第14話 エリシアとの約束
今日は雲ひとつない晴天で太陽の光が眩しい。
エルに変身魔法をかけてもらい、今日も今日とてFクラスの扉を開く。すると、一斉にこちらを振り返る。生徒の一人一人がこちらを見ていて、少し怖い。俺とリアは何食わぬ顔で教室へと入り、着席する。
「おはよう!」
元気な声で一直線にギルガは俺たちの席に来た。
仲良くする気もないので無視する。頬杖をつき、外を眺める。エルを見つけた。今日も双眼鏡で監視を欠かしていない。
「今日も一日頑張ろうね!」
そして、元いたグループへと戻っていった。
さて、今日はリリネに話しかけていくしかないな。一刻も早く彼女にしないと殺されてしまう。
だが、ただ話しかけて好感度が上がるというものでもないのだ。
チャイムがなり、授業が始まったので、教室を後にする。階段を下っていくと、どんよりとした空気で座り込んでいるエリシアを見つけた。
「よう」
後ろから声をかけるとビクッと肩が震えた。それほどまでに警戒しているのだろう。
「あ、龍太郎ですね。良かった...」
今すぐにでも泣きそうで、俺を認識すると安堵した表情に変わる。
「また、誰かにいじめられたのか?」
「そうなんですよ!酷いんです!今日はトイレに入っていたら急に上から水が降ってきたんですよ!最初は不思議なことが起こったのかと思っていたんですけど、個室を出ると、バケツを持った彼女たちが笑いながら見てくるんですよ!これで閃きました。彼女たちがやったんだって!!」
エリシアの服はまだ乾き切っておらず少し目のやりどころに困る。
「いや、気づくの遅すぎだろ!もっと人を疑えよ!」
耐えかねてツッコミを入れてしまった。顔を手で抑え呆れた。
「もう教室へ戻りたくない...」
「下民だからなんだって言うんだ。貴族の奴らなんか気にしなければいいんだ。あいつらは俺らより下の存在、そう思えば気持ちは楽にならないか?」
「全くなりません...。だけどありがとうございます。私を心配してくれて嬉しいです。ちなみに龍太郎はどうですか?」
「あぁ。俺はな不思議なことに何にもされてこないぞ」
「え!す、凄いです!な、何でですか!?尊敬します!」
「たかが何もされてないってことだけだぞ?」
「それが私にとっては凄いことなので!」
目を輝かして、手まで握ってきたのだから、思わず少し動揺してしまったことは黙っておこう。
「そうか」
「どうやったんですか?」
「何もやってないさ、ただクラスの奴らと関係を持たないことだな」
転入初日に俺はクラスの皆に宣言したんだ、関わらないでくれと。
「そうなんですね。私も龍太郎の話を聞いて何故か頑張れる気がしてきました!」
「なら良かった。唐突だが、エリシア一つ聞いてもいいか?」
「なんでも答えます!あっ、で、でも、私のバストサイズとかは言えなー」
恥ずかしながら、頬を染めるエリシア。
どうでもよかったので、最後まで言う前に言葉を遮った。
「それはどうでもいい。俺はリリネについて教えてほしい」
「どうでもいいです...か...。そうですか...。リリネ様ですか!何故龍太郎が?」
「そうだな、、、えーと、その王女様と少し話がしたい。何を話せばいいのか分からなくて、リリネのことを知ってる限りでいいから教えてほしい」
「そういうことですか。リリネ様は誰もが憧れる存在ですからね。龍太郎がそういうのはしょうがないことです。もしかして好きになってしまいました?な、なんてー」
「この気持ちがエリシアの言う好きということならそうなんだろう」
全く好きではない。ただ、リリネを好きと言っていた方が何かと聞き出せるかもしれない。だから、俺は嘘を言う。
「あ、あー。そ、そうなんだー。リリネ様が好きなんだー。龍太郎はリリネ様みたいなのがタイプだったんだー。や、やめといた方がいいと思うけどなー」
何故か挙動不審になるエリシアは上を見上げふてくされている。
「真剣なんだ。教えてほしい」
真剣な眼でエリシアを見つめて本気さを伝える。
内心はリリネのことなんかどうでもいいが。
「はー。分かりました。龍太郎が本気っていうことは伝わりました。ですが、条件があります!放課後私に付き合ってください!」
