アウシュビッツが描かれたクリスマス商品は、こうしてアマゾンに流通した

ナチスドイツ最大の強制収容所だったアウシュビッツの写真をあしらったクリスマス関連商品が、アマゾンで販売されていたことが明らかになった。すでに商品は削除されているが、こうした問題のある商品が流通する仕組みを探っていくと、その背後には在庫をもたない販売業者の存在が浮き彫りになってくる。

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ALEX KRAUS/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

アマゾンにとって毎年恒例で最大のショッピングイヴェントとなるサイバーマンデーの前日。人々に不快な印象を与える商品がAmazon.comで販売されていたことを巡り、アマゾンは再び問題に直面することになった。

ナチスドイツ最大の強制収容所だったアウシュビッツでは、ホロコーストによって100万人以上が殺害され、その大半がユダヤ人であったと歴史学者が推定している。このアウシュビッツの写真をあしらったクリスマスツリー用オーナメントや栓抜きなどがAmazon.comで販売されていたことから、アマゾンは12月1日(米国時間)にこれらの商品をサイトから削除した。

商品の削除は、ポーランドのアウシュビッツ=ビルケナウ博物館からアマゾンに対する要請があったことを受けたものだ。「栓抜きにアウシュビッツを描くとは、不快感をもたらすだけでなく侮辱的な行為です」と、博物館の公式アカウントはツイートしている。

これに対してアマゾンの広報担当者は、「出品者はすべて当社の販売ガイドラインを遵守する必要があり、遵守しない場合にはアカウントの閉鎖などを含む処分の対象になります。問題の商品は削除しました」と説明している。アマゾンの「不快感を与える商品および物議を醸す商品」に関するポリシーは、書籍や映画、音楽を除く「人類の悲劇や天災にかかわる商品」の販売を禁止している。

アウシュビッツ=ビルケナウ博物館は12月2日(米国時間)、強制収容所の入口に掲げられていたドイツ語による悪名高い標語「Arbeit macht frei(働けば自由になる)」の写真をあしらったビーチタオルを含む、強制収容所の写真が使われた商品をさらにアマゾンのサイトで発見した。『ワシントン・ポスト』も、ベルリンのホロコースト記念碑の写真の上に「I love you」とプリントされたヴァレンタインデー用キーホルダーなど、同じような商品を見つけている。

博物館によると、別のネット通販プラットフォームの「Wish」も、強制収容所の写真をあしらったクリスマスツリー用オーナメントを販売していたという。Wishの広報担当者によると、同社には「ヘイトに基づくシンボルやメッセージを含む商品を一切認めない厳格なポリシー」がある。WishはTwitterでそのような商品について謝罪し、「当社のプラットフォームを使用する出品者がアップロードする商品の監視に最善を尽くします」と述べている

自動スクリーニングをすり抜けた出品

アマゾンなどのネット通販企業は、自社のサイトに出品する数百万もの外部業者の商品から、模造品や不快感を与える商品を排除することに長年にわたって悪戦苦闘している。アマゾンは1月、アメリカ・イスラム関係評議会の苦情を受けて、コーランの文章が書かれたバスマットやドアマットなどの商品を削除している。同社は昨年の夏にも、鉤十字ネックレスなどの商品を、ふたつの進歩的支持団体がこうした商品に焦点を当てた報告を公表したあとに削除した。

アマゾンの元従業員で、アマゾン出品者向けコンサルティング企業のBuy Box Expertの共同経営者ジェームズ・トムソンによると、アマゾンは商品が販売される前にある程度の自動スクリーニングを実施しているという。武器や薬物など「特定の単語が出品商品の説明文にあれば、アマゾンはすぐに見つけます」とトムソンは言う。しかし、人間が手作業ですべての商品を検証しているわけではなく、アマゾンの出品ポリシーに違反している多数の商品が見過ごされているのだ。

よくわからないのは、そもそも不快感を与える商品がどのように生産され、出品されているのかだろう。一部は、ほぼ確実にヘイトや人種差別的な思想の奨励を意図する出品者により、そうした思想を広めるため、またはひと稼ぎするために(あるいはその両方を目的として)つくられたものだ。

