挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
黄金の経験値 作者:原純
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
28/87

ブラン 4





「ゾンビかー…その発想はなかったわー…」


 ブランはリスポーンしながらうなだれた。

 しかし確かに、スケルトンという骨格標本が居るくらいなのだから、ゾンビなどがいても別に何もおかしくはない。

 むしろどちらかといえばスケルトンよりゾンビの方がまだ人間に近いとも言える。


「すでに死んでるのでは?って意味では私のお仲間っちゃーお仲間と言えなくもない…ような…いや無理かなぁ

 まぁ前向きに行こう!仲間じゃないなら焼いてもいいよね!」


 ブランは今度こそ、これまでを教訓に油断しないことを心に誓い、歩き出した。


 洞窟から石壁へと切り替わる境界線のところに、先程の、かどうかは不明だがゾンビが一体佇んでいた。

 一瞬ビクリとしたが、教訓が生きたか過度に動揺はせず、取り敢えず『フレアアロー』を放った。


 腐敗によって可燃性のガスでも出ているのかは不明だが、ゾンビはよく燃えた。アリよりも圧倒的に体積は大きいはずだが、燃え尽きるまでにかかる時間は大差なかった。


「魔法ほんと強いな…てか『フレアアロー』が特別強いのか魔法が強いのかこれじゃわかんないな。あ、私INT上げてたんだった。私の魔法だから強いという可能性もあるな…」


 しかし『フレアアロー』で確殺出来ている現状、あえて他の魔法をわざわざ使う必要もない。一撃で殺せなかったらまた何かしらのトラウマを刻むことになるだろうし、MPも余計に消費してしまう。『フレアアロー』が結果を出しているのなら『フレアアロー』でいい。

 兵器において何より重要なのは信頼性なのだ。


 ドロップアイテム…とは言っても、焼け残ったゾンビの下半身がなんの役に立つのか全く検討もつかない。加えて出来るだけ触りたくないということもあり、放っておくことにした。しかし。


「うわぁまた来た!」


 もう一体のゾンビが現れ、焼け残ったゾンビの下半身に食らいついた。

 人型の生物が行う食事としては違和感しかないというほどのスピードで貪り食っていく。


「結局トラウマ植え付けるのかよお…」


 顔を青くしながらその隙だらけの頭部に『フレアアロー』を放った。


「まぁ青ざめるったって顔色は白一色なんですけどね」


 だがその音に反応してか、死体が焼ける匂いにつられてか、次々とゾンビがやってくる。


「こういう映画あったよ昔!ええと、『サンダーボルト』!」


 輝く雷光がブランの手に集まり、一瞬の後にはゾンビに突き刺さっていた。同時にゾンビは全身が一瞬だけ稲光に包まれ、黒焦げになって倒れ伏した。

 どうやら『サンダーボルト』でも一撃で倒せるようだ。


「『アイスバレット』!『ウォーターシュート』!『エアカッター』!」


 続けざまに魔法を放ち、ゾンビを片付けていく。ブランのINTの高さならば、このゾンビたちはどの魔法でも関係なく一撃で倒せた。違いは死体の形状のみだ。


「いや、ゾンビだし最初から死体か…?」


 少なくともブランの目には、ブランが倒したゾンビと立って歩いているゾンビの区別はつかない。

 なぜ、ゾンビたちは倒されたゾンビにしか群がらないのだろうか。


「うーん。そういうゲームってことなのかなぁ。てか、数多いな!まだ来るのかよ!」


 すでに攻撃魔法は5連打してしまったため、少し待たなければ攻撃できない。最初に撃った『フレアアロー』など、撃てるようになるまでまだ20秒ほどかかるだろう。

 一旦下がり、なるべくリキャストタイムを稼ぎながら一体ずつ倒していくしかないだろう。

 幸い背後の洞窟はさほど広くはない。無軌道な歩き方をするゾンビたちなら、二体並んで攻撃をしてくるようなことはあるまい。


 ブランは死体に群がるゾンビたちから目を離さないようにしながら少しずつ後ずさった。

 いかにゾンビが多いとはいえ、ブランの作ったただの死体も増えている。食事が終わるまでまだ少しはかかりそうだ。


「…んー、とりあえず『エアカッター』」


 更に一体、死体を生産した。

 攻撃したブランには目もくれず、ゾンビたちは死体を貪っている。餌が残っている限り、ブランが攻撃対象に選ばれることはなさそうである。


「リキャスト終わった。『フレアアロー』」


 このペースなら、リキャストタイムを待ちながら魔法を撃ち続けても問題ないように思える。

 であれば次の懸念はMPの枯渇だ。もう少し、ゆっくりとしたペースならばMPの自然回復とも釣り合ってくるだろうが、食事の風景からすればそれには流石に足りないだろう。


「アリの大群なみにやばい感あるんだけど、思いがけずまったりとした時間が流れてるな…」


 かといってくつろげるかと言えば、まったくそうはならない光景なのだが。

 薄暗い洞窟で延々と仲間の死体を貪る死体の群れと、それを少し離れて眺める骸骨。

 端的に言って地獄の光景である。


「これどうしようかな…まったりと詰んでるって感じするな…このゲームって実はめちゃめちゃ上級者向けなのかな。私なんて運が良かっただけでホントだったらもっと前に詰んでた気もするし」


 時折思い出したかのように『フレアアロー』を撃ちながら、なにか打開策でもないかと頭を巡らせる。このままでは事態が好転しないのは確かなので、例え悪化する可能性があるとしてもMPの回復を優先させたほうがいいだろうか。

 MPさえあれば、悪あがきが出来るだろう。


 とうとう動かない死体が残りひとつだ。MPは全快ではないが、戦闘ができそうな状態を維持している。あの死体が無くなった時、ゾンビがどう動くのか。

 とりあえずそれを確認してから次の行動を起こすことにした。


 死体をすべて食べきったゾンビたちが立ち上がる。ブランの方を向き。


「あれ?こっちこないな」


 石壁と洞窟の境界線でウロウロしている。時折ブランの方を向く個体があるが、その場で足踏みし、すぐにまたウロウロし始める。


「あの遺跡みたいなとこから出られないのかな?もしかして」


 ソロリソロリとゾンビたちに近づく。ブランに気づくゾンビが増えるが、かといって行動に何か大きな変化があるわけでもない。


「あいつらやっぱこっち入ってこられないのか。え?これもしかして」


 ボーナスステージ到来である。


 ブランはMPの自然回復と釣り合うくらいのペースで、淡々とゾンビを焼き始めた。







感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。