社内文書をBERT使用の技術でテキスト解析、欲しい資料を1枚単位でレコメンドするサービス発表

自然言語処理技術を用いて、企業のDXをサポートするストックマーク株式会社は、チームで共有されている提案書や企画書などの膨大な資料(パワーポイント、ワードなど)の中から、必要なページを1枚単位でレコメンドする機能「Asales Slide Finder」を1月20日リリースした。

社内文書を1枚単位でレコメンドする「Asales Slide Finder」

営業資料の作成は、

  • 参考にしたい資料がすぐに見つからない
  • まとめ方がわからない
  • 提案ストーリーや構成の検討に時間がかかる

など非効率で属人的な作業と困難がある。また、ホワイトワーカーが、情報収集や資料検索、文書作成にかける時間は、労働時間の約50%を占めると言われている一方、これらの生産性を上げるためのソリューションが提供されていない。

「Asales Slide Finder」は、営業の提案活動における提案書・企画書作成業務の負荷を軽減、ナレッジシェアを促進させることで、営業一人ひとりの生産性を向上させ、組織全体の提案力向上を目指すという。具体的な機能は以下。

  • スライド共有
    提案資料や企画書をアップロードすることで、スライドを1枚単位で共有できる。BoxやSalesforceとも連携が可能。チーム・社内のナレッジを共有し、営業活動における生産性を向上させる。

  • スライド検索
    自然言語処理と画像解析により、スライドに含まれる文字やデザインが似ているスライドを検索可能。1ファイル1ファイルを開いて必要な資料やスライドを探すオペレーションがなくなり、提案活動における業務負荷を大幅に削減し、勝てる資料をすぐに作成できる。

  • 自動タグ付け
    自然言語解析でスライド1枚1枚の内容を自動でタグ付け。提案・企画業務における重要情報に瞬時にアクセスできる。

  • スライドレコメンド
    商談・案件のニーズを元に、過去の受注に繋がったスライドをレコメンドする。組織全体の提案力を底上げし、全員が即戦力になるようサポートする。

Asales Slide Finderの諸機能は、営業業務プロセス支援プラットフォーム「Asales」に搭載される。Asalesは、社内外のテキストデータを自然言語処理で解析し、「営業の生産性向上による、売り上げ拡大」をコンセプトに営業活動全般をサポートする「Asales Basic」「Asales Insights」からなるサービス。

自然言語処理のブレイクするー「BERT」使用の技術で1枚ごとの意味理解

Asales Slide Finderは「今注目されている自然言語処理のブレイクスルーを起こした言語モデル『BERT』を使用した最先端技術と画像解析技術を用い、1枚ごとの意味理解をすることで可能となった新たなサービス(同社広報)」だという。BERTは2019年、Googleの検索サービスにも導入され話題を呼んだ。

Ledge.aiでは過去にストックマーク社にインタビューし、「BERTのすごさ」についても解説してもらった。ぜひ下記の記事にも目を通してほしい。

Source:PR TIMES

AI OCRとは|RPA連携・活用事例・製品比較・導入のポイントを紹介

Optical Character Recognition

帳票などをスキャンすることで、文字をデジタルデータに変換する「OCR(Optical Character Recognition)」は、すでに多くの職場で利用されているのではないでしょうか。

近年注目されているのが、OCRにAIの技術を取り入れることで、より認識精度を高めた「AI OCR」です。この記事では、OCRとAI OCRの違いや導入事例、データ化後の工程まで全自動化することでさらに効果的に活用するためのRPA連携、AI OCR製品を選ぶ際のポイントなどについてご紹介します。

AI OCRとは?OCRとの違いと特徴

画像出典:pixabay

OCRとAI OCR、まずは両者の違いをみていきましょう。

OCRとは

OCRとは紙に印刷された文字をスキャナーで読み取ることで、文字をデジタルデータに変換する技術です。「Optical Character Recognition(もしくはReader)」の頭文字をとったもので、日本語では「光学的文字認識技術」と表記されます。

スキャナーアプリやPDF編集アプリなどにもOCR機能を搭載したものは多く、オフィスでの書類のデジタル化などで広く使われています。

ただし、現状のOCRは万能ではなく、いくつかの問題点を抱えています。

▪︎手書き文字の認識は難しい
手書き文字は活字に比べて文字の認識が難しく、精度は下がってしまいます。とくに日本語の場合、平仮名、カタカナ、漢字と3種類の文字が混在するため、誤認識が起こりやすくなります。

▪︎座標の設定が必要
正しく認識を行うためには、読み取り対象となる帳票などの書類のどこに文字が配置されているのかといったフォーマットを指定する必要があります。そのため、読み取り作業の開始までに時間がかかることも難点です。

▪︎定型フォーマットしか対応しない
OCRで読み取ることができるのは、あらかじめ指定したフォーマットに限られます。帳票のどこに文字が入っているかが指定されていない書類を正確に認識することは困難です。

AI OCRとは

AI OCRとはOCRにAI技術を取り入れることで、従来のOCRがもつ問題点を解消し、認識精度を向上させたものです。

AI OCRは、以下の3つの特徴を備えています。

▪︎学習により精度の向上や手書き文字への対応が可能
ディープラーニングによって、誤認識を学習することにより文字認識率を向上させることができる。また、手書き文字への対応も可能。

▪︎座標の設定は不要
文字の読み取り位置を自動抽出できるので、帳票の文字の位置や項目を事前に指定しなくても認識が可能。

▪︎フォーマットが異なる帳票に対応できる
座標の設定が不要になったことで、事前にフォーマットを指定する必要もなくなり、さまざまなフォーマットの帳票に対応できる。

AI OCRの導入事例


AI OCRの導入は、大幅な業務効率化につながることもあります。

オーダーメイドのスーツ・シャツを扱うスタートアップ「FABRIC TOKYO」では、店舗スタッフが採寸しながら手書きで記入したメモを、手書き文字認識AI「Tegaki」を使ってデータ化。

ほぼ100%の精度で読み取ることができ、データはクラウドにアップロードするので、顧客からもいつでもアクセス可能です。スタッフがメモをExcelに入力し直してデータを作成していた頃に比べ、付き180時間の労働時間削減につながったといいます。

AI OCRとRPAの連携で可能になること

画像出典:pixabay

現在紙の文書をデータ化するためにOCRとRPAを連携させるというニーズが高まってきています。OCRとRPAの連携についてご紹介します。

RPAとは

RPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型業務をソフトウェア型のロボットによって自動化するためのシステムです。このRPAをAI OCRと連携する動きも進んでいます。

RPAでは、作業手順を「シナリオ」としてソフトウェアに記憶させることで、定型業務を自動で行えるようにします。

AI OCRとRPAの連携でデスクワークの自動化が可能

AI OCRを使うことで、手書きの帳票などの文字や印刷された文字をスムーズにデジタル化できますが、そのデータをシステムに入力する作業は人の手で行わなければなりません。

そこで、RPAをAI OCRと連携させて使用すれば、入力作業も自動化することが可能になります。

手書き帳票のデジタル化→システムへの取り込みまでのプロセスをすべて自動化することで、さらなる効率化をはかることができるのです。


RPAソリューションサービス「BizRobo!」を提供するRPAテクノロジーズの執行役員の笠井 直人氏が述べるには、以下の機能は具体的に実現可能なのだそう。

▪︎OCRで入力した帳票を機械学習で分類

▪︎スキャンデータのノイズを除去

▪︎書いてある数字を足し算してエクセルに入力

▪︎そのエクセルファイルを特定のフォルダに格納

ただ、人間も文字の読み間違いをするように、OCRも100%の精度はありえないようです。そもそも100%は必要なのか?どの程度の精度であれば十分なのか?を考えつつ導入を考えるのが重要です。

AI OCRとRPAを連携させた活用事例

AI OCRとRPAを連携させることで、業務効率化を実現した事例をひとつご紹介します。

リコージャパン株式会社では、請求書処理作業の負荷を軽減するため、「RICOH Cloud OCR for 請求書」を導入。帳票解析技術と画像処理技術を搭載したAIが請求金額や請求日、請求元名などを自動認識して一括でデータ化。さらに、データ化した請求書情報をRPA連携することで、請求書業務の自動化を実現しました。

自動化により、請求情報の確認もれやミスがなくなったことに加え、紙の情報を扱う必要がなくなったことで、テレワークへの取り組みも検討可能になったそうです。

AI OCRの導入で注目すべきポイント

画像出典:pixabay
AI OCRを実際に導入する場合は、自社のニーズに沿ったものを見きわめることが重要となります。AI OCR製品を比較する際には、以下のポイントに注目するとよいでしょう。

▪︎精度
最も重要なポイントは、OCRの精度でしょう。多くのOCRソフトウェアでは、認識率がパーセンテージで提示されています。また、手書き文字専用や活字専用、どちらにも対応するタイプなどに分かれるため、認識対象となる文字の種別も確認が必要です。

▪︎価格
ソフトウェア自体を購入する買い切り型の場合、購入時の費用に加えて保守費用についても確認する必要があります。なお、最近は月額/年額費用を支払って使うサブスクリプション型の製品も増えており、こちらの場合は保守・バージョンアップなどの費用が利用料に含まれているケースが一般的です。

▪︎オンプレ/クラウド
オンプレミスは、カスタマイズしやすい点や強固なセキュリティを確保できる点がメリットですが、初期費用の負担は大きくなります。一方のクラウドは、導入が比較的容易な点がメリット。初期費用の負担も小さいため、試験的に導入してみたい場合にも適しています。

▪︎RPAとの連携
RPAとの連携を考えているなら、想定したフローでの連携が可能かどうか、既存の業務をしっかり代替できるものになるかについても確認が必要です。

AI OCR製品の比較

主要なAI OCR製品を比較すると、下記のとおりになります。

製品名 価格 オンプレ/
クラウド
対象文字 RPA連携 特徴
DX Suite 初期費用20万円〜/月額10万円〜 オンプレ/
クラウド
手書き/
活字
対応 取り込んだ書類は、自動で種類ごとに仕分けできる。
AI よみと〜る 月額10万円〜 クラウド 手書き 対応 直感的に使いやすいいブラウザベースの管理画面を採用。
スマートOCR 初期費用5万円〜/月額費用3万円〜 オンプレ/
クラウド
手書き/
活字
対応 オンプレミスおよび4タイプのクラウドが容易されている。
Flax Scanner 要問い合わせ オンプレ/
クラウド
手書き/
活字
対応 業務内容や帳票に応じた独自チューニングを実施。
Tegaki 要問い合わせ クラウド 手書き 対応 99.2%の高い認識精度をもつ。業界用語にも対応。
LINE BRAIN OCR サービスページ参照 クラウド 手書き/
活字
LINEアカウントトン連携。非定型フォーム対応。高水準の認識精度。多言語対応。

AI OCRを効果的に活用するには、実際に製品を使う社員への教育や、導入時のサポートといった、人に対するマネジメントも重要になります。

自社のニーズにあった製品を選び、現場の理解が得られるようにマネジメントすることで、業務効率化につながる導入ができるはずです。

AI OCRのこれから

AI活用を検討する際、そもそも社内のデータが紙でしか管理されておらず、データ活用が進まないという状況を目にします。その場合、全ての紙データをデジタル化しシステムに取り込んではじめて、デジタルデータを活用して意味のあるアウトプットが実現できます。

これからますますAI活用の流れが大きくなっていく中で、最初の一歩としてAI-OCRでデジタルデータを十分に溜め込むことへの需要が高まっていくはずです。最近では、一部本記事でもご紹介したように、サービス化されたOCRプロダクトもたくさん登場してきています。AI OCR技術は今、ビジネス広く普及していこうとしてます。

「PIXTA(ピクスタ)」と協業し、デジタル素材をAIコンサルティング案件の教師データとして活用します

レッジは、ピクスタ株式会社が運営する写真・イラスト・動画・音楽などのデジタル素材のマーケットプレイス「PIXTA(ピクスタ)」と協業しました。

レッジにおけるAIプロジェクトのコンサルティング案件で使用する教師データとして、PIXTAのデジタル素材を活用していきます。

「PIXTA(ピクスタ)」とは?

