような事後的な劇薬ではない「日本型の感染症対策」を模索していく必要があると考えています。
このため、地域別の予兆を少しでも早く把握しながら、もし、特定地域にオーバーシュートの兆しが見られた場合には、まずは、地域別の対応を徹底していただくとともに、全国的にも、より一層の行動変容が必要であると考えています。特に、これまでの事例を見ると、症状が軽い方が、感染に気がつかないまま、街を出歩いて感染を拡大させている可能性があり、こうした方々を含め、地域の皆さん全員が「3つの条件が同時に重なる場」を避けるなどの行動変容を徹底していただくことが極めて重要です。
また、これまでにわかってきたこととしては、オーバーシュートのリスクを高めるのが、「3つの条件が同時に重なる場」を避けにくい状況が生じやすい、「全国から不特定多数の人々が集まるイベント」であるといえます。イベントそのものがリスクの低い場で行われたとしても、イベントの前後で人々が交流する機会を制限できない場合には、急速な感染拡大のリスクを高めます。また、規模の大きなイベントの場合は、会場に感染者がいた場合に、クラスター(患者集団)の連鎖が発生し、爆発的な感染拡大のリスクを高めます。
現時点では、安全な規模や地域による基準を設けられるような科学的な根拠はなく、これまでの事例から判断するしかない状況です。
「3つの条件が同時に重なる場」を避けるなど適切な対応をとられれば、オーバーシュートを未然に防ぐこともあり得ますが、国内外の現在の感染状況を考えれば、短期的収束は考えにくく長期戦を覚悟する必要があります。

6.地域ごとに準備が必要な医療提供体制について

上記患者数の見通しに基づき、各地域で完全な医療提供体制を構築することは到底不可能です。また、現時点で有効な治療薬、ワクチンは存在せず、人工呼吸器やエクモといった重症患者に有効な医療機器も使用するためには高度に訓練された医師、臨床工学技士、看護師等が多数必要であり、既存の医療従事者で対応可能な数しか増加させることはできません。
そのため、最もこの感染症による死者を減らすために、まずは各地域で初期に考えられる(すでに各地域に示した患者推計モデルに基づいた)感染者数、外来患者数、入院患者数、重篤患者数に応じた医療提供体制が整えられるよう、この感染症を重点的に受け入れる医療機関の設定や、重点医療機関等への医療従事者の派遣、予定手術、予定入院の延期等できうるかぎりの医療提供体制の整備を各都道府県が実施することが早急に必要と考えます。
また、毎日の陽性患者数のデータ等を通じて、必要に応じ特に重篤患者に係る広域調整を行うため、都道府県を越えた広域調整本部の設置準備等があらかじめ必要と考えられます。

7.地域ごとの対応に関する基本的な考え方

今後、日本のどこかでオーバーシュートが生じた場合には、地域ごとに断続的に発生していくことが想定されます。こうした状況下では、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止とクラスター連鎖防止の効果を最大限にしていく観点から、地域の感染状況別にバランスをとって必要な対応を行っていく必要があります。
感染状況が拡大傾向にある地域では、まん延のおそれが高い段階にならないように、まずは、地域における独自のメッセージやアラートの発出や一律自粛の必要性について適切に検討する必要があります。その場合、社会・経済活動への影響も考慮し、導入する具体的な自粛内容、タイミング、導入後の実施期間などを十分に見極め、特に「感染拡大が急速に広まりそうな局面」や「地域」において、その危機を乗り越えられるまでの期間に限って導入することを基本とすべきだと考えます。
感染状況が収束に向かい始めている地域並びに一定程度に収まってきている地域では、後述するように、人の集まるイベントや「3つの条件が同時に重なる場」を徹底的に回避する対策をしたうえで、感染拡大のリスクの低い活動から、徐々に解除することを検討することになると考えます。ただし、一度、収束の傾向が認められたとしても、クラスター(患者集団)発生の早期発見を通じて、感染拡大の兆しが見られた場合には、再び、感染拡大のリスクの低い活動も含めて停止する必要が生じえます。
感染状況が確認されていない地域では、学校における様々な活動や、屋外でのスポーツやスポーツ観戦、文化・芸術施設の利用などを、適切にそれらのリスクを判断した上で、感染拡大のリスクの低い活動から実施してください。ただし、急激な感染拡大への備えと、「3つの条件が同時に重なる場」を徹底的に回避する対策は不可欠です。

8.学校等について

政府は、2月27日に、全国の小中高・特別支援学校の一斉臨時休校を要請しました。学校の一斉休校については、3.で触れたように、北海道においては他の取組と相まって全体として一定の効果が現れていると考えますが、学校の一斉休校だけを取り出し「まん延防止」に向けた定量的な効果を測定することは困難です。
また、この感染症は、子どもは重症化する可能性が低いと考えられています。一方では、中国等では重症化した事例も少数例ながら報告されており、更に、一般には重症化しにくい特性から、無症状又は症状の軽い子どもたちが、高齢者等を含む家族内感染を引き起こし、クラスター連鎖のきっかけとなる可能性などを指摘する海外論文なども見られており、現時点では、確たることは言えない状況であると考えています。ただし、上記7.の「感染状況が拡大傾向にある地域」では、一定期間、学校を休校にすることも一つの選 択肢と考えられます。

III.提言等

1.政府及び地方公共団体への提言

(1)クラスター対策の抜本的な強化
現在の実施体制では、クラスターの早期発見・早期対応という戦略を更に継続するのは厳しく、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行を回避できなくなる可能性があります。
このため、専門家会議としては、抜本的なクラスター対策の拡充を迅速に実施すべきであると考え、その一刻も早い実現を政府に強く要望します。具体的には、1地域でクラスター(患者集団)対策を指揮する専門家を支援する人材の確保、2地方公共団体間の強力な広域連携の推進を図った上で、3地方公共団体間で保持する感染者情報をそれぞれの地域のリスクアセスメントに活用できるシステムを作ること、4保健所が大規模なクラスター対策に専念できる人員と予算の投入等が挙げられます。

