年収でこんなに違う 所得・消費税、あなたの負担は

 あなたが1年間に納めた所得税と消費税の金額はいくら? この質問に即答できる人は少ないだろう。ビジネスパーソンの場合、月給から源泉徴収される所得税や、日々の消費支出に上乗せされる消費税を、いくら納めたかを把握するのは意外に難しい。しかし、国の財政が逼迫し増税圧力が強まる今だからこそ、さらなる負担増の可能性にはしっかり備えたい。AGSコンサルティングの協力を得て、年収階級別にみた負担額の「現在」と「未来」を探った。

年収700万円前後で二極化する所得税負担

100万円以下100万円超〜200万円以下200万円超〜300万円以下300万円超〜400万円以下400万円超〜500万円以下500万円超〜600万円以下600万円超〜700万円以下700万円超〜800万円以下800万円超〜900万円以下900万円超〜1000万円以下1000万円超〜1500万円以下1500万円超〜2000万円以下2000万円超〜2500万円以下2500万円超〜(年収別) 01002003004005006007008009001,0001,1001,2001,3001人当たりの所得税負担額(万円) 1999 0.4 万円2.4 万円6.4 万円9.6 万円12.5 万円15.7 万円19.7 万円27.1 万円37.5 万円51.3 万円88.7 万円219.7 万円422.4 万円921.0 万円

(注)国税庁「民間給与実態統計調査」を基に作成。2017年の予測値は14年の数値を基準とし、給与所得控除の上限額引き下げや所得税の最高税率引き上げの影響を考慮した

 国税庁が毎年公表している「民間給与実態統計調査」を基に、所得税の年収階級別の負担額を示したのが上のグラフだ。

 グラフから読み取れる特徴の1つは、給与所得額によって負担の増減が二極化していることだ。1999年以降、「年収700万円超」以上は全階層で所得税額が上昇した。一方で「700万円以下」より低い階層は軒並み減少した。

 たとえば、「1000万円超~1500万円以下」の負担額は、約88万7000円(99年)から約108万4000円(2014年)と約19万7000円増えた。対照的に、民間給与の平均額に近い「400万円超~500万円以下」の負担額は約3万4000円減り、14年の納税額は約9万1000円。「1000万円超~1500万円以下」の給与所得者と比べると、約11分の1の負担で収まる計算だ。

 年収700万円前後を境に二極化が進んだ理由は何か。AGSコンサルティングの和田博行税理士は「累進課税である所得税は99年以降だけでも2回の税率改定があり、高所得層を中心に負担が増加傾向にある。13年から給与所得控除に上限額が設けられた影響も大きい。一方で所得695万円以下の税率はこの15年間、ほぼ変動していない。社会保険料の上昇に伴って課税所得が下がったことや各政権が行った減税策の影響で、負担はむしろ減っている」と分析する。

 給与所得控除は16年以降も段階的に上限額が引き下げられる予定で、高所得層の負担は今後も重くなる見通しだ。同社の試算によると、「1000万円超~1500万円以下」の負担額は17年に約3万円増え、「2000万円超~2500万円以下」は約12万円も増える。税率の据え置きが続く中・低所得層との負担額の差は拡大傾向にある。

全体の4%が、税収の5割を負担する所得税

1999

1000万円超〜1500万円以下

構成割合
4.39%
負担割合
21.92%
給与所得者数の総数4498.4万人100万円以下100万円超〜200万円以下200万円超〜300万円以下300万円超〜400万円以下400万円超〜500万円以下500万円超〜600万円以下600万円超〜700万円以下700万円超〜800万円以下800万円超〜900万円以下900万円超〜1000万円以下1000万円超〜1500万円以下1500万円超〜2000万円以下2000万円超〜2500万円以下2500万円超〜7.2%10.2%14.9%17.9%14.5%10.6%7.7%5.3%3.6%2.4%4.4%0.9%0.2%0.2%
所得税額9.528兆円100万円以下100万円超〜200万円以下200万円超〜300万円以下300万円超〜400万円以下400万円超〜500万円以下500万円超〜600万円以下600万円超〜700万円以下700万円超〜800万円以下800万円超〜900万円以下900万円超〜1000万円以下1000万円超〜1500万円以下1500万円超〜2000万円以下2000万円超〜2500万円以下2500万円超〜0.2%0.6%3.5%7.4%8.0%7.3%7.2%7.3%7.1%6.6%21.9%9.9%3.6%9.2%
構成割合
5.6%
負担割合
41.3%

