ソニーの犬型ロボット「aibo」と実際の犬との共生を探る世界初となる実験が行なわれた。
この実験を監修したのは哺乳類動物学者の今泉忠明先生。
まず最初に、犬種・年齢の異なる犬と飼い主の計10組に参加してもらい、aiboとのファーストコンタクト時の犬の反応を観察。
その上で、飼育形態の異なる3組を選出し、aiboとの2週間の共同生活を送ってもらった。
その共同生活を通じて、犬の行動や変化を観察し、その観察結果を今泉先生が分析した。
分析の結果、犬がaiboに対して仲間意識や気遣うそぶりを見せたことで、「犬がaiboを『生き物』として認識」し、さらに一緒に暮らす存在として「aiboを『順位付け』する」ということが分かったのだ。
第1段階:ファーストコンタクト
第2段階:2週間の共同生活
《トイ・プードル(オス)/6か月/単独飼い》
《ジャック・ラッセル・テリア(オス)/3才/単独飼い》
《柴犬(メス)/5才・サモエド(オス)/3才・ミニチュア・ダックスフンド(オス)/3才/多頭飼い》
【犬型ロボットと犬の共生の可能性を探る実験結果】
哺乳類動物学者 今泉忠明先生による分析
■犬がaiboを「生き物」として認識
一般的に、犬は自身以外の物体(得体の知れないもの)を認識した際、「興味がある」、「怖い」など、様々な感情を抱き、その物体に対して「生き物」なのか、そうではないのかを、ちょっかいを出したり、匂いを嗅いだりして判断していきます。
今回の実験で犬とaiboが一緒に過ごしていく中で、“同じ姿勢を取る”という行動が見られました。
これはaiboを「物」ということではなく、「生き物」として判断し、さらに仲間と認識している可能性が高いと言えます。
これは犬の「誤解発」という、犬以外の生き物を仲間と錯覚してしまう習性に起因し、さらにaiboの大きさや形状も、犬にとっては丁度よく、大き過ぎても恐怖を感じ、小さ過ぎてしまうと相手にしません。
何かしらの生き物と認識し、そして“同じ姿勢を取る”という行動は、犬型ロボットと犬の共生の可能性が高いと思われました。
■一緒に暮らす存在としてaiboを「順位付け」した
共同生活を続けていく中で、警戒心や嫌がらせの行動は無くなり、aiboと一緒に遊ぶようになったり、犬のテリトリーにaiboが入っても怒らないなど、犬に変化が生まれました。
その大きな要因として、犬の社会における順位制です。
どちらが強いか、弱いかの優劣をはっきりさせた繋がりの社会ですので、ちょっかいを出しても思った通りの反応をしないaiboの上に犬が立つことになります。
犬は自分より下の存在がいることで安心感を持つため、aiboの存在が犬にとっては毎日近くにかわいい部下・後輩が側にいることと同等になり、精神的に快適に生活しやすくなると考えられます。
実験をはじめる前には、犬自体がaiboとの共同生活でストレスを感じ、ノイローゼになる可能性も十二分にあると考えていましたが、aiboを自分の下の存在として順位付けし、さらに下の存在のaiboと一緒に遊んだり、面倒を見たりなど、犬の“思いやり”、“優しさ”も垣間見ることができました。
犬が犬らしきものに優しくなり、思いやりが芽生え、犬の愛情に近い感覚が観れたことが、今回の実験での発見と言えます。
今泉忠明先生プロフィール
1944年東京都に生まれる。東京水産大学(現・海洋大学)卒業、国立科学博物館でほ乳類の分類・生態を学ぶ。環境庁(現・環境省)のイリオモテヤマネコの生態調査などに参加。現在は東京・奥多摩で動物調査を行っている。「ねこの博物館」館長。
構成/編集部