今日は「疾病の成り立ち及び回復過程の促進」の分野です。

昨年の第27回歯科衛生士国家試験では、近年では出題されていなかった問題も出題された傾向にありました。

今回は、過去の頻出問題と、久しぶりに出題された分野の問題を織り交ぜてみたので、勉強の抜け漏れがわかるかもしれません!

解説はこの記事の、問題の下にありますので、解き終わったら復習に役立ててください。

疾病の成り立ち及び回復過程の促進

ここでは、病因と疾病・病態、感染と免疫、薬物などについて出題されます。

解説

問題の解答と解説です。

間違えたところだけではなく、悩んだところなども確認しておきましょう。

単一遺伝子病はどれか

答え:血友病

遺伝子疾患には、特定の遺伝子の塩基配列に異常のある遺伝子の異常(遺伝子病)と染色体の構造や数に異常のある染色体異常(配偶子病)がある。
血友病はX染色体上にある第Ⅷ血液凝固因子をコードする遺伝子の異常で起こる単一遺伝子病である。
歯周病は歯周病原細菌による感染症である。
唇顎口蓋裂は顔面を形成する突起の癒合不全で生じる。
ダウン症候群は21番常染色体が3本ある染色体異常であり、いわゆる配偶子病である。

(第27回 午前9)

免疫原性をもたないガラス片が生体内に入り込むと、それを肉芽組織が取り込み、さらに線維化して周囲組織から隔離する。この機転を(  )という。

答え:被包化

異物処理の生体反応には、吸収・排除、器質化と被包がある。
微細な少量の異物はマクロファージや異物巨細胞によって貧食され吸収あるいは排除され消失する。
大きな異物は肉芽組織が増生して吸収あるいは置換(器質化)し、最終的に瘢痕組織になる。
一方、ガラス片のような貧食不可能な異物は、周囲を肉芽組織が取り囲み生体から隔離する。
肉芽組織は線維性結合組織となって異物を被包する。
石灰化はカルシウム塩の異常な沈着、血栓形成は生体の血管内で血液が凝固することである。
補体は血清中に存在するタンパク質で、活性化されると免疫を助ける機能がある。

(第27回 午前10)

このウイルスの感染経路はどれか

問3図

答え:血液

図に示されたウイルスはDNAウイルスで、DNAを取り囲むタンパク質の殻であるカプシド(小さな円で表された構造物)の外側にHBs抗原をもつエンベロープ(楕円で示された膜構造物)が存在する。
HBs抗原はB型肝炎ウイルス特有のタンパク質であることから、図のウイルスはB型肝炎ウイルスであり、血液や体外分泌液を介して感染するほか、産道感染により母子感染する。
血液感染するウイルスはほかに、ヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎ウイルスなどがある。
空気感染は麻疹ウイルスなど、経口感染はポリオウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルスなど、飛沫感染はムンプスウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルスなどがある。

(第27回 午前12)

中枢リンパ組織<一次リンパ組織>はどれか

答え:胸腺

リンパ組織とは、結合組織の一種の細網組織でできた網目にリンパ球が密在する組織で、生体防御の役割を果たしている。
中枢リンパ組織<一次リンパ組織>はリンパ球の成熟と分化に関与するリンパ組織で、骨髄と胸腺がある。
末梢リンパ組織<二次リンパ組織>は、免疫担当細胞が侵入した抗原に対して免疫反応を起こす場で、脾臓、扁桃(腺)、リンパ節などがある。

(第26回 午前11)

免疫グロブリンの構造を図に示す。該当するものはどれか

答え:粘膜の感染防御に重要である

免疫グロブリン(抗体)は、IgG,IgM,IgA,IgDおよびIgEの5種類のクラスに分類される。
図はY字型をした2分子の免疫グロブリンがS字型のペプチド(J鎖)を介して結合している2量体構造であり、分泌型IgAを表している。
分泌液IgAにおける抗原結合部位(Y字の先端部分)は4か所である。
IgAは単量体(1分子)で血清中に存在するほか、分泌型として気道、腸管、生殖器などの粘液や、唾液、涙、乳汁などの外分泌液に多量に含まれ、粘膜の感染防御において中心的役割を果たす。
血清中に最も多く存在する免疫グロブリンはIgGであり、アナフィラキシー反応(Ⅰ型アレルギー)を引き起こすのはIgEである。

