スマートホーム(スマートハウス)の記事 2019.10.14
エッジコンピューティングとは?IoTとの関係やメリットデメリットについて【テクノロジー・AI 入門編】
現代ではスマートフォンの登場により、インターネットにつながる機器が一気に増加しました。さらに「スマートウォッチ」や「AIスピーカー」など新たなデバイスも登場し、今後はありとあらゆるものがインターネットにつながるようになるでしょう。
こういった「IoT(Internet of Things)」機器で提供されるサービスの中核となるのが「クラウドコンピューティング」です。クラウドコンピューティングでは企業などが用意した「クラウドサーバー」を通して必要な処理を行います。しかしインターネットに接続するデバイスが増加したことで、クラウドコンピューティングに限界が来つつあります。
そこで注目されているのが「エッジコンピューティング」です。クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングを組み合わせれば、負荷分散を始めとしてさまざまなメリットがあります。
今回はエッジコンピューティングとはそもそも何か、そしてメリット・デメリットや事例、市場予測などもご紹介していきます。
- エッジコンピューティングとは何か
- エッジコンピューティングのメリットデメリット
- エッジコンピューティングの市場規模予測
エッジコンピューティングとは?
エッジコンピューティングとは、「エッジ(端)」で処理を行うというもので、分かりやすく説明すると「ユーザーに近いスマホやIoT機器などの端末側でデータ処理を行う技術」となります。また、ネットワーク上にあるサーバで分散処理をする手法としてもエッジコンピューティングの技術が使われています。
クラウドサーバーのようなネットワーク中央にある機器に対して、端っこにある機器で処理を行う考え方なのでこう呼ばれています。
総務省の発表によると、世界のIoT機器数は2015年の約200億台から、2020年には約400億台と2倍近くに膨れ上がります。今後はさらにいろいろなものがインターネットにつながるようになり、IoT機器の数もどんどん増加していくでしょう。
そして我々の予想以上にインターネットに接続する機器が増えたことで、「処理を行うコンピューターの負荷をどう分散するか」という問題が出てきました。従来IoT機器のデータ処理を行う場合、インターネット上のクラウドサーバーで一括して処理を行い、各ユーザーへ必要なデータを返す「集中処理型」が一般的でした。しかしこのままIoT機器が増加すれば、クラウドサーバーの処理負担がどんどん増えてしまい、最悪の場合ダウンしてサービスが使えなくなる危険性もあります。
そこで登場したのが、エッジコンピューティングです。エッジコンピューティングではクラウドサーバーにデータを送らずに、可能な処理はすべてエッジ側で行います。これによりクラウドサーバー側に負担が集中せず、処理分散ができるので、IoT機器が増加しても安定したサービスが提供できるようになります。
クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングは、対立する技術だと勘違いしている方もいますが、今まで見てきたようにこの2つはむしろ相互補完し合う関係にあります。これからはクラウドコンピューティングとエッジコンピューティングを組み合わせて、IoT機器の爆発的増加に対応できる体制が作られていくでしょう。
エッジコンピューティングのメリット
エッジコンピューティングには、次のメリットがあります。
クラウドサービスのレスポンスが速くなる
クラウドコンピューティングにおいては、ユーザーに対する応答速度も問題です。インターネットにつながる機器が増えることによってレスポンスが低下し、最悪の場合データが集中しパンク状態になることもあります。
エッジコンピューティングでは主に端末側でデータ処理を行うため、ネットワークを行き交うトラフィックが少なくなり、混雑解消にもつながります。結果として集中処理型のクラウドサーバーよりも速くユーザーにレスポンスを返すことができます。
5Gを活用したIoTサービスの普及が進むなか、今後はユーザーが必要なデータをいかに速く返せるかが一つの勝負になります。エッジコンピューティングを利用すれば、これまで実現不可能とされてきた技術も現実的なものになっていきます。最近話題となっている自動運転技術や、遠隔医療などの分野においてもエッジコンピューティング技術は必要不可欠なものです。
セキュリティリスクの軽減
クラウドサービスを導入したいと検討している企業にとって足かせになるのが、セキュリティに対するリスクです。
クラウドサービスでは、企業がやり取りしたデータがすべてクラウドサーバー側で処理されます。つまりクラウドサーバーをハッキングなどで突破されると、機密データや顧客データなど、極めて重要な情報が盗まれる危険性もあります。
エッジコンピューティングでは、外部に漏れたら困るデータをエッジ機器で処理して、クラウドサーバーには送らない、といった使い方もできます。こうすれば機密性の高いデータはエッジ、そうでないデータはクラウドサーバーに送信できるようになるので、セキュリティを保持しながらクラウドサービスを利用可能になります。
障害などに対する耐性が強くなる
集中処理型のクラウドサーバーは、事業継続性という観点からも不安な面があります。
例えばクラウドサービスを提供している企業本社が地震などの災害に見舞われたり、急な不具合が起きたりしてクラウドサーバーが使えない状態になった場合、クラウドサービスを使っているユーザーは復旧するまでの間作業ができなくなってしまいます。
業務にクラウドサービスを使っている場合、何も対策を打っていないとトラブル発生時に業務がストップし、大きな損害を被ってしまうこともあります。
エッジコンピューティングでは万が一クラウドサービスが稼働しない状況になっても、エッジ側の機器は引き続き稼働しています。つまりエッジ側だけでもデータ処理ができるので、業務がストップする事態も避けられます。
