2-3 God Save the Queen
ピアソン大尉が王都における訓練の総仕上げとして大型シミュレーターを使用した仮想対艦演習を行った日から、しばらく前まで話はさかのぼる。
強制徴募されてから1週間。海軍基地の教練施設にある大部屋の片隅。床の上に置かれたハイパードライブジェネレーターの模型とかいう原理も理解できない高価な機械の組み立てを練習しながら、エドは毎日のように不平をぶつくさ呟いていた。
大部屋にはネメシスに配属される予定の水兵たちが散らばっており、今いる海軍基地の下士官やマシンドロイドたちが機械整備の指導に当たっていた。
エドの不平、と言っても、士官に対して反抗や不服従を匂わせたり、あまつさえ脱走や反乱をそそのかすような危険な言動はしなかった。それらを行った水兵たちが王立海軍の軍法でいかに処されるかについては、暇な時間を潰すのに眺めたニュースや映画などでよく知っていたからだ。
「毎日、毎日、走らされて、機械を弄って、航海術を叩き込まれて。頭がおかしくなりそうだぜ!」
要するに単なる不満であった。陰でこそこそ言う位であれば、人にはよるが、士官や下士官たちもそう目くじらを立てることはない。とはいえ、度重なれば周囲にもイラつきが波及する。だが、それを意に関せずとエドは口をすぼめてラップのように言葉をまき散らしていた。
「シールド作動!シールドってなんでありますか?重力帆畳め!どうやるんでありますか?スラスター噴射!右に14度!出力はお前が計算しろ!わかりません!わからんとは何事だ!わからんであります!ええい!この馬鹿者め!重力制御!保護シールド作動!さっさと入れ!どこでありますか?」
首を振りつつバカみたいな調子で繰り返すと、エドは小さく叫んだ。
「あああ!俺は頭が悪いんだよ!なんたら方程式だか知らねえが、中等教育(11-18歳)の授業にもついていけなかったのに、こんなんわかるか!くそ!」
ついに周囲のいら立ちが限界に達したのか。一人がエドに強い口調で言い放った。
「うるせえよ。黙って仕事してろ」
「ああ?なんだと」エドが睨みつけた。
言った相手は190㎝もある大男だったが、エドは臆さなかった。近くにはレンチやら電磁カッターやら使えそうな道具が山ほど転がっていたし、エドは喧嘩慣れして、平気で汚い手段も使う性格だったからだ。
年齢は同じ程度であろう。エドと同じく機械と取っ組み合い、うめいていた大男を眺めて、エドはへらへら笑いながら言った。
「お前だって無理に連れてこられた口じゃねえか。だいたい300£だぞ!300£!3等水兵の給与、ひと月にたった300£だ!母ちゃんにもらっていた小遣いよりすくねえ!」
エドの言葉を聞いた大男が吐き捨てた。
「お前、最悪だな。母ちゃんに苦労を掛けさせるなよ」と大男。
「町の鼻つまみ者だったてめえにいわれたくねえな。ジョニー・G」
エドが好戦的な笑みを張り付けながら、腰を浮かせた。
「これまで何度留置場にぶち込まれた?」
「俺は与太者だったかもしれないが、おふくろに金を渡していた。誕生日には花束だって用意してた」
エドの剣呑な気配に感応したのか、のそりとジョニー・Gが身を起こした。
サウスエンド7丁目でワースト1のろくでなしの座を今決めようとするかの如く対峙した二人の青年に、近くで淡々とエンジン整備をしていた船匠見習いの青年が声をかけた。
「一年も立てば、昇格して給料も上がるよ」
「それでも1100£だぜ。辺境赴任して1200£、やってられねえや」
そう言いながら、いよいよ足に力を溜めたエドが飛び掛かろうとしたまさにその時、歩き回って訓練を監督していたミュラ少尉が鞭のような口調で厳しく言った。
「無駄口をたたくな!」
「アイ・アイ・サー!」でかい声で従順に言い返したエドは、しかし、危険感知には長けていた。軍隊で上官に逆らうのは裏路地でチンピラと揉めるのとは比較にならない災厄を招き寄せると、思考によらず雰囲気で察知している節がある。
エドはジョニー・Gを睨み付け、しかし、相手が生真面目な態度で再び機械に向き直っているのを見て、ため息を漏らして座り込んだ。それから怒鳴ってきた女士官の後姿を眺めた。
