
人類最古の商売
それが娼婦らしい
にしても、どうしてこんな名前が・・・?
やっぱりなんか困るよね
「プッタネスカ(puttanesca)」という名のソースがある。イタリアでポピュラーなソースの1つ。日本にもかなり入って来ていて既に定番パスタになりつつある。で、その意味はずばり「娼婦風」ということである。
こういう名前をつけてしまったんだからしょうがない。が、レストランなんかで「娼婦」って書くのを嫌ったところでは「アンチョビと黒オリーブのトマトソース」などと書いてお茶をにごしてありますね。日本人なら「プッタネスカっ!」ってオーダーしてしまえばそれほど意識しなくてもいいけれど、時々「娼婦風」ってご丁寧に訳して書いてあったりして、小心者の私は「しょ、しょ、しょ、しょうふふう、ください」とまるで、"しょ・しょ・しょじょじ、しょじょじの庭は・・♪"と歌い出したくなるような状況に追いこまれるのである。
ましてや子供がとなりにいたりしたら、どうするっ。子供が「おとーさん、しょうふってなに?」って聞いたらどうするっ。 こうなってくるときっとPTAとか教育委員会とかが乗り出してきて、子供の教育に良くないってことになって、さらには「娼婦風掲載反対」とかいうノボリがイタメシ屋の前にはためいたりする、という事態にもなりかねない。
食べ物の名前としては罪なものです。
どうしてこんな名前がついたのだろう?
・・・と思って調べ始めたのですが、どの本もごにょごにょと書いてあるばかり。「パスタ」というおしゃれな雰囲気に入ってきて欲しくない、迷惑な、というような雰囲気なのである。とくと述べることがタブー視されているよう。でもいいさ、ここはたわごというところだから。
でも、諸説入り乱れてしまい分からないのです。それでも代表的なところを挙げますと、
- 娼婦多忙説
娼婦の仕事は忙しい(この辺の仮定、ホントか? と疑いたくなるのですが)。買い物に行く時間もない。そこで簡単にいつでも作れるようなソースとしてこのプッタネスカが出来た。
この他にも「仕事に行く前に、ありあわせの材料でささっと作って、子供に御飯を食べさせて出かけた」というのもあるそうです(にいだけいこさん より情報)。んー、子供ネタまで持ってくるか。
確かに簡単に出来るのは確か。材料も保存の利くものばかりであるし、いつでもちゃっちゃと作ることが出来る。でもそれだったら、ペペロンチーノの方がよっぽど楽で速い。
- 栄養万点説
娼婦の仕事はきつい。したがって栄養を効率良く取れるように、このパスタがもてはやされた。
これは、カルボナーラ(炭焼き職人風)の時も同じような説があって、体力勝負であるからカロリーの高いものを摂ったというもの(カルボナーラに関してはこのほかに、上に乗っている黒こしょうが炭に似ているからなどの説がある)。ただ、だとすると、やはり卵・チーズを使ったカロリーの高いソースこそがプッタネスカと呼ばれるべきではないのだろうか。
- サービス品説
とある娼婦がお客に振舞ったこのパスタがあまりにも旨かったために、これを食べにお客がたくさんついた。これにあやかろうと、周囲の娼婦もこのパスタを作り始めた。
かなりありがち。名物の始まりというのは、最初の一人というものが多くの場合存在する。
- 妖艶説
パスタそのものが、黒オリーブにトマトというかなりどぎつい色を使っているため、この雰囲気がまさに「娼婦」であるという説。
カルボナーラの時の、黒こしょうを炭に見たてるというのに似ている。パスタを艶かしい肌としてみれば、黒と赤はその洋服という感じだろうか。
- 買い物困難説
娼婦は、周りの目があって気軽に外に買い物にいけないので、日持ちのする材料で作れて、栄養があるこのパスタが定番だった。という説。(みずほ さんより情報)
これもそれっぽいなぁ。
- たまに食うと旨い説
「毎日食べる(遊びに行くと)と飽きるが、たまに食べると美味しい」という意味だという説(なんかの料理の本に書いてあったらしい)(名無しのゴン吉 さんより情報)
・・・結構えぐいですよね・・(^^;
まぁこんな感じでしょうか。(もしもこのほか知っている人がいたら教えてください)
日本にもあった
イタリア人、まったくこんな名前つけて、もう・・・と、思うんですが、実は日本にもこの手の名前を冠した麺類があるのです。
それが、「夜鷹蕎麦」。「よたかそば」と読みます。
「夜鷹」というのは、江戸語でどっちかというと安い娼婦のことをさす。(京都だと「辻君」、大阪だと「惣嫁」ともいった)夜の路傍でござを抱えて客をとるような私娼の絵を見たことがある方もいらっしゃるだろう。
で、夜中に屋台をひいて売る蕎麦のことを江戸では「夜鷹蕎麦」という。そばは「かけそば」一本。他の地方だと「夜叫き(よなき)蕎麦」ともいいます。で、この名前起源にも諸説ある。
- 販売時間帯説
夜売る蕎麦屋の客が、その私娼の客だったから(時間帯と場所がぴったり)という説。夜鷹が集まった場所(両国・柳原・呉服橋・護持院ヶ原など)に出店している蕎麦屋のことをそう呼ぶようになり、江戸全体へ呼び名が定着したという。夜中に男が歩き回れば、当然腹もすくわけで、これらの場所への出店は当然のことである。
- 花代説
「花代」というのは、つまり娼婦の料金です。これが24文であるのが相場だったのだが、これよりずっと安く10文程度で売春するものもいた。で、ここから10文で売る蕎麦を「夜鷹そば」と呼ぶようになったというもの。
- お鷹匠説
私娼には関係なく、お鷹匠が夜に冷えた手を焙ったそば(「お鷹そば」)が訛って「よたかそば」になったという説。
・・・わかんないものですね。
深い・・・
この麺類と娼婦との関係をあたるのに「売春」というものの歴史を簡単にたどったのですが、その歴史を書くことによって、表側の歴史が全て書けるほど、ずーっと延々と続いてきたのが分かります。時代時代によって、国国によってその扱い方が違っており、徹底的にタブー視することもあれば、開けっぴろげで存在は当然のものとして扱うこともある。私設で国の摘発を恐れながらやるときと、国が積極的に運営したときもある。あるいは古代において「聖職者」的に扱われたときもある。
日本関連でも様々な形態があって、江戸での吉原、人によっては戦時中の従軍慰安婦を加えることもあるだろうし、あるいは戦後の赤線、今の歌舞伎町・新大久保、あるいは援助交際などと、様変わりしつつも、延々と途切れることなく存在しているのです。絶対なくならない職業。
で、私としては今これほどこの名称が広まっていることを考えると、今の日本ほど「売春」というものに対する統制が激しくなく、もっと開けっぴろげだったころについた名前であると直感的に思うのです。かなり能天気につけた名前で、そこには隠匿するような雰囲気はない。
さらに直感的には「性」と「食」というものは、「欲望」という点でかなり密接なものですね。
・・・んー。うまく言えん。
率直なところを書こうと書き始めて、やっぱり、ごにょごにょとなってしまうちゃぶちでした。
この文章中、特に歴史的な部分を述べる上で差別用語とみとめられるものが使用されていますが、娼婦の扱われ方の事実を語るときに避けて通れないものであって、筆者は悪意をもって書いているわけではありません。
また職業としての娼婦を語るとき、私は一小市民日本人的立場にたって書いておりますので、こちらに関しては様々なご批判あるとおもいます。どうぞ叩いてやってください。
参考文献:「そば・うどん百味百題」日本麺類業団体連合会
1998/10/19 ちゃぶち