PIXTA公式サイトより

「PIXTA」は、2006年5月に開設された、プロ・アマチュア問わず誰もが自ら制作した写真・イラスト・動画・音楽をインターネット上で売買できるデジタル素材のマーケットプレイスです。

あらゆるジャンル、媒体のクリエイティブを支える豊富なイメージ画像・動画・音楽を取り揃え、日本を中心に、アジア各国の生活・文化にそった豊富なアジア素材が特徴です。現在は、英語、簡体字、繁体字、タイ語、韓国語に対応し、アジアのクリエイティブ制作分野の人々から高い支持を受けています。

PIXTAのデジタル素材を教師データとして活用

現在、ビジネスへの活用が進みつつある機械学習、とりわけディープラーニングでは、データの量と質が、AIモデル構築の際にもっとも重要な要素のひとつです。PIXTAが有する大量の写真・イラスト・動画・などのデジタル素材は、AIモデル構築の際に教師データとして有用だと考え、協業するに至りました。

今後、レッジのコンサルティング案件で写真・イラストデータが必要な際、PIXTAのデジタル素材を教師データとし、AIモデルの構築を行う予定です。また、PIXTAのデジタル素材を活用したハッカソンなども行う予定です。

姿勢のゆがみを診断するAIアプリ、肩こり・腰痛などの原因を分析

1月22日、株式会社お多福labは、AIが姿勢を診断してスコア化するシステム「Posen(ポーズン)」の開始を発表した。

高齢者向け施設、医療などがメインターゲット

ポーズンは、タブレットやスマートフォンのカメラで撮影するだけで使えるアプリ。全身(前面、側面)を撮影するだけなので所要時間はわずか1分というのもポイントだ。身体への専用器具装着などももちろん不要。

AIだからといって使い方は非常に簡単なのも魅力(画像は公式サイトより)

AIがユーザーの関節を読み取り、姿勢のゆがみと関節の可動域を数値化(スコア化)する。スコア化することで、現代人が抱える頭痛や肩こり、腰痛、不眠など身体の悩みの原因を、姿勢から分析できる。

アプリの主なターゲットは、高齢者向け施設や接骨院、マッサージ店など。そのほかでは、接客業をはじめとする多くのビジネスでの活用も期待できるという。要するに、姿勢施術を要する現場向きのアプリのようだ。

必要な機材も少なく、広いスペースもいらない(画像は公式サイトより)

ポーズンは管理システムを搭載しているため、問診記録で利用者の健康状態を確認可能。過去の結果と見比べることもでき、さらには管理画面からLINEやメール送信も可能だという。スコアを表示するため姿勢の分析結果を客観視でき、姿勢の修正はもちろん、リハビリや治療を継続するシーンにおいての意欲向上につながるとしている。

LINEなどで送れる診断結果自体も、わかりやすく示されるようになっている(画像は公式サイトより)

なお、本アプリの開発には、大阪大学数理・データ科学教育研究センター特任教授 高野渉先生が技術協力している。

>>プレスリリース

動きを数値化するAIの取り組みは進んでいる

ポーズンは先に書いたとおり高齢者向け施設、医療などでの活用を狙っているが、スポーツなどの現場でも動作や姿勢を数値化する取り組みが始まっている。

まず、1月21日にはエイベックスがダンス技術のスコア化するアプリを発表した。ダンス分野では、育成や評価システムにおいて個人の感覚や感性に左右されることが多かったのが背景にある。アプリには骨格検知、動画解析などの技術が使われている。

ダンスの数値化にあたって、人間の骨格を検知している

スマートフォン向けの専用アプリを使うだけで、ダンス技術をスコア化しスキルチェックが可能になる。すでに、エイベックスの「エイベックス・アーティストアカデミー」のダンスクラスで導入中。

また、2019年1月にはNTTPCコミュニケーションズが単眼カメラの映像から動作解析を可能にするAPIプラットフォームサービスをリリースしている。

Ledge.ai編集部で実施した際の管理画面の比較結果。部位別、時間別の一致度合いなども表示される

動画解析はプロスポーツではよく用いられている技術だが、特別な機材などが必要だった。そこでNTTPCコミュニケーションズはスマホひとつで、多くの人が利用できる動画分析サービスを確立しようとしている。

2020年、LINEはGAFAと被らないAIのニーズを取り切る

LINEは1月21日、メディア向けセミナーを開催し、同社のAIのBtoBの外販事業「LINE BRAIN」の目指すビジョン、今後の戦略について発表した。

また、同セミナーにおいて、LINE BRAINのSaaSプロダクトとして初のサービスインとなる「LINE BRAIN CHATBOT」、「LINE BRAIN OCR」の提供を1月22日から開始すると明かされた。

LINEの「スマートポータル」戦略

LINEの成長戦略の柱として「スマートポータル戦略」がある。これは、すでに大きく事業成長に貢献しているLINEアプリ上の広告・コンテンツ事業を柱に、今利益を生んでいるわけではないが重要な位置づけとなる「フィンテック」「コマース」「AI」といった分野で研究開発を行い、既存の事業にフィードバックしていく戦略だ。直近の収益性だけではなく、研究開発でもGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの総称)に対抗していく。

同社が研究開発で培ってきたAI技術を、外部企業等に向けて提供するサービスとしての位置づけが、AIソリューション事業「LINE BRAIN」だ。昨年行われた同社開催の「LINE CONFERENCE 2019」で発表された。

「AIカンパニーになる」とヤフーとの統合会見で宣言したLINE。AI事業を統括する砂金信一郎氏は、「AIの精度ですごいとアピールするつもりはない」と意気込んだ。

――砂金
「あくまで重要なのは技術そのものではなく、技術を使って生活上の課題を解決できているか。LINEは技術オリエンテッドではなく、課題解決型のアプローチを徹底していきます」

具体的にLINE BRAINのラインナップは、チャットボット、OCR(⽂字認識)、⾳声認識・合成といった技術だ。

たとえば、レストランの受付を音声対話のみで完結させる「LINE AiCall」の実証実験を昨年から「俺のGrill&Bakery 大手町」で開始したり、「LINE DEVELOPER DAY 2019」での顔認証受付を実施したりなど、上述の技術の実⽤化に向けた実験・開発を進めている。ちなみに、顔認証受付は今回のメディア向けセミナーでも一部導入されていた。

LINEが持つAI技術の特徴は、「コミュニケーション」の領域が大きい。砂金氏は、例としてキャラクターを召喚して会話を楽しめる装置「Gatebox」で召喚できるキャラクターである「逢妻ヒカリ」を挙げる。逢妻ヒカリの音声には、LINE BRAINで開発・保有する音声合成技術が採用されている。

――砂金
「ヒカリちゃんに搭載されている音声合成では、感情を共にしたい、結婚したいくらいの没入感を持たせるにはどうしたらいいのかという点に徹底的にこだわっています。Natural Experience with AI=優しいAIと呼んでいますが、人に寄り添うAIを提供していきたいと考えています」

▲LINEの持つ技術ポートフォリオは幅広い

昨年末のLedge.aiの取材では、「GAFAからこぼれ落ちたニーズを拾っていく」と砂金氏は語っていた。提供する技術は新しいものではないにしろ、GAFAが日本語に対応してくるのは時間がかかる。グローバルベンダーが狙おうとしても時間がかかる日本語という、ある種ローカルな言語での事例を増やし、マーケットを取り切る戦略だと言える。

研究開発で培った技術を活かした「LINE BRAIN CHATBOT」と「LINE BRAIN OCR」

セミナーでSaaSとしての提供が発表されたLINE BRAIN CHATBOTは、最新の機械学習アルゴリズムと⾃然⾔語処理技術に基づく強⼒な対話エンジンを活用したチャットボット。同社いわく、業界最⾼⽔準の正答率を誇るそうだ。

無料で使える「Trialプラン」、⽉5万円の基本利⽤料で利⽤できる「Commercial プラン」が用意されている。

LINE BRAIN OCRは、国際会議ICDARで世界 No.1の認識精度を獲得している。斜めになった⽂字、歪んだ⽂字でも⾼い認識精度を誇る⽂字認識技術を無料で利用できる「Free プラン」をはじめ、読取枚数に応じたプランが用意されている。

LINE BRAIN CHATBOT、LINE BRAIN OCRともに、LINE BRAINの公式ウェブページを通じて申し込みが可能だ。

チャットボットとOCRだけでなく、Speech to Textや音声認識、画像認識などの分野も現在研究開発中で、2020年秋までには何らかの技術的アップデートが見込まれるという。LINE BRAINのAIをデリバリーするパートナーも現在募集中だ。

2020年LINEが目指すのは「社会実装」と「LINEサービスとの融合」

LINEが2020年に目指すのは、「社会実装」だ。すでにPoC(Proof of Concept…概念実証)に取り組んでいて、ひととおり失敗まで経験している企業が多くなってきた今、AIをどう社会に浸透させていくかは大きな課題となる。

――砂金
「みんなPoCには飽き飽きしていると思うんです。LINE BRAINとしてこれから出すプレスリリースは、ほぼすべてが事例になると思います。AIを『世の中の当たり前のもの』として実装していきます」

加えて、「既存のLINEのサービス」とAIの深い融合もLINEは狙う。冒頭で紹介したLINEのスマートポータル戦略のキモの部分となる。クライアントや外部のパートナー企業と連携して“鍛え上げた”AIを、LINEのファミリーサービスに埋め込んでいくという。

エイベックスがダンスのスコア化を実現、AIが骨格を検出して解析

エイベックス株式会社は1月21日、動画解析技術とデータサイエンスを活用しダンス技術のスコア化を実現したと発表。

人間の骨格を検出してダンス技術をスコア化

エイベックスは、2018年からダンス技術のスコア化を実現するプロジェクトを始動し、ダンスの定量評価に挑んできた。プロジェクトには、ダンス解析を担うアビームコンサルティング株式会社、人間の骨格を検出する独自開発の人工知能エンジン「VisionPose(ビジョンポーズ)」によりダンスの動きを捉える姿勢解析技術を提供する株式会社ネクストシステムが参画している。

人間の骨格を検出する仕組みを活用している

ダンス分野では、育成や評価システムにおいて個人の感覚や感性に左右されることが多く、データサイエンスなどの科学的アプローチの活用が議論されていた。さらに、2012年度からは中学校の体育でダンスが必修化されたものの、教育現場では指導者のダンス技術の理解習得や、評価・評点方法の不明瞭さなど、指導者の大きな負担も課題となっていた。

スマートフォンなどで動画を撮影するだけ

今回、エイベックスが発表したのはダンス技術のスコア化を活用したスキルチェックアプリ「Dance COMMUNE(ダンス コミューン)」だ。これまでエイベックスが培ってきたダンス育成ノウハウをもとに、動画解析技術と独自のデータ分析およびアルゴリズム開発など科学的アプローチを取り入れることで、ダンスの定量評価(=スコア化)を実現している。

エイベックスが発表したダンススコア化アプリ画面

同アプリは2019年10月から「エイベックス・アーティストアカデミー」のダンスクラスで導入中。新たなレッスンプログラムを展開いている。経験豊富なダンスインストラクターによる週1回のダンスレッスンに加え、アプリを活用した自主練習とスキルチェックを合わせることで、受講生の成長サイクルを加速させているという。

今後は、学校教育におけるダンス指導をはじめ、より多くのダンス育成の現場への導入拡大やダンス育成ノウハウの海外展開も見据えているそうだ。

>>プレスリリース(PR TIMES)

ディープラーニングで人のポーズを解析

さて。人の動きを解析するといえば、OpenPoseが非常に有名な技術のひとつ。

OpenPoseはカーネギーメロン大学(CMU)のZhe Caoらが「Realtime Multi-Person pose estimation」の論文で発表した、深層学習を用いて人物のポーズを可視化してくれる手法だ。

OpenPoseの解析画面

Ledge.aiで記事化した2018年当時から、静止画を入力するだけで人間の関節点を検出することが可能で、さらにGPUなどの高性能プロセッサを使えば動画像内に複数人の人物がいてもリアルタイムに検出できるということで注目を集めていた。

実際に、公開されていたプログラムを試したところ、身体だけでなく顔と手まで解析可能。激しい動きの動画でも検出でき、かなりの精度だった。

ゴルフのフォームの写真を解析させたがかなり正確

関節点情報の取得は、モーションキャプチャーという技術を使えば可能だった。しかし、人間の身体にセンサーを取り付けないと、間接点の情報を取得できないという課題もあった。OpenPoseの当時画期的だと言われていたのは、特殊なセンサーは不要なのに解析ができるという点にある。

ダンス以外の採点競技なども、いずれはすべてAIが判定する時代になりそうだ。エイベックスが発表したダンススコア化アプリのように、練習時からスコア化できる仕組みが広まれば、競技人口の拡大にもつながりそうだ。さらには、競技中の採点項目が可視化されれば、ふだんその種目に詳しくない人に対しても“わかりやすい”競技になるかもしれない。

保育園でAIやIoTを活用、保育士の事務作業などの負担を軽減へ

ユニファ株式会社は1月20日、AIやIoTなどを活用する「スマート保育園」の展開に向け、モデル園の募集を全国で開始すると発表した。

保育士と子どもが向き合える時間を増やす

スマート保育園とは、保育現場が抱えるさまざまな課題に対して、AIやIoTなどのテクノロジーを活用し、保育の質の向上を推進する“次世代型”の保育園だ。保育士の日常的な事務作業などを削減し、保育士と子どもが向き合える時間を増やすことが狙いにあるという。

