豚日記18
豚歴1年2月1日 晴れ
今日は朝からゴリさんに脅されて野良仕事をさせられていた。ノラに篭絡されたゴリさんは今やすっかり豚農場の親方気取りだ。
豚畜生らしく怠けていてくれたらいいんだが、妙に仕事熱心でサボっている奴を見ると問答無用で殴りかかってくるから怖ぇ
そん時はゴリさんがどっかいってたので余裕でサボっていたら空から甲高い鳴き声が聞こえてきたんで見上げてみるとでっかい白い鳥がドラゴンみたいなやつに追いかけられてた。
この世界に来てスライムだの姫騎士だの多少はファンタジー臭のする存在には出会ってきたが、基本的には豚畜生ばかりの
二匹の空中戦を面白がって眺めているとシザーズをしながら集落の上空に近づいてきて、ドラゴンが吐く炎を鳥がバレルロールでかわした時に鳥からなんか落ちて来るのに気が付いた。女の子だ。
「親方、空から女の子が!」
とは別に叫ばなかったが、慌てて落ちてくる方に向かって走っていったが、落下地点がちょうど肥溜めだったので受け止めることは諦めた。許せ。
汚ぇ水しぶきと悪臭と共に女の子は無事着水。肥溜めに入らないように持ってた鋤を使って女の子を引っ張り上げるとプラチナブロンドの長髪にとんがった長い耳、真っ白な肌に真っ白なドレスのエルフだった。しかも俺の知るエルフ像よりかなり色が薄い。エルフの中でも原種に近い存在、ハイエルフって奴だ。
咄嗟にやべぇもんを拾ったと冷や汗が出たが、幸いにも落ちた衝撃か肥溜めの臭いで気を失っていた。
こんなことになるなら受け止めてやりゃ良かったと後悔しながら慌ててクララの元へ連れて行き、臭いがなくなるまで体を洗わせ、マリアには糞まみれの服を洗濯させた。
髪の毛まで糞汁が浸透してるからヤバいかと思ったが、豚畜生で鍛えたクララの超絶グルーミングテクと毒消しの魔法で臭いもなくなった。
普段なら俺たちの糞は毒扱いなのかと文句の一つも言ってやるところだが、今回ばかりは有難い。
服の方も何とかきれいになって無事に証拠隠滅できたんで穴倉に寝かせて気が付くのを待った。
そうしてるうちにほどなくしてそのハイエルフが目を覚ました。
いきなり魔法をぶっ放されるかと思ったが、看病してたマリアが機転を利かせて僧侶の服を着てくれていたので相手の警戒も薄れたようだ。
マリアが事の成り行きを説明している時は余計なことを言わないかとハラハラしたが、話が終わるとハイエルフが俺にも話しかけてきたんでびっくりした。人間の言葉と魔物の言葉の両方がわかるらしい。
挨拶して礼を言ってきたんでとりあえず安心した。蔑まれるのは別に構わんが敵視されるのは大変困る。
名前は俺には教えられんそうなので心の中でシロと呼ぶ事にした。
マリアがこの事態をどう説明したかわからんのでとりあえず慎重に話を聞く。
それによると、ここはマリアが改心させたオークを働かせている農場で、オークのリーダーで人間並みの知性と倫理観を持つ特殊なオークである俺が助け、シロの立場と置かれている状況の重大さを鑑みて丁重にマリアの元に連れてきた。という事らしい。
やべぇ、さすがマリアさん、超完璧だぜ。これでシロをうまいこと騙せる。
その後シロは俺とマリアの通訳を申し出てくれたが、実はあんまりマリアに話すことが無いので困った。
マリアとは別に話が通じなくても全く問題を感じないのが一番の理由で、マリアは俺の気持ちをすぐに察してくれている。言いたい事と言えばご奉仕がいつまでたっても上手くならん事への文句ぐらいだ。
話の中で驚いたのがマリアの本名がマリア・スノウでクララの事をクララと呼び、ノラの名前がノーラだという事だ。
俺は自分に名前が無いことを伝えるとマリアは俺の事をログと呼んでいるらしく、これからはそう名乗ることにした。
それ以上の話は俺の方から断って穴倉から出て見張りをすることにした。