(2)北海道及び各地方公共団体へのお願い
この先、新たな感染者やクラスターの発生もあり得ますので、引き続き注意深く警戒を続けながら、今後は、適宜、必要に応じて、今回と同様の対応を講じることも視野に入れておく必要があります。一方で、この北海道の経験は、他の地域においても、政府との緊密な情報連携により、地方公共団体の首長による独自のメッセージやアラートの発出等が、地域住民の行動変容につながり、一定の効果を上げる可能性を示唆していると考えます。感染状況が拡大傾向にある地方公共団体におかれましては、まん延のおそれが高くならないように、厚生労働省からもたらされた情報等を基に、まずは、地域住民の行動変容につなげるための自発的な取組の実施も考慮していただきたいと考えます。

(3)「3つの条件が同時に重なった場」を避ける取組の必要性に関する周知啓発の徹底
まん延の防止に当たっては、国民の行動変容を一層徹底していく必要があります。このため、専門家会議としては、国に対しては、3つの条件が同時に重なった場を避けることの必要性についての周知広報の充実を求めます。

(4)重症者を優先する医療体制の構築
重症患者に対する診療には、特別な知識や環境、医療機器を要するため、診療できる人員と資源を継続的に確保することが重要な課題です。そのため、一般医療機関のうちどの機関が感染者の受入れをするか、あらかじめ決めておく必要があります。その上で、関係医療機関の連携・協力の下、受入病床数を増やすだけでなく、一般医療機関の医療従事者にも新型コロナウイルス感染症の診療に参加していただく支援が不 可欠です。
そこで、専門家会議としては、重症者を優先する医療体制へ迅速に移行するため、地域の感染拡大の状況に応じて、受診、入院、退院の方針を以下のように変更する検討を進めるべきだと判断します。

  • ・重症化リスクの高い人(強いだるさ、息苦しさなどを訴える人)又は高齢者、基礎疾患のある人については、早めに受診していただく
  • ・入院治療が必要ない軽症者や無症状の陽性者は、自宅療養とする※。ただし、電話による健康状態の把握は継続する
  • ・入院の対象を、新型コロナウイルス感染症に関連して持続的に酸素投与が必要な肺炎を有する患者、入院治療が必要な合併症を有する患者その他継続的な入院治療を必要とする患者とする
  • ・症状が回復してきたら退院及び自宅待機にて安静とし、電話による健康状態の把握は継続する
  • ・また、症状が軽い陽性者等が、高齢者や基礎疾患がある人と同居していて家族内感染のおそれが高い場合は、接触の機会を減らすための方策を検討する。具体的には、症状が軽い陽性者等が宿泊施設等での療養を行うことや、同居家族が受診した上で一時的に別の場所に滞在することなど、家族内感染リスクを下げる取組みを行う
    このような基本的考えに立って、地域の実情に応じた、重症度などによる医療機関の役割分担をあらかじめ決めておくことが重要です。
    ※現在は、まん延防止の観点から、入院治療の必要のない軽症者も含めて、感染症法の規定に基づく措置入院の対象としています。

(5)学校等について
春休み明け以降の学校に当たっては、多くの子どもたちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスク等に備えていくことが重要です。この観点から、まずは、地域ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要です。さらに、今後、どこかの地域でオーバーシュートが生じた場合には、II.7の地域ごとの対応に関する基本的な考え方を十分踏まえていただくことが必要です。
また、日々の学校現場における「3つの条件が同時に重なる場」を避けるため、1換気の悪い密閉空間にしないための換気の徹底、2多くの人が手の届く距離に集まらないための配慮、3近距離での会話や大声での発声をできるだけ控えるなど、保健管理や環境衛生を良好に保つような取組を進めていくことが重要です。
併せて、咳エチケットや手洗いなどの基本的な感染症対策の徹底にもご留意ください。
児童生徒や学校の教職員については、学校現場で感染リスクに備えるとともに、学校外での生活で感染症の予防に努めていくことが重要です。日頃から、集団感染しやすい場所や場面を避けるという行動によって急速な感染拡大を防げる可能性が高まります。
例えば、できるだけ換気を行って密閉空間を作らないようにしたり、咳エチケットや手洗いなどの基本的な感染症対策を徹底したり、バランスのとれた食事、適度な運動、休養、睡眠などで抵抗力を高めていくことにも心がけてくださるようお願いします。
教職員本人やその家族等が罹患した場合並びに本人に発熱等の風邪症状が見られる場合には、学校へ出勤させないよう徹底してください。また、児童生徒にも、同様の取組の徹底を図るようにしてください。
また、大学等におかれては学生等に対して、本提言に記載した感染リスクを高める行動を慎むよう、正確な情報提供や周知をお願いいたします。特に春休み期間に、感染症危険情報が高い国・地域に海外旅行や海外留学等で渡航した学生等が帰国する際などには、新たな渡航の慎重な検討や一時帰国を含めた安全確保の対応方策の検討に加え、帰国して2週間は体調管理を行い、体調に変化があった場合には、受診の目安を参考に適切な対応を取るよう、学生等への情報提供や周知をお願いいたします。

2.市民と事業者の皆様へ

(1)3つの条件が同時に重なった場における活動の自粛のお願い
これまでに明らかになったデータから、集団感染が確認された場に共通するのは、(1)換気の悪い密閉空間であった、(2)多くの人が密集していた、(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場ということが分かっています。例えば、屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会等での発生が疑われるクラスターの発生が報告されています。
皆さんが、「3つの条件が同時に重なった場所」を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。