「スマート保育園」イメージ画像(プレスリリースより)

ユニファが導入する主なサービスは以下だ。

  • ルクミー午睡チェック:乳幼児の午睡(お昼寝)を見守る医療機器サービス
  • ルクミー体温計:記録が数秒でできるスマート体温計サービス
  • ルクミーフォト:子どもの写真・動画をオンライン購入できるサービス(AIによる写真選定)
  • ルクミーシフト管理:保育士の複雑なシフトを自動調整・作成と勤怠管理を行うサービス
  • キッズリー:登降園管理、電子連絡帳や帳票管理を揃えたサービス

圧倒的な保育士不足が課題に

いま、子どもを乳児期から保育施設に預けて働く世帯が増えているため、保育施設の利用増加にともない多数の保育士が必要とされている。しかし、労働環境や責任の重さなどが主因で、圧倒的な保育士不足が課題になっている。

今回、ユニファがスマート保育園を提唱するのには理由があった。それは、やりがいを持って安心して働ける労働環境の整備と改善が必要だと考えたからだ。

画像出典:ぱくたそ

スマート保育園は、保育士にとって多くのメリットがあるだけでなく、保育を受ける子どもと家族の安心を高めるというメリットもあるという。もちろん、親側からしてみれば「AIやIoTで子どもを見守りきれるの?」と不安になるかもしれない。だが、ユニファはすでに全国の約6250施設、約35万人の乳幼児を対象にサービスを提供しているそうだ。

そこでユニファは、スマート保育園のさらなる実現に向け、各種取り組みをともに進めてくれる保育施設の募集を開始した。保育施設における課題のヒアリングや可視化、効果測定等に協力するなどが条件となっている。

また2月6日(木)には、東京都中央区京橋で「スマート保育園モデル園に関するセミナー」を開催予定とのこと。モデル園の募集開始にともなう、理事長や園長向けのセミナーだ。

募集要項やセミナーの詳細は下記リンクににあるプレスリリースを参照してほしい。

また2月6日(木)には、東京都中央区京橋で「スマート保育園モデル園に関するセミナー」を開催予定とのこと。モデル園の参加希望者向けに募集開始にともない、理事長や園長向けのセミナーだ。

詳細はプレスリリース(外部サイト)に記載されている。

>>プレスリリース(PR TIMES)

保育園にソニーのaiboが試験導入

画像出典:PR TIMES

2019年5月には、保育園に自律型エンタテインメントロボットaiboが導入されたニュースが報じられた。

自律型エンタテインメントロボットaiboは、ソニー株式会社が開発した最新の音声認識技術や人工知能を搭載していて人の顔を認識できる。会う回数、触れ合う回数を重ねるほど、よく可愛がってくれる人に懐くなど、行動が日々変わるとのこと。

画像出典:PR TIMES

aiboの餌やり、寝かしつけなどの世話をとおし、子ども同士が積極的にコミュニケーションをとれたという。また、導入した施設は新設した園だったため、通常だと新しい環境に緊張し、子ども同士が打ち解けるまでに時間がかかる。しかし、aiboをきっかけに会話が増え、子ども同士の距離が縮まったように思えるメリットも得られたそうだ。

ちなみに、導入した施設では、子どもたち同士で話し合い、aiboを「にじくん」と名付けたとのこと。

青森県庁にAI議事録が導入、人工知能が会議の議事録を自動で作成

1月9日、株式会社イグアスが販売するクラウド型AI議事録作成支援ソリューション「AI Minutes for Enterprise」が青森県庁で採用が決定したと発表された。

青森県公式サイトより

青森県庁ではAI Minutes for Enterpriseの2020年度本格導入を目指し、2019年11月19日~2020年3月31日までの期間、青森県総務部行政経営管理課を中心に全庁内で活用し、使い勝手や効果を検証している。

プレスリリースによれば、青森県庁では日常的に多くの会議が実施され、その議事録手作業で作成している現状では、職員は文字起こしという単純作業に多くの時間を費やさざるを得ず、そのために残業時間が多くなり、ほかの業務を圧迫しているそうだ。

青森県庁ではこの状況を打開するためにAI議事録を活用し、大幅な時間短縮を実現することを狙っている。

また、青森県としては今後、内部業務の議事録作成だけでなく、ろう学校、郷土館等の教育部門での学習・理解支援や観光客対応部門での外国語翻訳支援などの県民に対するサービスや福祉の向上にも活用し、音声や言語に関わる格差の解消という行政課題を解決することを目指しているという。

AI Minutesは同時翻訳も可能(プレスリリースより)

青森県博物館大会にて実証実験中(プレスリリースより)

ピンマイクでスピーチ中(プレスリリースより)

クラウド型AI議事録作成支援ソリューションAI Minutes for Enterpriseの機能は、IBM WatsonのSpeech to Textの機能により自然言語を処理し、マイクを通じて話者の言葉をリアルタイムにテキスト化。編集クライアントによって、複数人で編集可能となり、これまでの長時間の議事録作成時間を大幅に削減する。さらには、トランスレーター機能により、話し言葉を35ヵ国語に同時翻訳でき、外国人が参加する会議でも有効なツールだ。また、議事録のテキストデータはIBMクラウドサーバーにセキュアに保管される。

>>プレスリリース(PR TIMES)

AI議事録の導入は各地で進んでいる

AI議事録の導入は、青森県庁だけではなく全国各地の自治体などで進んでいる。

昨年12月には、茨城県つくば市で会議録などの文字起こし作業を自動化する実験を開始した。

導入までの経緯は青森県庁と同様で、議事録作成業務における業務負荷の軽減だ。従来の議事録作成フローは、職員がICレコーダーで録音データを何度も聞き返しながら作業していたという。

AI議事録作成における認識率の向上(つくば市のプレスリリースより)

文字起こしの作業は、実際の会議時間よりも大幅に時間を必要とする業務。もっとも、会議自体をなくすor減らせば議事録作成業務は必要なくなるのだが、自治体や官公庁となると難しいのだろう。

つくば市や青森県庁のように、徐々にAI議事録が広まれば、議事録作成にかけていた業務時間をほかのサービスに割くことができるはず。それこそ、市区町村をよりよくするための、人にしかできない仕事に時間を充ててもらえるのが一番うれしい限りだ。

AIがようやく「社会の一員」となる──電通が予想するAIの2020年

2019年における各種報道の通り、AI技術は「幻滅期」に入ったことが示された。幻滅期に入ったAIは、2020年、どのように社会に浸透していくのだろうか。電通のグループ横断プロジェクト「AI MIRAI」を統括する児玉拓也氏は、2020年「AIが人間の仕事を奪う」のではなく、「AIを使えない企業が、人間を奪われていく」と指摘する──。同氏による寄稿をお届けする。

みなさん、こんにちは。電通 AI MIRAIの児玉です。

電通のグループ横断プロジェクトである「AI MIRAI」を結成し、さまざまなソリューションの開発や提案に取り組んで早3年。この3年のあいだに、AIを取り巻く環境も大きく変化してきました。電通は「ユーザー企業」と「ソリューション提供企業」の両方の側面を持ちながら、AIを乗りこなすためにさまざまな情報発信をしてきました。

早いもので2020年もすでに3週間経っていますが、遅ればせながら今日は今年のAI業界のトレンドについて、できるだけ電通らしい視点から想像してみたいと思います。

ところで、年末の「紅白歌合戦」に出演(?)された、AIで復活を遂げた美空ひばりさん、ご覧になりましたか?

【AI美空ひばり】紅白出場!制作の舞台裏を描いたNHKスペシャルの拡大版を放送!(外部リンク)

感動した、勇気をもらったという意見から、少し怖いとか、本人が意図にかかわらず「復活」して歌唱することに対する倫理的な意見まで、賛否両論ありましたね。

私はこれを見て、「ああ、本当に2019年らしい、象徴的なプロジェクトだな」と感じました。2018年でもなければ2020年でもない、2019年という年を的確に表わす出来事だったと思います。

そのあたりをとっかかりに、2020年そしてこの先起こるトレンドの2つの大きな方向性について、示唆をしていきたいと思います。

①2020年。AIは、社会課題に立ち向かう。

Photo by Jason Blackeye on Unsplash

ところで、2019年に、AI以外にも大きなトレンドがありました。IoT?量子コンピュータ?それも大事なのですが、私がもっとも気になったのは、「SDGs」をはじめとする社会課題に対する向き合いです。

2019年は、日本におけるSDGs元年ともいえる年でした。かつてより、CSVの重要性やESG投資というキーワードは出ていましたが、2019年はさまざまな企業のあらゆる活動において、SDGsが重要視される年になったと感じています。9月23日の「国連気候アクション・サミット2019」で発せられたグレタさんの演説も大きな話題になりました。「持続可能な社会」「格差の解消」などの社会課題への取り組みは、企業価値を測る大きなテーマとして本年も話題になりつづけるでしょう。

電通の「本業」でもあるマーケティング領域では、「パーパス・ブランディング」がグローバルのトレンドになっています。単なる機能やユーザーメリットだけでなく、そのブランドが目指す「パーパス=社会に対する存在意義」を定義し、共感を通してブランドの資産につなげようというムーブメントです。これも一つの、社会課題に対する立ち向かい方と言えるでしょう。

さて、AI業界はどうでしょうか。

今までは、AI自体のもっていたキャッチ―さ・PR性もあいまって、自社の業務改善から新規事業、純粋なエンターテインメントまで、さまざまなレベルの企業活動が「AI活用」として、玉石混交に発信され続けてきました。AIは話題性の高い、いわば社会の「新参者」として、社会の潮流とは少し離れて、お客様気分で取り扱われてきました。要はちやほやされてきたわけです。

一方で、2019年における各種報道の通り、AI技術そのものは「幻滅期」に入っています。私の理解ですが、これは、決して「ブームが去り、進化にブレーキがかかる」という意味ではありません。「より地に足のついた、価値のある企業活動にフォーカスされていく地道な時期」だと考えています。

おそらく2020年、そしてこれ以降は、単に「AIを活用しました」だけでなく、また「何を何%改善しました」というだけでもなく、それによって「どんな社会課題を解決したか/しようとしているか」に大きく光があたると予測しています。逆に言うと、もはやAIは社会の新参者ではなく、「社会の一員」としてその責任を果たすべき、という風潮になってくるはずです。そういう意味で、さきほど触れたAI美空ひばりさんはあくまでエンターテインメントであり、それ自体は素晴らしい取り組みではあるものの、「2019年っぽいな」と強く感じるのです。

AI美空ひばりさんが議論を巻き起こしたことで、「AIを使えばポジティブな話題になる」という風潮はどんどん薄くなっていき、倫理の問題や、社会課題に対するスタンスにシビアな視線が向けられていくでしょう。この流れをきちんと読み切らないと、せっかく難易度の高いAI活用を行ったのに社会からマイナスに評価される、ということすら、ありえます。

一方でこの状況はチャンスでもあります。

日本においては、世界一の高齢化社会であること、介護や医療に加え、特に農業・漁業などの第一次産業の持続可能性など、世界でも類をみない、大きな課題を抱えています。AI業界も、もちろんこの領域に立ち向かい、新しいソリューションがつぎつぎと生まれています。

私たち電通も、新しい取り組みを進めています。2019年秋には、福井新聞社、そしてLedge.aiを運営する株式会社レッジと協業して、AI×地方創生のイベントを福井県で行いました。

AIで地方創生!福井で見つけたイノベーションの可能性(外部リンク)

地元企業の皆様の高い志に触れ、確かな手応えを感じるワークショップでした。

参加した各社、各チームが「AIプロジェクト」を発表したTHINK AI in Fukui ワークショップ(THINK AI公式サイトより)

大企業においても、スタートアップにおいても、大都市でも地方でも、AIでどのような課題に立ち向かうか、どのような社会を目指すかが問われてくる。そんな年になりそうです。

②2020年。AI活用は「結果」にコミットしはじめる。

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ここまでは比較的ビジョナリーなお話しでしたが、ここからは一気にビジネス寄りの話題になります。

2019年は、政府が大きくAIに舵を切った年でもありました。春には「AI戦略」が閣議決定され、年間25万人の人材育成方針という発表もありました。また、政府がいわゆるDX=デジタルトランスフォーメーションにも力を入れ、DX推進指標とそのガイダンスも発表されています。

経済産業省によるDX推進ウェブサイト(外部リンク)

DXという概念は、「AI」と同じくらい広いので一概に議論はできませんが、ざっくり言うと「自分たちのシゴトをテクノロジーでアップデートし続けろ、さもなくば大変なことになるぞ」という危機意識が表立って叫ばれてきた、そんな年になりました。