このようにクラウドコンピューティングとエッジコンピューティングを組み合わせれば、トラブル時にも耐性の強いシステムを構築可能です。
エッジコンピューティングのデメリット
エッジコンピューティングには、次のようなデメリットもあるので注意しましょう。
データが一部消えてしまう
エッジコンピューティングでは、エッジで処理可能な情報はエッジで、大規模なインターネットを介した処理が必要な情報はクラウドと、処理するデータに応じてすみ分けができます。しかしすみ分けする過程で、消失してしまうデータもあります。
例えば「クラウドサービスで集まったデータをもとにして「AI(人工知能)」サービスを作りたい」という希望がある場合、データが不十分で開発が進まないなどのトラブルが起きる可能性もあります。また貯まったデータを分析してフィードバックする場合も、有益なデータが抜けている可能性があります。
消えてしまう情報をいかに上手く保存して活用できるようにするか、という問題は、今後のエッジコンピューティング活用においても議論される話題になるでしょう。
コストがかかる
エッジコンピューティングを利用したサービスを提供する場合、企業ではエッジコンピューティング用のサーバーなど、設備を用意する必要があります。単にクラウドサービスを構築するよりも費用がかかるので、エッジコンピューティングサービスを構築する場合は事前にしっかり予算を見積もっておく必要があります。
また設備が増える分、それにかかるメンテナンス時間も増えます。エッジコンピューティングサービスを構築するときは、いかにコストを抑えながらメンテナンスしやすい環境を作るかが焦点になりそうです。
エッジコンピューティングの業界事例3つ
ここからはエッジコンピューティングの事例を、3つに分けてご紹介していきます。
自動車業界
自動車業界では、自動運転実現にエッジコンピューティングが重要や役割を果たします。
自動運転では、走行時の運転席からの映像をセンターへ送り、センター側でアクセルはブレーキ、ハンドリングなどの指示を出します。数秒の判断遅れが致命的な事故につながる自動車では、自動運転の際に極限まで遅延を少なくすることが課題です。
自動運転には5Gの技術が欠かせませんが、5Gに用いられる基地局側または端末で処理を行うことにより、従来の集中処理型のクラウドサーバーに比べて低遅延での通信が可能になります。これにより人力で運転するのと変わらないほどの素早い判断が自動運転で可能になります。
大容量で高速、他接続、そして低遅延を実現できる5Gとエッジコンピューティングを組み合わせれば、自動運転の環境を整備できます。
動画配信サービス業界
動画配信サービス業界でも、エッジコンピューティングを使ったサービス事例が登場しています。
スポーツ中継などを行う際に、ユーザー付近のエッジコンピューティング用サーバーからデータを送信して遅延を防ごうという試みも始まっています。VR技術を活用した新たな形のスポーツ中継も開始されており、従来のテレビよりも臨場感あふれる映像を楽しむことができます。
このようなスポーツ中継映像は、複数のカメラによって撮影された映像を複合的に組み合わせて制作されます。自由な角度から映像を観ることができ、これまでにない新たなスポーツ観戦の楽しみを提供してくれるサービスとして注目されています。
動画配信サービスはサーバーにかかる負担が大きいので、エッジコンピューティング活用により大きなメリットを受けられます。
建設業界
建設業界では、業務効率化の手段としてIoTシステムが活用されています。そしてIoTシステムの補助として、エッジコンピューティングが採用されています。
例えば、作業員や重機などの動線を「ビーコン(備え付けの発信機)」を使って把握ができるようになっています。スマートフォンで位置情報を受け取り、最適な人員配備や危険予測などを行えます。ただしビーコンやスマートフォンが通信時に放っている電波周波数は2.4GHzの場合が多く、同じ周波数の電波は干渉し合って通信状態が不安定になる可能性があります。
そこでエッジコンピューティングを使ってスマホ内で処理を完結させれば、無用なデータのやり取りが発生しないので、電波の影響をあまり考えずに作業できるようになります。
このようにエッジコンピューティングは、通信回数の削減にも役立ちます。
エッジコンピューティングの市場規模、市場予測
アメリカの調査会社「MarketsandMarkets」では、世界のエッジコンピューティング市場成長率が2017年の14億7000万ドルから、5年後の2022年には67億2000万ドル、つまり約4.5倍になると発表しています。また日本のマーケティング会社である「富士キメラ総研」では、5G対応エッジデバイスの市場が2019年には3兆5165億円、2023年には26兆1400億円になり、4年間で約7.5倍になるとの予測を立てています。
いずれにせよエッジコンピューティングは、5Gとともにこれから必要な技術です。今後たくさんの企業がエッジコンピューティングサービスに参入し、市場はどんどん賑わうでしょう。
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エッジコンピューティングの今後
今回はエッジコンピューティングとは何か、そしてメリットやデメリットや事例、市場予測までご紹介してきました。
IoT時代の到来に向けて、エッジコンピューティングは無くてはならない技術です。またエッジコンピューティングの活用は負荷分散だけでなくサービスのレスポンスや業務持続性向上にもつながるので、メリットが大きいです。
ぜひあなたの企業でもクラウドサービスを提供することになった場合は、エッジコンピューティングの活用を検討してみてください。
IT企業などでのエンジニア職を経て、ライターへ転身。
趣味は読書とゲームに没頭するインドア派。主にIT・不動産などの多くの分野で執筆活動中。
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