(2)感染者、濃厚接触者等に対する偏見や差別について
感染者、濃厚接触者とその家族、この感染症の対策や治療にあたる医療従事者とその家族に対する偏見や差別につながるような行為は、断じて許されません。誰もが感染者、濃厚接触者になりうる状況であることを受け止めてください。
報道関係者におかれましては、個人情報保護と公衆衛生対策の観点から特段の配慮をお願いします。
感染症対策に取り組む医療従事者が、差別等されることのないよう、市民等は高い意識を持つことが求められます。

(3)積極的疫学調査へのご協力のお願い
この感染症との闘いは、今後一定期間は続き、国内で急速な感染の拡大を抑制できたとしても、流行地から帰国する邦人や来日する外国人からの感染も増える見込みのため、さらに警戒を強める必要があります。
感染者、濃厚接触者の方々は、保健所による積極的疫学調査にご協力ください。詳しい行動歴を調査することで感染源を突き止め、他の感染者を早期に発見することが感染拡大の防止のために不可欠となります。
また、事業者におかれましては、集団感染が発生した場合には、その情報を公開することにご協力ください。速やかな情報の公開が、感染者の早期発見につながります。

(4)高齢者や持病のある方など重症化リスクの高い皆様へのお願い
新型コロナウイルスの国内ならびに海外での分析によっても高齢であれば比較的健康であっても感染し、重症化する可能性が高いことがわかっています。また、持病にも様々なものがありますが、できるだけ良好なコントロールをしていただくようにし、また感染リスクを下げるような行動をお願いします。また通常の予防接種も、感染症の複合にならないために重要です。
これまでは外出機会の多かった方におかれましても、今後は感染リスクを下げるよう注意をお願いします。特に、共有の物品がある場所、不特定多数の人がいる場所などへの訪問は避けてください。なお、外出機会を確保することは日々の健康を維持するためにも重要になります。お一人や限られた人数での散歩などは感染リスクが低い行動です。

(5)高齢者や持病のある方に接する機会のある職業ならびに家庭の方へのお願い
高齢者や持病のある方に接する機会のある、医療、介護、福祉ならびに一般の事業者で働く人は一層の感染対策を行うことが求められます。発熱や感冒症状の確認ならびに、感染リスクの高い場所に行く機会を減らすなどの対応が当分の間求められます。
これまでの国内外の感染例でも、家庭内での感染の拡大はよくみられています。同居の家族、特に、そのご家庭の高齢者を訪問される際には、十分な体調確認を行った上で、高齢者の方と接していただくようにしてください。

(6)若者世代の皆様へのお願い
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは高くありません。しかし、無症状又は症状が軽い方が、本人は気づかずに感染を広めてしまう事例が多く見られます。このため、感染の広がりをできるだけ少なくするためには、改めて、3つの条件が同時に重なった場に近づくことを避けていただきますようにお願いします。特に、オーバーシュート(爆発的患者急増)のリスクを高めるのが、「3つの条件が同時に重なる場」を避けにくい状況が生じやすい、「全国から不特定多数の人々が集まるイベント」であることもわかってきました。イベントそのものがリスクの低い場で行われたとしても、イベントの前後で人々が交流する機会を制限できない場合には、急速な感染拡大のリスクを高めますので、十分に注意して行動してください。
また、ご自身が新型コロナウイルスに罹患した場合やその家族等が罹患した場合並びに発熱等の風邪症状が見られる場合には、ご自身の経過観察をご自宅で継続するとともに外出を避けるように徹底してください。

(7)医療従事者の皆様へのお願い
今後、患者数の漸増やオーバーシュート(爆発的患者急増)が起こると、感染症指定医療機関等だけでは対応が困難となりますので、多くの医療機関(診療を原則行わない医療機関を除く)が新型コロナウイルス感染症の診療を行うことになります。その際、地域における医療機関ごとの役割分担(軽症者は在宅療養、重症者は高次医療機関、その他は診療所や一般医療機関で診療するなど)を踏まえ、医療ニーズの低減努力(一般患者の外来受診間隔を開ける、ファクス処方の利用、待機的入院・手術の延期等)をお願いいたします。また、各医療機関におかれましては、それぞれの診療継続計画に基づき、医療従事者の適切な配置等をご検討ください。医療につきましては、新型インフルエンザ等及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議「平成25年6月26日(平成30年6月21日一部改訂)新型インフルエンザ等対策ガイドライン」のVI医療体制に関するガイドラインが準用可能ですのでご参照ください。

(8)PCR検査について
新型コロナウイルス感染症においては、医師が感染を疑う患者には、PCR検査が実施されることになっています。また、積極的疫学調査において検査の必要性がある濃厚接触者にもPCR検査が実施されます。このように適切な対象者を検査することで、新型コロナウイルスに感染した疑いのある肺炎患者への診断・治療を行っているほか、濃厚接触者の検査により、感染のクラスター連鎖をとめ、感染拡大を防止しています。すでに、検査受け入れ能力は増強されており、今後も現状で必要なPCR検査が速やかに実施されるべきと考えています。今後は、わが国全体の感染状況を把握するための調査も必要です。
なお、PCR検査法は優れた検査ではありますが、万能ではなく感染していても陽性と出ない例もあります。したがって、PCR検査のみならず、臨床症状もあわせて判断する必要があります。また、迅速診断法や血清抗体検査法などの導入により、より迅速で正確な診断が期待されています。