2020年は、このような危機感や、AI活用をはじめとする企業の取り組みが、少しずつ「結果」というかたちで表出化してくる年になると考えています。先ほどの一つ目の予測とも重複しますが、ビジネスにおいてもAIは既に「新人」ではなく、しかるべき結果を出しはじめるのです。

「結果」というのは、もちろん収益(売上高、経費)という側面もありますが、それだけを指すのではありません。競合他社との細かなシェア争い、人材獲得競争、従業員満足、そういったところに少しずつ差が出てくる、そんな年になるのではないかと思っています。

2019年にLedge.aiで記事化されたものだと、以下が好例かと思います。

これらのように、工数を削って費用を削減するだけでなく、空いた労働力をCS(お客様価値向上)や営業開拓など、攻めの業務につなげることで、業界内のシェアやトップライン向上にも好影響があるでしょう。大企業の決算報告資料に「AI活用により…」の文字が躍る日も近いかもしれません。

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ほかにもわかりやすく表出するのは、人材獲得競争です。

さまざまな大企業の方とお話しする機会が多いのですが、昨年初頭頃より、AI活用については「一巡した」という感覚を強く持っています。思いつく一通りの実証実験は済ませ、成功した企業は限定的ながら業務への適用をはじめている状況です。

そうすると、同業社の間でも、「AIを導入している企業」と「していない企業」という差が出ます。もちろん、すぐに収益に直結するものと、しないものがあるでしょう。しかし、働いている社員からすれば、「AIでもできる仕事を人間がしている職場」と「AIによってスムーズになった職場」のどちらが魅力的かは自明です。ますます人材の流動化が進む日本で、この差は大きいでしょう。

また、先ほど政府による年間25万人のAI人材育成という方針をご紹介しましたが、彼らの行く末も気になります。2020年、21年に企業に就職する大学生は、大学に入学したのが2016年~2017年になります。そのころには既にAlphaGoが人間を打ち負かし、第3次AIブームの真っただ中です。それを見越して大学での専攻を決めた人も多いでしょう。いわば「AIネイティブ」です。そんな若者にとって、AIを活用している企業とそうでない企業、はたしてどちらに就職したくなるでしょうか。

3月に発表された、政府によるAI戦略(外部リンク)

「ウチはAI人材はいらない」という企業もあるかもしれません。しかし、優秀な25万人がAI人材になるということは、AI人材以外の優秀な人材の競争率が上がるということも、視野に入れるべきでしょう。

まだあります。AIスタートアップは引き続き活況で、資金の流れも活発です。しかし、AI自体が幻滅期に入る、そして大きなスタートアップが資金を集め、規模の経済を活かした力の差が出てくると、スタートアップの間でも「生存競争」がますます激化するでしょう。これまた2019年を象徴する出来事であるWework問題に端を発し、スタートアップ自体への風向きも少し変わってくるかもしれません。

では、AIスタートアップを「卒業」する優秀なAI人材は、その後どこへ行くのか? 日本企業はそこで競争力を発揮できるのか?が強く問われます。

「AIが人間の仕事を奪う」という論調を、驚いたことに2020年になった今でも目にしますが、おそらく逆の状況が起こるのではないかと睨んでいます。つまり、「AIを使えない企業が、人間を奪われていく」のです。

私たち電通グループも、グループ全体としてAI活用を推進していくため、その本気度を伝える大規模な社内イベントを実施しました。

繰り返しになりますが、AI活用の成果は業績だけでは測れません。瞬間的な業績なら、それこそ人力でカバーできることもあるでしょう。オリンピックイヤーに、一時的に活況となる業界や企業もあるでしょう。しかし、さまざまな側面で、企業をとりまく競争は熾烈になっています。AIをはじめとするツールを使いこなし、自分たちの仕事を適切に破壊し、再構築できるかが問われています。

2020年は、その最初の成果が出始める年になるのは間違いないでしょう。

まとめ

私からは、2020年のトレンドとして以下の2つを予想しました。

  • ①2020年。AIは、社会課題に立ち向かう。
    「AIで●●した」のニュースバリューはほとんどなくなり、社会の一員として、厳しい視線で見られる。単なるAI活用ではなく、どのような社会課題に立ち向かうかが問われる年になる。

  • ②2020年。AIは、「結果」にコミットしはじめる。
    AI活用が単なる広告塔、PRではなく、社会の一員として、実際に成果を出し始める。収益だけでなく、人材獲得競争などさまざまな側面で「AIを活用できているか」が問われる年になる。

皆様のイメージと、近かったでしょうか? それとも真逆でしたか?

いずれにせよ、2020年も、AIやその他テクノロジー活用の好事例が出続け、社会と企業にとってポジティブな刺激を与え続ける年になれば、と祈っています。

もちろん、祈っているばかりではありません。AI MIRAIも、電通らしいAIの活用:それは社会課題への取り組みや、事業そのものの変革に、正面から立ち向かっていきたいと思っています。ぜひ、ここまで読んでいただいたみなさまとも、機会があれば新しい取り組みをご一緒できれば幸いです。

2020年が、「社会の一員」となったAIにとって、飛躍の年になりますように!

AIロボットが接客する居酒屋ついに登場!人工知能ニュースまとめ

日々、目まぐるしく進化、発展を遂げるAI(人工知能)業界。さまざまな企業が新しいサービスを開始したり、実験に取り組んだりしている。

そこで本稿ではLedge.aiで取り上げた、これだけは知っておくべきAIに関する最新ニュースをお届けする。AIの活用事例はもちろん、新たな実証実験にまつわる話など、本稿を読んでおけばAIの動向が見えてくるはずだ。

AI市場は2023年に640億円へ──ITRの市場予測

昨年12月、株式会社アイ・ティ・アールは、「ITR Market View:AI市場2019」として、AI主要6市場(画像認識、音声認識、音声合成、言語解析、検索・探索、翻訳)を対象に、国内33ベンダーへの調査に基づいた2017~2018年度売上げ実績、および2023年度までの売上げ予測を発表した。

AI主要6市場は今後も継続的な伸びが見込まれることから、2018~2023年度のCAGR(年平均成長率)は26.5%、2023年度には640億円に達すると予測している。

AIロボットがカウンターで働く「ゼロ軒めロボ酒場」

1月14日、養老乃瀧株式会社と株式会社QBIT Roboticsは、2020年1月23日(木)から約2ヵ月間、JR池袋駅南口にロボットがカウンターで働く「ゼロ軒めロボ酒場」を開店することを発表した。

ゼロ軒めロボ酒場では、ロボットがお客様の注文を受け、ビールやサワーなどのドリンクを作って提供する。さらには、お客様の表情などをくみ取り、話しかけたり、手を振ったりするなどの接客をするそうだ。

月額25万円で導入後の調整までサポートするチャットボット登場

1月15日、USEN-NEXT GROUPの株式会社 TACTは、AIエンジンによる自然言語処理を用いた新たな自動応答チャットボットサービス「AIコンシェルジュ for チャットボット(AICチャットボット)」の提供開始を発表した。

電話自動応答サービス「AIコンシェルジュ」の運用によって1000万件を超す会話データ分析の実績をもつTACTがクライアントに代わって構築する。さらに、導入後もエラーポイントの発見と改善策を提案し、継続的に精度向上をTACTがサポートしてくれる。

価格は初期費用は25万円~、月額費用は25万円。月額費用には学習データのアップデートやレポーティングも含んでいる。

AI構築プラットフォームを使った受託・内製化支援のコンサルサービス開始

株式会社MatrixFlowは1月16日、プログラミング不要のAI構築プラットフォーム「MatrixFlow)」を活用したAIの受託開発、および内製化支援コンサルティングサービスの受付を開始した。

企業がAIベンダーにAI開発を外注する一般的な受託開発の形式とは異なり、MatrixFlowを通してAI開発を受託・納品する。外注から内製へのシームレスな移行や、MatrixFlowの活用による開発期間の短縮、AI開発後のメンテナンスの容易化などの効果が見込めるという。

スポーツ選手の“便”を解析、どの競技の選手か判別するAI

1月16日、AuB(オーブ)株式会社は、アスリートの便(腸内環境)の解析データをAI(人工知能)に読み込むだけで、サッカー選手か否かを85%の確率で見分けられるようになったと発表した。そのほか、ラグビー選手なら80%、長距離陸上選手なら50%の割合で識別できるそうだ。

この研究結果によって、競技ごとに異なる運動習慣や食習慣が腸内環境に影響を与える可能性が示唆できる、としている。

AIを搭載した約24万円の「鏡」が発売、健康管理やテレビ視聴が可能

1月15日、ファミリーイナダ株式会社は、健康管理システムとAI技術を搭載した次世代型ミラー「AI.Inada.Mirror」を2020年3月上旬から発売すると発表した。

AI.Inada.Mirrorは、美容やファッションから運動やヘルスケア提案などによって、心と身体の健康を提供する次世代型ミラーだ。プレスリリースでは「生活の楽しさから心の健康を提供するとともに、お客様に最適なご提案をAIによって行います」とうたっている。

AIを搭載した約24万円の「鏡」が発売、健康管理やバーチャル試着、テレビ視聴も可能

1月15日、ファミリーイナダ株式会社は、健康管理システムとAI技術を搭載した次世代型ミラー「AI.Inada.Mirror」を2020年3月上旬から発売すると発表した。

AI.Inada.Mirrorは、美容やファッションから運動やヘルスケア提案などによって、心と身体の健康を提供する次世代型ミラーだ。プレスリリースでは「生活の楽しさから心の健康を提供するとともに、お客様に最適なご提案をAIによって行います」とうたっている。

健康のための運動もこのミラーでできるという

さらには、ディスプレイは4K・55インチを採用していて、テレビ視聴やスマートフォンのミラーリング、写真撮影までも可能とのこと。気になる価格は、3980円(税別)×60回。つまりは約24万円。テレビとして使えて、スマートフォンのようにカメラで遊べる、と考えるのもなくはなさそうだ。

ディスプレイのサイズは55インチ。4K映像にも対応している

特徴的な要素は「パーソナルトレーナーシステム」だ。“なりたい自分になれる”をサポートするパーソナルパートナーシステムを搭載し、楽しみながら健康を実現できるという。

たとえば、ファッション。ユーザーが入力した情報に基づき、その人にあったファッションをAIがレコメンドする「バーチャル試着技術」を搭載している。家の中で試着ができるため、さまざまなコーディネートを楽しめそうだ。また、レコメンドされたアイテムは、商品情報が掲出されるためその場ですぐに購入できる。ちなみに、コーディネートの監修にはトップスタイリストの日比理子氏、高橋愛氏、中野翔一氏が携わっている。

ファッション好きなら一日中楽しめそうなコーディネート機能。ファッションECと連携して、このミラー経由で買うと値引き、みたいなシステムがあると人気が出そう

そのほか、運動(ホームフィットネス)や美容、健康などに関して適時レコメンドしてくれるそう。とくに健康分野では、咳や頭痛、不眠など症状に合ったアドバイスを提供してくれるようだ。こちらもファッション同様に、医薬品をミラー内で購入できるという。監修は、鳥取大学医学部 井上貴央名誉教授。

病院に行くまでもないけど、何が原因なのかは気になる……というときに使えそう

>>プレスリリース(PR TIMES)

AIを搭載した「サイネージ」は東京駅で導入されている

ファミリーイナダのように、デジタルデバイスにAIを搭載させ、さまざまな情報を提示してくれるプロダクトは続々と登場している。

昨年10月には、東京駅「グランスタ」のカフェにおける混雑状況をサイネージで確認できるサービスが導入された。株式会社バカンが開発したサービス「VACAN」で、混雑状況をカメラやセンサーで自動検知しサイネージやスマホに表示するものだ。

「とりあえず座って落ち着きたい人」にかなり使えるサイネージ

東京駅のグランスタでは以前から、時間帯によっては空いている飲食店を探すために歩き回ることもあったそうだ。VACANを使うことで、客側も空席探しや待ち時間を減らすことができ、店舗側も運営の効率化を図れる。バカンのリリースによれば、「イートインスペースの利用時の売上比率が上昇、イートインスペースの回転率も向上」したとのこと。

その場に行かなくても空席がわかるというのは大きな安心感を得られる

ユーザーにAIを使わせるというよりも、知らぬ間に使っていたものにAIが搭載されていた、ということこそAI活用のカギを握っていそうだ。

スポーツ選手の“便”を解析すると、どの競技の選手か判別するAIが登場

1月16日、AuB(オーブ)株式会社は、アスリートの便(腸内環境)の解析データをAI(人工知能)に読み込むだけで、サッカー選手か否かを85%の確率で見分けられるようになったと発表した。そのほか、ラグビー選手なら80%、長距離陸上選手なら50%の割合で識別できるそうだ。

