いまや『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックス役で人気のアクション・スター、デイヴ・バウティスタ(WWEのレスラー時代のリングネームはUを取ったバティスタでしたね)が自ら製作総指揮も手がけて主演した『ブッシュウィック‐武装都市‐』。タイトル通り、ニューヨーク州のブルックリンにあるブッシュウィックという街が舞台です。
大学院生のルーシー(『ピッチ・パーフェクト』のブリタニー・スノウ)は恋人を家族に会わせるため、故郷であるこの街に地下鉄で向かっていました。しかし駅に着くとどうも様子がおかしい。地上への出口に近づいたところ、なんと火だるまになった人が階段を転げ落ちてきます。いったい何が? 様子を見に行った恋人も爆風に包まれ、ルーシーは一人逃げまどうことに。
地上に出ると街は戦場と化していました。上空はヘリや戦闘機が旋回し、武装した謎の一団が住人を次々と射殺していきます。建物の上には狙撃兵が。ミサイルや手榴弾まで飛び交う街は大混乱。その中で、謎の男ステュープ(バウティスタ)と出会ったルーシーは、彼とともに決死のサバイバルを余儀なくされるのです。

平凡な日常が何の前触れもなく崩壊していく恐怖と戦慄。ルーシーは別世界に転移したわけではなく、本当にブッシュウィックが謎の軍隊の攻撃を受けていたのです。普通の学生である彼女に現状が正しく認識できるはずもなく、ただ恐怖に震え、逃げ続けるしかありません。しかも混乱に便乗して略奪行為に走る暴徒もまた危険な存在なのです。
この映画は長回しを多用し、ひたすら彼女(途中からはステュープも)に密着し、その行動をリアルタイムで追っていきます。映画会社の調べたところでは全編10カットだそうで、撮影法を工夫することで延々とワンカットで映画が続いていくように見せているのです。これによって生まれるのは臨場感と緊張感。全体を俯瞰する画面が挿入されたりしないので、常に自分たちの身の回りのことしかわからず、少ない情報量で判断を強いられることになるからです。観客もまた、ルーシーやステュープと一緒に、戦場となったブッシュウィックに飛び込んでいきます。
どこから銃弾が飛んでくるかわからず、相手の正体が何者かもわからない。そもそも、どこが安全でどこが危険地帯なのか? そんな緊迫感が約90分の間持続します。長回しで撮っているので、映画内の時間経過と実際の時間が一致し、そのことも臨場感につながっているのです。そして先の見えない展開の映画は、いったいどこへ向かうのか?
バウティスタはプロデューサーでありながら、自分の演じるキャラに超人的な大活躍をさせることなく、あくまでもひとりの人間としてステュープを演じました。そこに彼の“俳優”としての意欲を感じたのです。
(『ブッシュウィック‐武装都市‐』は8月11日から公開)
配給:松竹メディア事業部
(c)2016 STUPE PRODUCTIONS LLC.