身を乗り出し、俺に近づくと声を荒げながら言った。
「しょうがない、で、どこいくんだ?」
こいつは使えるだろうし、付き合うことぐらいはやっておいて損はないだろう。
「色々です!まぁとにかく、楽しみにしてください!」
「わかった。それで、リリネに関することを全部」
「はい!リリネ様は王女様ってことは知ってますよね?」
「あぁ」
「文武両道、運動神経抜群、成績も学年一位の秀才なんです。そして、コミュニケーション能力も高く、友達が沢山います!羨ましい...。ですが、彼氏とかの噂は今まで聞いたことないので今が狙いどきだと思います!でも、龍太郎では高嶺の花ですけどね」
なんか最後の方貶された気がする。
「でも、そんな完璧なリリネ様でも、弱点があるんです。それは、魔法の適性がFで魔法の才能が全くないんです。剣術は運動神経で補ってはいるのですが、それもそこそこで、今まさに頑張っていらっしゃるんです」
魔法適性Fの割には口調が強く、俺に対しては魔法の勝負まで挑んできたな。もしかしたらあの時勝負を受けたら勝てたんじゃないだろうか。それに、魔法は貴族の物とか魔法適性は高いとか言っておいて、自分が適性Fって、とても哀れだし、笑えてくるな。
「その割にはプライドは高いんだな」
「それは当然のことですよ。将来、リリネ様はこの国を背負っていく方なんです。そのお方が弱腰になっていたら皆んなついてきませんよ。一部ではリリネ様を嘲笑っている少数派の方たちがいますが、私はリリネ様だけは尊敬してます」
「確かにそうだな。でも、エリシアは貴族が嫌いじゃないのか?」
「はい、嫌いです。だけどリリネ様は違ったんです。口調は強くて、私をゴミにしか見てないと思うんですが、内心は優しいんです。いじめられていた私を助けてくれた唯一の人なんです。だから好きです。でも、それによりいじめは過激になったことは胸の内に隠しときます」
「声に出てるって!へーそうか、リリネは優しいんだな。意外だ」
またもツッコミを入れてしまった。リリネがまさか、いじめから助ける奴なんて思わなかった。
「そうですよ!龍太郎もリリネ様がいるからいじめられてないんですね、私気づくのが遅かったです」
えへへとエリシアは羨ましそうに無理に作り笑いをした。
「他にリリネの好きなものとか趣味とかわからないか?」
「リリネ様はリンゴっていう果物が好きって聞いたことがあります。でもリンゴって本当に珍しくって年に一、二個しか取れないそうです」
リンゴって赤くてシャリシャリとして、美味い果物だよな?この国ではそんなに珍しいのか。
「どこで売ってるかわかるか?」
それをプレゼントすれば好感度は確実に上がるよな。なんとかして、手に入れたいものだ。
「うーん。わからないですね。貴族の方ならわかるかも知れませんが。後、趣味は何にも噂は聞かないです。でも、私は何か隠している趣味があると思います!」
「というと?」
「これも噂なんですけど、リリネ様、一週間に一度姿を消す時があるんです。それで、他の生徒たちの間では何かやっているのではないかと気になっているんですよ」
「それは何やってるか見てみたいな。後は追わないのか?」
「それが、後を終えたものが居ないんですよ。不思議ですよね」
「そうだな。探ってみるか。それにしてもエリシアは凄く情報を持っているな」
「い、いや、そんなそんな。私はリリネ様が好きなだけですよ」
顔の前で手を振り、全力否定する。
「そうか。いい情報を聞いた。ありがとなエリシア」
「いえ、龍太郎の力になれたのなら良かったです!」
「それじゃ、俺は教室に戻るかな」
ちょうどチャイムも鳴ったのでちょうどいいか。
「ま、待ってください!放課後、学院の門に集合ですよ!」
「あぁ、行く。約束だからな」
「はい!」
先程までの泣き顔はどこへ行ったのやら。
元気な返事を聞き、俺は教室へと階段を上るのだった。
「さて、これからどうするか」
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