「畜生、カペー人め。たまんねえケツしやがって。××してえ」
「恐いもの知らずの馬鹿だな。お前って奴は」
おとなしく機械を組み立てようとして、コンピューターの指示通りにやったにもかかわらず、不合格判定を食らったジョニー・Gは、口を曲げながら呆れたように言った。
ミュラ少尉にその会話が聞こえなかったのは幸いだろう。彼女は後ろ手に手を組んで、訓練の進捗状況をチェックしている。元からの水兵たちは熱心に訓練に励んでいた。商船水夫たちもそれほど熱心ではないにしろ、順応しているようだった。ただし、あのエドという新兵には注意が必要かもしれない。確か強制徴募だった。今まで自由だった身からすれば当然だが、脱走を図る恐れもある。
歩き回っているミュラ少尉がおおむね満足して頷いていると、小さな呼び出し音とともに目の前に小さな映像が浮かんだ。艦長からの連絡だった。
「全員集合、集合しろ!15:00時より艦長殿からのお話がある!」
ミュラ少尉の命令が大部屋に響いた。彼女は一々怒鳴らなくても、その気になれば20m四方の運動場の隅から隅まで声を届かせられる声帯と肺活量の持ち主だった。
水兵たちが訓練を中断して立ち上がる。
「おう、ちょうどいい機会だ」エドが肯きながら、首を振った。
「何考えてやる」ジョニー・Gが眉を顰める。
「艦長に一言、バシッとよ。どうか開放してください。お願いしますって言ってみるぜ。
俺は船乗りじゃねえんだ。役に立たねえんで放り出してくださいって、ガツンと言ってやるぜ」
エドは強気なのか、情けないのか、よく分からない言葉を吐き出した。
王立海軍軍人ジェームズ・アーサー・ピアソン男爵大尉が差し当たって自分の艦の乗員となるべき男たちと若干名の女たちの前に初めて顔を見せたのは、雷撃艇艦長の任を拝命してより10日。辺境宙域への出立が残り2週間に迫った晴天の日の午後であった。
海軍基地の広大な敷地に建てられた多目的ホールの一角に、此の1週間のうちに各所よりかき集められた男女が呼び集められていた。集団の前のほうに集まってきているのは、主として他の艦から廻されてきた古参の水兵たちであった。
訓練中に急遽、呼集されたにも拘らず素早く集まってきた古参兵らは、微かに囁きあったり、指で鼻を啜りながら、壇上のピアソン大尉を見上げていた。明らかに、新しく自分たちが配属される艦の艦長を値踏みしているに違いない。
僅かに弛緩した態度を見せているが、これは侮りというよりは慣れからきたものだろう。連中の大半は訓練を熟しながら、強制徴募された連中や志願してきた新兵らが馴染めるように色々と手助けしてやっているのを、訓練を監督しているマクラウド2等海尉からピアソン大尉は報告を受けていたし、ピアソン大尉もその目で直に確かめていた。今はやたらに厳しく接するべきでもないかと、ピアソン大尉は考えた。いや、その考えが本当にあっているかは、ピアソン大尉も確証は持てなかった。
艦長や海尉、下士官たちの中には、威厳を保つために水夫にやたらと懲罰を乱用する者もいるが、どちらかというと、ピアソン大尉自身は、そうした厳罰主義には否定的であった。
十分によくやっている水夫たちを叱り飛ばすのは、公平に悖るだけではなく、恥ずべき行いだとピアソン大尉は考えていたが、とはいえ、艦長は威厳を保つべきで、まったく口を出さないのも、それはそれで影響力が低下するだろう。
いきなり厳罰をくれては反発を食らう恐れもある。軽い手抜きなど、なにか機を見て叱り飛ばしておくべきかもしれない。
安月給で王立海軍に奉公しているとはいえ、宇宙艦隊での軍務は熟練水兵にとって慣れ親しんだもので、すでに軍での暮らしに馴染んだ彼らは、艦艇や基地内で生活を楽しむコツを知っていた。
取りあえずは、酒や煙草、食料の配給を切らさずに行っているうちは、航海中も彼らを当てにして間違いないだろうと、ピアソン大尉は判断していた。
他にも数名の志願兵たちがいた。海軍兵学校の卒業生やら、辛い艦隊勤務が終わったにも関わらず、宇宙艦艇での生活が忘れられない元水兵やらからなる一団で、この連中も中々どうして頼りになるだろうとピアソン大尉は踏んでいる。
