「2浪は無能?」 道草を許さない社会の絶望感

走り続けるより、自由気ままに休んだ方がいい

2018年10月23日(火)

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東京都品川区の昭和大学病院(写真:PIXTA)

 昭和大学医学部の一般入試で、2浪以上の受験生が不利になるような得点操作を行っていたことがわかった。
 医学部の二次試験で、80点満点中、現役の受験生には10点、1浪の受験生には5点を加点。一方で、2浪以上には加点をしなかったほか、卒業生の親族を優先して補欠合格させ、その数は19人(2013年以降)。

 昭和大学は入試操作を謝罪した上で、現役と1浪を優遇した理由について「(現役・1浪は)活力があるとか、アクティブに動ける可能性が高いと判断していた」と説明している。

 ……なるほど。
 「活力」という名の「能力」。日常生活において私たちは一般的に、功利的原則に従って行動しているので、現役より2年も受験勉強期間を要した2浪は「最良の手段」を選択したとは言い難い。

 コスパと言い換えてもいい。要した時間(労力)と結果という視点で捉えれば、現役生の方が上。流行りの言葉でいえば、「生産性が高い」ということなのだろう。

 私が学生のとき、二浪は「若大将」と呼ばれていた。といってもこれは剣道部のローカルルールみたいなもの。なぜ、そう呼んでいたのかわからない。が、各学年に一人くらいは「若大将」がいて、彼らは明らかにオトナで、私は何度も「若大将」に救われてきた。

 今まであまり書いたことはなかったが、私はインカレや日本選手権に出るほどの結構な選手で(ホントです……苦笑)、辛い稽古や試合で負けたりして落ち込む度に、若大将がさりげなく「傘」をさしだしてくれたのだ。

 であるからして、「時にいやし、しばしば支え、常に慰む」という倫理観で、患者の「残された命」に光を与えてくれる存在でもある医師の卵が、功利的主義により選別されたのは極めて残念。

 あくまでも「私世界」の、実に限られた世界の経験に基づいた考えではあるけど、病とともに生きる時代に、人生は思いどおりにならないという経験をした2浪医師の言葉が必要になるはずなのに。

 人生100年といわれる時代に、たった2年くらい人より遅れたからといって、ちっちゃいこというな! という気持ちもある。

 というわけで今回は「浪人の価値」について、あれこれ考えてみたい。

コメント6件コメント/レビュー

半年間の受験勉強で合格力を得る現役生もいれば、
2~3年間かけて、合格力を得る浪人生もいる。
浪人生には浪人生の都合があるわけで、
現役優先などという、試験要綱に書いていない基準で
選抜するなど、言語道断だ!(2018/10/23 07:34)

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「「2浪は無能?」 道草を許さない社会の絶望感」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

半年間の受験勉強で合格力を得る現役生もいれば、
2~3年間かけて、合格力を得る浪人生もいる。
浪人生には浪人生の都合があるわけで、
現役優先などという、試験要綱に書いていない基準で
選抜するなど、言語道断だ!(2018/10/23 07:34)

日本の大学は、学問や研究を行う場所ではなく、あくまで適齢の若者を就職させるための機関という位置付けなので、仮に物事に対して本質的な理解をしていなかったとしても、テストで合格する技術の有無だけが求められている。そういう意味では、河合氏も言うように、個人が秘める能力や、その先の職業生活で求められる能力が測れているとは限らない。
ということは、日本の大学それ自体が、それ程の価値のあるところではないということにもなるので、そもそも二浪してまで目指すような場所なのだろうか?という、根本的な矛盾が生じているように思われます。
本当に何かについて研究したいとか、自分の可能性を試してみたいというならば、海外の大学を目指すべき。そうなって初めて、本稿で述べられているような「生きる力」が正しく試される訳で、ドメスティックな環境の中、最初からの負けゲームを、更にしがみつくかのように目標と設定せざるを得ない浪人という形態自体は、完全になくなって当然ではないかと考えます。(2018/10/23 07:26)

2浪や3浪ということで点数を差別するのは、基本的人権の尊重という憲法に違反している行為。犯罪行為だから刑法で処罰されるべきでしょう。これは大学に限ったことでもない、企業の採用でも、新卒以外でキャリアの無い求職者は差別されているではないですか。選ぶ自由は企業や大学にあるが、選定理由が個人の能力ではないところでやると遵法ではない。この問題を大学生の採用に拡げて書かれてはどうですか?多くの企業の採用担当者はコンプライアンス違反で懲戒、人為担当取締役と社長も更迭でしょう。貴方に企業と戦う勇気はありますか?(2018/10/23 07:13)

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