(9)大規模イベント等の取扱いについて
2月26日に政府が要請した、全国的な大規模イベント等の自粛の成果については、その効果だけを取り出した「まん延防止」に対する定量的な効果測定をできる状況にはないと考えていますが、専門家会議としては、以下のような観点から、引き続き、全国的な大規模イベント等については、主催者がリスクを判断して慎重な対応が求められると思います。
全国規模の大規模イベント等については、
1多くの人が一堂に会するという集団感染リスクが想定され、この結果、地域の医療提供体制に大きな影響を及ぼしかねないこと(例:海外の宗教行事等)
2イベント会場のみならず、その前後などに付随して人の密集が生じること
(例:札幌雪まつりのような屋外イベントでも、近辺で3つの条件が重なったことに伴う集団感染が生じていること)
3全国から人が集まることに伴う各地での拡散リスク、及び、それにより感染者が生じた場合のクラスター対策の困難性
(例:大阪のライブハウス事案(16都道府県に伝播)
4上記のリスクは屋内・屋外の別、あるいは、人数の規模には必ずしもよらないことなどの観点から、大規模イベント等を通して集団感染が起こると全国的な感染拡大に繋がると懸念されます。
このため、地域における感染者の実情やその必要性等にかんがみて、主催者がどうしても、開催する必要があると判断する際には以下1~3などを十分注意して行っていただきたい。
しかし、そうしたリスクへの対応が整わない場合は、中止又は延期をしていただく必要があると考えています。
また仮にこうした対策を行えていた場合でも、その時点での流行状況に合わせて、急な中止又は延期をしていただく備えも必要です。
1…人が集まる場の前後も含めた適切な感染予防対策の実施、
2…密閉空間・密集場所・密接場面などクラスター(集団)感染発生リスクが高い状況の回避、
3…感染が発生した場合の参加者への確実な連絡と行政機関による調査への協力
などへの対応を講ずることが求められます。
(別添「多くの人が参加する場での感染対策のあり方の例」参照)

(9)事業者の皆様へのお願い
以下の事項に留意して、多様な働き方で働く方も含めて、従業員の感染予防に努めてください。
・労働者が発熱などの風邪症状が見られる際に、休みやすい環境の整備
・テレワークや時差通勤の活用推進
・お子さんの学校が学級閉鎖になった際に、保護者である労働者が休みやすいように配慮
・感染拡大防止の観点から、イベント開催の必要性を改めて検討
・別添「多くの人が参加する場での感染対策のあり方の例」の2)クラスター(集団)感染発生リスクの高い状況の回避のための取組に準じて、従業員の集団感染の予防にも十分留意してください。
・海外出張で帰国した場合には、2週間は職員の健康状態を確認し、体調に変化があった場合には、受診の目安を参考に適切な対応を取るよう職員への周知徹底をしてください。

IV.終わりに

この状況分析・提言については、今後、国際的な状況、新規感染者数の動向、国民や行政に知らせるべき新たな重要な知見等が生じた場合に、政府が、「緊急事態宣言」の発動も含めた必要な対応が迅速かつ果断にとれるよう、適宜、必要に応じて検討を行い、見直しを行うものとします。

別添【多くの人が参加する場での感染対策のあり方の例】

1)人が集まる場の前後も含めた適切な感染予防対策の実施
○参加時に体温の測定ならびに症状の有無を確認し、具合の悪い方は参加を認めない。
○過去2週間以内に発熱や感冒症状で受診や服薬等をした方は参加しない。
○感染拡大している地域や国への訪問歴が14日以内にある方は参加しない。
○体調不良の方が参加しないように、キャンセル代などについて配慮をする。
○発熱者や具合の悪い方が特定された場合には、接触感染のおそれのある場所や接触した可能性のある者等に対して、適切な感染予防対策を行う。
○会場に入る際の手洗いの実施ならびに、イベントの途中においても適宜手洗いが できるような場の確保。
○主に参加者の手が触れる場所をアルコールや次亜塩素酸ナトリウムを含有したもので拭き取りを定期的に行う。
〇飛沫感染等を防ぐための徹底した対策を行う(例えば、「手が届く範囲以上の距離を保つ」、「声を出す機会を最小限にする」、「咳エチケットに準じて声を出す機会が多い場面はマスクを着用させる」など)

2)クラスター(集団)感染発生リスクの高い状況の回避
○換気の悪い密閉空間にしないよう、換気設備の適切な運転・点検を実施する。定期的に外気を取り入れる換気を実施する。
○人を密集させない環境を整備。会場に入る定員をいつもより少なく定め、入退場に時間差を設けるなど動線を工夫する。
○大きな発声をさせない環境づくり(声援などは控える)
○共有物の適正な管理又は消毒の徹底等

3)感染が発生した場合の参加者への確実な連絡と行政機関による調査への協力
○人が集まる場に参加した者の中に感染者がでた場合には、その他の参加者に対して連絡をとり、症状の確認、場合によっては保健所などの公的機関に連絡がとれる体制を確保する。
○参加した個人は、保健所などの聞き取りに協力する、また濃厚接触者となった場合には、接触してから2週間を目安に自宅待機の要請が行われる可能性がある。

4)その他
○食事の提供は、大皿などでの取り分けは避け、パッケージされた軽食を個別に提供する等の工夫をする。
○終了後の懇親会は、開催しない・させないようにする。

※上記は例であり、様々な工夫が考えられる。


「3つの条件の重なりを避けて」 専門家会議が見解【全文】

2020年3月9日

3月10日 ニュース7 政府の専門家会議 尾身茂副座長

新型コロナウイルス対策の専門家会議は、「今後1、2週間が感染拡大のスピードをおさえられるかどうかの瀬戸際だ」とする見解を示してから2週間となる3月9日、新たな見解をまとめました。

この中で、国内の感染状況について「爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえているのではないか」という認識を示しました。