現在、各員の力量や技能を確かめながら適宜に配置を決めているさなかであったが、熟練水兵の集団に、目をかけていたマッコールとハラーが自然な態度で混ざっているのを見て、ピアソン大尉は内心、にやりとした。
マッコールは、元水兵で海賊という変わった経歴の持ち主だ。乗ってた船を拿捕した海賊の捕虜となり、しばらく海賊船の一員になっていたが、ログレスに戻ってきて王立海軍へと志願してきた。
海賊船では掌砲手を務めていたとの触れ込みで、現在はその下の砲手長へと就けているが、確かにいい腕前をしていた。実際に雷撃艇に着任してからも問題がないようであれば、それほど遠くないうちに掌砲手へと昇格させようとピアソン大尉は内心で考えている。
砲手長と掌砲手はともに下士官相当だが、砲手長が砲1門を担当するのに対して、掌砲手は普通4門の砲を統括している。准士官である掌砲長は、今のところ、砲撃の力量にも優れた1等海尉のソームズ中尉に代行させているが、彼女には航海長と操舵長の役割まで兼任させていた。
准士官と下士官の層が薄いのが悩みどころで、出来るだけ早く代わりができる人物が必要だが、いきなり水兵を昇進させる訳にもいかない。
ハラーは王立海軍の補給船で二等航海士を務めていた老人だが、長年、宇宙艦艇に乗っていただけあって、様々な分野に関して熟知しており、ピアソン大尉は彼をすぐに航海士へと昇格させた。雷撃艇の複数いる航海士の一人であれば充分に務まるだろう。実際、周囲の水兵たちも、老ハラーの航海士昇格に対しては、反対するどころか、与えられて然るべき当然の地位と見做している節があった。
マッコールとハラーは正しく期待通りの働きをしてくれたが、2等海尉を任せたマクラウド中尉も意外な拾い物だった。
熱心さを買い、いないよりはましと考えて採用したのだが、穏やかな人柄を持つ陽性の気質の持ち主で、苦労してきただけあって、部下たちに細かく目を配るなど、気配りに長けている。
頭の働きが早いとは言えないが、働くことに骨惜しみしない壮年の男は、大雑把に見えて意外と人を見ている。朗らかな人柄は、早くも水兵たちから慕われているようで、それは自分には出来ないことだとピアソン大尉も不承不承だが認めざるを得なかった。不仲なソームズ中尉とミュラ少尉の間にも、彼が立つと自然休戦期が訪れるようで、いるだけで人間関係を和ませ、潤滑油となってくれる。今のところ、マクラウドは上手くやっているようだが、しかし、性格の柔和さから威厳に欠ける側面があり、近しい関係が慣れからくる侮りへと変わるのではないかとピアソン大尉は危惧していた。部下を心服させて掌握できるか、真価を問われるのはこれからだろう。今も水兵たちと冗談を交わして笑っている年長の2等海尉に、わずかに苦々しい思いを抱きながらピアソン大尉は評価した。
ミュラ3等海尉についてだが、どう評価するべきか。ピアソン大尉は内心、当惑を覚えていた。
ソームズ中尉と同じように、取りあえず手薄な部署の下士官や准士官の仕事を代行させているが、ログレスの士官学校を卒業できただけあって、どんな職務もそれなりに過不足なくこなすことが出来ている。
とはいえ、カペー人によくある傾向だが、彼女は実に勇敢で命知らずだ。士官学校の評価でも、積極的な攻勢を好むとある。勇敢さは多くの局面において、状況を打開するカギとなるが、時として命とりとなることもある。
頭脳は明晰で機知と機転に優れているのだが、にも拘らず、思慮に欠けているのはどういうことなのか。やはりカペー人だからか?どうにも理解できずに、ピアソン大尉は内心で首を傾げた。宇宙艦隊勤務よりは、地上軍向きなのではないか、とも思うが、分別を付けたら化ける可能性もある。もっとも分別を付けられる年齢まで彼女が長生き出来たらの話ではあるが。
他にはキャバノー2等水兵がいる。雀斑の跡もまだ残っている若者だが海軍兵学校の卒業者で、B級操船技能及び保守点検A級資格を持っている。船匠も航海士も務まるが、とりあえずは手薄な船匠助手に任命していた。