この研究結果によって、競技ごとに異なる運動習慣や食習慣が腸内環境に影響を与える可能性が示唆できる、としている。

調査では257人ぶんの「便データ」を使った

AuBは、「腸内細菌の群れ(集合体)である腸内環境(腸内フローラ)の競技ごとの特徴から、その人の競技をAIで分類できる可能性があるのではないか」という仮説を立て、2019年2月から検証を開始した。

今回の調査では、AuBが持つ28競技種目、500人・1000検体以上のアスリートの便データのうち、プロリーグや社会人リーグ、実業団、大学の部活に所属するサッカー選手119人、ラグビー選手83人、長距離陸上選手55人の計257人が対象だ。各人の便の検体からDNAを採取して、その人の腸内に棲む腸内細菌の数や種類、その割合を解析した。

解析したデータのうち、約9割をAIに学習させる。機械学習は、クロスバリデーション(交差検証)という手法を使い、精度を高めているそうだ。その結果、AIの確かさを示すAUCの評価指標は、3競技ともに0.8以上(サッカー:0.83、ラグビー:0.88、長距離陸上:0.80)の高い数値を示した。
※AUCとはAI精度の指標である「AUC(Area Under the Curve)」のこと。最大値は1。
※AUC/0.8以上:非常に高い効果、0.7-0.8:高い効果、0.6-0.7:効果多少あり、0.5-0.6:効果がさほどない。

AIに学習させなかった残りの1割の解析データをテストデータとして競技判定をしたところ、サッカー選手は84.6%、ラグビー選手は80%、長距離陸上選手で50%の正解率となった。

腸内環境から選手のパフォーマンス向上へつなげる

腸内環境は食生活などによって変化するとされる。今回の調査は、いずれかのチームに所属する選手のデータ群を解析しているため、極めて同じ様な食生活をしている可能性があるという。つまり、競技以外のチームとしての特徴がデータに影響していることも考えられるそうだ。

将来的には、被検体を増やして、バイアスを除くと、腸内環境が競技やチームの特徴から外れる選手を簡易的に見つけられそうだ。そうした選手は、当事者の競技軸から外れた腸内環境になっている可能性が高い。そのため、腸内細菌の特徴と選手の課題の関係性を見出しながら腸内改善を意識したコンサルティングで、選手のパフォーマンス向上に寄与できる可能性があるとAuBは睨んでいるようだ。

そもそも、腸内環境が異なれば、太りやすさや、酪酸菌の多さ、腸内フローラの機能の違いがあるという。たとえば、「プロテインを摂取しているが、筋肉が付きにくい」という課題を持つ選手は少なくない。

しかし、腸内環境を見ると筋肉のつきにくい選手は、「腸内細菌の多様性(種類やバランス)」と「筋肉の形成にかかわる菌の数」が低く、「菌の構成が栄養を吸収しにくい状況」にあるという。そうした選手には、管理栄養士が筋肉のつきやすい腸内環境をつくる食事指導をする。この指導によって実際に筋肉をつけた選手もいるそうだ。

中継でも活用されるスポーツでのAI

AuBが取り組むのは選手自身へのコンサルティングなどを目的としたAIの活用だ。いま、選手だけでなく、スポーツ全体においてAIの導入・活用が大きく進んでいる。そのなかでも我々にとって身近なのは「中継」だ。

昨年11月には、ソニービジネスソリューションが開発したAIを活用した音響解析システムをNTTぷららが使い、NTTぷららが制作する卓球「Tリーグ」のダイジェスト番組制作に活用されたニュースがあった。

音声解析AIがボールの音や歓声からラリーシーンや盛り上がりを見せたシーンを抽出することで、ダイジェスト番組の制作をサポート。抽出されたシーンはCSVファイルとして提供される。必要なシーンが自動的に抽出されているため、試合のすべてを見直しながら編集する必要がなく、すぐにダイジェスト番組を制作できるそうだ。

AI構築プラットフォーム「MatrixFlow」を使った受託開発・内製化支援のコンサルティングサービス開始

株式会社MatrixFlowは1月16日、プログラミング不要のAI構築プラットフォーム「MatrixFlow(外部リンク)」を活用したAIの受託開発、および内製化支援コンサルティングサービスの受付を開始した。

企業がAIベンダーにAI開発を外注する一般的な受託開発の形式とは異なり、MatrixFlowを通してAI開発を受託・納品する。外注から内製へのシームレスな移行や、MatrixFlowの活用による開発期間の短縮、AI開発後のメンテナンスの容易化などの効果が見込めるという。

AI構築プラットフォーム「MatrixFlow」とは

MatrixFlowは、プログラミング不要で「データの前処理→AIの構築→サービスへの組み込み」を一元管理できるクラウドプラットフォーム。数学・統計学の知識やプログラミングの知識がない人でも容易にAIを構築できる。

導入企業としては竹中工務店やディップなどが挙げられ、ユーザー数は1,000人以上を数える。現在提供されているのはフリープラン、ライトプラン、ベーシックプランの3つで、フリープランについては機能制限付きだが無料で利用が可能だ。

内製化によりAI開発の早期化へ

今回発表されたサービスでは、まずMatrixFlowを使い、MatrixFlow社がAI開発を受託することで、ビジネス上の課題をAIを用いて解決する。

その後、MatrixFlowの使い方に関するレクチャーを実施し、AI開発に関するノウハウを移管する。MatrixFlowの特徴であるアルゴリズムの見える化と、自動機械学習の技術により、専門家なしでもAIを構築できる体制が効率的に構築できるという。

最終的に、社内でAI開発・運用することで、AI開発を内製化していく。MatrixFlowを活用することで、従来のAI受託の形式では3ヶ月かかる案件を1.5ヶ月に納品の短縮を実現できるという。また、MatrixFlow社の開発スキームでは、開発を続けることで開発ノウハウがプラットフォーム上に蓄積されていくため、AI開発の早期化も期待される。

今後の方針として同社は、引き続きMatrixFlowの活用推進、MatrixFlowの製品版へ向けた機能を拡充することで、社会全体としてのAI開発の加速、拡大を促していくとしている。

Source:PR TIMES

月額25万円で導入後のチューニングまでサポート、チャットボットサービスを「AIコンシェルジュ」のTACTが開始

1月15日、USEN-NEXT GROUPの株式会社 TACTは、AIエンジンによる自然言語処理を用いた新たな自動応答チャットボットサービス「AIコンシェルジュ for チャットボット(AICチャットボット)」の提供開始を発表した。

AICチャットボットは、ユーザーからの問い合わせに対して、機械学習によって適切な回答を抽出し、自動で回答するチャットボットサービスだ。初期費用は25万円~、月額費用は25万円。月額費用には学習データのアップデートやレポーティングも含んでいる。

機械学習に必要なデータは、同社の電話自動応答サービス「AIコンシェルジュ」の運用によって1000万件を超す会話データ分析の実績をもつTACTがクライアントに代わって構築する。さらに、導入後もエラーポイントの発見と改善策を提案し、継続的に精度向上をTACTがサポートしてくれる。これらよって、シナリオ構築の負担や、導入後のチューニング作業に対する不安などで利用を断念していた企業に対して、社内・社外向け問わずチャットボットを導入できるそうだ。

今回、TACTがチャットボットのサービスを開始したのには理由がある。それは、電話による音声応答が主だったAIコンシェルジュ単体では、操作方法や故障状況などの複雑な説明を伝達しづらいことがあったからという。

Photo by Karolina Grabowska on Pixabay

その点、チャットボットなら、動画や画像による視覚的コンテンツを組み合わせて提供できる。そのため、さまざまな問い合わせなどに的確に対応できると考えているようだ。

>>プレスリリース(PR TIMES)

TACTのチャットボットを支えるAIコンシェルジュとは

実はTACTは、2016年にもチャットボットサービスの提供を検討していた。しかし、電話による問い合わせが中心のユーザーを対象としていたため、PC操作が必須のチャットボットだけではコールセンターが抱えている課題の解決につながらない、市場導入が難しいと考えていた。

この背景から生まれたのがAIコンシェルジュだ。AIコンシェルジュは、コールセンター向けのソリューションとして「音声」に着目した自動応答サービス。発話した問い合わせ内容を認識し、音声合成技術を使って回答をすることでコールセンターの効率化をサポートする。

Ledge.ai編集部は先日、コールセンターの現状から、AIコンシェルジュの副次的なメリットにいたるまで、TACT・代表取締役社長の溝辺氏にインタビューしている。1兆円規模のコールセンター市場に関して切り込んで語ってくれたため、あわせて読んでほしい。

AI人材教育の実践。これからの日本を担う若者への1泊2日のAI教育アイディアソンを開催

昨春、政府は2025年までにAI人材を年間25万人育成するための教育改革を整備することを発表した。この教育改革は小学校から始まり、早い段階からAIリテラシーを身に着けることを目的としている。また、2020年からは小学校でのプログラミング教育が始まり、若年層にいかに早くITスキルを獲得させるかが今後の新たな教育価値につながると予想される。

参考:AI戦略 2019 ~人・産業・地域・政府全てにAI~(外部リンク)

AI人材への需要が高まる中、2019年11月20日、21日に高校生に向けたAIの活用方法を学んでもらうAIアイディアソンが実施された。

このイベントを開催したグリッドは、誰でも簡単にAIモデルが開発できるプラットフォーム「ReNom」や、インフラを中心としたAIによる課題解決に向けたサービスを提供しているAIベンチャー企業だ。

同社は昨今のAI人材不足問題に伴い、若年層に向けたAI人材教育にも力を入れている。これまで、大学生向けの国内外でのハッカソンイベントを開催したり、才能があれば年齢を問わずに個別教育も行ってきた。

これから始まるAI人材教育の現場から、教育業界の未来はどうなっていくのかを紐解いていこう。

関連記事:人材育成はあくまで“脇役”。識者が語る「AI人材育成」のその先
関連記事:AI人材不足の根本理由は「教える側の不足」だ──経産省が主導する“次の学び方”の試金石

プロジェクト発足の経緯「日本のAI分野の遅れに歯止めをかける第一歩になる」


今回、高校生に向けたAIアイディアソンを開催した背景として、代表取締役の中村 秀樹氏は日本の若者のAI分野に対する意識の遅れを感じていることを挙げた。

――中村
「アメリカや中国などAI先進国はもちろんのこと、他の国に目を向けた時に日本の若者のAI分野に対する意識の遅れをここ数年痛感しています。

世界では若いうちに、AIスキルやマインドを学び、スキルアップして社会に還元している人が増えている中、日本はまだまだ遅れを取っているように思います。

大学では研究室やAIに特化した学科が開設されていますが、もっと若い中高生への教育はまだまだです。より早い段階からテクノロジーに触れ、興味を持つことが大事だと思っています。若い方がSNSやアプリに夢中になるように、もっとテクノロジーとの距離を近づけることでいろんなアイディアが生れる可能性があります。

今回のアイディアソン合宿も、『自分の好きな物とテクノロジーを使ってワクワクを体感してもらいたい』という思いで開催しました。これからの時代、何をするにおいても自分の夢を叶えるためにテクノロジーが必要になるので、その第一歩にできたらと思っております。」

1泊2日のアイディアソン。AI知識のインプットから、アイディアのビジネス実践まで考える


アイディアソンの対象となったのは、渋谷区にあるルークス高等学院。同校は若年層に向けた AI人材教育に力を入れていくべく、先進的な教育を取り入れており、今回のアイディアソンもカリキュラムとして実施することとなった。

アイディアソンは、1泊2日の合宿形式。AI概論から始まり、グリッドが提供する AI プラットフォーム「ReNom」の活用方法・事例を学ぶ。その後、ルークス高等学院の生徒の通学圏である、渋谷が抱える課題を生徒たちで洗い出し、課題に対してAIを活用するとどのような解決策が見出せるのかアイディアを練ってもらう。

アイディアソンの流れは以下の通り。

1日目

  • グリッド代表による「AIテクノロジー特別講座」
  • チームビルディング・アイディア出し
  • ミニプレゼン
  • 課題分析方法ワーク
  • ミニプレゼン
  • ビジネス知識のインプット
  • プレプレゼン
  • 2日目

  • プレゼン講座
  • プレゼン
  • 全体講評
  • 中村氏によるAIテクノロジー特別講座

    1日目の午前中は、中村氏によるAIテクノロジー特別講座が開講された。AIに関する基本的な知識のインプットをしながら、近くの生徒同士で適宜話し合う。ディスカッションの中では、10年後に残る職業、なくなる職業、新しく生まれる職業について意見を交わす場面もあった。
    講義のスライド