(第27回 午後11)

鉄結合能を有する唾液中の抗菌物質はどれか

答え:ラクトフェリン

唾液中の抗菌物質には、分泌型IgA、ムチン、ヒスタチン、リゾチーム、ディフェンシン、ラクトフェリンなどがある。
分泌型IgAは細菌やウイルスの組織への付着・吸着を阻害し、ムチンは細菌の口腔粘膜への付着を阻害する。
ヒスタチンは主に抗真菌作用を有し、リゾチームは細菌を溶解する。
ディフェンシンは細菌、真菌、ウイルスに広く抑制作用を示す。
ラクトフェリンは鉄結合能を有し、細菌や真菌の増殖に必要な鉄を環境中から奪うことにより抗菌作用を示す。

(第27回 午後12)

運動性を有するのはどれか

答え:Treponema denticola

設問にある4菌はいずれも偏性嫌気性のグラム陰性菌で、歯周病原細菌である。
細菌の運動器官はblood鞭毛であり、鞭毛の有無は細菌の属や種によって決まっている。
Treponema denticolaは、スピロヘータ科のらせん菌で鞭毛をもち活発に運動する、慢性歯周炎や急性壊死性潰瘍性歯肉炎に関与する。
Tannerella forsythia(forsythensis)は非運動性の紡錘菌で、慢性歯周炎に関与する。
Fusobacterium nucleatumも非運動性の紡錘菌で、慢性歯周炎のほか急性潰瘍性歯肉炎の病巣からの検出率が高い。
慢性歯周炎の主要原因菌であるPorphyromonas gingivalisは非運動性の単桿菌で、血液寒天培地上で黒色集落を形成する黒色色素産生菌である。P.gingivalis,T.forsythiaおよびT.denticolaの3菌種は重度歯周炎に関連するため、Red Complex(レッドコンプレックス)とよばれる。

(第27回 午前13)

血中薬物濃度ー時間曲線を図に示す。血中薬物濃度が1.0と0.5に対するそれぞれの時間をxとyとしたとき、生物学的半減期はどれか

問8図

答え:y−x

血液中の活性型の薬物の濃度は、時間経過により指数関数的に減少する。
薬物の血中濃度を対数で表示すると、設問のように時間経過に対して直線的に減少するグラフとなる。
ある時点での薬物の血中濃度が、半分の濃度になるまでの時間を生物学的半減期をいう。
設問では、血中薬物濃度が1.0から0.5に半減するまでの時間はy−xとなり、生物学的半減期はy−xである。

(第27回 午後14)

局所麻酔薬にアドレナリンを添加する目的はどれか

答え:効果の持続

局所麻酔薬は血管拡張作用を有するため、投与局所の血流量が増加する。
そのため麻酔薬の吸収が促進され、麻酔効果の持続時間の減少や作用強度の低下が起こり、全身的な中毒の危険性が増加する。
その欠点を補うために、局所からの麻酔薬の吸収遅延を目的として、アドレナリン、ノルアドレナリン、フェリプレシンなどの血管収縮薬を添加した製剤が多い。
その結果、麻酔効果の持続、作用強度の増大、全身に対する毒性の軽減が期待できる。

(第27回 午後13)

アラキドン酸カスケードを図に示す。①の反応を抑制するのはどれか

答え:ステロイド性抗炎症薬

炎症性の刺激によって細胞膜からアラキドン酸が遊離したのち、炎症のケミカルメディエーターであるプロスタグランジン類、トロンボキサン類やロイコトリエン類が生成される過程を、アラキドン酸カスケードとよぶ。
ステロイド性抗炎症薬は、図中の①の反応を行うホスホリパーゼA₂を抑制することにより抗炎症作用を示す。
酸性非ステロイド性抗炎症薬は、アラキドン酸からプロスタグランジンG₂を生成するシクロオキシゲナーゼを阻害することによって、抗炎症作用を示す。解熱性鎮痛薬と塩基性非ステロイド性抗炎症薬の作用機序は確定されていないが、アラキドン酸カスケードの抑制作用は弱い。