ただ、感染者の増加傾向は続き、警戒を緩めることはできないとしています。

その上で、これまで感染が確認された場所に共通していた、「3つの条件の重なり」を示しました。

(1)換気の悪い密閉空間
(2)多くの人が密集
(3)近距離での会話や発声

専門家会議は、日常生活の中で、この3つの条件が同時に重なるような場所や場面を避ける行動をとるよう呼びかけています。

また、専門家会議のメンバーは3月9日の記者会見で、現在行われている「大規模イベントの自粛」や「全国の学校に対する一斉休校要請」、それに「北海道での緊急事態宣言を受けた対策」などの効果を分析した結果をもとに、3月19日をめどに、現在の対策を継続する必要があるかどうかなど、今後の方向性についてまとめる考えを示しました。

専門家会議が示した見解の【ポイント】と【全文】です。

国の専門家会議が示した「見解」のポイントは

●いまの状況をどうみているか
  • 現時点までは、「クラスター」(集団の感染)の発生を比較的早期に発見できている事例も出てきている。これは、急激なペースで感染者数が増加している諸外国と比べて、感染者数の増加のスピードを抑えることにつながっている。
  • 2月24日に公表した専門家会議の「見解」で、「今後1~2週間が瀬戸際に」と述べたが、本日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないか。
  • しかしながら、感染者数は、当面、増加傾向が続くと予想される。また、すべての感染状況が見えているわけではないので、依然として警戒を緩めることはできない。
  • 北海道では2月28日に知事より「緊急事態宣言」が出されたが、その対策の効果についての専門家会議としての判断は、3月19日ごろに公表する予定。
●今後の見通しは
  • 今後の長期的な見通しについては、国内での急速な感染拡大を抑制できたとしても、世界的な流行を完全に封じ込めることはできない。
  • 今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、世界的な流行が進んでいることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想される。
●急速な感染拡大を防ぐために、日常生活の中で行うべきことは
  • これまでのデータから、集団感染しやすい場所や場面を避けるという行動によって、急速な感染拡大を防げる可能性が、より確実な知見となってきた。
  • これまで集団感染が確認されたケースに共通するのは、次の3の条件が同時に重なった場合。

    (1)換気の悪い密閉空間
    (2)多くの人が密集
    (3)近距離での会話や発声

    日常生活の中で、この3つの条件が同時にそろう場所や場面を、避ける行動を。つまり、次の3つの行動を。

    (1)換気を行う(可能であれば2つの方向の窓を同時に開ける)
    (2)人の密度を下げる(互いの距離を1、2メートル程度あける)
    (3)近距離での会話や発声などを避ける(やむを得ない場合はマスクをつける)

国の専門家会議が示した「見解」全文

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
「新型コロナウイルス感染症対策の見解」

2020年3月9日

この専門家会議は、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の下、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うために設置されました(令和2年2月14日 新型コロナウイルス感染症対策本部決定)。この見解は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容に基づき、専門家会議において検討した結果をまとめた見解です。
 現在までに明らかになってきた情報をもとに、我々がどのように現状を分析し、どのような内容について政府に助言をしているかについて、市民に直接お伝えすることが専門家としての責務だと考え、この見解をとりまとめています。この内容はあくまでも現時点の見解であり、随時、変更される可能性があります。

1.感染拡大の防止に向けた日本の基本戦略

 専門家会議では、日本で新型コロナウイルスに対応するための基本的な考え方を、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大の効果を最大限にするという方針とし、政府に助言をしてきました。その具体的な戦略は「クラスター(集団)の早期発見・早期対応」、「患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「市民の行動変容」という3本柱であると考えています。この戦略は世界保健機関(WHO)の推奨する戦略とも一致しており、既にシンガポールや香港などで実施されているのと同等の戦略です。
 一方、日本よりも急速に感染が拡大してしまった国では、日本のような戦略のみでは感染拡大を抑えることができず、人々の行動を大幅に制限する戦略を取らざるを得ない状況になっています。
日本では、医療機関が高い医療水準を誇っており、地方公共団体や保健所の高度な調査力があります。今後の感染拡大に備えて、これらの機関の体制を強化し、広域での連携や情報共有をすることは不可欠です。
そして、日本には、市民のみなさまの強い協力意識があります。この戦略を確実に実行するためには、市民のみなさま一人一人が二次感染を防ぐための行動にご協力いただくことも欠かせません。
 我々が提案する基本戦略は、これらがそろって、はじめて実現できる戦略ですが、後述するように、日本の状況はこの戦略により感染拡大のスピードを抑えられる可能性もあります。そのため、専門家会議としては、当面の間、この戦略を強化すべきであると考えています。

2.現在の国内の感染状況

 現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。
 しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のある時点における、1人の感染者から二次感染させた平均の数)は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています。感染者や濃厚接触者の方々、地方公共団体や保健所の皆様、厚生労働省対策本部クラスター対策班の連携と多大な努力が実り、現時点までは、クラスター(集団)の発生を比較的早期に発見できている事例も出てきています。これは、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、感染者数の増加のスピードを抑えることにつながっています。
 2月24日に公表した専門家会議の見解において、我々は、「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と述べましたが、以上の状況を踏まえると、本日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかと考えます。
 しかしながら、感染者数は、一時的な増減こそあれ、当面、増加傾向が続くと予想されます。また、後述するように、感染の状況を把握するためには、約2週間程度のタイムラグを生じ、すべての感染状況が見えているわけではないので、依然として警戒を緩めることはできません。専門家会議としては、現在、北海道で行われている対策の十分な分析が完了し、さらに他の地域の状況の確認などをしたうえで、全国で行われている対策も含め、我々の考えを政府にお伝えしたいと考えています。