    インプット内容

  • 認知と分類
  • 予測と最適化
  • ニューラルネットワークについて
  • ディープラーニングについて
  • など

    講座前はAIの仕組みについて、難しいと感じた生徒も多かったが、実際に授業が進むにつれて、少しずつ理解が深まっていく様子が見て取れた。

    アイディアを形にしてビジネス実践への活用までのロードマップを描く

    午前中のインプットをもとに、午後は実際に渋谷区の課題を考え、解決策を4人ほどのチームで話し合いプレゼンを行なう。2日目のプレゼンに向け、午後〜夜にかけ、合間に課題分析方法ワークやビジネス知識インプットを挟みつつ、合計3回のプレゼンを行うハードスケジュールだ。

    具体的な流れは以下の通り。

    アイディア出し→ミニプレゼン→課題分析ワーク※1→ミニプレゼン→インプット※2→プレプレゼン

    ※1 課題分析方法ワーク内容
    (インプットテーマ: 課題解決とは何か? / 分析の方法論 / イノベーションとは何か? /アウトプットテーマ:渋谷の課題を考えよう)

    ※2 ビジネス系知識のインプット内容
    (インプットテーマ:市場規模 / ブランディング / ペルソナ分析 / KPI の計画)

    「新規事業をいかに実現するか」というビジネス的側面、「AIにはどのようなポテンシャルがあるのか」というAI分野の知識と可能性、の2つについて理解を深めていく。

    イベントを通して以下のようなアイディアが生徒たちから出た。「課題の解決」を考える上で、ビジネスプランやエンターテインメントより、社会的課題を重視した企画が多く出たことも印象的だった。

    数あるアイディアの中で優秀賞を獲得したのは、横断歩道でホログラムを活用し交通事故を防ぐ「order HOLO」だ。

    イベントを通して生まれたアイディア一覧

  • STOPパパ活
  • suggestore (渋谷にある店の中から最適な店を見つける)
  • 児童虐待の早期発見をし予防
  • order HOLO(横断歩道でホログラムを活用し交通事故を防ぐ)
  • ポイ捨て問題解決
  • 「自分の実現したいことのためにテクノロジーを使って欲しい」若者に伝えたいAIテクノロジーのこれから

    今回のイベントを通して、ルークス高等学院の生徒たちや、これからAI教育を受ける子どもたちに対して、中村氏は「自分の実現したいことのための1つの手段として、テクノロジーをどんどん使ってほしい」と語る。

    ――中村
    「好きなことを実現するためにテクノロジーを活用する若者が増えて、ワクワクするような世の中を作っていってほしいと思います。

    AIを身近なツールとして捉え、同世代がどんどん刺激を受け、自分もやってみようという人たちが1人でも増えると嬉しいです。」

    また、AI人材教育の課題について中村氏は、AIテクノロジーがやりたいことを実現するためのツールとして浸透していないことを挙げた。

    ――中村
    「AIテクノロジーは文系、理系分け隔てなく人々が好きなこと、やりたいことを実現するためのツールです。しかしその教育体制はまだ浸透していません。また、現状ではAI技術を教える人が少ないこと、教える人もどのように教えたらよいのかが分からないことが課題にあります。これらの課題を解決するためにもテクノロジーを浸透させる必要があり、その第一歩になれたらと思っております。」

    世界から遅れをとっている日本のAI人材教育のため、いち早くAI人材教育に取り組んでいるグリッド。今回のイベントも、これからの日本を担う若者がAI分野に興味を持つ第一歩となったことは間違いない。今後もAI人材教育のフロントランナーであるグリッドの活動に注目したい。

    AIで売れるトークを解析・改善するコグニティが資金調達。累計調達額は5億円に

    1月15日、コミュニケーションのAI解析技術を持つコグニティ株式会社は、営業トークの解析・フィードバックを行うサービス「UpSighter(アップ・サイター)」の事業拡大のため、XTech Ventures株式会社が運営するXTech1号投資事業有限責任組合、ディップ株式会社を引受先とする第三者割当増資をシリーズBラウンドとして実施。本ラウンドにより資金調達累計額は5億円となった。

    売れる営業トークをAIで可視化する「UpSighter」

    経験値に頼った教育・研修による「指導の属人化」や、エースの時間が教育に割かれることによる「時間・体力消耗」などの課題は、営業部門を抱える企業にとっての共通課題だ。

    UpSighterは、営業トークやロープレの録音データをアップロードするだけでトーク内容を自動解析し、業績上位者とのトーク内容を比較し具体的な改善点をAIが提示するサービス。

    具体的には、専用アプリなどで録音・アップロードされた営業成績等の業績上位者のトークを自動解析し、模範となるトークのパターンを検出。“キャラ売り”や“雰囲気の良さ”で好成績な人と、誰もが改善できる情報構成のパターンを見分けることができるため、改善効果の高い指導方針を提示することが可能だ。また、検出されたトークパターンを使ってアルゴリズムを開発し、AIによって業績上位者とのトーク差分が明示された「自動フィードバックレポート」が一人ひとりの従業員に提供される。

    解析結果の例。出典:コグニティティプレスリリース

    業績上位者と比較した自分のトークスキルを定量的に把握できるほか、理由づけやデータ・事実情報の提示不足など具体的な改善点を提供できる。そのため、口頭で指導するだけよりも研修への納得感が高く、新人の営業成績の改善が早いといった評価や、成績の伸び悩むシニア従業員への指導が楽になったという声もあるという。

    また、新人に向けた指導結果として、電話でのアポイントメント獲得率が64%から78%に上昇した実績もある。これまでパーソルテンプスタッフやフォーバルなど、上場企業を中心に120社以上に導入されている。

    50年前の論文がベースの技術「CogStructure」

    コグニティでは、独自開発した「CogStructure(コグストラクチャー)」という情報分類フレームワークを使うことで、コミュニケーションを解析している。CogStructureは、人工知能研究分野における「Knowledge Representation(知識表現)」と呼ばれる領域に属し、人の思考パターン・構成を記述可能にして、推論しやすくする技術アプローチ。

    CogStructureの仕組み。出典:コグニティプレスリリース

    英国認知言語学者 S. Toulminの50年前の論文をベースに、日米両言語におけるインターネット上のさまざまな文書や動画の構成を記述・変換する実験からスタートし、独自のルールへ拡張進化させた。この技術についてはLedge.aiの取材でも聞いている。

    CogStructureで解析することで、固有名詞や言語差に影響されることなく、構成要素の比較が可能になり、業界やシーンが違うコミュニケーションも対象にできるという。

    今回の資金調達により、業界平均値等との比較を可能とするアルゴリズムを開発し、大企業にとどまらず、中小企業や部署単位でも初期開発費用無しで使える、より裾野の広いサービスを展開。

    また、主に地銀などを対象とした金融業界向けサービス「UpSighter for Finance」や、個人利用も可能なプレゼン・ピッチ解析SaaS「UpSighter for プレゼン!」をはじめとしたUpSighterシリーズの拡販、新たなUpSighterシリーズの開発を予定しているという。

    Source:PR TIMES

    養老乃瀧が池袋にAIロボットがカウンターで働く「ゼロ軒めロボ酒場」開店、人手不足問題の解決へ実証実験

    1月14日、養老乃瀧株式会社と株式会社QBIT Roboticsは、2020年1月23日(木)から約2ヵ月間、JR池袋駅南口にロボットがカウンターで働く「ゼロ軒めロボ酒場」を開店することを発表した。

    ゼロ軒めロボ酒場では、ロボットがお客様の注文を受け、ビールやサワーなどのドリンクを作って提供する。さらには、お客様の表情などをくみ取り、話しかけたり、手を振ったりするなどの接客をするそうだ。

    提供メニューなど、ゼロ軒めロボ酒場の概要は以下。

    期間:2020年1月23日(木)~3月19日(木)
    場所:JR池袋駅南口 徒歩2分「一軒め酒場」店内(東京都豊島区西池袋 1-10-15 1F)
    名称:ゼロ軒めロボ酒場
    営業時間:8:00~24:00 (ラストオーダー 23:30)※1月23日のみ17:00~
    メニュー

    • ロボ生ビール
    • スコッチハイロボール
    • ロボレモンサワー
    • 白加賀でつくったロボ梅酒ソーダ
    • ロボと泪とカシスとソーダ
    • 桃色ロボ想い

    価格はいずれも1杯500円(税込)

    養老乃瀧とQBITが実証実験をする理由はふたつある。ひとつは、人手不足問題だ。プレスリリースによれば、養老乃瀧でもほかの外食事業者と同様に人手確保に課題を抱えている。ふたつめは、養老乃瀧が目指す「飲食物の提供だけにとどまらない「笑顔の集う場所」としての価値の提供と、QBITの接客ロボットサービスがお客様に提供する価値が一致したからだそうだ。

    画像はQBIT公式サイトより

    QBITの接客ロボットサービスは、ロボットが注文を受け、ドリンクを作り提供するため、ホールスタッフの労力低減に期待できるそうだ。人手を必要とするのは、主に開店や閉店作業及び食材補充のみ。そのため、0.1~0.3人/日程度で店舗を営業できる見込みだという。

    ロボットは、お客様の性別、年齢、表情などを識別するカメラと連携し、AIを用いてお客様に適切な話しかけやモーションをするよう設計されている。接客対応中や接客後のお客様のリアクションも識別し、「笑顔」と「売上」を評価ポイントとして成果(接客の良し悪し)を学習していくとのこと。

    プレスリリースには、養老乃瀧 取締役・土屋幸生氏、QBIT Robotics 代表取締役&CEO・中野浩也氏それぞれのコメントが寄せられている。

    ――土屋氏
    先進的な取組みをされているQBIT Robotics様との連携を図り、協働する機会を頂戴でき大変うれしく存じます。経済産業省による「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」が立ち上げられ、外食産業の現場においてもこれから様々な革新的な取組みがなされようとしております。こうした社会的実証実験を行うことで、課題の改善に繋ぐ糸口になればと考えております。
    ――中野氏
    「笑顔の集う場所」を掲げられる養老乃瀧様と共に、今回の実証実験を行える機会を得られ、非常に嬉しく思います。ロボットと人が協働する、楽しい社会は必ずや訪れます。今回の取組みを通し、他の外食業やサービス業に対し、ロボット活用が競争優位性や収益の確保に貢献すると実証したいと考えています。ひいては、養老乃瀧様と共に、ロボット酒場の先駆者として外食業界全体の生産構造改革に寄与できればと思います。

    >>プレスリリース(PR TIMES)

    人手不足を解決するロボットは農業でも活用されつつある

    養老乃瀧のように、人手不足を解決するためにロボットを活用する事例は増えつつある。

    2019年12月、佐賀市は自動野菜収穫ロボットを開発するinaho株式会社と進出協定を結んだと発表があった。

    写真はプレスリリースより

    inahoは、収穫ロボットをしていて、過去にはLedge.ai編集部もアスパラガス農家向けの自動収穫ロボットを取材している。今回、佐賀市とinahoが組んだことで、佐賀市内に拠点を開設し、周辺の農家に自動野菜収穫ロボットを導入していくそうだ。

    写真はプレスリリースより

    いま、さまざまな産業で人手不足問題が取り上げられている。なかには「職人技」を要する仕事にもかかわらず、後を継ぐ人が現れないなど、存続の危機に面している職もあるそうだ。そこで注目が集まっているのが、本稿でも取り扱っているAIロボット。

    inahoのロボットもおもしろい取り組みだが、やはり養老乃瀧のニュースは気になるところ。なんといっても、注文の応対だけでなく、コミュニケーションまで取れるのは非常に興味深い。朝イチから閉店までロボットがフル回転でビールを作りまくっている姿を生で見てみたいものだ。

    地方都市が抱える課題を解決 AI時代に求められる“力”とは

    人口減少に伴う、交通弱者の増加や地域の小売・生活関連サービスの衰退など、地方には課題が山積みだ。地方創生に向け、AIやIoT、ビッグデータの活用が急がれている。経済産業省も、中長期的に最新技術を取り入れたビジネスモデルの転換が必要だとし、地方の機能強化を政策の方針に組み込んでいる。

    そうした中、長崎県で地方課題を解決する数々のプロジェクトを生み出している人物がいる。知能ロボット研究室を手がける、長崎大学の小林透教授だ。「公平な情報社会を実現するために」を研究理念とし、小林氏はこれまで、国や自治体、企業と数多のプロジェクトを立ち上げてきた。

    地方課題とAIの親和性や、すでに佐世保市で進んでいる実証実験についてなど、長崎大学の取り組みを交え、小林氏に話を聞いた。

    高齢者の負を解消。当たり前にサービスを享受できる社会を目指す

    大学院卒業後、NTTにて情報セキュリティやWeb技術の研究開発に従事した小林氏。2013年、長崎大学大学院工学研究科 情報工学コースの教授に着任以後は、地方課題の解決に向き合い数多のプロジェクトを生み出してきた。