しかし、これらの出品商品の多くは、ますます自動化が進むネット通販の不幸な副産物である可能性が高い。この環境では、出品者は考えうるあらゆるニッチな消費者のニーズに応えて、簡単にカスタマイズできる大量の商品を提供することによって利益を上げようとしている。例えば、ある販売業者は、さまざまな名言、ときに驚くほど曖昧で心に響く引用を印刷した数千種類ものポスターを大量に販売しているかもしれない。いくらかでも売れることを願いながらだ。

在庫すらない生産システム

アウシュビッツをあしらったクリスマスオーナメントを販売していたHqiyaols OrnamentとFchengは、いまだにアマゾンに出品している。これらの2社とも、スペインの教会、ドイツのニュルンベルクの絵のように美しい家、カンボジアのカラフルな仏教寺院など、無限に用意されているかのように世界中の景色の画像をあしらったオーナメントを販売している。

しかし、数多くある場所のなかからあるひとつの場所が選ばれたことに特定の理由があるようには思えない。また、ほぼすべてのオーナメントにレヴューが何も書かれていない。

その理由は、おそらくこれらのオーナメントは、誰かが注文して初めて生産されるからだろう。オーナメントの背後にいる出品者は、ケンタッキー州のカンバーランドからアマゾンにログインして故郷の風景をあしらったクリスマスオーナメントを探しているような人を捕まえるためにデザインされた、ちょっとした巨大なネット通販のネットワークをつくり上げている。

そして誰かが注文すると、Fchengの背後にいる誰かがセラミックのオーナメントに画像を印刷し、その幸運な購入者へと送るのだ。そうしている間にも、この出品者は高くつく在庫を抱えているわけではなく、まったくコストをかけることなく、有名な場所の画像をあしらったオーナメントをアマゾンに出品し続けている。

こうした出品者が使用しているアウシュビッツを含む写真の多くは、「Pixabay」から入手したものだ。Pixabayは画像サイトで、ダウンロード無料、撮影者の名前を記載する必要なくほとんどあらゆる用途に画像を使用することができる。『The Atlantic』がオーナメントと同様に、ポスター販売業者が使用した画像の出所がPixabayであることを突き止めた。

Pixabayはサイト内の画像を多くの記事や商業目的に使用することを推奨しているが、Pixabayの使用許諾では、画像を「加工することなくそのまま」で販売することを禁じている。その対象はポスターや、もしかしたらオーナメントも含まれるかもしれない「物理的なモノ」に印刷された画像だ。『WIRED』US版はPixabayにコメントを求めたが、すぐに回答は得られなかった。

存在しないかもしれない消費財

アウシュビッツ=ビルケナウ博物館が見つけたような販売業者が、コンピューターのスクリプトやその他のツールを使用して、商品を一括して出品したのかどうかは定かではない。また、アマゾンもこうした販売業者が自動化作業に依存しているかどうかについて明言を避けている。

こうした出品者の商品は、コンピューターにより生じるある種の不気味さを醸し出している。こうした商品との出合いは、人間の欲求を満たすためにデザインされた、存在しないかもしれない消費財としての奇妙なデジタル人工物に遭遇してしまったようなものだ。

しかし、商品を大量に販売するというこのような戦略に販売業者が頼っている間は、アマゾンやその他のネット通販企業は、こうした販売業者が大量に製造する実在しない幽霊のような商品を完全に精査する必要がある。さもなければ、今回のようなスキャンダルに直面するリスクを冒すことになるからだ。

これらの企業の運営規模では、簡単な解決策はない。アウシュビッツのクリスマスオーナメントのような商品は、まさにアマゾン式の商売に発生するコストなのかもしれない。

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あの「永遠の子猫」の死と、インターネットの世界から失われたもの