3.重症化する患者さんについて

 中国からの2020年2月20日時点での報告では、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、13.8%が重症、6.1%が重篤となっています。また、広東省からの2020年2月20日時点の報告では、重症者125名のうち、軽快し退院したものが26.4%、状態が回復しつつある者が46.4%となっています。
日本国内では、2020年3月6日までに、感染が確認された症状のある人366例のうち、55例(15%)は既に軽快し退院しています。重症化する患者さんも、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭痛、咳など)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別をつけるのは、依然として難しい状況です。
日本では、死亡者数は大きく増えていません。このことは、限られた医療資源のなかであっても、日本の医師が重症化しそうな患者さんの多くを検出し、適切な治療をできているという、医療の質の高さを示唆していると考えられます。今後も死亡者数の増加を抑えるために、日本の医療提供体制を強化する必要があります。
重症化する患者さんは、普通の風邪症状が出てから約5~7日程度で、症状が急激に悪化し、肺炎に至っています。重症化する患者さんの場合は、入院期間が約3~4週間に及ぶことが多いです。また重篤の方の場合は、人工呼吸器による治療だけでなく、人工心肺を用いた集中治療が必要になることがあります。

4.北海道における、「人と人との接触を可能な限り控える」対策について

 北海道では、急速な感染拡大を収束に向かわせることを目的として、2020年2月28日に「新型コロナウイルス緊急事態宣言」が知事より示されました。道民のみなさまには、基本戦略への対応に加えて、現在、「人と人との接触を可能な限り控えること」にも多大なご協力をいただいています。
こうした対策の効果を検討するための最初のデータが得られるまでには、まだ時間を要します。この感染症の感染から発病に要する潜伏期間の平均値は約5日間であり、発病から報告までに要する平均時間は約8日間であることが知られており、我々が今日見ているデータは、その約2週間前の新規感染の状況を捉えたものであるというタイムラグがあるためです。そのため、北海道での対策については、北海道での緊急事態宣言から少なくとも約2週間後からでなければ、その効果を推定することが困難です。その後、複数の科学的な指標(感染者数の変化、実効再生産数、感染源(リンク)が明確な患者数)を用いて、約1週間程度かけて、この対策の効果を判断し、3月19日頃を目途に公表する予定です。

5.今後の長期的な見通しについて

 国内での急速な感染拡大を抑制できたとしても、世界的な流行を完全に封じ込めることはできません。
先週まで報告が少なかった諸外国において、患者数が急増しています。これまで渡航の制限がなかった諸外国や国内の人々との間の往来や交流が既に積み重ねられています。しかし、すべての感染源(リンク)が追えているわけではないので、感染の拡大が、既に日本各地で起きている可能性もあります。よって、今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくは、いつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想されます。
新型コロナウイルス感染症は、人々が気づかないうちに感染し、感染拡大に重大な役割を果たすという特徴があるため、クラスター(集団)を早期に発見し、早期に対応できる体制の確立が不可欠だと考えています。
今後、急速な感染拡大が予想される地域では、その地域ごとに「人と人との接触を可能な限り控える」対策を進め、収束に向かえば、比較的、感染拡大のリスクの低い活動から解除するなど、社会・経済活動の維持と感染拡大防止のバランスを取り続けるような対策を繰り返すことが、長期にわたって続くと予想されます。
WHOは、今回の新型コロナウイルス感染症の地域ごとの対策を考えるために、3つの異なるシナリオ(3Cs)を考えるべきとしています。つまり、それぞれの地域を1)感染者が他地域からの感染者に限定されている地域(Cases)、2)クラスターを形成している地域(Cluster)、3)地域内に広範に感染者が発生している地域(Community Transmission)、の3つに分類して対応を考えることが必要だとしています。まだ、WHOからそれぞれの地域の詳しい定義は提示されていませんが、厚生労働省のクラスター対策班でこれらの地域ごとの流行状況を決める指標とそれぞれのシナリオに応じた対策についての指針を作成しています。
専門家会議としては、この指針と北海道での対策の効果をもとに、全国各地での対応を検討し、報告する予定です。また、クラスター(集団)の早期発見・早期対応が長期的にわたって持続できる体制の整備が急務だと考えています。保健所については、労務負担を軽減すべく、帰国者接触者相談センターの機能について、保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的財政的支援策を講じるべきだと考えます。また、地方公共団体や保健所の広域での連携及び情報共有が必要です。医療提供体制については、さらなる感染拡大に備え、対応にあたる一般医療機関や診療所を選定し、その体制を強化していく支援をすべきだと考えます。

6.みなさまにお願いしたいこと

 これまでに明らかになったデータから、集団感染しやすい場所や場面を避けるという行動によって、急速な感染拡大を防げる可能性が、より確実な知見となってきました。これまで集団感染が確認された場に共通するのは、(1)換気の悪い密閉空間であった、(2)多くの人が密集していた、(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場です。こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられます。そのため、市民のみなさまは、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。
ただし、こうした行動によって、どの程度の感染拡大リスクが減少するかについては、今のところ十分な科学的根拠はありませんが、換気のよくない場所や人が密集する場所は、感染を拡大させていることから、明確な基準に関する科学的根拠が得られる前であっても、事前の警戒として対策をとっていただきたいと考えています。

専門家会議としては、すべての市民のみなさまに、この感染症との闘いに参加して頂きたいと考えています。少しでも感染拡大のリスクを下げられるよう、別添の「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」を参考にしていただき、様々な場所や場面に応じた対策を考え、実践していただきたいと考えています。どうかご協力をお願いいたします。

事業者の方へのお願い
事業者の皆様におかれましては、既に感染拡大のリスクを防ぐために様々な対策をとっておられることと思いますが、別添の「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」を参考にしてください。そして、どのような対策を取っておられるかをぜひ積極的に市民に情報共有してください。そのことが市民にとって、施設や各種サービス等の利用しやすさの判断につながると考えています。どうかご協力をお願いいたします。以上

