黒いジャージーがボールを持つと、たちまち白いジャージーが強烈な勢いで飛び込んできた。3連覇に挑んだ黒衣の軍団にとっては、歯車のかみあわない80分。それは試合前から始まっていた。
ハカの前、イングランドは「自陣で見守る」という不文律を破ってV字型に並び、両端の選手がNZ陣まで入って挑発した。試合が始まると、イングランドの強烈なタックルを浴び続け、無理な姿勢でパスを試みてはボールを失う。10点を追う後半も、ラインアウトの相手ミスからFWサベアが1トライを返したのみ。攻守とも切れ味が戻らないままだった。
「イングランドを祝福する。最後まで素晴らしかった」。ハンセン監督は素直に相手をたたえると「心は痛い。でも恥ずかしくはないよ」と胸を張った。同監督は今大会を最後にチームを離れ、トップリーグ、トヨタ自動車のスタッフ入りがうわさされている。ナンバー8リード主将もトヨタ自動車へ、猛突進をみせたロックのレタリックは神戸製鋼入りと、今大会で頂点をつかめなかった選手たちは、立場を変えて日本で戦いを続ける。
「まだもう1試合ある。来週の3位決定戦で、日本のファンに、最高のオールブラックスを見せるよ」とSHのA・スミスは言った。連覇は消えても、黒衣のW杯は終わっていない。 (大友信彦)