航海士には、海尉昇進試験の受験資格が与えられており、艦長の許可があれば士官への道も開かれている。若く野心的な海軍兵学校の卒業者は、大抵がそれ以上の地位を望んで航海士を望むのだが、キャバノー青年は、なぜか船匠となることを熱心に志望しており、本人の熱意もあってか、自分の職務と役割を一つ一つ根気よく覚えつつあった。いずれはいい船匠になるだろうとピアソン大尉は見込んでいる。
残りは強制徴募された連中だ。人手不足を補うためにかき集められた哀れな連中で、商船水夫が4名に、陸者だが浮遊艇の免許を持つ若者が2名。
この1週間の絶え間ない訓練で少しは水兵らしくなってきているようにも見える。始めが肝心だった。それら強制徴募の新兵が環境に馴染めるようにしてやるのも、ピアソン大尉の仕事の一つだった。
だが、強制徴募兵の中に一人、反抗的な光を隠し切れずに、明らかに反発と反感を込めてピアソン大尉を睨んでいる痩せた男がいた。ピアソン大尉が視線を合わせると見られていることに気付いたのか、ギョッとしたように顔を強張らせてさっとうつむいた。神経質そうな若い男。確か商船水夫の一人でブランドンという名前だったはずだ。ピアソン大尉は、ブランドンの顔と名前を頭の片隅に留めた。
乗組員全員が兎も角も整列したのを確認したピアソン大尉は、壇上から彼らを見回して口を開いた。
「私が海尉艦長(Commander)、ロード・ジェームズ・アーサー・ピアソン・アルゴン男爵だ!」
ピアソン大尉の張りのある深い美声は、全員の耳に届いた。
「2週間後、我々は辺境星域へと赴くこととなる。そこにはログレスの権益を狙う敵がいる。密輸業者。不法採掘者。私掠船。蛮族。そして海賊たちだ!」ピアソン大尉が演説を続ける。
ピアソン大尉の演説を聞いているソームズ中尉は、敬愛する上司とともに星の海へ旅立つことに万感の思いを抱いて胸がいっぱいだった。
「この中には、辺境の出来事など、自分には関係ない。放っておけと思うものもいるだろう!
だが、それら辺境の大動脈が、大ログレスの大いなる繁栄を築き上げ、ひいては諸君を含めた我々ログレス人の生活を支えていることを忘れてはならない」
マクラウド中尉は唇を引き締めた生真面目な表情を保ちつつ、時折、部下たちの方に視線を走らせて、彼らの此れからの危険や人生の無常について思いを馳せていた。
「辺境のログレス領域でとれる小麦一粒、鉱石ひとかけらに至るまで、諸君らの先達である王立海軍の勇敢なる冒険者や探検家たちによって航路が切り開かれ、開拓者たちが血と汗を代償に前哨を築き上げ、王立海軍が今も辺境を守り続けていることによって、もたらされていることを肝に銘じろ!
我々、光栄ある王立海軍は、常に不断の努力でログレスの領域と権益を守り続けなければならないのだ!」
ミュラ少尉は、ピアソン大尉を興味深そうに観察しつつ、我々の挟まれる回数とそれに伴う部下の反応の変化、演説から窺える彼の性格や考え方を脳内で分析しようとしていた。
「我々の財布に手を突っ込んで金貨を奪っていく連中に容赦をするな!これは我々、王立海軍に入った者の責務である!ひいては、それがお前たち自身の生活やその家族、友人、恋人を守ることにも繋がるのだ!」
老ハラーは、胸に帽子を当てて涙ぐみ、マッコールは普段通りのニヤニヤ笑いを浮かべながら、落ち着きなく体をゆすっていた。
「お前たちが勇敢に戦うならば、ログレスは必ずやそれに報いるだろう。銀河広しといえど、我々、ログレス王立海軍にかなうものはなし!God Save the Queen!(ログレス万歳)!」
ピアソン大尉が二角帽子を胸に当て、体育館を圧するほどに一際強靭な声音で獅子吼した。
「God Save the Queen!(ログレス万歳)!」
「God Save the Queen !(ログレス万歳)!」
エドも歯茎を剥き出しにして叫んでいた。ジョニー・Gも帽子を投げて叫んでいる。
若い水兵を中心に唱和が起こった。彼らは、これから赴く土地の事を教わり、自分たちの艦長がどのような人間であるかを知った。確かに雰囲気に動かされたのもあるが、愛国心に燃える青年士官に圧倒されるような気持ちを覚えると同時に、素朴な愛国心に火がついていた。