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」

2020年3月9日

 新型コロナウイルスに対する地域での対策として、クラスター(集団)の発生を防止することが重要です。感染していると知らずに多くの人々と接触することで、感染を拡大してしまう可能性があります。そのため、感染拡大の機会を減らすために、多くの人が接触するような機会をできるだけ作らないようにする必要があります。
 クラスター(集団)の発生のリスクの高い場面では、一人の感染者が多くの感染者を生み出し、それが大きなクラスター(集団)の発生につながる場合があります。海外では多くの人が集まる行事に伴い大規模なクラスター(集団)の発生が報告されています。
 この文章は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容に基づき、専門家会議がクラスター(集団)の発生の防止に向けて、広く情報を共有することを目的としています。なお、これまでの知見、エビデンスは限られており、感染経路については不明な点も多く、適宜、変更される可能性があります。

これまでクラスター(集団)の発生が確認された場面とその条件

 これまで感染が確認された場に共通するのは、①換気の悪い密閉空間、②人が密集していた、③近距離での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場です。こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられます。
 これら3つの条件がすべて重ならないまでも1つないし2つの条件があれば、なにかのきっかけに3つの条件が揃うことがあります。例えば、満員電車では、①と②がありますが③はあまりなされません。しかし、場合によっては③が重なることがあります。また、一連の活動のなかで多くの時間は3つ条件が揃わなくても、あるときにはそうした機会があることがあります。例えば通常の野外スポーツをしている際には3つの条件は揃いませんが、着替えやミーティングにおいては①から③の条件が重なることがあります。そのため、3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。

 また、上記の条件の他に、共用の物品を使用していたという場面もあります。こうした状況では接触感染がおこる場合があります。
 これまで、換気の悪い閉鎖空間で人が近距離で会話や発語を続ける環境、例えば、屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会等での発生が疑われるクラスターの発生が報告されています。
 なお、不特定多数が参加するイベントは、感染拡大のリスクが高いだけでなく、クラスターが発生したときに感染源の特定、接触者調査が困難となり、クラスターの連鎖につながるリスクが増します。イベントの特徴に応じて可能な場合には、主催者があらかじめ参加者を把握できているほうが感染拡大のリスクを下げることができます。

クラスター(集団)の発生のリスクを下げるための3つの原則

1.換気を励行する:窓のある環境では、可能であれば2方向の窓を同時に開け、換気を励行します。ただ、どの程度の換気が十分であるかの確立したエビデンスはまだ十分にありません。
2.人の密度を下げる:人が多く集まる場合には、会場の広さを確保し、お互いの距離を1ー2メートル程度あけるなどして、人の密度を減らす。
3.近距離での会話や発声、高唱を避ける:周囲の人が近距離で発声するような場を避けてください。やむを得ず近距離での会話が必要な場合には、自分から飛沫を飛ばさないよう、咳エチケットの要領でマスクを装着するかします。

 これらに加えて、こまめな手指衛生と咳エチケットの徹底、共用品を使わないことや使う場合の充分な消毒は、感染予防の観点から強く推奨されます。以上


「屋内の閉鎖空間 急速拡大も」国の専門家会議見解【全文】

2020年3月2日

3月2日 ニュース7 政府の専門家会議 尾身茂副座長

新型コロナウイルス対策の専門家会議は感染した人が最も多い北海道などのデータを分析したうえでの見解をまとめました。この中では、感染しても症状の軽い若い世代が気付かないうちに感染を広げてしまっていると考えられるとして、軽いかぜの症状でも外出を控え、風通しの悪い空間でのイベントにできるだけ行かないよう呼びかけています。その見解の【ポイント】と【全文】です。

国の専門家会議が示した「見解」のポイントは

  • 症状の軽い人も、気がつかないうちに感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられる。
  • 屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団「クラスター」が発生する可能性が示唆される。
  • そして、「クラスター」が次の「クラスター」を生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられる。
  • 重症化する患者は普通のかぜの症状が出てから、およそ5日から7日程度で、症状が急速に悪化し、肺炎に至っている。
  • 北海道では、この1~2週間の間に人と人との接触を可能なかぎり控えるなど積極的な対応を行えば感染拡大を急速に収束させることが可能。
  • しかしそうしないと急速に感染者が拡大するおそれ。
  • 日本では社会機能を可能な限り維持しつつ、感染拡大を可能なかぎり抑制することが求められている。
  • そのためには次のような行動を。
    ①軽いかぜの症状でも外出を控えること。
    ②風通しの悪い空間で人と人とが至近距離で会話する場所やイベントにできるだけ行かないこと。
  • 事業所などにおける活動も、テレワーク、リモートワーク、オンライン会議など、人が接触しない形態を大いに活用を。<全文に続く>。

「新型コロナウイルス感染症対策の見解」(全文)

この見解は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容に基づき、専門家会議において検討した結果をまとめた見解です。
現在までに明らかになってきた情報をもとに、我々がどのように現状を分析し、どのような考え を持っているのかについて、市民に直接お伝えすることが専門家としての責務だと考え、この見解をとりまとめました。
なお、この内容はあくまでも現時点の見解であり、随時、変更される可能性があります。

1.この一両日で明らかになったこと

(1)症状の軽い人からの感染拡大
これまでは症状の軽い人からも感染する可能性があると考えられていましたが、この一両日中に北海道などのデータの分析から明らかになってきたことは、症状の軽い人も、気がつかないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられることです。なかでも、若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいると考えられます。

(2)一定条件を満たす場所からの感染拡大
これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。
一方で、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています。
具体的には、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等です。このことから、屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団(クラスター)が発生する可能性が示唆されます。そして、患者集団(クラスター)が次の集団(クラスター)を生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられます。

(3)重症化する患者さんについて
これまでにわかってきたデータでは、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっています。しかし、重症化した人も、約半数は回復しています。
重症化する患者さんも、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭痛、咳など)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別がつきにくいです。重症化する患者さんは、普通の風邪症状が出てから約5~7日程度で、症状が急速に悪化し、肺炎に至っています。