    ――小林
    「近年、スマートフォンの普及やSNSの発達により、あらゆるサービスやコミュニケーションが手軽になっています。一方で、そうしたサービスを当たり前に享受するためには、最低限のITリテラシーが必要となります。とりわけ高齢者層においては、抱える課題が多いものの、サービスを活用できていないことが多いです。

    そこで、知能ロボット研究室(小林教授が持つ研究室の名称)では、AIやIoTなどを活用し、高齢者が抱える課題を明確にし、さまざまな取り組みをしています。時には、総務省SCOPEの助成を受けたり、民間企業と連携したりしながら研究を進めています※。

    例えば、『LINE仲介ロボット』という高齢者層と若年層のコミュニケーションを手助けするロボットを研究しています」

    総務省SCOPE:ICT分野において新規性に富む研究開発課題を大学・国立研究開発法人・企業・地方公共団体の研究機関等から広く公募し、選考評価の上、研究開発を委託する競争的資金。

    LINE仲介ロボットは、NECのロボットを使い、LINEでのコミュニケーションを音声で完結できる。会話をクラスタリングし、宛先を自動で判別する研究も進んでいるそう。

    知能ロボット研究室の研究には、佐世保市ですでに実証実験が行われている(外部リンク)ものもある。

    ――小林
    「すでに佐世保市で実証実験を進めている研究が、買い物難民支援ロボットです。最近、高齢者の免許返納についてのニュースが取り上げられることも多いですが、地方では車での移動ができないと大変不便です。そこで、高齢者がロボットと会話をし、音声で弁当を注文すると、配達屋さんにLINEが届く、という仕組みを作りました」

    買い物難民支援ロボットの実証実験が目指す先は、認知症の予兆検知であり、単に出前ができる機能だけではないという。一体、どういうことなのだろうか。

    ――小林
    「これは、総務省から認知症予兆をロボットで実現できないか、というお話をいただき、進めている研究です。認知症の兆候のひとつに、短期エピソードの欠落が挙げられます。今どこにいるのか、何をしているのかなどがわからなくなるようなケースですが、この予兆は、一緒に暮らしている家族たちが気づく場合が多いです。

    しかし、一人暮らしの高齢者は知らないうちに認知症が進行してしまう。そこを、ロボットを使って解決するんです。例えばロボットが、こんな会話をします。

    ロボット「おばあちゃん、昨日の夜何食べた?」
    おばあちゃん「生姜焼きだよ」
    ロボット「美味しかった?」

    ロボットは、昨晩のメニューをわかっていますから、おばあちゃんの返事が詰まったり間違ったりすることが続くと、認知機能が落ちてきているんじゃないか、と推測するわけです」

    買い物難民支援ロボットを使った実証実験は、あくまで認知症予兆の第一ステップだそう。

    小林氏はほかにも、高齢化の進行、車社会ならではの課題など、地方に根ざした題材を中心に、研究に取り組んでいて、数多くの受賞経歴も有している。

    今の時代に求められる、“意味づけする力”を持った人材


    では、課題を解決し、地域経済を成長させるためには何が必要か。

    ――小林
    「地方に限らずですが、今の時代に求められているのは、AIの出した答えに解釈を加え、意味づけできる能力を持った人材だと思います。業界はまるで違いますが、将棋の世界で藤井聡太さんが強いのはそうした思考ができるからではないかと推測しています」

    手段としてのAI活用が進むと、誰でもそれなりの答えを出すことができるようになるため、本質的な課題を見つけ出し、テクノロジーで素早く試し、出された答えに意味づけすることが必要だと語る。

    ――小林
    「そのための教育は不可欠です。これまでは課題と答えが明確で、それを解けることが正しいとされていました。しかし、今の時代は、問題を見つけ、複数の答えから目的に最適なものを見つけ、価値として提供することが重要です。

    本質的な課題は、現場を見ることでヒントを得られることが多いです。例えば、画像認識を使って、職人技による作業を継承するためにはどうしたらいいか、実際に漁網の製造現場に行くこともあります。本質的な課題はどこにあり、どこにテクノロジーを使えば良いのか、研究室では学生に自主的に思考してもらうのです」

    長崎だからこそできる取り組みを

    小林氏は、高齢者のコミュニケーション領域だけでなく、長崎ならではの課題でも研究を進めている。取り組んでいる事例を2つ紹介していただいた。

    ――小林
    「まずひとつは、軍艦島のいたるところに加速度計や音声・振動のセンサーを埋め込み、リアルタイムで朽ちていく様子を記録し、世界中に発信するというものです。これらのデータは、劣化兆候を計測し、ほかの老朽化した建築物の損傷判定などに役立てることが期待されています。

    二つ目は、バリアフリーストリートビューという取り組みです。長崎の土地は非常に坂が多いため、車椅子での移動には危険が伴います。そこで、車椅子視点でのストリートビューを作成し、安全に街を移動・観光できるよう取り組みを進めています。

    これら二つはまさに長崎ならではの取り組みです。日本には、特徴的な地形の都道府県や、その地域ならではの課題があふれていますから、長崎以外の地域でも取り組めることは数多くあるでしょう」

    長崎に限らず、日本の地方都市にはユニークな課題が数多く存在する。小林氏は最後に、地方課題解決に必要な、3つのスキルを語ってくれた。

    ――小林
    「何が大事かを見極める力・解決する技術・それらを結ぶ力の3つが重要です。必ずしもすべてを一人(一組織)で持つ必要はありませんが、これらを組み合わせることで、課題が解決されて地域は盛り上がっていくのだと思います。また、もうひとつ忘れてはならない視点がサステイナビリティです。近年、政府や地方自治体の補助金制度が整備されてきていることは、大きな後押しです。日本の地方都市が盛り上がり、多様な人々が公平にサービスを受けられる世界を目指し、これからも研究を進めていきます」

    少子高齢化が進み、課題先進国と呼ばれる日本。経済的な観点の課題だけでなく、地域単位での課題も多く存在する。そうした課題にテクノロジーを活用することができれば、それが日本の強みとなり、勝算となるかもしれない。

    近年では、富士フイルムソフトウエアや京セラコミュニケーションシステム、デンソーウェーブをはじめとする企業が研究開発拠点を長崎市内に開設している。地方で働きたいと考えている方は、一度お問い合わせてはいかがだろうか。

    AI市場は2023年に640億円へ──ITRの市場予測

    昨年12月、株式会社アイ・ティ・アールは、「ITR Market View:AI市場2019」として、AI主要6市場(画像認識、音声認識、音声合成、言語解析、検索・探索、翻訳)を対象に、国内33ベンダーへの調査に基づいた2017~2018年度売上げ実績、および2023年度までの売上げ予測を発表した。

    2018年のAI市場は199億5,000万円規模

    2018年度のAI主要6市場の売上金額は199億5,000万円、前年度比53.5%増と大幅な伸びとなった。各市場ともに、技術的な進歩に加え、各種製品・サービスと組み合わせたソリューションの拡大により活用用途の多様化が進みつつあることが成長の背景となっている。

    ▲AI主要6市場規模推移および予測(2017~2023年度)(ITRサイトより)

    最も伸びたのは画像認識市場

    出典:Adobe Stock

    AI主要6市場の中で2018年度に最も高い伸びを示したのが画像認識市場だ。

    画像認識は工場などで行っている製品の外観検査や作業員の安全管理業務で導入が進んできたが、現在、道路や橋などの社会インフラ、各種建造物の保全業務での利用も急速に進みつつある。また、顔認証や車両の自動運転など、活用シーンの多様化により、今後も継続的な導入拡大が見込まれる。

    画像認識に次いで高い伸び率を示しているのが言語解析で、現状コールセンターでの活用を中心に導入が進んでおり、今後幅広い分野に拡大すると予想している。

    AI市場は2023年度に640億円に達する

    AI主要6市場は今後も継続的な伸びが見込まれることから、2018~2023年度のCAGR(年平均成長率)は26.5%、2023年度には640億円に達すると予測。

    ITRの取締役/シニア・アナリストである舘野真人氏は以下のようにコメントしている。

    ――舘野氏
    「機械学習、とりわけディープラーニングの進化、カメラやドローンといった周辺機器の充実などに伴い、人間の目の役割を担う画像認識技術の実用化がさまざまな産業に拡大しています。なかでも、これまで目視で行ってきたインフラや設備の点検作業への活用が大きく進んでいます。また、自然言語処理を中核とする言語解析技術も、コンタクトセンターにおける顧客の声の分析や、契約書などの文書管理など実務への適用が進んでおり、市場の伸びを支えています」

    Source:2018年度は前年度比53.5%増と大幅な伸び、2023年度には640億円に達すると予測 ITRがAI主要6市場規模推移および予測を発表

    「あなたの会社のコールセンター、本当に大丈夫ですか?」AI自動音声応答で1兆円市場に挑むTACT社長が語る

    コールセンターの市場規模を知っているだろうか。日本流通産業新聞社が2019年10月に発表した「第26回コールセンター売上高調査(2018年度)」によれば、合計売上高は約1兆1000億円だったという。また、前年度比の伸び率は約5%もあるそうだ(外部サイト)。

    この売上高は電話応対業務を受託するコールセンター企業を対象としたもので、内製でコールセンター業務をしている企業も含めれば、市場全体で2兆円近くの規模をもっているとされる。

    しかし、これだけの巨大市場にもかかわらず、離職率の高さや採用難による人的コストが増えているなど、コールセンターに対してあまりいい印象のニュースは見えてこない。

    そのコールセンター業界を救うプロダクトを提供している会社がある。株式会社 TACT(外部サイト)だ。AIコンシェルジュなどのソリューションによって、コールセンター業界の課題解決を目指す。そんな同社の代表取締役社長・溝辺和広氏にコールセンターの実情から、AIならではのメリットなどを聞いた。

    チャットボットだけでは課題を解決できないのでは?

    ――溝辺
    「コールセンターに来る問い合わせの約70%は、ウェブサイトやパンフレットなどにすでに記載されていることなんです。極論かもしれませんけど、市場全体の合計売上高の7割、1兆4000億円が“調べれば誰でもわかること”に使われているとも言えなくはないですよね。1兆円以上の問い合わせに対する返答を自動化できれば、コールセンターの抱える課題の解決につながると思うんです」

    コールセンターの課題のひとつである離職率の高さ、その理由は「クレーム対応による精神的ストレス」だけではないとされる。給料の低さ、昇給が見込めない、単純作業の繰り返し、将来的なキャリアが限定されている、なども要因にあるそうだ。

    ところが、先にも触れたとおり市場規模は上向きだ。毎年のように伸びている業界にもかかわらず、なぜその課題を解決できないのだろうか。

    3年ほど前、TACT(旧:U-NEXTマーケティング)がコールセンター市場に乗り出そうとしたとき、他社同様にチャットボットで参入しようとしていた。ただ、チャットボットだけでは課題の解決につながらない、市場参入が難しいと考えた。

    ――溝辺
    「1兆円を超し、伸びている市場で何が起きているかというと、企業が利益をコールセンターの運営コストに充てているんです。ツール提供ベンダーからすれば、お金が欲しいわけで、ある意味で“食い物”として見られているんです。その中のひとつが、チャットボット。導入している企業は多いですけど、電話ユーザーはそもそもウェブサイトなどを見ないので電話が減るどころか、チャットボットを加えた全体の問い合わせ数が増えてしまうこともありました。そうすると離職率が高い、人的コストが減らないなどの話題は消えないですよね。

    そもそもチャットボットは利用者が“文章を読む“必要があるんです。ですが、文章を読むことは難しいんですよ。文章を読むなら、ウェブサイトやパンフレットに記載されている内容について7割も問い合わせないですよね。だから、私たちはコールセンター向けのテクノロジーとしてチャットボットではなく『音声』に注目しました」

    音声に着目した結果、生まれたのがAIコンシェルジュだ。AIコンシェルジュは、人間の応答のように声で問い合わせ内容を聞き、音声合成によって問い合わせに対して返答するものだ。

    聞いた音声は人が文字起こしをして正誤確認

    AIコンシェルジュの導入事例をいくつか紹介してもらった。

    ――溝辺
    「オペレーター約13人分の業務自動化、受電率約99%を記録した『コープこうべ』での事例があります。

    コープこうべは、世界的にも最大級の生活協同組合です。商品カタログから注文された商品を、決まった日に定期宅配するサービスなどを展開しています。以前はプッシュ入力によって注文を自動受付していましたが、打ち間違いなどによる入力のストレスがあると言われていました。また、待ち時間が発生するなど、電話がつながりにくい状況もあったそうです」