年老いた者や熟練の水兵には、笑顔を浮かべて唱和しつつも、やはり新しい艦長を窺う様子があった。
一部は場の雰囲気に呑まれず、叫びながらも冷静さを保っていたが、悪感情は抱いていないようだ。
老獪な部下の存在もそれはそれで悪くないと、ピアソン大尉は冷静なものの顔と名前を記憶した。
叫んでいる者、笑顔の者、周囲に合わせる者、冷静に士官や仲間を値踏みしている者。
視点カメラでも録画しているが、ピアソン大尉は、肉眼でも観察して部下たちの顔と名前を一刻でも早く一致させようと努力していた。
水兵たちの中には、崇高な理念には縁遠いものもいるであろうし、結局のところ、下っ端にとっての愛国心など、ずるがしこい政治屋に利用されるだけが関の山だと穿った考えを持つものもいるに違いないが、しかし、演説はまずまずの好感触であった。
実際、演説を聞いて艦長に否定的な感情を抱いたものは殆んどいなかった。
殆ど?そう殆どだ。強制徴募兵の一人で外国人のイーサン・ブランドンは歯を食いしばって下を向き、うめきを口から漏らしていた。
「……冗談じゃない。どうして僕がログレスのために戦わなきゃいけないんだ」
整列した兵士たちの最初の一人の前に立って、ピアソン大尉が厳しいまなざしで見つめた。
「名前は?」
「グリーンです。サー」
エドはへたれた。
ピアソン大尉は眼光鋭く、まさしく支配者という荘厳で強靭な雰囲気を放射している。背後には槍を持った赤い装甲服の海兵(Red coat)が立っていて、とても減らず口を聞ける相手ではなかった。
(あかん。これは勝てない)
なぜだか知らないが、心が折れた訳でもないのにエドは立ち向かう気が萎えてしまった。
「ジョニー・Gです。サー」
190㎝あるジョニー・Gもビビッて素直に名乗っていた。
余計な口を効くこともできない。エドは、首筋に刃物でも当てられた小僧みたいに心底ぶるってたが、ジョニー・Gもそれを馬鹿にしようとは考えなかった。なぜなら、彼もビビっていたからだ。
ピアソン大尉が次の兵士に名前を聞きに遠ざかって、しばらくしてからジョニー・Gがエドに向かってつぶやいた。
「ガツンと言うんじゃねえのか?」聞かれるのを恐れるような小声だった。
「黙れ」こちらも小声だった。
ピアソン艦長がブランドンに徐々に近づいてきていた。マッコールやハラーといった志願兵には厳しい口調ながら一言、二言声をかけ、他所の艦から廻されてきた水兵たちには肯いている。
ついにピアソン艦長が隣に立った。ブランドンと同じく強制徴募された外国人水夫が名前を問われて返答する。
「ワッツです、サー」
「外国人だな」
「ヘリオス人です、サー」
言ってからワッツは如才なく付け加えた。
「ログレスのために戦えるのは光栄です。サー」
頷いたピアソン大尉が、歩を進めてブランドンの目の前に立った。
「ブランドン。サー」
「以前は何をしていた」
「フォレチ商会の船で二等航海士を。近々、昇進予定でした。サー」
ピアソンが強い視線でブランドンの表情を射抜いた。
憎しみの光を見られたことをブランドンは悟った。冷や汗が背中に吹き出てくる。
ブランドンが悟られたと認識したのをピアソンも察知した。
互いの視線の狭間に冷ややかな理解と反発する意識の火花が散った。
だが、真っ向から立ち向かっては、最初からブランドンに勝ち目のある勝負ではなかった。
ブランドンは目を伏せた。彼は敗北したし、自分でもそれを知っていた。
だが、ことはそれではすまなかった。ピアソン大尉は、すぐに次に立ち去ったが、ピアソン大尉の背後を歩いていたソームズ中尉がブランドンの目の前で無表情で立ち止まっていた。
戸惑ったブランドンの目の前で、背の低いノマドの女性士官は強制徴募兵に顔を近づけると、そっと耳元でささやいた。背筋のゾッとするほどの、それは恐ろしい決意が込められたしわがれた声音だった。
「お前を見ているぞ。ブランドン。いつでも見ている」
ソームズ中尉の声は、雷鳴のようにブランドンの耳の中でいつまでも響いた。
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