2.現在の北海道の感染状況

推定される発症者数は、日毎に急速に増加していると考えられます。しかし、この1-2週間の間に、人と人との接触を可能な限り控えるなど、積極的な対応を行えば、感染拡大を急速に収束させることが可能です。しかし、そうした対策を実施しないと、急速に北海道全体に感染者が拡大する恐れがあります。

3.なぜこのような感染状況に至っているか

(1)北海道における地域的特徴
都市部には、人口が多く、社会・経済活動の活発な若年層が集中していますが、他の圏域には重症化のおそれのある高齢者が多く住んでいるという特徴があります。また、北海道の6圏域間の人の 移動は、都市部と他の圏域との間での流動が多い状況です。

(2)北海道における感染の特徴
北海道には中国からの旅行者が多く、そうした人々から感染が広がったと考えられます。北海道全体をすべて覆うほどの感染状況にはなっていませんが、北海道全域に感染者が点在している状況です。また、人口比率で考えると、圧倒的に遠隔地で感染者の報告数が多い状況です。

(3)現状に至った理由
都市部においては、社会・経済活動が活発な人々が、感染のリスクが高い場所に多く集まりやすく、気づかないうちに感染していたと考えられます。なかでも、若年層に、症状の軽い人が多いと考えられ、そうした人々の一部の人が他の圏域に移動することで、北海道の複数の地域に感染が拡大し、感染した高齢者のなかから症状が出たことが報告されたことによって、感染の拡大状況がはじめて把握できたと考えられます。

4.北海道で実施すべき対策

感染を急速に収束の方向に向かわせるためには、人と人との接触を最大限に避けることが必須です。これを、いま集中して実施すべきです。
もし、こうした対策が行われず、人々が何も行動を変化させない場合、感染者数が急増し(赤い上 昇線)、一定の潜伏期間後に発症者数も急増することが予想されます(青い上昇線)。その一部の方々は、重症化する可能性があります。こうした事態に至ると、多くの人々に健康被害をもたらすほか、医療提供体制に甚大な悪影響を及ぼす事態を招きます。
しかし、現時点で、人々が急速な感染拡大を抑制するために適切な行動へ切り替えれば、新規の 感染者数は急速に減少していくと見込まれます(赤い点線)。これがうまくいけば、今後、患者数が急激に増えることはありません(青い点線)。ただし、潜伏期間があるため、患者数の減少が確認できるまでにはタイムラグがありますので、人々の行動が大きく変わってから2週間ほど経過しないと、その効果を評価することはできません。
なお、感染症のなかには、大多数の人々が感染することによって、感染の連鎖が断ち切られ、感染していない人を保護する仕組みが機能できるものもあります(集団免疫の獲得)。しかし、現在の感染状況は集団免疫を期待できるレベルではありません。
また、一度感染した人が再び感染するかどうかは、まだわかっていません。

5.北海道の皆様ができること

武漢では、社会機能を停止させることによって感染拡大の収束に向かっていますが、現時点では、日本では社会機能を可能な限り維持しつつ、感染拡大を最大限に抑制することが求められています。そのためには、できる限り多くの人々に、次のような行動をとっていただきたいと考えています。
①軽い風邪症状(のどの痛みだけ、咳だけ、発熱だけなど)でも外出を控えること
②規模の大小に関わらず、風通しの悪い空間で人と人が至近距離で会話する場所やイベントにできるだけ行かないこと(例えば、ライブハウス、カラオケボックス、クラブ、立食パーティー、自宅での大人数での飲み会など)
ただし、症状のない方にとって、屋外での活動や、人との接触が少ない活動をすること(例えば、散歩、ジョギング、買い物、美術鑑賞など)、手を伸ばして相手に届かない程度の距離をとって会話をすることなどは、感染のリスクが低い活動です。

北海道の事業者の方へのお願い

上述したように、症状が軽く、経済・社会活動が活発な人々を介して、感染が静かに拡大していることが、今回、明らかになってきました。したがって、事業所等における活動も、テレワーク、リモートワーク、オンライン会議など、人と人が接触しない形態を大いに活用してください。出張も最低限に抑制して下さい。
ただし、社会機能の維持に関わる事業者や医療機関においては、事業や診療の継続が必要です。国民生活に影響を及ぼさないように、感染防御に十分注意して事業や診療を行ってください。

6.全国の若者の皆さんへのお願い

10代、20代、30代の皆さん。
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。
でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、
重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。
皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、
多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。


「今後1~2週間が瀬戸際」国の専門家会議が見解【全文】

2020年2月24日

2月24日 ニュース7 政府の専門家会議 尾身茂副座長

新型コロナウイルスへの感染の報告が相次ぐなか、国の専門家会議は、今後1〜2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だという見解を示しました。
一般の人ができることとして、多くの人と近い距離で対面する場所を可能な限り避けることや、かぜなどの軽い症状の人は自宅で療養することなど対策への協力を求めています。その「見解」の【ポイント】と【全文】です。

国の専門家会議が示した「見解」のポイントは

  • 国内の感染が急速に拡大しかねない状況にある。
  • これから1-2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる。(グラフの赤の線に進むか、青の線に進むかの分かれ道に)
  • 感染症予防の観点からは、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは、有効ではない。また、設備や人員の制約のため、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることはできない。
  • 風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養を。ただし、目安の症状がある場合には、決して我慢せず相談を。
  • 心配だからといって、すぐに医療機関を受診しないで。
  • これからとるべき対策の最大の目標は、感染拡大のスピードを抑制し、可能な限り重症者の発生と死亡を減らすこと。
  • 症状のない人も、それぞれが一日の行動パターンを見直し、リモートワーク、オンライン会議などのできうる限りの工夫を。

国の専門家会議が示した
「見解」の全文

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」

2020年2月24日