年収1000万円超の給与所得者

(注)国税庁「民間給与実態統計調査」を基に作成

 所得税額に占める各年収階級の負担割合を示したのが上のグラフだ。民間給与実態統計調査によると、2014年は約4756万人の給与所得者が約8兆5124億円の所得税を納めた。このうち約半分(49.1%)にあたる4兆1777億円を、4.1%の「1000万円超」以上の人たちが負担している構図だ。「日本企業の国際競争力を高めるため法人税は下げざるを得ず、代わりに所得税負担を増やして税収を確保する傾向が続いている。景気が低迷する中、低所得層の税率を上げるわけにはいかず、いちばん取りやすい高所得層が狙い撃ちされている」と和田税理士は指摘する。

迫る「消費税10%」 15%、20%になると…

200万円未満200万円以上〜300万円未満300万円以上〜400万円未満400万円以上〜500万円未満500万円以上〜600万円未満600万円以上〜700万円未満700万円以上〜800万円未満800万円以上〜900万円未満900万円以上〜1000万円未満1000万円以上〜1500万円未満1500万円以上〜(年収) 01020304050607080901世帯当たりの年間消費税負担額(万円) 消費税8% 8.7 万円13.1 万円14.9 万円16.7 万円18.2 万円20.5 万円22.7 万円24.8 万円25.3 万円29.7 万円35.1 万円

(注)総務省「家計調査」を基に作成。消費税10%、15%、20%の予測値は2014年の数値を基に試算した。なお、軽減税率は考慮していない

 総務省の家計調査で公表されている消費支出額を基に試算した年収階級別の消費税額を、上のグラフに示した。1989年に3%で導入された消費税は、その後2回の税率改定を経て現在8%。2017年には10%への引き上げが予定されている。「年収400万円以上~500万円未満」の年間消費税額(推計)は現在、約16万6000円。3%時代(約6万5000円)から約10万円増えた。税率が10%になると、さらに約4万5000円の負担増が見込まれる。「1000万円以上~1500万円未満」なら消費税額は現在、約29万6000円。10%になると約7万6000円増えて約37万2000円になる計算だ。あくまで参考値だが、消費税率が15%、20%に上がった場合の消費税額も試算してみた。消費税率が20%になると「700万円以上~800万円未満」の年間消費税額は50万円を突破。「1000万円以上~1500万円未満」は約68万円になった。

家計悩ます消費税 低所得層ほど負担割合高く

消費税 3%5%8%予測ベース19891990199119921993199419951996199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201510%15%20%024681012141618年収に占める消費税負担割合(%)200万円未満200万円以上〜300万円未満300万円以上〜400万円未満400万円以上〜500万円未満500万円以上〜600万円未満600万円以上〜700万円未満700万円以上〜800万円未満800万円以上〜900万円未満900万円以上〜1000万円未満1000万円以上〜1500万円未満1500万円以上

1989 消費税 3

200万円未満
2.7
200万円以上〜300万円未満
1.8
300万円以上〜400万円未満
1.6
400万円以上〜500万円未満
1.5
500万円以上〜600万円未満
1.4
600万円以上〜700万円未満
1.3
700万円以上〜800万円未満
1.3
800万円以上〜900万円未満
1.2
900万円以上〜1000万円未満
1.1
1000万円以上〜1500万円未満
0.9
1500万円以上
0.9

(注)総務省「家計調査」及び国税庁「民間給与実態統計調査」を基に作成

 消費税率の上昇は、低所得層ほど家計に及ぼす影響が大きい。「300万円以上~400万円未満」以下では、消費税率が仮に20%になると、消費税が収入の1割以上を占めることが想定される。和田税理士は「国の借金は1000兆円を超えており、少子高齢化の影響で社会保障費も増大している。今後も、格差是正のための高所得層への課税強化や安定財源確保のための消費税増税は避けられず、家計に直結する所得税、消費税の動向を注意深く見守る必要がある」と指摘している。

取材・制作高岡憲人、清水明

取材協力AGSコンサルティング

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