人々の心をわしづかみにしていた「永遠の子猫」ことリルバブ(Lil Bub)がこの世を去った。ちょうど8才だった。多くの人々に愛された猫の死は、インターネットカルチャーにおけるひとつの時代の終わりも象徴している。

TEXT BY ANGELA WATERCUTTER

WIRED(US)

lilbub

RONEN TIVONY/NURPHOTO/GETTY IMAGES

スター・ウォーズのドラマシリーズ「ザ・マンダロリアン」に登場するベビーヨーダのミーム(今回はカップが持った新しいシーンもある)を、ネット民たちがシェアしていた12月1日(米国時間)の午後のこと。人々の心をわしづかみにしていた「永遠の子猫」ことリルバブ(Lil Bub)が死んだ。ちょうど8才だった。

飼い主のマイク・ブリダフスキーはInstagramに、リルバブは骨感染症(それが“子猫”らしい容姿の理由のひとつだった)に苦しんできたものの、「こんなにも早く、前触れもなく急に死ぬとは予想していなかった」と投稿した。リルバブは眠りながら安らかに死んだのだと、彼は付け加えた。

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ブリダフスキーの投稿には、特に感動的なところがあった。それがこの言葉だ。

「リルバブがわたしの人生にもたらしてきた深い影響を言葉にすることはできません…彼女をまるで自分の家族のように大切に思ってくれたみなさんの人生に対しても同じです」

この2年というもの、リルバブはインターネットユーザーの記憶からやや薄れつつあった。「グランピー・キャット(不機嫌な猫)」の愛称で呼ばれた猫と同じように、リルバブは依然としてネットの人気者ではあった。しかし、ソーシャルメディアのもっと影響力のある熱い議論のなかでかき消されてしまったからだ。

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リルバブが世を去ったいま、この“永遠の子猫”のことや、6年前に『WIRED』US版の編集部を訪ねてくれたときのことを思い出すと、インターネットのユーザーたちが“かわいいもの”に熱狂していたころに戻ったかのように感じる。いまではオンラインの会話は、ずっと深刻なものになった。いまはもっと深刻な時代なのだ。インターネットの猫たちを万人が愛した時代は、終わったのかもしれない。

リルバブが特別だった理由

これは「不機嫌な猫」が世を去ったときの見解と同じようなものであろう。しかし、感じていることは真実だ。おそらく、リルバブを有名にした10年が終わりに向かっているのだろうが、リルバブの死はTumblrやモホーク・ガイ(モヒカン刈りの男)、そして人々を幸せな気分にした多くのものたちの時代の死のようにも感じる。

これからもビヨンセは常に楽しさを刺激してくれるだろうし、人々はソーシャルメディアに動物の写真を投稿し続けている。しかし、それらの猫たちと同じ愛情のレヴェルを達成した生き物は、もしいたとしてもほんのわずかである。

それにリルバブは、グランピー・キャットとは異なる何かをもっていた。2匹とも写真映えする容姿が疾患に由来するという事実は別として、リルバブは何かもっと思いやりや心配という感情に入り込んでいたのだ。

グランピー・キャットはその名が示すように、ファンがフラストレーションや退屈さを解消するうえで役立った。リルバブは無条件に何かを愛することや、より弱い者たちを保護することの象徴だった。リルバブは、人々が“憂さ晴らしをしない”ことの象徴であり、非公式マスコットでもあったのだ。だが現在のインターネットは、そのための場になってしまうことがある。

もちろん、ほかにも代わりとなるようなセレブはいた。かつてリルバブは書籍の出版契約を交わし、ドキュメンタリー番組や音楽アルバム、そしてトークショーまでもっていた。いまで言うインフルエンサーのはしりとなったのだ。

インフルエンサーの多くは、ファッショニスタやゲーマー、フィットネスの指導者といった人たちである。TikTokからも2匹の人気の猫が登場したが、2010年代前半に活躍した同じような動物ほどの知名度はない。

ネット民たちは、いまでもかわいいものが大好きだ。しかし、かつてリルバブを愛したときほど、一匹の猫やその他のものを愛することは、もうないのかもしれない。

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