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黄金の経験値 作者:原純
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レア 21





 まずはスガルに実験台になってもらう。


「スガル、フレンド登録をしようじゃないか」


 とりあえずダメ元で直球で言ってみた。スガルはきょとんとしている。効果はいまいちだ。


 フレンド登録という行為を脳内だけで行うにはどうしたらいいのだろうか。友達になればいいのだろうか。しかし、システム的に友達の定義とは何なのか。


 友達なんてどうやって作ったらいいのか。


 現代社会の闇が噴出しそうになったので、その方向からのアプローチはいったん凍結する。


 システム的に違いがないのなら、同様の行動をすれば同様の結果が得られるはずだ。まずはプレイヤー同士でフレンド登録をする時と同じようにやってみる。


 しかしレアはクローズドテストのときに誰かとフレンド登録をしたことがなかった。どうせテストが終われば消え去るキャラクターデータだったし、好奇心にまかせて自由に楽しみすぎたため、あまり一般のプレイヤーに好かれるようなプレイスタイルではなかった。

 今回のオープンβでももちろん誰ともフレンド登録をしたことがない。


 レアはヘルプに頼ることにした。


「フレンド登録の仕方…でいいかな」


 フレンド登録:

 フレンドの申請をする場合、フレンドカードが必要です。フレンドカードはインベントリ内のフレンドカードを取り出すことで作成されます。インベントリ内にはフレンドカードの項目が常にあり、取り出すことで無くなることはありません。

 作成されたフレンドカードをフレンド申請をしたい相手に渡し、その相手が自身のインベントリへ収納することでフレンド登録が完了します。

 フレンド登録を解除したい場合は、解除したいフレンドのフレンドカードを取り出し、破り捨てることで解除されます。

 ふたたび同じ動作を行うことで、一旦解除したフレンドとふたたびフレンド登録をすることが可能です。


「なるほど…」


 わかりやすく説明するならば、つまりは名刺交換だ。

 レアは自分のインベントリを確認し、フレンドカードの項目を見つけた。インベントリの中身はシステムメニューでは一覧が見られるが、システムを介さず行おうとすれば取り出したいものを明確に意識する必要がある。NPCがフレンドカードを意識することはまずありえないだろうし、フレンド登録を出来るのは基本的にプレイヤーだけなのだろう。


 レアは取り出したフレンドカードをスガルに渡し、それをインベントリに収納するよう指示した。


《キャラクター【スガル】とフレンドになりました》


 フレンド登録も問題なく行われた。


「フレンドチャットはどうやるんだったかな…だったかな、というかやったことないんだけど。あ、これか」


〈スガル、聞こえるかい?〉


 びくり、とスガルが震えた。


〈スガルもこれと同じことが私に対してできるはずだけど、どうかな?頭の中で、私の名前を思い浮かべて、そこに向かって話しかける感じなんだけど〉


〈…ボスボスボスボス…あ、できた?こうですか?〉


〈おお!できたね!これならば、遠く離れていてもいつでも会話ができるんだよ。声に出す必要もないから、隠密性も抜群だ〉


 ケリーたちはいまだに敬語が話せないが、スガルは話せるのか。というか、スガルが実際敬語を話しているわけではなく、スガルの思考を翻訳した結果がこの口調なのだろう。

 フレンドチャットは一定期間はログに残るので、おそらくそのために人語に翻訳されているのだろう。


 フレンドチャットまで使えるとなれば、取れる手段が飛躍的にアップする。


 そしてレアは、これまでの眷属たちとの検証の結果から、もうひとつ仮説を立てていた。


 すなわち、NPCがプレイヤーと同様にシステムを利用できるならば、システム的に差がないというならば、プレイヤーもまた、NPCと同様にテイムできるのではないか、ということだ。


 これがもし事実なら、別のプレイヤーの得た経験値をすべて自分のもとに集めることができる。まさかの公式姫プレイだ。

 アバターは自分自身の全身感覚で動かし、自分で話さなければならないため、他のVRサービスと同様このゲームでも性別を偽ることは難しいが、出来ないわけでもない。

 ゆえにいわゆるネカマも一定数は居るはずだ。

 そしてこの考察が間違っていなのなら、仕様として経験値さえ貢がせることができる。


 これまでの歴史の中ですべてのオンラインゲームが凝縮してきた闇がここに結実したと言えよう。


 しかしながら、ゲームのサービスである以上、ユーザーの意思を無視したことはさすがにできまい。

 仮にプレイヤーをテイムしようとした場合、おそらく警告かエラーのシステムメッセージが出るのだろう。

 NPCとの違いはおそらくそこだ。チュートリアルの説明にあった「システムメッセージを受け取れるかどうか」という言葉にも合致する。


 レアは検証したくてウズウズしてきた。

 しかしこれを行った時点で、どうであれ相手プレイヤーに『使役』の存在が知られてしまうだろう。

 であればよほど信用のおけるプレイヤーでなければならない。さらにそのプレイヤーに、ことによってはレアにテイムされることを了承してもらわなくてはならないかもしれない。

 さすがにそのような知り合いはいない。


 というか、知り合いがそもそもいない。


 そういえば、他のプレイヤーを見たことがないが、魔物の領域で始めるプレイヤーというのはどれほどいるのだろうか。

 そして想定される魔物プレイヤーよりも魔物の領域のランダムスポーンポイントの方が多く設定されていた場合、協力プレイやフレンド登録など事実上不可能だ。

 これまで誰とも出会わないということは、その可能性も高い。友達と遊びたい人はどうするのだろう。


 いずれにしても、別に友達と遊びたくないレアには関係のないことだ。

 ソロでは難しいだろう攻略があったとしても、その時はケリーたちがフォローしてくれるだろう。

 なんなら、ケリーたちのINTを上げまくれば、下手なプレイヤーより的確なムーブをしてくれる可能性まである。

 素晴らしいシステムを見つけたものだ。用意してくれた運営には感謝の念を禁じえない。


 ケリーたちが起きたら、敬語を覚えさせよう。経験値に余裕ができればINTも上げてやり、物語などでは滅多にお目にかかれない「全員が賢いデキる四天王」を目指そう。


 とりあえずしばらくは、アリたちの回復を待って周辺の森を制圧させながら経験値を貯め、スガルのLP・MPが回復したらアリを増やし、貯めた経験値でレアとスガルの眷属強化を取得し。


 まずはこの森全体の掌握を目指すことにしよう。




 


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