    コープは、妊婦や高齢者など、買い物に行くことが難しい人から利用されることも多い。受電数は1日あたり700件ほどあるそうで、生活インフラのひとつと言っても過言ではない。

    ――溝辺
    「AIコンシェルジュを導入したことで、ピーク時でも高い受電率を達成できました。また、プッシュ入力に比べて注文を受け付けて完了させた比率も、従来は35%だったところ70%までアップしたんです。

    音声を使ったプロダクトで重要なのは音声認識率です。コープこうべの場合は、『組合員特定』『電話番号』『品番・数量特定』を正確に認識する必要があります。コープこうべの事例に限りませんが、TACTでは音声認識とテキスト内容が正しいかどうか、実際に人が聞いて判断させる学習方法を採用しました。具体的には、人間も実際の音声を聞き、文字に起こしています。学習の繰り返しにより、認識率は平均で95%と高い精度を維持しています」

    AIコンシェルジュを利用する際の流れ。基幹データベースと自動照合しながら人を介さずに自動で配達手配まで行なう

    どのAIにおいても判断や判定する人材は必要だが、文字起こしをして正誤を確かめるほど“アナログ”なスタイルで取り組むのはなかなかできることではない。さらにTACTでは、導入後もチューニング(学習)を重ねるため正確さが増すそうだ。

    余談だが、コープこうべは以前、大手ベンダーのプッシュ式の自動応答プロダクトを利用していたそうだが、TACTのAIコンシェルジュの正確性などを理由に新たに採用したという。

    クレーマーはAIが応答すればクレームを入れない

    溝辺氏はコールセンターにAIコンシェルジュを導入したことで、応対の自動化による省人化・効率化だけでなく副次的な効果もあったと話してくれた。

    ――溝辺
    「コールセンターという仕事へのマイナスイメージに『クレーム対応』がありますよね。日々クレーム対応に追われると、精神的にも疲弊してしまいます。ですが、AIコンシェルジュはクレームを受けづらいという効果もあったんです」

    クレームに関わる話はコールセンターにおいて切っても切れない存在。次に、明治産業における物件のガス開栓・閉栓に伴う受付をAIコンシェルジュで自動化した事例を話してくれた。

    ――溝辺
    「ガスの開栓や閉栓工事は、主に物件の入居・退去時に必要とされますよね。その際に連絡するのがコールセンターなのですが、明治産業では入居・退去の受付のみならず、別に課題を抱えていたんです。それはガス料金未納者からの連絡と対応です。

    ガスが止まってしまうと当事者は焦りに焦るため、すぐに支払通知書をコンビニなどに持ち込んで支払います。ただ、支払ったとはいえ、即座にガスが開栓するわけではありません。なので、料金を支払ったにもかかわらず、ガスを使えない状況に憤り、コールセンターにクレームを入れるそうです」

    開栓には、ガス業者による工事が必要なので、料金を支払ってもすぐに使えるようになるわけではない。たとえば、金曜日の夜中にコンビニに駆け込んで支払ったとしても、翌営業日まで工事を待つ必要があるのだ。それこそ土日は休みの業者が多いため、月曜日までガスが使えないことがある。

    ――溝辺
    「こういったクレームに人が応対すると、ひどい場合で1時間以上にもわたり相手をするケースもあります。当然、業者や会社側に落ち度がある場合はクレームに納得できるかもしれませんが、未納によるガスが使えなくなったのは顧客側の不注意で発生したことです。しかも、未納によって閉栓するのも開栓するのにも人件費など工賃はかかります。クレーム対応にかかるストレス以外にも会社としてダメージは少なくないのです」

    オペレーターがクレームを処理するのは非常に苦労する。ひたすら文句を言われ続けるのは、いくら仕事としてお金をもらえるからといって楽しんでできる内容ではないだろう。

    ところが、明治産業がAIコンシェルジュを入居受付業務に導入したところ、ガス料金未納者の反応が大きく変わったそうだ。

    ――溝辺
    「入居・退去の受付希望者に加え、未納顧客もAIコンシェルジュに開栓の申込みをするケースがありました。以前までは、ガス開栓を即時求め、クレームを入れられたケースでも、AIコンシェルジュが『月曜日の午前10時以降で、都合のよろしい時間を教えてください』と言うと、『月曜の10時でお願いします』のように返事も丁寧になり、納得いただけるようになったそうです。AIに対してどれだけ文句を言おうと意味がないと理解しているからでしょう」

    明治産業における、AIコンシェルジュの特に大きい導入メリットは、受電件数が導入前よりも130%増加(※)したものの、稼働時間は導入前より30%減少したことであった。この差分はそのまま会社にとっての利益になる。
    ※受電件数が増えたのは、供給物件数や対応範囲が増えたため

    また、人による通話時間はなんと0秒。入居・退去時はすべてAIコンシェルジュが対応しているからだ。オペレーターはAIがヒアリングした情報をチェックするフローに切り替わったそうだ。これにより、正確な情報登録と開栓作業の効率化を実現したとのこと。

    問い合わせに対して、AIが質問をしていく形式。日付の認識も「明日」「明後日」などの複数の言い回しにも対応

    さらに、溝辺氏はAIコンシェルジュ導入までの経緯について次のように言う。

    ――溝辺
    「明治産業の場合、コールセンターの実情をしっかり把握していたから見抜けた、そこに対して導入したことが成果を出したと思います。上層部がしっかり現場を理解していたからこそ、クレームが減ったり、受電件数は増えたのに稼働時間は減ったりしました。後日聞いた話ですが、社員の離職率も大きく減らせたそうです」

    あなたの会社のコールセンターは大丈夫ですか?

    溝辺氏に対して取材を進めていたら、ちゃぶ台をひっくり返すような発言があった。

    ――溝辺
    「正直、AIコンシェルジュはないほうが世の中的に良いと思うんです。全員が全員、文字や文章を認識して理解すれば、コールセンターすらも不要になりますよね。だけど、認識や理解が苦手な人が多すぎるんです。だからこそ、コールセンターもあるし、それにともなってAIコンシェルジュも作りました」

    さらに続けて次のように話す。

    ――溝辺
    認識や理解ができない人が増えると、破綻する業種も現れてきます。たとえば、格安航空会社。格安のエアチケットは、利用者が手厚いサポートを求めないかわりに価格を下げているのに、コールセンターには大量に問い合わせが来るそうです。それこそ『ターミナルのどこに行けばいいですか』という話もよくある例です。

    スマホが発達して、調べればコールセンターに電話するよりも早くわかるのに、それでも問い合わせる人がいるんです。こういった対応に毎回追われていると、格安航空会社が成り立ちません。大手航空会社と同様のサポートを求めるのは酷すぎます。挙句、クレーム処理もこなすようになれば、オペレーターの負担が増え、離職につながりますよね。そして、新たに採用して教育するコストをかけることになる。これって、無駄なお金ではないですか?」

    コールセンターでは、繁忙期のみに一時的に人を大量採用することもあるそうだ。たとえば、引っ越しにおけるコールセンター。引っ越し業界では、3月前後が繁忙期。前年12月から1月に人を大量に雇い、1ヵ月半近く教育する。2月末ごろから4月にかけてオペレーターとして働いてもらう。閑散期に近づくゴールデンウイーク前後で業務が終わる。これを毎年繰り返している会社もあるという。

    ――溝辺
    コールセンターへの採用コストも教育コストも安くはない。なのに毎年のようにお金を使う企業があります。ですが、こういう企業に限ってコールセンターの実情を認識していないんです。なぜならコールセンターへの予算は固定化される不変かつ不動の扱いをされているから。

    私は言いたいんですよ。会社全体の売り上げを伸ばす挑戦もいいですけど、無駄に溶かしているコストはありませんか? あなたの会社のコールセンターは大丈夫ですか? ということを……」

    今後、TACTのAIコンシェルジュはこれまで以上にさまざまな場面・シーンで事例を作ることを狙っている。これは、コールセンター市場に限らず、オムニチャネルに機能を追加していくそうだ。

    また、溝辺氏自身もAIコンシェルジュだけで企業が抱える課題を解決できるとは思っていない。そのタイミング、その企業、その課題に対応できるプロダクトを開発し、展開していくという。それこそ、コールセンターの課題をすべて解決はできなさそうだったチャットボットも、使い方、使い道などを見つめなおせば最大限の力を発揮できる場所が見つかるだろう。


    AIコンシェルジュの課題を克服する新サービスを発表

    そんななか、TACTは1月15日に「AIコンシェルジュ for チャットボット(AICチャットボット)」のサービスを開始した。

    本インタビューでも聞いたように、「過去にチャットボットサービスの提供を検討していたが、電話による問い合わせが中心のユーザーを対象としていたため、PC操作が必須のチャットボットだけではコールセンターが抱えている課題の解決につながらない、市場導入が難しい」と考えていた。

    だが、AIコンシェルジュの導入を進めているうちに、「電話による音声応答が主だったAIコンシェルジュ単体では、操作方法や故障状況などの複雑な説明を伝達しづらい」という課題が新たに見つかったそうだ。その点チャットボットなら、動画や画像による視覚的コンテンツを組み合わせて提供できる。

    受け答えとしてのAIコンシェルジュ、説明などが目的のAICコンシェルジュ(チャットボット)の二軸展開で、今後のTACTはさまざまな市場の効率化や改善を狙っていきそうだ。

    >> 株式会社 TACT

    医療データサイエンティスト養成プログラムを開始:ハカルス

    医療AI、スパースモデリングなどに強みを持つ株式会社HACARUSは、医師や製薬企業をはじめとする医療事業者向けのAIトレーニングプログラム(外部リンク)の提供を開始した。

    医療データに特化した養成プログラム

    受講者は、AI開発に必要なツールの使い方や、統計、機械学習の基礎的な内容を学ぶことができる。また、プロジェクト演習では、講習で学んだ知識を生かし、医療データを用いた AI開発を実際に体験する。プログラムの内容はすべて医療データを前提として設計されており、プログラム受講後に実務ですぐに活用も可能だ。

    医療事業者がAIに取り組む際に課題となる、

    • 自社・自院保有のデータで何ができるのかがわからない
    • 患者情報を扱うためプロジェクト立ち上げに時間がかかる
    • 外部委託のベンダー選定に判断基準がない

    などの課題を解決可能だという。プログラムの特徴は以下の通り。

    • 医療データに特化
      臨床研究で用いられる医療統計の基礎から、MRI/CT といった医療画像、病歴といった医療データに特化した解析アプローチを詳説。すぐに活用できるスキルを身に着けられる。

    • プロジェクト演習
      座学だけではなく、医療データを用いた解析プロジェクト演習をプログラム内で実施。AI開発のプロセスそのものを体験することで、AIプロジェクトの勘所を理解できる。

    • 実データの解析
      受講者が保有しているデータに対する解析を講師がサポート。教育プログラムから実プロジェクト解析まで一貫したサポートを提供する。※別途料金が必要

    講習の内容は医療AI事例からAIの性能評価まで

    講習の内容は以下の通り。高校の初等レベルの数学知識を持ち、データやその解析結果に基づいて意思決定を行った経験がある、もしくは予定がある人(プログラミング経験は問わないが、Excelなどでピボットテーブル・回帰分析などの経験があると好ましい)を想定しているという。

    • 医療・創薬でのAI の活用事例
      プログラミングレスでのデータ解析
      (ExcelやGoogle AutoML)
      PythonとJupyter Notebookの使い方

    • 医療統計の基礎
      データの視覚化・探索的データ解析
      データの収集とアノテーション

    • 機械学習の基礎
      AIの説明性や解釈性
      深層学習とその特徴

    • 時系列データの解析
      画像処理の基礎
      医療画像データの解析

    • AIの性能の評価方法
      医療AIプロジェクトの進め方 (例:臨床研究審査委員会等)
      プロジェクト演習のガイダンス

    初心者向けをうたうデータサイエンティスト養成講座は数あれど、ドメイン特化、しかも医療は初だろう。医療従事者でデータサイエンスに取り組む予定のある方は検討してはいかがだろうか。

    プログラム概要

    プログラムの構成 講習(座学) 5日
    プロジェクト演習 約2ヶ月
    ※プロジェクト演習期間中に4回、報告日を設ける
    時間 講習:10:00~17:00(うち一時間の昼食休憩)
    プロジェクト演習 報告日:13:00~17:00
    ※プロジェクト演習期間中は報告日以外は自主学習
    開催場所 京都市内もしくは大阪市内
    金額 50万円/名(税別)
    定員 10名~20名 ※複数社・団体が参加
    対象者 製薬企業・医療機器メーカーの新規事業部門
    製薬企業・医療機器メーカーの研究部門
    医師・医療従事者

    Source:HACARUS AI ACADEMY